運送会社から始まりメール事業、バリアブル印刷で多角化を目指す 太閤通商(兵庫県)
2022年10月12日 06:00
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兵庫県西宮市でメール事業に力を入れている株式会社太閤通商は、2021年に新型のオンデマンド印刷機とバリアブル(可変)印刷用のソフトウェアを相次いで導入した。攻めと守りのICT導入が、メール事業を拡大する基盤となっている。
酒所・神戸で清酒の運送会社として創業し、メール事業に参入
太閤通商は、酒所として知られる兵庫県神戸市や西宮市の酒造メーカーの運送を得意とする企業として1974年に創業した。1980年代以降、運送対象を清酒からエアコン機器、金属素材、鋼材、食品原材料へと拡大。1995年に運送会社としての経営資源を活かして新しい事業分野を開拓しようとメール事業に参入した。全くのゼロからのスタートであったが、地道にコツコツと実績を積み重ね、継続取引が出来るお客様は100社を超えるまで成長した。
年間約1,000万通の発送物の取扱い
メール事業は、当初、担当者3人でスタート。受託したダイレクトメールなどを担当者が手分けして配って回ったという。その後、契約世帯に番組表を毎月お届けする必要があるケーブルテレビ会社や、同窓生に定期的に冊子を送る学校法人など地元の取引先が広がり、事業は順調に成長していった。現在は、事務・作業スタッフ約40人、配達登録スタッフ約400人が従事し、本社のある西宮市などの阪神地域に限らず、全国への発送対応を行っており年間約1,000万通を取り扱っている。
櫻井豊史取締役
「お客様に真に必要とされなければ存在意義はない」
「当社の強みと言えるのが、30年近い歴史の中で積み重ねてきた対応力です。発送するダイレクトメールや冊子、定期刊行物の企画、制作、印刷、発送までワンストップで対応することも出来ますし、部分的にアウトソーシング頂くことも可能です。『お客様に真に必要とされなければ存在意義はない』との思いからお客様や社会から本当に必要とされ、お役に立つことを大事にしています」とメール事業を統括する櫻井豊史取締役は話した。
お客様のコスト削減につながる発送方法や様々な郵便割引制度の活用などのアドバイスをはじめ、宛名作成、折り加工、封入、梱包といった発送関連業務まで幅広く請け負っている。印刷物や封筒などの発送資材を保管できる自社倉庫を所有していることも、提供できるサービスの範囲を広くしている。
高速印刷が可能なオンデマンド印刷機をはじめ、ラベル貼りや封入用機器の導入など設備投資を積極的に進めてきた。印刷機などの選定にあたっては、仕上がった印刷物の品質はもちろんのこと、メーカーのアフターフォローや機能拡張性を重視しているという。
「お客様に『太閤なら安心して任せられる』と実感していただくことを大事にしています。お客様に継続して選んでいただくためには、お客様や社会のニーズに応え続けることがなにより重要です」と櫻井取締役。顧客のニーズに応えるために迅速で確実な発送を実現するにはどうすればいいか。顧客ニーズを実現するための設備を積極的に導入し、社内体制を構築している。この取り組みを継続することでお客様への対応力を高めていったという。
ハード、ソフトの両面で印刷機能を強化
太閤通商は、2021年3月にメール事業のための倉庫の改築工事を完了。今後もメール事業を強化していく方針だ。
次の一手を考える中で、太閤通商が重視しているのが、得意とするバリアブル印刷の強化と更なる業務の多様化、付加価値の追求だ。2021年2月に最新のオンデマンド印刷機を導入したが、ハード面の強化だけでは限界がある。ソフト面からも強化を図ろうと同年9月に、最新のバリアブル印刷用ソフトウェアを導入した。
太閤通商が導入したオンデマンド印刷機
多様なバリアブル印刷へのニーズに対応
