工業用刃物に特化した課題解決サイトを運営。情報発信が顧客との新たなコミュニケーションのきっかけに 三有研器(香川県)
2022年10月28日 06:00
この記事に書いてあること
制作協力
産経ニュース エディトリアルチーム
産経新聞公式サイト「産経ニュース」のエディトリアルチームが制作協力。経営者やビジネスパーソンの皆様に、ビジネスの成長に役立つ情報やヒントをお伝えしてまいります。
約70年前に香川県高松市で工業用刃物の卸売会社としてスタートした三有研器株式会社が、工業用刃物の特設サイトを開設し、工業用刃物のきめ細かな情報を発信すると共にコロナ禍における顧客とのコミュニケーションのきっかけとして有効活用している。今後も内容の充実を図り、業界メディアとしての存在感を高めていきたいという。(TOP写真は、三有研器が運営する「工業用刃物なび」の更新作業を行っているところ)
工業用刃物の調達とメンテナンスのスペシャリスト
三有研器は、紙、不織布、フィルム素材の生産現場で使用される工業用刃物と砥石の調達や、研磨によるメンテナンスを事業として手掛けている。経営理念として「技術をつなぎ ものづくりを支える」を掲げる。「お客様にただ単に刃物を提供するだけでは十分といえません。刃物だけでなく、切断のニーズ、原材料、生産設備の特徴、工場の環境、人の技術といった要素を総合的に考え、お客様にとってベストな切断工程を実現することを何より重視しています」。香川県高松市の三有研器の本社で有岡康介社長は、工業用刃物のスペシャリストとしての心構えについて話した。
注文の9割はオーダーメイド
有岡社長は2017年、37歳の時に父親から事業を受け継いだ。20代前半で三有研器に入社してから営業部門を中心に担当し、工業用刃物についての知識と情報を蓄積してきた。「お客様視点で課題に対する解決策を提供して役に立つことで、末永く取引していただくことを大事にしています」と穏やかな表情で有岡社長は話した。
有岡康介社長
三有研器に寄せられる注文の9割はオーダーメイド。要望通りの工業用刃物を調達する商社としての高い競争力を支えているのが、技術力を持った協力会社との強固なネットワークだ。顧客が求めるサイズ、形状、納期、品質での納品を徹底している。
研磨加工が主力事業に成長
強みは他にもある。1989年に同県観音寺市に工場を建てて開始した研磨加工が、営業利益の半分を稼ぐ主力事業に成長し、会社の屋台骨を支えている。刃物の切れ味を長く保たせることはもちろん、顧客が求める刃物の選定や提案を行う上で、研磨加工事業が果たしている役割は大きいという。受注量は順調に拡大しており、2018年5月に同市内で工場を新築移転した。先を見据え、今後、高松市内でも工場を新設する予定だ。
従業員は20代から30代の若手が中心
近年採用に力を入れており、13人の従業員は20代から30代の若手が多い。2020年7月から営業部を「ものづくりコンサル部」、加工部を「研磨技術部」にそれぞれ名称変更した。「電子商取引の普及によって物品の調達先を探しやすくなった今の時代、価格競争に巻き込まれることなくお客様に選び続けていただくには、これまで以上に三有研器ならではの付加価値を提供しなければなりません」と有岡社長。今後、コンサルティングと研磨加工に更に力を入れていく方針だ。
三有研器のオフィスの様子
工業用刃物の課題解決型サイト「工業用刃物なび」を2021年1月に開設
「工業用刃物なび」のホームぺージ
今後の事業拡大を図る上で機能を強化していきたいと考えているのが、2021年1月から運営する工業用刃物の課題解決型サイト「工業用刃物なび(hamono-navi.com)」だ。三有研器が得意とする紙、不織布、段ボール向け工業用刃物についての豊富な情報を掲載している。
刃物調達コストの削減、刃持ち、大量の紙粉の発生、切れ残りの発生、切断面の盛り上がり、さびの発生、粘着物の付着、刃物の傷といった様々な課題の実例とともに、解決策の提案や顧客の感想など情報は盛りだくさん。刃物の種類と使い方、調達の際のコストダウンのポイント、様々な刃物を使用する際のポイント、研磨加工設備の種類などについて解説した技術コラムも掲載している。
コロナ禍がサイト開設のきっかけに
「工業用刃物なび」を企画したきっかけは、2020年初頭から拡大したコロナ禍だった。メンテナンスなどを通じて顧客を訪問し、現場の担当者との対話の中からニーズを汲み上げて受注に結び付ける営業スタイルを得意としていたが、感染防止のために顧客と直接コンタクトできないケースが増えた。直接の訪問が難しい中、インターネットを通じて顧客とコンタクトを取ることを考えたという。
