特殊品が多い大型車両向け部品の在庫管理会社。補助金を活用した職場環境の改善で省エネも実現 部品管理のIT化を推進 古屋自動車部品(神奈川県)
2022年11月21日 06:00
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戦争が終わった翌年の1946(昭和21)年、まだまだ人も物資も足りていない日本を走り回っていたのが進駐軍のトラックだ。「そのトラック向けに部品を売る仕事があると、特攻隊員だった父親が復員後に横浜に店を開いたのが、古屋自動車部品の始まりです」と、相談役会長の古屋稔氏は振り返る。その後復興が進み、マイカーブームが起こって日本には乗用車があふれたが、古屋自動車部品はトラックやトレーラーといった大型・特殊車両向けの部品をメインで扱い、日本が復興する原動力となった物流や開発を支えた(TOP写真:古屋自動車部品の古屋稔相談役会長(左)と小原清治代表取締役)。
進駐軍のトラック向け部品を販売
「昭和27年頃ですか、イギリスの石油会社の会長が、日本で石油製品の輸送を行っているある大手石油運送会社を訪ねて来たことがありました。その時に会長が乗っていた車がうちの前で故障したんです。父親がすぐさま出て行って、故障した部分を修理したところ大変に喜ばれました」(古屋氏)。そこでできた縁から、その石油会社関連のエネルギー輸送を担うトラック向けの部品供給を引き受けるようになった。今も横浜市鶴見区の横浜店では、エネルギー輸送関連の車両に向けた部品を保管し、求めに応じて出荷している。
鶴見の事務所棟から道路を挟んで旧本社跡地に建つ、10階建てマンションの1階部分にある倉庫には、どんな故障があってもすぐに対応できるように、様々な部品がストックされている。天井を高くとって空間を確保しているが、「そのせいで天井に設置した蛍光灯が切れた時、取り替えるのが一苦労でした」と代表取締役の小原清治氏は話す。「脚立を持ってきてもなかなか届かないため、切れたまま放置しておくこともありました」(小原氏)。結果、倉庫内が暗くなって従業員に苦労を強いていた。
倉庫の高い天井にあるライトをLED化
エアコンや事務所のLEDも一新し省エネ推進
働きやすい環境にしなければ、次代を担う若い人には来てもらえないし、今働いている従業員のモチベーションも下がってしまう。改善が必要だと感じていた古屋自動車部品では、この9月に倉庫や事務所の照明を、明るい上に切れにくいLEDに入れ替えた。「夏前にエアコンが故障したので、横浜市が実施していたグリーンリカバリーの制度を利用して、新しくて省エネタイプのものに切り替えることにしたんです。その際に、一緒に照明の方も省エネ効果があるLEDに切り替えようと申請しました」(小原氏)
事務所2階のライトを蛍光灯型LEDに切り替えた
7月にエアコンが新しいものになり、9月に蛍光灯型のLEDが導入されたことで、「省エネ効果はこれから確実に出てくると見ています。何より倉庫が明るくなって働きやすくなりました」(小原氏)。棚にずらりと置かれた部品の一つひとつが見やすくなっていて、取り出す時に迷うこともなさそうだ。こうした改善がミスを減らし、ムダを減らして業務効率を向上させ、収益面にも貢献する。
自動車の部品を扱っているということで、若者の車離れによる乗用車の販売不振や、エンジンのEV化によるメインテナンスの不要化が経営に影響を与えるかというと、「扱っている部品がトラックやトレーラー向けで、物流の需要が続く限り落ち込むことはないと見ています」(古屋氏)。今も続くエネルギー輸送関連のほか、名だたる運送会社の整備工場や、大型車両を多く取り扱う整備会社と契約して部品の供給を行っている。
大型・特殊車両向けの多彩な部品を取り扱う
トラックやトレーラーは、乗用車と違っていすゞ自動車や日野自動車、三菱ふそう、日産ディーゼル工業といったトラックメーカーがヘッドの部分を作ったあと、架装メーカーが後ろに繋げるトレーラー部分や荷台の部分を作って完成させる。古屋自動車部品はそうした架装を手掛ける新明和工業や横浜車輌工業、東邦車輌と提携し、修理や整備の用を受けて必要な部品を提供している。
多様な部品がストックされた古屋自動車部品の倉庫
