人と情報をつなぐ〝ライン〟をデジタル化し、医療や健康へ貢献をめざす メディカ・ライン(東京都)
2022年10月14日 06:00
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大型医療機器導入コンサルテーションやクリニックの開業支援などを手掛ける株式会社メディカ・ライン(東京都文京区)は、「人をつなぐ。医療をつなぐ。未来をつなぐ。」を経営理念に医療業界に新風を巻き起こしてきた。社名には人と情報を〝ライン〟でつなぎ、医療業界に貢献するという意味合いが込められている。今、その〝ライン〟をICT化することで、営業スタッフの経験知を共有化するなど、より高速で正確な人と情報のネットワークを構築し、さらなる成長を遂げようとしている。
医療機器業界の商慣習に疑念、病院経営の立場に立った医療機器販売会社を立ち上げる
「医療機器の価格は、同じ機械を買うのに、ある病院は2億5000万円なのに別の病院は1億5000万円と、病院によって1億円も差があるということがありました」。株式会社メディカ・ライン代表取締役社長の佐藤望氏は1994年の創業当時をこう振り返る。
佐藤社長は医療機器の販売に携わり、コンピューター断層撮影装置(CT)、磁気共鳴画像装置(MRI)といった高度先進医療機器のセールスエンジニアとして、これら機器や技術に関する知識を磨き、医療業界の人脈を広げる一方で、業界の商慣習に疑念を抱くようになった。
不屈の精神で前進する佐藤望社長
大型医療機器の購入価格が病院によって大幅に変わるのは、病院側が経営に疎いためだ。「昔は、病院には『経営する』、『利益を出す』という考えがなく、赤字でもやむを得ない、という考えがまかり通っていて、機械を使う人(医師)がどの機械を買うかを決めて、病院の経営側(事務部門)はハンコを押すだけだった。株式会社だったらありえないことです」(佐藤社長)。
「これを変えていかなければいけない」。それぞれの病院に合った大型医療機器を適正価格で病院に導入してもらうためには複数のメーカーの製品の機能と価格を比較検討する必要がある。メーカーの代理店ではできない。最適な機械を適正価格で提供するためにメーカーと交渉する会社が必要と佐藤社長は考え、49歳で会社を興した。
大型医療機器の修理・保守、人材紹介もスタート
メーカーの代理店販売が当たり前だった大型医療機器業界の商慣習に風穴を開けたメディカ・ラインに対する風当たりは強烈だった。だが、これまで数多くの医師と培った信頼関係と学生時代に空手部の極限に近い厳しい修練に耐えて鍛えた不撓不屈(ふとうふくつ)の精神をベースに事業を軌道に乗せた。医療機関への導入実績を重ねるにつれ、メーカー側も協力的になり、現在はメーカーも医療機関の立場で商談を進めるメディカ・ラインの立場を理解しているという。
同時に、大型医療機器の修理・保守事業へと事業範囲を拡大してきた。技術者の養成や、もし何かあれば即駆け付ける体制等、並大抵の努力ではないはずだがこの事業も軌道に乗せた。さらに、人材不足に悩む病院やクリニック向けの人材紹介も積極的に行っている。
事業の中核となる大型医療機器
長年お世話になった医師の開業を経営アドバイス含め支援
メディカ・ラインは病院勤務の医師が病院を辞め、クリニックを開業する際の開業支援事業にも早くから取り組んできた。開業準備の時間もノウハウもない医師に代わり、開業候補地の選定から、クリニックの設計、建設、各種許認可申請、医療機器・器具から什器などの選定・導入まで、一切を引き受ける。他社と違うのは、クリニックの継続した経営という視点からのアドバイス。時には独立する医師に対して耳の痛くなるような話もあっただろう。頼りになる会社として既に100件以上の支援実績がある。
人の命の大切さ。医療機関への支援事業に併せて予防医学事業を開始
メディカ・ラインの成長の過程を見るとはっきりと1本の線(ライン)がつながっている。それは、人の命の大切さ。そのことに一番深く携わっている医師が、患者の命を救う活動に専念できるため、周辺の様々なことを代行することでビジネスが拡大していった。
そして人の命を救う医療の現場に密着していたからこそ健康の重要性を痛いほど感じ、脳梗塞やがんなど成人病と言われる生活習慣病を予防するための活動を立ち上げることになった。
「東京メディカ・クラブ」というサロンを作り、医師と患者という立場でなく、医師と一般の人という立場で情報交換を行う場を提供している。「医師からの一方通行の情報だけでは、健康にはなれません。対等な立場で話し合うことで、患者は自分の体のことを理解できるようになるのです」と佐藤社長は語った。
人や自然とのつながりの大切さという点では、佐藤社長が生まれ育った瀬戸内海に浮かぶ離島、百島(広島県尾道市)での宿泊施設の経営も手掛けている。10年ほど前に日本の学会に訪れた海外の著名医師たちを案内した際、「一般の観光地ではなく、こういうところに来たかった」と大いに感激されたことから、地域創生策を練り、2020年に「ヒトツル」という宿泊施設をオープンした。
