建設業(土木)

社内で開発できる業務共有システム導入で時間の削減と社内コミュニケーションが活発に!石川緑樹(新潟県)

From: 中小企業応援サイト

2022年09月07日 06:00

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主力は公共の造園工事、植栽工事に強み

新潟県内で造園緑化を手掛ける石川緑樹株式会社は、1958年に石川市蔵氏が苗木を売り買いする植木屋を始めたのが発端だ。1974年に有限会社石川緑樹販売を設立、バブル時代にゴルフ場建設などのニーズが出て、公共事業の造園工事も手掛けるようになり、2003年に株式会社化した。現在は国、県、市など公共の造園工事、民間の庭園管理、樹木の生産販売を行っている。

排水路を改良して遊歩道にした公共工事

排水路を改良して遊歩道にした公共工事

2021年10月に三度目の社長交代を行い、樋浦明夫氏が会長に、佐藤嘉行氏が3代目社長に就いた。年商約3億円。売り上げの約95%が入札を勝ち取った公共関係の元請けで、樹木販売からスタートしたため植栽工事に強みを持つ。21人の従業員は人材豊富で、土木施工管理技士や樹木医などの資格を持ち、樹木の剪定から公共工事の現場代理人までこなす。

ホームページのリニューアルで新規個人客を獲得

7~8年前には「目立たなくて見栄えがしない」と、ホームページも一新した。以前は電話帳を見て仕事を依頼してくるお客様だけだったが、いまはホームページを見たという若い人が自宅の庭木を剪定してくれと言ってくる。そういう新規の個人客が月平均5件にのぼるからリニューアル効果は大きい。

複合機で紙文書を電子化し、サーバーの用途別フォルダで現場の人たちが積極的に活用

複合機を操作する滝沢幸雄専務

複合機を操作する滝沢幸雄専務

同社のICT化の司令塔は大学で造園学を修め、2002年に入社した滝沢幸雄専務取締役(44歳)だ。ICT機器とのつきあいは15年くらい前から。数台しか導入されていなかったパソコンを最新機器に入れ替えて全従業員に支給し、その後も複合機、サーバーと年々、装備を拡充していった。

同社の複合機はいま4代目。わかりやすいファイル名と用途に合わせた形式で紙文書をスキャンして電子文書に変換し、指定のフォルダに保存・管理・再利用できる機能が付いている。滝沢専務は「スキャンした図面が現場の個々人にそのまま届く」と満足気だ。

業務共有システムの導入条件は「今までの紙の業務と違和感のないシステムであること」

システム導入の経緯を語る滝沢専務

システム導入の経緯を語る滝沢専務

滝沢専務が近年、課題にしていたのは社内情報の共有だった。工事の日程表などは本社の壁に掲げたホワイトボードに記入していたが、これだと現場に出ている人は見ることができない。受注状況を確認し、工事予定や人員配置を共有し、有給休暇など各種申請も周知したい。「会社に戻らないとわからない」「一部の従業員しか確認できない」事態をなくしていきたいと考えた。本社には利害関係の異なる来訪者も多く、「ホワイトボードに現場名を書きたくない」という思いもあった。

業務共有システムの選定にあたり滝沢専務が留意したのは「紙ベースの旧システムをデータ化によるペーパーレスと置き換えても、従業員が適応できる柔軟性の高いシステム」だった。パッケージシステムをいくつか検討してみたが「お仕着せのパッケージだと合わないんですよ。スケジュール管理などがうちのやり方にそぐわなかった」と振り返る。

同社従業員の平均年齢は47歳。世代的な問題もあり、なじみのないシステムを全員に「使えるようになってください」というのは難しい。今まで紙に書いていた内容を「今度からこうやって入れるのですよ」という方が理解してもらえる。パッケージシステムに合わせるのではなく、自社のやり方に合ったシステムを作って活用したい。滝沢専務はその思いをシステム支援会社に相談、展示会に足を運んで実際に機器やシステムを見て回った。

