流通業(卸)

2つのシステムがバラバラで不満爆発寸前。一本化で、生産性向上と社員の笑顔を実現 末高販売 (群馬県)

From: 中小企業応援サイト

2022年11月16日 06:00

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群馬県高崎市の末高販売株式会社はタイルの販売や工事全般を請け負う会社だ。社内の古いシステムを一新して成果を挙げている。その裏には「適材適所の役割分担」を進める社長の熱い想いがあった(TOP写真本社社屋に隣接する資材置き場で笑顔の同社社員。右端が水野社長)。

頭を下げる父の姿を目の当たりにして目が覚める

同社は1977年にタイル職人だった高橋市五郎氏が創業、兄弟の水野孝雄氏が後を継ぎ、タイルの卸販売のほか、業容を水回りや外壁工事、リフォームなどに拡げた。孝雄氏は2014年に会長に退き、次男の龍太氏に社長を譲った。

水野龍太代表取締役(49歳)は高校卒業後、東京都内に出ていたが、父に呼び戻され、タイル職人として入社した。父に「販売をやってほしい」と請われ、営業マンに転じたものの、「人に頭を下げるなんて」とTシャツに帽子姿で取引先を回るなど苦労知らずの若者だった。

25歳くらいの時だ。父が従業員に「集まってほしい」と号令をかけ、「申し訳ないが、業績不振で次の賞与は一律10万円で我慢してほしい」と深々と頭を垂れた。そんな父の姿を見たことがなかった水野氏は大きなショックを受け、「自分は全く会社の役に立っていないじゃないか」と気がついた。「年に1億円を売り上げる」という目標を掲げ、ネクタイの締め方を教えてもらい、営業に精を出した。

執務中の水野社長、トップ営業は欠かせない

執務中の水野社長、トップ営業は欠かせない

互いに理解し、協力し合う環境が大事と気づく

30歳で目標の1億円を達成、31歳になった1月に専務に就任し、「3年で会社を変える」と宣言した。従業員に売上表を配るなど「有頂天だった」が、先輩社員は猛反発した。どうすればいいと悩んでいるところへ、知人が中小企業家同友会全国協議会の高崎支部を紹介してくれた。中小企業が集まり経営を学ぶこの経済団体で勉強するうちに「経営者は偉くもなんともない、社員さんと共に成長するもの」とわかってきた。その年の12月、水野氏は従業員を集め「会社を変えると言いましたが、変わるのは私です」と謝った。

水野氏が「お互いを理解し、協力し合う和の環境」を意識するようになったのはこの時からだ。「社員は適材適所で、それぞれが得意なことを役割分担すればいい」と話す。その姿勢は41歳で社長になり、8年が経った今も変わらない。

2つの社内ネットワークに煩わされる社員

そんな同社でICT推進を担っているのが、業務部とタイル営業を兼務する後藤達也氏(38歳)だ。約10年前に入社し、配送業務に携わっていたが、商業高校で情報処理を学んできた経験を買われ、当時体調を崩してしまった会長の代わりに、受発注業務などパソコン関係の仕事を任された。午後5時すぎに配達から帰社した後、作業をこなした。

後藤氏を煩わせたのが、社内のパソコン事情だ。基幹系サーバーとファイルサーバーが別々のネットワークで運用されており、別々の端末でそれぞれ入力作業をする必要があった。「一方のパソコンで作業した後、USBメモリを引き抜いて、もう片方のパソコンに挿す作業がある。たとえば、3文字コピーしたいという時でもUSBメモリを挿し替えるという状態だった」と振り返る。

システムに不具合が生じても支援会社の対応が遅く、ようやくサポート部署に電話が繋がっても、復旧作業は自力で行わなければならなかった。「システム保守にお金を払っているのに」と釈然としなかった。

1台に集約されたパソコンで業務中の従業員と水野社長

1台に集約されたパソコンで業務中の従業員と水野社長

状況ますます悪化で、システム支援会社の交代を提案

後藤氏は事情があっていったん退職し、2019年6月に再入社したが、状況は変わらないどころかもっとひどくなっていた。コンピューターウイルスの脅威が話題になったためか、セキュリティシステムは2重にかかっていたし、バックアップに至っては、クラウドにあがっているデータをハードディスクに落とした後、サーバーで開く必要があった。バックアップデータを開くにはアクセス権が必要になるのだが、社内の誰もそのことを知らなかった。しかも、万が一重要なデータが消えても補償してもらえない。機器数が多い分だけリース代もかさんでいた。

「もはや、会長が導入したシステムだからと遠慮している場合ではない」と感じた後藤氏は、支援会社と機器のリース契約が切れる2022年2月、水野社長に「他社と相見積もりを取っていいか」と相談した。内勤の社員からも「2台使っているパソコンを1台にできないか」と要望されていた水野社長は快く同意した。

ネットワークの1本化で生産性向上、経費削減効果も、しかも社員から感謝された

効率化効果で同社の業績は右肩上がりだ

効率化効果で同社の業績は右肩上がりだ

業務の生産性向上と経費削減を考えれば、システム支援会社を交代すべきなのは明白だった。2022年6月、基幹系サーバーとファイルサーバーを1台に集約し、同じネットワーク内で運用できるようにした。

作業効率は飛躍的に向上した。後藤氏は「3文字をコピーする場合、今まではUSBメモリ挿し替えに3分かかっていた。その作業が10回あれば30分をロスしていたことになる。タイル販売は1枚売って利益数銭の世界。ネット上での受発注が主流になりつつある今、生産性が上がるのは何より」と話す。水野社長も「コストも年100万円ほど削減できた。仕事にゆとりが生まれたせいか、今まで自分のことで精一杯だった社員が、他の人の仕事にも気配りができるようになった」と語り、「社員から『パソコンが1台に集約されただけで全然違う。ありがとうございます』と感謝された」と目を細める。

インタビューに応じる水野社長と後藤氏(右)

インタビューに応じる水野社長と後藤氏(右)

「適材適所の役割分担」でデジタルとアナログの両方を活かす

水野社長は「うちは群馬ナンバーワンのタイルと信頼を売る会社」と話す。「大きな外装工事だけでなく、内装や玄関タイルなどすべてのタイル工事を請け負う。現場に職人さんを派遣する前に、工程の段取りなど打ち合わせをしっかりしています」とアピールする。

建築業界は職人が主流の世界で、アナログが中心だ。水野社長は「年配の職人さんに『このアプリを現場で使ってください』と頼むのは難しい。デジタルカタログもいいが、実際に紙を見ながら話すことも大事だ。デジタルに弱い人も見捨てず、職人の経験や技能を活かしながら、ICTと人間の和を求めて行きたい」と考えている。

一方で水野社長は「問屋の進化系を目指しているので、エンドユーザーさんとの距離を縮めるためにもICTは欠かせない」と話す。Instagramなどでタイルの良さを発信し、ブランディングにもっと注力するつもりだ。そして「自分はどちらかというとアナログ派なので、後藤さんのようにデジタルが得意な社員と両輪で進めていきたい」と付け加えた。

事業概要

会社名

末高販売株式会社

所在地

群馬県高崎市石原町1525-2

電話

027-327-3677

創業

1977年2月

従業員

14人(2022年1月現在)

事業内容

住宅設備機器、タイル・建材、石材、外壁、外構工事、リフォーム、責任施工付き販売

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