「「工業刃物なび」を幅広いものづくりの課題解決のきっかけにしていただけたらと思って編集しています。サイトの閲覧を通じた相談の件数も徐々に増えています」と有岡社長はその手応えについて話す。
記事は社長自らが執筆 若手に知識を伝えるツールとしても活用
サイトに掲載する記事やコラムは有岡社長が執筆し、編集のプロでなくても作成できるCMS(コンテンツマネジメントシステム)を使って編集・更新している。キーワード検索された際の表示順位を上げるために定期的な更新でコンテンツを充実させることを心掛けている。サイトの運営と並行して毎月第4火曜日にはメールマガジンも配信している。
また、「工業刃物なび」は、若手社員に有岡社長の知識を伝える教材や営業の支援ツールとしての役割も果たしている。営業経験が浅い社員でも、顧客を訪問した際に、タブレット端末でサイトに掲載している類似事例を見てもらうことでスムーズな説明ができるという。
業界メディアとしての存在感を高めたい
有岡社長は、サイトへのアクセスの動向を分析しながらこれからも内容を充実させていく方針。工業用刃物に対する世の中のニーズを把握できるのは大きな強みだ。現在は、三有研器が得意とする紙、不織布、フィルム素材に関連した記事が中心だが、今後、木材や鉄など様々な材料に強みを持った同業者から寄稿してもらうなど新しい取り組みも考えていきたいという。「工業用刃物の業界全体の情報発信を担うサイトとして育てていきたい」と先を見据えている。
少し先を見据えて段階的にICTを導入
三有研器はICTの導入について、社員が満足に使いこなすことができるかを考えながら、少し先を見据えて段階的に行うことを心掛けている。「機械やシステムで代替できる仕事が増えているので、付加価値を生み出さない仕事は手間をかけずに終えるようにしていきたいと思っています。社員にはお客様とのコミュニケーションや企画の立案といった仕事に時間を使うことを心掛けてほしいと思っています」と有岡社長。ICTの実務を任せることができる人材の育成にも力を入れていきたいという。
今年2月、本社と研磨加工場の複合機をそれぞれ最新の機種に入れ替えた。以前はそれぞれが個別の複合機を使っていたため、取引先から送られてくるFAXの情報を共有するのに手間がかかっていたという。入れ替えに伴って2つの拠点の複合機をネットワーク化し、情報を共有できるようにした。受信したFAXの内容は紙で出力せずにパソコンで確認することが可能なことから、オフィスのペーパーレス化に乗り出している。将来的に紙出力をゼロに近づけていきたいという。
三有研器が新たに導入した複合機
セキュリティを考えてUTMも導入
また、大手の顧客が購買管理システムを導入して取引の電子化を進めていることに対応し、不正アクセスを遮断するファイアウォール、パソコンなどの端末へのコンピューターウイルスの感染を防ぐアンチウイルスなど情報セキュリティの様々な機能を併せ持つ「UTM(Unified Threat Management:統合脅威管理)」を導入している。
将来ビジョンをホームページで公表したら、社員が積極的な行動を始めた
三有研器は2019年に10年後のビジョンを作成してホームページで公表した。AIの活用など先を見据えた目標を打ち出した。「社員も積極的にビジョンを実現するための意見を出して行動してくれています。ビジョンを実現できるように頑張って取り組んでいきたい」と有岡社長は力強く語った。
三有研器の本社の外観
「ICTを活用することで、三有研器の仕事によってお客様のものづくりがどのように改善されたのかをデータで示すことができるようにしたいと思っています。お客様が以前と比べて改善されたと思っている状況が最善とは限りません。解決策の提供だけでなくお客様が気付いていない課題の発見もできるように仕事の質を高めていきたい」とこれからの抱負を語る有岡社長。デジタルとリアルの両面で技を追求することで、ものづくりの世界での三有研器の存在感はますます高まるに違いない。
事業概要
会社名
三有研器株式会社
本社
香川県高松市多賀町3丁目5-2
電話
087-861-4466
設立
1954年7月
従業員数
13人
事業内容
工業用刃物・砥石・ダイヤモンド製品・超硬部品販売、工業用刃物・ブレード・超硬ナイフ研磨修理、機械部品各種研磨
記事タイトルとURLをコピーしました!