お眼鏡にかなったのはカスタマイズが簡単にできるシステムだった。2020年12月に導入。今では、全員のスマートフォンとパソコンに入っている。

半端なく無駄を削減、従業員の意識も変化。積極的に簡単なシステムを開発するようになった

自身で作成した追加システムを披露する従業員

自身で作成した追加システムを披露する従業員

システム導入によって「半端なく無駄が減った」と滝沢専務。現場は本社から離れた場所にあり、会社との往復だけで半日かかっていたケースもあった。いちいち会社へ戻って来なくても「フォルダに入れたから見てくれ」と電話1本で対応できる。人員配置もリアルタイムで全体が把握できる。

社内でやっていた紙の作業は、ほとんど移すことができた。受注から工事完了、入金確認までのスケジュール管理はもちろん、発注側の指定に沿った書式で入札書類を作るときにも役立つ。有給申請、勤怠管理もできる。滝沢専務は「従業員の勤務実態を労働基準局に聞かれたときも、このシステムを見せたらOKでした」と笑顔をみせる。

紙代は確実に減った。扱い物件が増えているにもかかわらず紙代全体は導入前の97%で、3%減。従業員の意識も変わりつつある。簡単にシステムを追加できるので「こんなシステムは作れないか?」という声に応えて有志がともに作成するなど、社内コミュニケーションの円滑化にも一役買っているようだ。滝沢専務は「まだ現在進行形。今後もこのシステムの活用を増やしていけば経費節減につながる」とみている。

今後は民間の比率上げ、経営のバランスをめざす

新潟市の施設内で日本庭園の整備も担当した

新潟市の施設内で日本庭園の整備も担当した

ICT導入効果を実感している滝沢専務だが、「あまりにも公共に浸り過ぎているので、ちょっとずつ民間にシフトしていきたい」と今後は民間の売上比率を上げたいと考えている。ここ数年、酷暑や大雨がニュースになり、冬は雪も積もる新潟県内。洪水の危険が迫れば、氾濫しそうな川の横に設置した公園の遊具撤去が必要だし、除雪も夜中のうちにしなければならない。社会的使命を感じながらも、年度末は「地獄の3月」と言われるほど忙しいが、余裕がある月もある。経営のバランスを取るためにも民間の売上は必要と感じている。

ICTと民間の仕事への移行によって付加価値を高め高収益体質を目指す

来年2023年は会社設立から50周年。100年続く会社へ、ちょうど折り返し地点だ。3年計画でより一層のICT化をすすめ、民間の仕事の下地をつくり、10年後くらいに民間の売上比率を3割確保したい。付加価値型に体質変換することで売上目標を減らし、利益を増やす。5年後は売上を2億6,000万円に抑え、その3%の利益をキープし、社員の給料を上げたい。ICT関係の技術力のほかに人の手による造園技能も高めていかねばならない。女性従業員は4人と増えつつあり、これまで男性目線だった業務のやり方を女性目線でも考えていきたい。

顧客との効果的なコミュニケーションのために3D-CADを導入

豊富な人材をもっと活かすのも目標だ

豊富な人材をもっと活かすのも目標だ

民間への営業強化のため、2021年には図面データを3次元で表現できる3D-CADを導入した。建築物の図面はすでに3Dが主流になっており、同社が提案する外構の図面もこれに対応できるようにするためだ。初期投資100万円、ライセンス管理も含め年間40~50万円ほどかかるが、前向き投資をしないと取り残されてしまう。時代に合った造園業を行っていきたいと考えている同社にとって、ICT活用は今後も必要不可欠のようだ。

全体最適化のために、システム会社との密な連携はこれからも続ける

ICT活用にあたり、滝沢専務は最後に「導入機器を複数の会社に頼むと、接続不良などのトラブルが発生したとき、どこに問い合わせていいかわからない。窓口を1本にした方が素早く対応してもらえるし、アフターサービスも充実する」と説いた。「一つひとつではなく、全体が連携している方が活用の幅も広がる。それが可能なシステム作りを考えることが大事」と考えている。

事業概要

会社名

石川緑樹株式会社

本社

新潟市西区小新1305

電話

025-267-5588

設立

1974年8月

従業員数

21人

事業内容

公共緑化工事、庭園の設計・施工・管理 公共及び民間緑地の維持管理業務、 緑化木の生産・販売 造園資材卸販売



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