生産管理システムとCAD-CAM導入で受注件数拡大 ICTで社員満足、顧客満足、地域貢献を実現する スナガワ(香川県)
2022年09月08日 06:00
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大企業の生産工場が集積する香川県東部のさぬき市に本社を置く株式会社スナガワは、熟練の技術者による溶接や組み立てなどの手作業と工作機械をバランスよく組み合わせ、質の高い金属加工品を生み出し続けている。製造業の国内回帰に伴う受注拡大の好機をつかむ上で、生産管理システムやCAD-CAMの導入をはじめとする業務のデジタル化が大きな役割を果たしている。(TOP写真は、生産管理システムを操作する様子)
注文に応じて多彩な金属加工品を製造
さぬき市は北に瀬戸内海、南に讃岐山脈が広がる自然豊かな地域。江戸時代に活躍した発明家、平賀源内の出生地としても知られ、地元では平賀源内の顕彰活動を通じて、創意工夫や技術開発を尊ぶ気風が強い。
スナガワは、経営方針として、社員満足、顧客満足、地域貢献を掲げる。地元の建設機械メーカーや船舶用エンジンメーカーといった発注先の要望に合わせて、大型から小型まで幅広い品種の金属加工製品を製造している。得意先工場の生産ラインの組み換えや補修に合わせて急な対応をしなければならないことも多い。
砂川昌幸社長
「お客様に100%満足いただけるように、迅速な作業、高品質、高精度な製品づくりを常に進化させていくことを心掛けています。時代のニーズに応えていくため、これまでに確立した技術を大事にする一方で、ICTをはじめとする新しい技術も積極的に導入していきたいと考えています」。金属音が響く活気あふれる生産工場で砂川昌幸社長は、ものづくりに込めた思いを語った。
ものづくりのデジタル化を進める
コロナ禍以降、海外からの部品調達が難しくなり、日本企業の間で、世界規模で広げたサプライチェーンを見直して国内からの部品調達を重視する動きが広がる中、受注件数は順調に拡大している。生産管理、設計、製造のデジタル化を進めていることが、拡大する受注に迅速に対応する上で大きな効果を発揮している。
スナガワの生産現場の様子
スナガワは4年前、製造業向けの生産管理システム、CADとCAMの機能を併せ持ったソフトウェア、文書管理システムを導入した。この生産管理システムとCAD-CAMをNC工作機械に連動させることで、迅速かつ正確なものづくりを実現している。
生産管理システムで工程を見える化
生産管理システムは、設計、手配、加工、組み立てといった各工程の状況を一元管理するとともに可視化する機能を備えている。「生産管理システムによって、生産現場の各工程の進捗状況を事務所のパソコンからリアルタイムで把握できるので、お客様からの急な注文があっても、お待たせすることなく受注の可否や納期についてしっかりとした回答を行うことができます。工程管理者が、状況を把握するためにわざわざ工場に出向くといった手間も必要ありません。現場の経験や勘はもちろん大事にしていますが、人間の能力に依存するほどミスが発生する確率は高くなります。システムのおかげで、常に根拠を持って判断することができます」と砂川社長は生産管理システムの効果について説明した。
生産管理を担うスナガワ本社のオフィス
生産現場への手配を迅速に行ってリードタイムを短縮
注文を受けてから出荷するまでのリードタイムを短縮するには、生産現場への手配をいかに迅速に行うかが鍵を握る。工程管理、図面、穴あき、切断といった様々な工程の指示書が手書きだった時代は、生産現場に指示を出すまで1日以上かかっていた。それが業務をデジタル化することによって短時間で終わるようになり、生産性は飛躍的に向上した。大量生産品用のリピート部品は、生産管理システムに番号を付けて登録しているので、注文がある度に番号を入力するだけで、生産指示ができる。
CAMによってNC工作機械へのデータ移行がスムーズに
CAMはNCデータ(NC工作機械用の加工プログラム)の作成に使用している。CADなどで作成した設計図面を基に加工プログラムを作成して工作機械に移すことで、工作機械を動かすことができる。現在、使用しているソフトウェアはCADとCAMの機能を組み込んでいるので、図面作成からNCデータへの変換を一連の流れで行うことが可能になった。
約20年前から無料のCADを使用していたが、NCデータを作成する機能がないため、非常に使い勝手が悪かったという。もともと連動していないソフトウェアを使ってNCデータを作成するには高度な専門知識が必要なことから、データ作成の仕事が特定の社員に集中してしまうのも課題だった。今はCADで作成した図面をCAMでデータ化して工作機械に送信すれば済むようになった。
デジタル化推進で月当たり1週間程度の時間を生み出した
デジタル化推進によって、社員が手間のかかる作業から解放され、月当たり1週間ほどの時間を新たに生み出すことができるようになったという。従来以上に迅速な対応が可能になったことで取引先からの評価も高まった。デジタル化に力を入れている取引先は、発注や図面の提供をデジタルで対応してくれるので、ますます業務が効率化する好循環が生まれている。業務効率化によって、無理をすることなく受注件数を増やすことができるようになったので、売上高は導入前と比較すると30%程度増加しているという。
スナガワが製造する金属製品
「生産の効率化によって納期までに時間的余裕があることで、設計部門と生産部門の打ち合わせや取引先とのコミュニケーションをじっくり取ることができるようになりました。製品の品質向上が、取引先の信頼の獲得につながり、更なる発注につながっています」と砂川社長は満足そうに話した。
ケージボールの普及を通じて地域に貢献
スナガワは地域貢献の一環として、スポーツを通じた地域活性化を図ろうと、サッカーから派生したドイツ発祥のケージボールの普及に取り組んでいる。ケージボールは、サッカーやフットサルと異なり、組み立て式の簡易なケージ(かご)の中でプレーするのが特徴。全長9メートルのフィールドで、2対2、もしくは3対3の少人数で行う。短い時間でケージの中で、子どもたちも安心して遊べることから人気が高まりつつある。
スナガワが普及を推進しているケージボール
スナガワは持ち前の金属加工の技術を生かして、専門家と連携し、持ち運びや組み立てがしやすい新しいケージの試作に取り組んでいる。地元で自治体と連携してケージボールのイベントを企画するなど、実際に使用しながら改良して、多くの人にケージを使ってもらえるようにしたいという。
スナガワの本社の外観
「スポーツを通じて地域に明るい話題を提供できたらと思って取り組んでいます。若手の採用にも力を入れ、日ごろお世話になっている地域と共に会社を成長させていきたい」と笑顔で話す砂川社長。本業だけでなく地域のことにも目を向け、何事にも前向きに取り組む姿勢が、好循環を生み出す原動力になっていることを強く感じた。
事業概要
会社名
株式会社スナガワ
本社
香川県さぬき市鴨庄4374番地78
電話
087-894-2814
設立
1986年2月
従業員数
23人
事業内容
鉄骨建築設計・施工、製缶、プラント、部品加工
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