情報セキュリティ強化のためネット環境を整備 真心×ICTで遺族に寄り添う ダイキ(福井県)
2022年09月01日 06:00
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福井県の葬祭業、ダイキが葬祭施設へのICT導入を進めている。スタンドアローンで運用していたパソコンをネットワークにつなぐことでサイバーセキュリティを強化する一方、斎場施設の利用者のためのネットインフラとしてWi-Fi環境を整えた。真心とICTを組み合わせることで、新しい葬祭事業のありかたを模索している。
家族葬から社葬、大型葬まで幅広く対応
設立以来、50年の歴史を持つ福井県福井市に本社を置くダイキ。坂井市、永平寺町、越前市で9つの斎場施設を運営し、小規模な家族葬から社葬、大型葬まで幅広く対応している。本社近くのふくい翆光苑は、50人、150人、250人を収容する3つの葬儀ホールを備える。
ダイキが事業を展開する福井県の嶺北地域は、隣近所の結びつきが強いしっかりとしたコミュニティが維持されている地域が多く、通夜、葬儀の参列者も多い。昔ながらの葬送儀礼を重視する傾向が強く、線香の火を絶やさず、夜通し、故人と枕を並べて過ごす夜伽を営む遺族も多い。
「ご遺族の心にいかに寄り添うかを大切にしています。葬儀は冠婚葬祭の中で最も大事な儀式です。大切な人を見送った時間をより思い出深いものにしていただくために最善を尽くしたいと思っています」とダイキの宮川英伸社長(TOP画像)は厳かな表情で話した。
使命感とプロ意識で取り組む
葬儀会社は、遺族や病院、介護施設などから連絡を受けて、遺体をお迎えした後、遺族の希望を聞きながら、葬儀をどのように進めるか、供物、通夜食、引き出物をどうするかなどさまざまな段取りを整える。ダイキの社員は、チームプレーで全ての業務を滞りなく進め、間違うことが許されない大きなプレッシャーがかかる葬儀の司会もそつなくこなす。いつ依頼が来るか予測することができないため、24時間対応できるよう夜勤シフト専門の社員を置くなどして体制を整えている。
ふくい翆光苑のホール
「葬儀会社の社員は、参列する皆様に最大限の気を遣いながら的確に対応しなければなりません。祭壇の設営などで体力も求められます。大事な人を亡くした方々の悲しみに直面する精神的なつらさもあります。その中で、使命感とプロ意識を持って日々、仕事に取り組んでくれている社員を誇りに思っています」と宮川社長はしみじみと語った。宮川社長自身も厚生労働省が認定する一級葬祭ディレクターの資格を所有している。体力的、精神的に楽な仕事ではないが、葬儀を無事に終えて故人を見送り、遺族から感謝の言葉をいただいた時、全てが報われたように感じるという。
地元密着で会員組織を運営
ダイキは、入会金1万円で加入できる会員制度、クラブ・デ・コラソンを運営している。一度入会すれば、年会費など不要で、祭壇料、式場利用料、葬儀用小物、サービス料の割引サービスを受けることができる。バス旅行に優待価格で参加できるなどの特典も設けている。「地域の絆が薄まりつつある中で、クラブ・デ・コラソンの活動を通じて仲間づくりをしていただけたらと思っています」(宮川社長)。
セキュリティ対策のためネットワークを使用していなかった
喪主をはじめ、通夜、葬儀に携わる人は年配の人が多く、デジタル機器の扱いに慣れていない人も多いため、あえて、従来の紙文書中心で業務を進めている。通夜、葬儀に携わるさまざまな業者とのやりとりもFAX中心に行っている。現状では、アナログの方が仕事を進めやすいが、それでも業務のデジタル化を意識しなければならないケースは増えているという。そのひとつがコンピューターウイルスなどへのセキュリティ対策だ。
ダイキは本社のパソコンで、これまで施設を利用したことがある世帯のリストを保存している。これまでパソコンは、セキュリティソフトをインストールした上で、他の機器やネットワークと接続しないスタンドアローンで運用していた。
ネットワーク環境を整え、セキュリティを常にアップデート
昨年末にネットワーク環境を整えたダイキのオフィス
ネットワークにつながないことで、顧客情報のセキュリティは保たれると思っていたが、パソコンは施設の利用者に貸し出すこともある。USBメモリの使用などを通じて、更新されていないセキュリティソフトでは対応できない新しいウイルスに感染するリスクを意識するようになったという。施設によって使用しているセキュリティソフトのメーカーやバージョンが異なっていたので、そこが抜け穴になる可能性もあった。
「中小企業を狙ったサイバー攻撃が多様化、巧妙化している現状を考えると、セキュリティソフトをインストールしているだけでは不十分と思うようになりました。セキュリティを万全にするためには、セキュリティソフトを常に最新のものにしなければならないと思い至りました」と宮川社長は振り返った。
常時、ウイルスの情報を追加してセキュリティソフトを最新の状態にするにはスタンドアローンの方針を改めることが必要だった。そこで昨年末、設備投資に踏み切り、すべての施設のネットワーク環境を整えて、常にセキュリティソフトをアップデートできるようにした。バラバラだったセキュリティソフトも統一し、すべての施設のセキュリティレベルを均質化した。
施設の利用者向けサービスとしてWi-Fi環境を整備 参列者が葬儀の様子を近親者へ動画送信
ふくい翆光苑の宿泊施設
各施設のネットワーク環境の整備と合わせて実施したのが、高い通信速度を持つWi-Fiの導入だ。通信料金を気にすることなく、施設内でインターネットを利用してもらえるように、夜伽を営む遺族のための宿泊用の部屋などでWi-Fi環境を整備した。
コロナ禍で大勢の人が集まりにくくなっている状況下、高い通信速度を持つWi-Fiを活用して、通夜や葬儀に参列できなかった人のために動画を送る参列者も多く、スムーズに動画が送れたことで、感謝する声が寄せられているという。
「動画送信でWi-Fiを利用いただくというのは当初、想定していなかったのですが、大いに活用いただけて本当に良かったと思っています。高速大容量のネットワークを整備した甲斐がありました」と宮川社長は話した。
デジタル活用を行うことで利用者へのサービス充実へ
葬儀会社によっては、葬儀の様子をYouTubeでライブ配信するサービスや、お寺の本堂で読経する様子をテレビ会議システムで関係者に配信するサービスを実施しているケースもある。ダイキでも会場に足を運べない人のために、動画配信をサービスとして導入することも検討したいという。
「これからの時代、いつまでもアナログ中心というわけにはいきません。さまざまな分野でデジタル化に対応していかなければならないと考えています」と表情を引き締めて宮川社長は話した。現在はすべて紙の伝票で発注を行っているが、タブレット端末からネットを通じて発注すれば、時間の短縮など利便性の向上につなげることもできる。
「今回のネットワーク環境の整備を通じて、ICTが施設を利用いただく皆様の役に立つことを実感できました。さまざまな業務にかかる時間を短縮することで、お客様により深く寄り添う時間を確保するためにICTをこれからも活用していきたいと考えています」と宮川社長は先を見据える。ダイキが、故人や遺族に提供する真心を込めたサービスは、ICTを通じてさらに進化したものになるはずだ。
ダイキの本社の外観
事業概要
会社名
株式会社ダイキ
本社
福井県福井市問屋町1丁目153番地
電話
0776-23-4200
設立
1972年1月
従業員数
40人
事業内容
葬祭業
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