Wi-Fiで施設内のどこでも事務作業が可能に。業務効率化を進めて利用者との触れ合いの時間を増やす 佐用福祉会(兵庫県)
2022年10月13日 06:00
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社会福祉法人佐用福祉会は、兵庫県南西部の佐用町で、地域の障害者福祉の拠点として幅広い活動を展開している。障害者支援施設「いちょう園」では施設全体にWi-Fi(無線通信)を完備して、どこでも事務作業ができる環境を構築。業務効率化によって生まれた時間を利用者への支援サービスの向上につなげている。
障害者支援施設をはじめ4つの施設を運営
1982年に設立された佐用福祉会は、佐用川と並行して走る国道179号線沿いに立地する障害者支援施設「いちょう園」を中心に、地域の要望に応える形でサービスを拡大してきた。現在は、相談支援事業所「すまいる」、地域活動支援センター「あさぎり」、グループホーム「たんぽぽ」を合わせた計4つの事業所を運営している。
70人の利用者の様々な活動を51人のスタッフがサポート
「いちょう園」では、寮で生活する50人とグループホームなどから施設に通う20人の利用者が、環境用品メーカーに納品するモップづくりや近くの店舗で販売するたい焼きづくり、運動、創作、レクリエーションなど様々な活動に取り組んでいる。2020年4月からは障害者が、就労活動を通じて自身のスキルアップと社会参加を実現する就労継続支援B型事業を開始し、佐用町の庁舎や町内の特別養護老人ホームなどの清掃を請け負っている。
利用者が手作りした「たい焼き」
思いやりと感謝の心でサポート
各事業所の利用者の日々の生活を支えているのが、20代から70代の51人のスタッフたちだ。毎日、利用者と触れ合いながら様々な活動をサポートしている。「利用者の皆さんがのびのびと生活できるように、思いやりと感謝の心でサービスを提供することを大事にしています。利用者の皆さんと地域の方々が交流しやすい開かれた施設でありたいと思っています」。佐用福祉会の業務執行理事を務める「いちょう園」の寺田淳一施設長は、穏やかな口調で話した。
「いちょう園」の寺田淳一施設長
思いやりのサポートのために、30年前からICTを積極導入
佐用福祉会は「いちょう園」で約30年前に財務管理システムを導入したことをはじめ、20年前にLAN(ローカルエリアネットワーク)を構築し、障害者支援用の記録システムを導入するなどICTの設備投資に前向きに取り組んできた。社会福祉法人で働くスタッフにとって負担が大きい利用者の日々の活動や支援内容の記録、行政機関への申請書類の作成といった事務作業の手間をできる限り削減し、その結果生まれた時間を利用者とのコミュニケーションにあててもらいたいという思いがあったからだ。「一人ひとりの可能性に着目し、思いやりの心を持って寄り添い、その人らしい暮らしをいかにサポートするかということに意識を向けてほしいと思っています」と寺田施設長。
「いちょう園」の事務所の様子
障害者支援用の記録システムのおかげでシフト交代もスムーズ
障害者支援用の記録システムは、利用者の活動内容やスタッフが支援した内容などを、手間をかけずに記録できるので重宝しているという。「複写も簡単にできるので日誌など他の文書の作成にも時間がかかりません。手書きだと一人当たり1時間以上の作業になりますが、システムを使うと十数分程度で完了できます。システムのおかげでスタッフがシフト交代する際の引継ぎもスムーズに行うことができます」と佐用福祉会の寺田剛士事務長は説明した。個別の支援計画の策定や報酬を受けるために必要な国保連合会などへの請求書類の作成もデータが連動しているので時間をかけずに行うことが可能だ。
佐用福祉会の寺田剛士事務長
デジタルで保存されるので、利用者の過去の症例や対応記録をすぐに取り出し適切な対応が可能
スタッフにとって過去の記録がデジタルで保存されていることも非常にありがたいという。「利用者の皆さんの過去の症例やどのような対応を行ったかということも記録として残しているので、体調を崩す方が出た時も検索機能で調べてすぐに適切な対応を行うことができます。利用者の皆さんの役に立つことなので記録はできる限り詳細に残すようにしています」と「いちょう園」企画推進室の腰前彰徳主任は話した。
