プールサイドでのICT強化とは。タブレットと耐水紙ポスターで「防水型」コミュニケーションへ 栃木県健康倶楽部(栃木県)
2022年08月09日 06:00
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子どもから高齢者まで、初心者からトップレベルまで、さまざまな志向・ニーズに合わせた健康づくりが求められるスポーツクラブ。水泳やフィットネス、テニス、フットボール、体操教室、学童倶楽部などのスポーツクラブ運営会社、株式会社ティエフシー(栃木県宇都宮市:名称「栃木県健康クラブ」)は、屋内プール施設における「防水対策」の課題をICTを駆使して解決。迅速な会員サービスやスタッフの事務作業の削減などにつなげ、地域住民一人ひとりの健康づくりに貢献している。
会員サービス充実のためにデジタル化を推進する皆川俊廣社長
プールサイドでタブレット操作 その場で父兄へ合格通知
7月中旬の週末。スポーツクラブ「栃木県健康倶楽部」(同市)のプールサイドでは、子ども会員に水泳を教えている男性コーチが、防水カバーを装着したタブレット画面を指でタッチ操作し、進級試験の合否を入力していた。合否の結果は瞬時に事前登録した父兄のメールアドレスに転送され、スマートフォンなどから見ることができるのだ。
ティエフシーの皆川俊廣社長が、プールサイドにおけるICTの仕組みを考え実行したのが7年前。日本スイミングクラブ協会加盟の経営者が集まった会合で、大阪府の会員から「うちはタブレットを使ってプールの中で出欠を取る。進級試験の合否は、親のスマートフォンにメールですぐ届くので感謝されている」と聞かされた。
当時、ティエフシーでは水泳教室に通う会員の出欠や進級試験の合否などは紙に記入したうえ、教室終了後に事務室に戻ってからパソコンに入力していた。スタッフは紙が水に濡れてボールペンがにじまないように細心の注意を払っていた。
「これならスタッフの不満を解消できる」。新しいもの好きで、失敗しても後悔しない性格だという皆川社長。すぐにプール内のWi-Fi構築にとりかかり、スタッフ分のタブレット10数台とタブレット用の防水カバーを購入した。皆川社長が知る限りは、プールサイドでの入力システムは関東地方では初めてだった。
プールサイドでタブレットを使うことが、今では日常の風景になった
とんとん拍子で実現したプールサイドでのICT化は、「作業時間が従来の3分の1に減った」(皆川社長)という効果をもたらした。プールの水に含まれる塩素による障害が懸念されたタブレットだが、これまで故障したのはたった1台だけ。水泳教室の男性スタッフは「事務室に戻って入力作業をする時間が省けた分、利用者に教える時間を増やせた。参加者が多いときでも大丈夫です」と満足げに語った。
耐水紙印刷で手間やコスト削減+劣化せずはっきり見える
導入したカラー高速デジタル印刷機と皆川社長
もう一つの防水対策は、屋内プール周りに貼る掲示物だ。ティエフシーでは、普通紙に印刷したまま使用すると水に濡れて、文字も見えなくなるため、普通紙に印刷後、ラミネート加工していた。ラミネート加工では、紙をフィルムに挟み込んで貼り合わせる作業に手間がかかる上、ラミネートの費用も馬鹿にならない。
また遠くからでも読めるポスターについては、複合機で印刷した紙を貼り合わせて大きな紙で掲示していた。皆川社長は、従業員のために、こうした事務作業を軽減したいと考えていた。
そこで、さまざまな用紙に対応できるカラー高速デジタル印刷機を導入。通常の複合機では印刷できないプラスチック素材の耐水紙への印刷が可能になった。耐水紙は、ラミネートに比べて値段・価格面の削減だけでなく作業時間を大幅に削減できる。プール周辺の掲示物の作成がすぐできるため、今後用途が拡大していくと考えられる。また、同じ印刷機で施設の様々な場所での案内用に長さが1m以上ある長尺印刷も可能になった。
何よりうれしいのは、耐水紙印刷や長尺ポスター印刷ができる事で「地震などの災害発生時にお客様を安全・迅速に誘導するための掲示版を」という使命感を強く持つ皆川社長にとって、水にぬれず見やすい案内と、誘導のための目立つポスターは必須だった。
地震時のためのポスター。濡れても劣化しないことが条件だった。
シャワールームの中の注意書きも耐水紙のおかげで手軽に貼れるようになった
耐水紙のおかげで、水にぬれても文字がはっきり読める
夢をいつまでも叶えるために「守る健康からつくる健康へ」を支援
総合スポーツクラブ「栃木県健康倶楽部」は、皆川社長の父親が1989年7月にオープンしたものだ。皆川社長には、創業当時からある想いがあった。日本のような公的保険システムがない米国では、病気にかからないようスポーツクラブなどで運動する習慣がある。皆川社長は、スポーツクラブを通じて地域住民の健康づくりに貢献しようと考えたのだ。
1991年には、生活習慣病の予防・改善、高齢者の健康づくりの向上などに寄与するスポーツクラブの普及を進めるための厚生労働省(旧厚生省)の制度「運動型健康運動増進施設」に認定された。医師の指示に従って運動療法を行った場合にかかった利用料金が、医療費控除の対象になる。現在、スポーツクラブの会員構成をみると、60歳以上が3分の2を占める。皆川社長は「高齢化社会で膨張する医療費を引き下げることができる」と期待する。
経営理念は「健康づくりを通して、お客様の夢と生き甲斐づくりに貢献します」。「海外旅行に行きたい」「やせてウェディングドレスを着たい」など、利用者のそれぞれの夢を実現すべく運動の指導をしている。
ICT活用で、外出が不自由な人のための「移動式運動教室」を準備中
皆川社長は、これからもICTの活用方法を深掘りする。生活習慣病予防と健康の保持増進への貢献を目的として、皆川社長自ら設立した一般財団法人日本健康財団(栃木県宇都宮市)に「移動教室用自動車」の導入を計画している。車内には、Wi-Fi、パソコン、人工衛星を使った携帯電話など最新のICT機器を配備するほか、新型コロナウイルスの飛沫感染対策としてアクリル板を設置。自治体が実施する高齢者運動教室や介護予防教室事業を受託し、地域住民の自宅で行う考えだ。皆川社長は「コロナ禍で運動不足になりがちな方々を助けたい」と、自動車の完成を待ち望んでいる。
事業概要
会社名
株式会社ティエフシー(栃木県健康倶楽部)
所在地
栃木県宇都宮市東今泉2丁目3番5号
電話
028-660-2525
設立
1989年3月1日
従業員数
約45人
事業内容
スイミング、フィットネス、インドアテニス、子供向け=スイミングスクール、体操教室、テニス倶楽部、スポーツクラブ型学童保育、フットボール教室
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