佐藤社長の両親が経営していた百島で唯一の商店の屋号と、母親の名前にちなんで命名。凛として立つツルのロゴマークがモダンだ。ただ立ち寄って景色を見るだけでなく、ゆったりと宿泊することで百島の人とつながり、自然とのつながりを感じることで心が豊かになりストレスフリーになる。生活習慣病予防にはストレスフリーは大きな効果がある。
写真・ヒトツル「百島の宿泊施設「ヒトツル」の看板
そのほかにも、今注目されている歯周病の予防にも力を入れている。歯周病については、国民皆歯科健診の導入が政府で検討されている。歯周病が誤嚥性肺炎、動脈硬化、心臓病、脳卒中、糖尿病など他の病気と関係があることがわかってきたという。メディカ・ラインでは既に東京女子医科大学の教授と共同で歯周病を防ぐ歯磨き粉の特許を取って販売を行っている。
ICTで次のステージへ。まず営業スタッフの経験知共有により、医療機関へのサポート強化を目指す
メディカ・ラインが今、最も力を入れているのが社員の仕事や作業環境のデジタル化だ。「仕事の効率化を図るためには、デジタルとかAI(人工知能)を活用して人がやる仕事を標準化することです。これはもう避けては通れません」と佐藤社長。例えば、ベテラン営業スタッフが長い年月をかけて蓄積したA医療機関に関する過去の提案をデジタル化して社内で共有できれば、別の社員でもA医療機関に過去にどのような提案活動を行って結果どうだったかという情報を持って訪問できる。営業スタッフが変わっても提案にダブりやモレをなくすことが出来る。また、情報の蓄積を通じて時代と共に変わる医師のニーズを把握し、的確な提案活動を行うことも可能になる。
最新の複合機とクラウドによってペーパーレス化を推進
2021年10月には最新型の複合機を導入。複合機を中核に据えたクラウド型文書管理システムを構築し、机の上に積み上げていた書類を一掃した。全てデジタル化することで、紙ではできなかった、欲しい情報を即取り出せるようにした。
複合機を中核にクラウド型文書管理システムを構築
書類が机の上にない。退社時は机上に私物を残さず、右側のロッカーに収納
オリジナルのPR資材を製作するためのプロダクションプリンター
プロダクションプリンターにより、チラシやTシャツなどの内製化を実現した。「人は感動しないと動かない」が口癖の佐藤社長は学会でのプレゼンをはじめ、子会社の事業も含めて、さまざまな機会に印象的でオリジナルな印刷物をPR資材として活用する考えだ。導入して間もないため、「まだ10%も使いこなしていませんが、早くフル稼働するようにしたい」と語る。
プロダクションプリンターを導入し、プレゼンの多様性の展開へ
社内のレイアウトを一新「フリーアドレス」により社員が活性化
フリーアドレスの職場。左手にハドルスペースが見える。左の奥に見える電子黒板で研修や打ち合わせを行う
一方、今年2月には東京本社のオフィスを一新。フリーアドレスを導入するとともに、ハドルスペースを設けた。ハドルスペースとはアメリカンフットボールの選手が試合中に短時間集まって作戦を練るように、ちょっとしたミーティングを行う空間のことで、同社では60インチモニターを設置し、ZoomやMicrosoft Teamsを使ったテレビ会議もできるようにした。
フリーアドレスでは、固定席を使う経理部門を除き、20人ほどの社員が日によって異なる席を選んで仕事をする。「人間を変えるのは本と人と場所です。場所を変えれば社員の発想も変わる。同じ席に2日続けて座ることを禁じています」と佐藤社長は狙いを語る。すでに、社員同士のコミュニケーションが活発化するなど目に見えて効果が表れているという。
ハドルスペース。座ると社内の他の席は見えない。ここで、社員が仕事をしたり、会議やお客様の打ち合わせに利用したりする。(TOP写真も同様)
人の健康に役立つ会社へ
「医療関係者や患者さんに貢献できる会社ということと、さらには一般の人に対しても、健康で生活できるように貢献できる会社でありたい」。佐藤社長に今後の目標を問うと、こう答えてくれた。「そのためには医療だけではダメで、予防医学にも力を入れて、さらには遊んだり、おいしいものを食べたりする施設もどんどん作っていきたい」とも。
応接室の壁には坂本龍馬の肖像画。「龍馬は人と人をつないで世の中を変えました」と佐藤社長。自身の生き方と重ね合わせているようだ。
事業概要
会社名
株式会社メディカ・ライン
所在地
東京都文京区湯島1-6-3 湯島一丁目ビル3F
電話
03-5840-5844(東京本社)
設立
1994年9月
従業員数
約150人(子会社含むグループ全体)
事業内容
大型医療機器のコーディネート、医療機器・医療材料販売およびメンテナンス、新規開業・開設支援および経営サポート、医業経営コンサルタント
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