「ヘッドの部分は車検を受けながら8年から10年は使うことになります。トレーラー部分はもっと長く、30年40年保つものもあります。長いスパンで部品を取り置いて供給できるようにしておかなくてはなりません」(小原氏)。トラックやトレーラーの場合、世界中のどこでも修理が可能なように部品にも国際規格が用いられて共通化が図られているが、耐用年数が長くなればそれだけストックしておく部品点数も増えてしまう。「在庫がしっかりとあるかを把握しておく必要があります」(小原氏)。
この部分は、長く従業員の感覚が頼りになっていた。古屋自動車部品では昨年から、自動車整備業や部品商に向けた業務システムを導入して、売掛や買掛、在庫管理に活用しようとしている。「今はまだ、納品書の発行くらいにしか使えていませんが、仕入れたものを売って初めて原価がどれだけかがわかります。在庫があるかないかも把握しておかないと、正確な利益額が出てきません。ムダに仕入れてしまったり、売れなかったりすることも起こります」(小原氏)。そうならないよう、早い段階で業務システムの機能をフルで活用できるように体制を整えたいという。
多品種に及ぶ部品の一つひとつをバーコードで管理できるようにするために、データを入力しておく必要もある。「小型車の部品は作っているメーカーに商品データがあるので、それをもらえば登録も楽ですが、大型車両や特殊車両の部品にはそうしたデータがないため、一つひとつ確認をして入力していく必要があります」(小原氏)。手間がかかる作業だが、完了すれば営業所の端末からも在庫がどれくらいあるかがわかるようになり、取引先の要望にスピーディーに応えられるようになる。
明治産業グループ入りでシステム化推進
実は古屋自動車部品は、2021年9月1日付けで明治産業という自動車部品の専門商社に全株式を売却してグループ入りしていた。明治産業は年商で300億円、従業員数も300人超といった規模を誇るだけあり、業務システムも導入が進んでいる。そのグループ会社となったことで、古屋自動車部品にもシステム面を合わせる必要性が出てくる。バーコードで管理しハンディ端末で棚卸しを行う仕組みを試し、「ずいぶんと楽になりました」(小原氏)と早速の効果を明かすが、今後も引き続きノウハウの注入を行って、グループシナジーを高めていく。
「お客様への請求書も、今はまだ手書きなんです。書くのに時間もかかるため、ぜひ電子化したいところです」(小原氏)。来る電子帳票の時代に備えて、そうした部分も含めたICT化の推進が不可欠だが、「年齢の高い従業員が多いので、パソコンに慣れておらず今後の課題となっています」(小原氏)。報告書も今は手書きではなくパソコンで入力してメールで送る時代。ついて来られない人がいては全体の効率も下がってしまう。ノートパソコンやデスクトップパソコンを購入して使ってもらう一方で、ICTに長けた若い人材も積極的に採用し、改善を進めていく構えだ。
古屋自動車部品の小原清治・代表取締役
ここで問題は、「自動車に興味がない人が増えて、良い人材がなかなか見つからないことですね」(古屋氏)。昔のように免許を取ったら中古車を買って乗り回し、故障したら部品を買って自分で付け替えていたような時代ではない。免許の取得率自体も下がっていて、車のことを知らない人も増えている。「自動車の部品を扱う以上、車に興味がないとついていけないところがあります」(小原氏)。コロナ禍でも物流自体は活況だったため、部品も必要となって経営にダメージはなかったが、自動車への無関心というところから危機が訪れている格好だ。そうした中で適切な人材を見つけ出し、入社してもらうためにもICTによる職場環境の改善が重要になっている。
古屋自動車部品本社
事業概要
会社名
株式会社古屋自動車部品
本社
神奈川県横浜市鶴見区鶴見中央5-8-2
電話
045-502-7771
設立
1946年10月
従業員数
16人
事業内容
各種トレーラー部品の販売/いすゞ、UD、日野、ふそう 純正部品及び用品販売/NSK、KOYOベアリング取扱店/自動車整備用機械工具類/カーアクセサリー用品/東邦車輌株式会社 トレーラー・タンクローリー・ダンプ部品一式
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