製造業(機械)

全国展開する工場に無線LANを導入。100年以上の歴史を持つ金属加工の技をIoTとICTで磨く 八州電工(大阪府)

From: 中小企業応援サイト

2022年11月17日 06:00

この記事に書いてあること

制作協力

産経ニュース エディトリアルチーム

産経新聞公式サイト「産経ニュース」のエディトリアルチームが制作協力。経営者やビジネスパーソンの皆様に、ビジネスの成長に役立つ情報やヒントをお伝えしてまいります。

1914年に現在の大阪府東大阪市で創業した八州電工株式会社は、100年以上の歴史の中で電気設備資材向け製品の製造に携わってきた。電気工事の際に電線同士を結線する上で必要な鋼板製プルボックスの製造で業界1位のシェア。グループ企業8社で材料の調達、製品の製造、流通、販売まで一気通貫で迅速に対応できる体制を整えている。今後、38歳の山本義継社長の指揮の下、製造、販売、流通など様々な分野でDXを進めていこうとしている。

業界1位のシェアを誇る鋼板製プルボックス

業界1位のシェアを誇る鋼板製プルボックス

納期、価格、品質で顧客にしっかり対応

八州電工は近年、電気設備向けだけでなく建材、土木、機械メーカーなど様々な業界向け金属加工品の設計、製作にも力を入れている。「納期、価格、品質でお客様が求めていることにしっかりと対応することを大事にしています。スピード、技術力、多様な製品の3つの強みを常に磨き続けていくために、ICTをはじめとする新しい技術の情報を積極的に集めていきたいと考えています」と山本社長は話す。

山本義継社長

山本義継社長

高度な金属加工技術に強み 全国各地と海外に生産拠点

大量生産が中心の標準規格品とオーダーメイドの特注品を手掛ける八州電工の最大の強みとなっているのが、高度な金属加工技術だ。その技は年間40万点以上のオーダーがある特注品の製作でより効果を発揮している。

特注品は年間40万点以上を製造(2020年実績)
特注品は年間40万点以上を製造(2020年実績)

特注品は年間40万点以上を製造(2020年実績)

生産拠点を北海道札幌市、宮城県仙台市、群馬県前橋市・伊勢崎市、神奈川県横浜市、奈良県奈良市、福岡県北九州市と全国各地のほか、ベトナムにも設けている。それぞれの生産拠点に設計担当者を置き、近隣の顧客からオーダーがあればすぐに現地調査やヒアリングを行って製品の設計、製図に着手し、生産、納品までを短期間で完了できる体制を整えている。バランスよく生産拠点を配置することはBCP(事業継続計画)の観点からも有効で、2011年に東日本大震災が発生した際、被災した仙台工場が1ヶ月以上操業停止となったが、他の地域の工場で仙台工場の生産を代替することができた。

それぞれの拠点の顧客からオーダーがあれば、各拠点ですぐに製品の設計、製図に着手できる。

それぞれの拠点の顧客からオーダーがあれば、各拠点ですぐに製品の設計、製図に着手できる。

全ての工場に無線LANを導入し、工場のさらなるIoT、ICTを推進へ

八州電工が今後進めていきたいと考えているのが工場のDX化だ。そのための基盤整備として全ての工場に無線LANを導入する工事を2020年6月から2022年6月にかけて実施した。足掛け2年にわたる大規模な工事は、今後工場のIoT化、ICT化を進めていく上で必要不可欠な投資だった。「工事は完了しましたが、本当に大事なのはこれからです。最新の工作機械はデジタル化に対応しやすいのですが、塗装、溶接、梱包、仕上げといった人間が行う作業についてはデータの収集が難しく、工場全体のスマート化は一筋縄ではいきません。今後、老朽化した工作機械を新型に入れ替えるタイミングを活用しながら徐々にデジタル化を進めていきたいと考えています」と山本社長は話す。当面は在庫管理のデジタル化から進めていきたいという。

工場内に無線LANを配置し、IoT、ICT化を推進。

工場内に無線LANを配置し、IoT、ICT化を推進。

無線LAN活用により各拠点での出退勤にICカード活用、拠点担当者の給与計算業務をゼロにした

工場での無線LAN工事の完了と合わせて、以前はタイムカードを使って手作業で集計していた給与計算の仕事を効率化するためICカードで出勤時間、退勤時間を自動的に記録するように改めた。以前は専属の担当者1人が行っていた給与計算の作業が効率化され、各拠点の担当者が毎月1時間から2時間かけていた作業が必要なくなったという。

