成長するトランクルーム業界、経費精算・請求管理をクラウド型システムで自動化へ 株式会社マリンボックス(神奈川県)
2022年08月25日 06:00
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個人や法人向けトランクルームを中心に、貸地やコインパーキングなどの収納サービスを提供しているのが株式会社マリンボックスだ。1992年、不動産業を営んでいた永田延孝代表取締役が副業として創業。当初は家族経営だったが事業は順調に推移し、社員を雇って社名も変更した。
永田社長が営業担当として飛び回っているため、同社は執行役員制を導入して社内業務を任せている。その下で経営企画やシステム設計に携わっているのが入社2年目の長谷川一希氏(27歳)だ。
トランクルーム需要は旺盛で業界もマリンボックスも右肩上がり
同社入り口前で長谷川一希氏
長谷川氏によれば、同社の商材はユニットハウスより耐久性に富む重い鉄骨を使ったコンテナで、主に中古を購入し、扉や鍵、窓など必要な整備を施して貸し出す。0.5畳大のロッカーから15畳ほどのガレージまで様々な広さをそろえ、レンタル料は最低で月1,500円、最大で同13万円。2022年1月現在、全国に350店舗、7,000室を管理運営している。
顧客は資材置き場にしたい法人と、衣類や五月人形など普段使わない品を預ける個人が半々。この頃はリモートワークのスペースを確保したいと不用品を預ける人も目立つ。個人客の年齢は、親の同意を得た18歳から上は90代まで様々だ。最低1カ月からだが、なかには15年以上借りている人もおり、「一度レンタル契約をすると、引っ越しをしない限りはめったに解約されない」という。
トランクルーム需要は旺盛で、数百社で構成される業界はずっと右肩上がり。市場規模は約8,000億円あり、同社も昨期は9億7,000万円の売り上げを計上している。
交通至便な場所にあり、クルマで荷物を運び入れることができる
クラウド型経費精算システムを導入 振込データの自動作成も可能に
業容拡大に伴い扱う物件が増え、同社の経理業務は5~6年前から急激に煩雑さを増していった。永田社長を含む2人の営業担当は外回りの仕事がメインだ。持ち帰ってくる電車代、駐車費用、有料道路の使用料などの領収書を、経理担当者が入力処理していた。
「無駄な作業がなくなった」と笑顔の最高財務責任者
そこで2020年12月に、経費、出張費・旅費、交際費など、お金にかかわる全ての処理をクラウド上で一元管理できる経費精算システムを導入した。交通系ICカード連携によって入力の手間がなくなり、領収書を撮影してシステムに登録することも可能だ。さらに振込データが自動で作成できるようになり、手入力作業が大幅に削減された。最高財務責任者は「経費処理のミスが減り、支払いまでの流れが簡略化できた」と満足気だ。
クラウド型の請求管理システムの履歴で、謎の入金情報も正体判明
続いて2021年1月には、請求書発行後の入金管理、各種書類の電子送付、郵送代行もできるクラウド型の請求管理システムを導入した。
請求額の自動積算もワンクリックで
見積書や請求書情報が関係者全員に共有され、共有のためにプリントアウトする無駄な業務と紙も減った。
導入前はこんなことがあったそうだ。経理担当は営業が請求書を出したことを知らず、ある日、何の売上か不明なお金が自社の銀行口座に入っている。社内の人に「誰か知っている人いますか?」と尋ねても、誰も入金の正体が分からない。営業担当に確認したいが、社内にいなかったり、休みを取って連絡が取れないことがよくあった。
しかし、導入後は入金の名前と金額を請求管理システムで調べればすぐに全容が判明するようになった。社内書類が一元化され、請求から入金、振込に伴う作業も軽減された。長谷川氏は「社内で情報を共有し、いつでも疑問点なくチェックできるようになったのが何よりです」と話す。
次の課題は顧客情報管理システム
経理関係のシステムは効率化できたが、今後の課題は少なくない。
パソコンを駆使して仕事中の同社従業員
まずは商売に直結する顧客情報の管理だ。設立以降、同社を利用した顧客は数万人、物件数も数千単位にのぼる。10年ほど前から顧客情報システムを自前で運用してはいるものの、システム自体が古すぎて、利用履歴は分かるが、個別売上高の算出などに時間がかかり過ぎる。インターネット経由でデータを外部管理するクラウドにして、バージョンアップすれば、もっと効率良く営業ができるだろう。いまは紙で保存している顧客とのレンタル契約書もクラウド化したい。
顧客からの問い合わせ管理も必要だ。ホームページを見て、問い合わせのメールや電話をしてくる客には、一次対応をするもののその後を追えておらず、将来の見込み客を取りこぼしている。問い合わせ情報を管理して、誰から問い合わせがあってその後どうなったのか、フォローできるようにしたい。
ICT活用し、さらなる成長を
トランクルーム業界では古参の同社は、日本で初めてトランクルーム用コンテナの建築確認を取得、業界で初めてホームページから24時間リアルタイムでレンタル受付を始め、クレジットカード決済も導入してきた。
1階の空き部屋が埋まらず困っている賃貸アパートの大家さんにそこをトランクルームにして貸し出すアイデアを提供したり、大きいコンテナをガレージとして貸し出したり、競合他社に先駆け、新しいレンタル形態の提案もしている。
11月決算で同社の今期の売上高は10億円を突破する見通しで、今後も出店を続け、トランクルームを1万室に増やす計画だ。長谷川氏は「これから会社が成長するために、ICTを活用するのは当たり前」と話し、その上で「大事なのは、さまざまなツールが登場する中、自社に必要なものを見極めることではないか」と語った。
事業概要
会社名
株式会社マリンボックス
本社
神奈川県藤沢市湘南台2-18-1 サンウェイ湘南ビル4階
電話
0466-41-2133
設立
1992年9月22日
従業員数
20人
事業内容
個人・法人用倉庫業、屋外・屋内型トランクルーム、バイクボックス、大型ガレージ
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