福祉業(介護)

訪問介護の支援システムを最大活用して、現場を主役に 一心の郷(和歌山県)

From: 中小企業応援サイト

2022年11月09日 06:00

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10年前に立ち上がった一心の郷株式会社の居宅介護支援、訪問介護事業所「それいゆ」。今年に入るまでICTは介護報酬の請求システムだけだったが、3月に導入した介護支援システムが訪問介護を担当するヘルパーから好評で、今年度内には通所介護(デイサービス)にも導入し、利用者の家族へのリポートに活用する方針だ。

介護事業所勤務から独立して設立、全員が様々な資格を持ってる

ミカン畑に囲まれた「それいゆ」。ゆったりした時間が流れている

ミカン畑に囲まれた「それいゆ」。ゆったりした時間が流れている

「それいゆ」は、和歌山県有田市内の介護事業所でヘルパーやケアマネージャーなどを経て役員になっていた冷水成美(しみず・なるみ)代表が2012年10月に独立、設立した。事業所は、和歌山県中北部を流れる有田川沿いの病院建物を利用。建物はミカン畑に囲まれ、すぐ近くにある南向きの山肌にもミカンの木が植えられ、ゆったりした時間が流れている。

ケアマネージャーとして今も勉強を続けている冷水成美代表

ケアマネージャーとして今も勉強を続けている冷水成美代表

自然豊かな環境の中、ケアマネージャーなどとして活躍していた冷水代表は、「それいゆ」でも介護仲間とともに、体を動かしにくくなった高齢者らの支援活動を開始。建物の都合で入所サービスは行っていないが、介護職員43人は全員がヘルパーやケアマネージャー、看護師、機能訓練指導員となんらかの資格をもち、1日最大30人のデイサービス利用者にリハビリを施したり、1日50人ほどに訪問介護を行ったりしている。

介護記録のタブレット入力でペーパーレス

介護報酬の請求システムは当初から導入しており、報酬事務はパソコンで行うことができていたが、介護記録はずっと手書きで行ってきた。訪問介護のヘルパーらは、訪問先で仕事を終えるたび、記録を紙に手書き。通所介護の担当者も、利用者を送り出した後に紙の介護記録を整えていた。

タブレット端末を手にする亀井章夫相談員

タブレット端末を手にする亀井章夫相談員

その状況を大きく変えたのが、タブレット端末で入力する介護記録支援システムの導入だ。
訪問介護のヘルパーらはどのような介護や買い物支援をしたかなどを、訪問先で介護を終えるたびにタブレットで行える。ほとんどの項目はチェックするだけでよく、大幅に作業を軽減できた。
時間にゆとりができた担当者らからは喜びの声があがったが、事務作業の軽減は担当者にとどまらない。記録は施設のサーバーでも管理しているため、ペーパーレス化にもつながり、利用者ごとの記録のファイリング作業も不要になった。

キャビネットに保管された利用者別の記録ファイル。5年後にはなくなる見込みだ

キャビネットに保管された利用者別の記録ファイル。5年後にはなくなる見込みだ

ICTを担当する亀井章夫相談員は「記録は5年間の保管義務があるため、過去のファイルは残しているが、5年後には保管の必要なペーパーがなくなる」と話す。

申し送りはLINE電話で

亀井さんが担当者らに伝えている大事なことがある。介護記録支援システムには特記事項を記す欄があるが、基本的には利用しないように求めているのだ。「利用者が転倒したことなど特記事項に記しても、1ヶ月後には何の意味もない」からだ。
それよりも大事なのは申し送り。担当者は日々入れ替わることが多いため、「利用者が転倒した」などといった翌日の担当者に知らせるべき事項は、LINE電話で直接伝えるようにしてもらっている。

通所介護に導入、利用者家族へのリポートに活用へ

「それいゆ」で体操をする通所介護の利用者ら

「それいゆ」で体操をする通所介護の利用者ら

ICTの効果を実感した亀井さんが年度内の導入を検討しているのが、通所介護への介護記録支援システムだ。
タブレットには、血圧や体温、食事や入浴、排尿などを記録。転倒などがあればもちろん、普段に比べて元気に体操をしたとか、食欲旺盛だったとかの前向きな話も特記事項に記してプリントアウト。利用者の家族に読んでもらうことを考えており、亀井さんは「利用者家族との関係をより深められる。担当者の作業軽減やペーパーレスにもつながるが、関係を深められるのが一番大事」と話す。

「現場が主役」のため、勤怠管理は先

亀井さんは勤怠管理システムの導入も検討したが、現段階では導入を考えていない。「それいゆ」の時給は、時間帯や労働時間などによってさまざまに分かれており、「今の勤怠管理システムでは対応できない」(亀井さん)からだ。

勤務時間を記した手書きの記録。さまざまな時給計算方法が勤怠管理システムに対応できないため、これからも手書きを続ける方針だ

勤務時間を記した手書きの記録。さまざまな時給計算方法が勤怠管理システムに対応できないため、これからも手書きを続ける方針だ

冷水代表、亀井さんとも「事業所運営は現場主体」「主役は現場」という主義だ。時給形態を単純化すればシステムを導入できるが、「ヘルパーらとの話し合いの中で生まれた時給形態。この形態だからこそ働いてもらえているということがあるので、簡単には変えられない」(亀井さん)。

一方、BCP面では非常用電源の導入を検討中。また、もともと病院だった建物は老朽化のためいつまで使えるか不安な面がある。新たな場所に移転することも検討しており、ICTの導入によって職員の定着率が上がり、利用者の評価も高まれば、移転を機とした事業拡充もありそうだ。

事業概要

法人名

一心の郷株式会社

所在地

和歌山県有田市新堂97-1

電話

0737-82-0005

設立

2012年10月

従業員数

50名

事業内容

訪問介護、通所介護、居宅介護支援、介護予防支援

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