コロナ禍での会社説明会では、社内インタビュー動画をライブ配信、普段通りの仕事や社員の声を伝え大好評

社員数は約300人。20代から50代までそれぞれの年齢層の社員をバランスよく配置し、将来を見据えてここ数年は若手の採用に力を入れている。採用のための会社説明会は対面だけでなくWebでも行っている。昨年、会社の魅力をWebで情報発信するために社員のインタビュー動画を作成したところ、説明会の参加者に非常に好評で人材採用の追い風になったという。「ノーカットノー編集で普段通りのオフィスの様子をそのまま発信したのがよかったのだと思います。参加者の皆さんには伸び伸びと仕事をしている人が多いという印象を持っていただけたみたいです。人材の募集にこれからもICTを積極的に活用していきたい」と管理本部総務リーダーの白原守さんは話した。

管理本部総務リーダーの白原守さん

管理本部総務リーダーの白原守さん

人事評価のポイントを年功序列から360度評価へ、付加価値の高い仕事へチャレンジできる環境を整える

10年前、28歳の時に父親から事業を受け継いだ山本社長は、就任後、人事評価を年功序列型から改めようと、上司だけでなく様々な立場の人が総合的に人事評価する360度評価制度などを取り入れてきた。今後はよりいっそう、成果評価、行動評価を重視していきたいと考え、新しい人事評価システムを最近導入した。「技能を高めて付加価値の高い仕事にチャレンジしやすい評価制度にしていきたい」と山本社長はその狙いを話した。

社内の打ち合わせはチャットやメールで 電話は使わない。記録が残せるのでミスが減り仕事が効率的になった

八州電工は2年前から本社と支社の設計、営業、生産現場間での打ち合わせやすり合わせは原則チャットやメールで行うようにしている。以前は電話が主流だったため、管理職など特定の社員に毎日ひっきりなしに電話がかかり、対応に時間を取られることで大きな負担になっていたという。

八州電工のオフィスの様子

八州電工のオフィスの様子

そこで、社員の大半にスマートフォンを支給し、コミュニケーションの手段を電話からチャットやメールに切り替えるように奨励すると業務効率が格段に上がった。「チャットやメールの方が記録をしっかり残せるので、慣れればこちらの方が効率的でミスも少なくすることができます。緊急な対応を必要とする場合や電話でやり取りする方が効果的な場合を除いて、できる限り電話の回数を減らすようにベテランを中心に依頼し続けたところ徐々に浸透し、今では電話の回数は以前の半分くらいになっています」と山本社長はその効果を説明した。

Web会議の標準化で出張を削減。出張する時は、直接会うことの意義を考えるようになった

全国の拠点を繋ぐWeb会議

全国の拠点を繋ぐWeb会議

2020年初頭からのコロナ禍をきっかけにWeb会議も積極的に導入している。コロナ禍前は全国の拠点の責任者が1ヶ月に1回、大阪本社での全体会議に出席するため出張で丸1日時間を取られていたが、今はWeb会議に変更したので出張の必要がなくなり、1時間程度で済むようになった。「Web会議が主流になったことで、社員一人ひとりが以前よりも出張に対する時間と費用を意識するようになりました。顔を合わせて会議や商談をする時は直接会う意義をしっかり考えた上で行うようにしているので、時間と費用の両面で効果が出ています」(山本社長)。

EDI対応のハードルは高いが着々と準備を進める

電気設備業界では、契約書や受発注をはじめとする商取引を通信回線や専用回線を通じて行うEDI(Electronic data Interchange:電子商取引)への対応が大きなテーマになっている。現状ではベテランを中心にFAXで文書をやり取りすることが多いが、八州電工では取引先の導入状況や業界全体の動向を見ながら必要な時には一気にEDIに対応できるよう準備を進めている。

次の100年を見据えて、新しい技術や情報ネットワークに今以上に取り組む

大阪市内のビル内にある八州電工の本社の受付

大阪市内のビル内にある八州電工の本社の受付

山本社長は、現在、日本全体で町工場の廃業が加速し、国内製造業の部品供給に弊害が出始めていることに危機感を抱いている。今後、板金事業を強化して、廃業する町工場が担っていた仕事をカバーすることで日本のものづくりに貢献していきたいと考えている。八州電工が本社を置く大阪府では、2025年の大阪・関西万博の開催に向けた鉄道の延伸や周辺の再開発で電気設備の需要拡大が見込まれている。「次の100年に向けて新しい技術の導入や情報ネットワークの強化にこれまで以上に取り組んでいきたい」と山本社長は力強く語った。

事業概要

会社名

八州電工株式会社

本社

大阪府大阪市中央区北浜2丁目3番9号

電話

06-6222-4465

設立

1971年4月(創業1914年3月)

従業員数

318人

事業内容

電気設備資材、空調資材、通信・交通資材、土木建築資材、太陽光発電資材、配電盤・分電盤などの製造、販売

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