2017年からは勤怠管理のシステムも導入し、スタッフが出勤時と退勤時にICカードをカードリーダーにかざすだけで、自動的に勤務時間を集計できるようにしている。
「いちょう園」全体でWi-Fiを導入 どこでも事務作業が可能に
2021年3月には、約2700平方メートルの「いちょう園」の敷地全体をカバーするWi-Fiの工事が完了し、スタッフは施設内のどの場所でも支給されているノートパソコンを使って、支援内容の記録の作成や過去の資料の閲覧、Web研修の受講ができるようになった。
「いちょう園」の施設内のどこでもWi-Fiが可能
スタッフは担当以外の業務の応援に回ることも多く、利用者の予定に合わせて日々、4つの事業所を行き来している。施設の規模や事業内容の拡大に伴いスタッフが勤務時間中に移動する距離も増えていた。それだけにノートパソコンを使えば「いちょう園」のどの場所でも事務作業ができる環境は、業務の効率化に大きな効果をもたらしてくれているという。
「利用者の皆さんのサポートをしながら、現場でも事務作業をすることができるようになったのは本当にありがたいですね。以前は、パソコンからデータを保存しているサーバーにアクセスする場合、LANに接続できる場所が限られていたため、その場所まで移動しなければなりませんでした。また、他の人がLANに接続している場合は作業が終わるまで待つか、譲ってもらわなければなりませんでしたが、Wi-Fiが完備されたことで、そういった悩みから解放されました」と腰前主任はうれしそうに話した。
「いちょう園」企画推進室の腰前彰徳主任
入寮している利用者と保護者のオンライン面会もしやすくなった
腰前主任自身、グループホームに入居している人のサポートに加え、採用や広報の仕事も担当しているので、その効果を実感している。スタッフは以前、サポートの仕事を終えた後にまとめて事務作業をしていたが、現在は少し空いた時間を有効活用してその都度事務作業をこなせるようになったので、残業時間の削減にもつながっている。寮に入所している利用者とご家族とのパソコンを使ったオンライン面会も行いやすくなったという。
利用者の皆さんがスタッフと一緒に楽しく過ごしている日常の様子を発信するためホームページを刷新
佐用福祉会は、施設の活動内容を多くの人に知ってもらおうと情報発信に力を入れている。今年4月に外部デザイナーの協力を受けてホームページをリニューアルした。イラストを豊富に使って親しみやすいデザインにし、人材募集のページも設けている。YouTube用に動画コンテンツも作成し、SNSでの情報発信も行っている。
佐用福祉会のホームページ
「人と触れ合う仕事なので、日々新たな気持ちで仕事に取り組むことができるのが社会福祉法人で働く醍醐味です。利用者の皆さんがスタッフと一緒に楽しく過ごしている日常の様子を発信することが、多くの方との交流の輪を広げるきっかけになればと思っています。自然豊かな佐用町についても関心を持っていただければうれしいですね」と腰前主任。社会福祉の現場の様子を肩の力を抜いて発信していきたいという。
「障害者を支えることができる新しい技術への情報収集を積極的に行っていきたい。障害者にとってより温かく、スタッフにとってより働きやすい環境を作るためにICTをこれからも活用していきたい」と寺田施設長は明るい表情で話した。
佐用福祉会は設立当初から地元の自治体との連携を積極的に進めてきた。利用者と働く人の視点でICTの導入を進めてきた佐用福祉会の取り組みが、今後、地域のDX(デジタルトランスフォーメーション)を牽引していく大きな可能性を感じた。
社会福祉法人佐用福祉会の外観
事業概要
法人名
社会福祉法人佐用福祉会
本社
兵庫県佐用郡佐用町佐用1506
電話
0790-82-0003
設立
1982年4月
従業員数
51人
事業内容
生活介護、施設入所支援、就労継続支援B型、短期入所、日中一時支援、グループホーム、障害者相談支援事業、地域活動支援センター
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