バリアブル印刷は印刷用のデータベースを基に、名前や住所など一部分のデータを差し替えることで、一つひとつ異なった内容を印刷できる。ソフトウェアを使うことで変更したい箇所ごとに別の版を作成する必要がないので、効率よく印刷できる。画像もバリアブル情報として扱うことが可能。ダイレクトメールや封書の宛名、名刺、チケット、発送状、招待状、請求書など様々な印刷物に活用できる。
「共通のレイアウトと可変データをパソコンで簡単に組み合わせることができるので、可変印刷物の制作が本当に楽になりました。作業がしやすいので、導入前に使っていたデータベースの作成・管理システムでは1,2日かかっていた作業も半日程度で済ませることができるようになりました」とメール事業部の池田善光営業部長は説明した。
また、バーコードリーダー、セキュリティカメラシステムといったICTを導入することで、手作業の過程で生じる可能性があるミスを事前に防ぐ体制の構築にも力を入れている。ミスを防ぐことが情報漏洩をゼロにすることにつながり、顧客からの信頼獲得にもつながっている。
バーコードリーダーでの検品により作業の正確性を確保
給与計算の自動化で2日かかっていた作業を2時間に短縮。
バックオフィスの分野でもICTの導入を進めている。
2020年1月に新しい勤怠管理システムと給与計算システムを導入し、従業員が出退勤時にICカードをカードリーダーにかざすだけで勤務時間を自動集計し、給与計算システムと連動することで、毎月の給与を自動計算できるようにしている。
勤怠管理用のカードリーダー
導入前は、紙製のタイムカードで出勤時間、退勤時間を記録し、毎月、管理者がタイムカードを回収した上でエクセルファイルに転記し、勤務時間数の集計を行っていた。給与計算、給与明細の発行作業も含めると担当者2人が毎月2日程度時間を取られていたが、新しいシステム導入後はチェックに専念するだけで済むようになり、2時間程度で一連の作業を終えることができるようになった。
以前は、給与や手当の変更を行うたびにエクセルの計算式などを設定し直す必要があった。経験と知識が求められるため、仕事が属人化してしまうという課題があったが、システムのおかげで簡単な設定変更で済ませることが可能になった。
プレッシャーからの解放。ESの向上も。
「給与に関する業務は、間違いが許されないというプレッシャーが大きいので、担当者にも精神的な負担がかかっていました。念には念を入れますので、どうしても時間を取られてしまいます。システムを導入することで業務の効率化はもちろん、そういった負担から担当者を解放することにもつながったので本当に良かったと思っています」と櫻井取締役は満足そうに話した。
情報の共有化で新しいアイデアが生まれる環境を醸成
今後考えているのは、正社員とパートを含めた会社全体での情報の共有化だ。会社の方針や取り組みをリアルタイムで全員に認識してもらい、会社全体のコミュニケーションを活性化することで、新しいアイデアが生まれやすい環境を醸成していきたいという。
つかいやすく整理整頓された倉庫で効率的に作業できる
「顧客ニーズに応えられる仕事の範囲が広がっているのは本当にありがたいですね。ICTを活用することで手間を削減し、お客様への提案力の強化につながる企画やアイデアづくりといった創造的な仕事にあてる時間を増やしていきたいと考えています。高品質で誠実な仕事を通じて、世の中のニーズに応えることができるように動きを止めることなく進化していきたい」と櫻井取締役は抱負を話した。太閤通商はこれからも世の中のニーズに誠実に応え、お客様から必要とされる企業で有り続けるに違いない。
メール事業部(左)と運輸事業部(右)の外観
運輸事業部トラック
事業概要
会社名
株式会社太閤通商
本社
兵庫県西宮市西宮浜3丁目34
電話
0798-36-8031
メール事業部
兵庫県西宮市西宮浜2丁目18-3
電話
0798-34-9331
設立
1974年9月
従業員数
60人(パート含む)
事業内容
運輸事業、メール事業、各種保管事業
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