クラウドでの「統合ID管理システム」導入を機に、新たなICTの一歩が始まる 新潟科学技術学園新潟薬科大学(新潟県)
2022年10月27日 06:00
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一般企業に比べてICT化が遅いと指摘されている大学法人が、1回のログインで複数のシステムに入れるクラウド型の「統合認証基盤システム」を導入し、経費削減を実現している。導入の経緯と効果、将来の展望を聞いた。(TOP写真は、同学入り口前での加藤基盤整備課主任)
「地域に信頼されるプロになる」ための医療・健康系総合大学
学校法人新潟科学技術学園新潟薬科大学は1977年に開学した4年制私立大学だ。「薬学部」と「応用生命科学部」の2学部3学科を有し、薬学部では薬と健康の学問を、応用生命科学部では食品・バイオ・環境に関する研究に取り組んでいる。いずれも健康に関わる学問で、あらゆる側面から「生命と健康」を科学的に探求し、「地域に信頼されるプロフェッショナルになる」ことを教育方針にしている。
新潟市の中心部から車で30分ほど、緑豊かな丘の上に立地し、学生数は約1500人。県内出身の現役生が多く、最寄り駅からのスクールバスのほか、マイカーで通学する人も珍しくない。2023年度から「医療技術学部」と「看護学部」の新設が2022年8月31日付けで文部科学大臣より認可され、4学部5学科に大学院2研究科、附属専門学校を加えた構成となり、全学で2000人を超す規模の理科系大学に拡大する。
広々とした学食はコロナ感染防止対策も十分に講じられている
外部任せだった学内ポータルサイトの保守
同大の学生や教職員には学内の各システムにアクセスできる「学内ポータルサイト」専用の識別番号(ID)が与えられ、自分でパスワードを設定できる。学生らユーザーはこれらを使ってログインし、授業の休講連絡や実習の実施場所など、学内で必要な諸連絡を把握している。
だが、多数のパソコンが並ぶ学内の情報実習室でパソコンを起動するには、新たにログインし直さなくてはいけないなど、学内のあちこちで複数のログインが必要で、学生から「わずらわしい」という声が挙がっていた。
学年末には約250人が卒業し、新学期には約250人の新入生が入学する。150人を超す教職員にも異動がある。いなくなる人の番号を抹消し、新たなユーザーを登録する必要があり、同大ではこの作業を外部の業者に委託していた。
パソコンがずらりと並ぶ校内の情報実習室
システム更新を機にクラウド化を検討
新たに検討されたのが、1回のログインで複数のシステムに入れるクラウド型の「統合システム」導入だ。「既存の認証サーバーが老朽化して、システムの更新を検討する段階になってきたのがきっかけです」と、同校事務部基盤整備課の加藤諒主任(31歳)。「システムトラブルなど、何かあった時に外部委託だと緊急対応が難しいし、更新でサーバーを新しく買い換えなくてはならないので費用がかかる。学内で管理し、システム自体をクラウドに上げて利用料を払うことにすれば、コストを抑えることができるのではないかという話になった」と経緯を説明する。
従来の外部委託費は年に約250万円。システムをクラウド化すればこの委託費が不要になる上、新しい機器も買わずに済む。クラウドは学外にあるので大学が風水害や地震など災害に見舞われても安心だ。学部の新設を控え、ユーザー数の拡大が見込まれることも導入の決め手になった。
統合認証基盤システムのログイン画面
明らかな経費削減効果、セキュリティに対する意識も向上
2020年に学内の意思決定ができ、複数のシステム支援会社から見積を取り、価格や商品・サービスの質などを比較して調達先を決定。2021年夏からクラウド型サインオンの「統合認証基盤システム」に一新した。
クラウドの使用料金は月額制だ。年間で比べると250万円かかっていた保守費用の約6割しかかからない。もちろんサーバーの更新費は不要だし、電気料金などの費用も抑えられる。経費削減効果は明らかだ。
システムのID管理を行う加藤主任は「日々のチェックが必要になったが、外に委託して何をやっているかわからないよりは、自分でやった方が安心」と話す。自身で管理を行うため、以前よりセキュリティに対する意識が高まったそうだ。
大学のICT化への「はじめの一歩」と語る加藤主任
統合システム導入で終わりではなく、ICT化への第一歩に
統合認証基盤システムの導入を機に、学内の情報化を担当する加藤主任が次にやりたいことも出てきた。まずは、システムに関する学生からの問い合わせにAI(人工知能)が自動で答える「チャットアプリ」の導入だ。「現在は一人で担当しているので、問い合わせが集中すると他の業務に支障が出る」と加藤主任。アプリは「よくある質問」に的確に対応してくれるので「多様で煩雑な問い合わせ数を減らすことができるのではないか」と期待している。
いずれは休学届や退学届など、紙が主流の各種申請も電子化したい。国は企業がAIやIoT、ビッグデータなどのデジタル技術を使って業務改善や新たなビジネスモデルを創出する企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)化が必要だと旗を振っているが、一般企業に比べて大学法人は対応が遅いと指摘されている。加藤主任は「現場から少しずつ変えていって、ICT化のムードを広げ、全学的に取り組めるようにしていきたい」と話す。統合システム導入は終わりではなく、同校のICT化への第一歩だ。
ICTは日進月歩、まずトライすることが大事
実は加藤主任はICTの専門家ではない。介護福祉系の営業マンから5年前に入職し、ICTの知識は独学で身につけた。「頭の中で考えているだけじゃなく、まずやってみる。わからないところが出てきたらシステム支援会社に聞いてみる。そうすれば自分のICTスキルが上向くし、優秀な方たちがまわりについていてくれるのでなんとかなる。やらないよりはやったほうがずっといい。一歩踏み出してみるのが大事」と話す。ICTの進化は早く、新たな機能を入れようかと迷っているうちに、その機能自体が古くなることも珍しくない。「どんどん新しいことにトライしていきたい」とも語った。
学内のシステム担当者は不変ではない。加藤主任もいずれ別の部署に異動してしまう可能性がある。「たとえ担当者が変わっても、学内の誰もがシステムを運用できるような独自マニュアルも作っておきたい。分かりやすく直感的に操作できるものを。それも私の仕事」と考えている。
同大新津キャンパス全景
事業概要
法人名
学校法人 新潟科学技術学園 新潟薬科大学
住所
新潟県新潟市秋葉区東島265-1
電話
0120-2189-50
設立
1977年
従業員数
約150人
事業内容
薬学、応用生命科学に携わる人材の育成、社会の進歩と文化高揚に役立つ研究成果の創出
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