ICT導入で、仕事の質の向上と時間の削減を短時間で実現 働く人と利用者にとって優しい組織をつくる 和歌山高齢者生活協同組合(和歌山県)
2022年11月29日 06:00
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20年間変わらなかった仕事の進め方が3年で大きく変化
「3年ほど前からICTの活用を進め、その効果が表れています。設立以来20年以上変えることなく続けてきた仕事の進め方が、このように短期間で大きく変化するとは最初は予想もできませんでした。社会全体で進むデジタル化の動きに対応していくのは大変ですが、しっかり取り組めばいい方向に組織が変わっていくことを実感しています」
和歌山市に本部を構える和歌山高齢者生活協同組合。本部開発室リーダーの山本祐子さんは、今年から導入した勤怠管理システムや3年前から導入しているWeb会議システムなど、一連のICT導入がもたらした効果についてうれしそうな表情で話した。
本部開発室リーダーの山本祐子さん
組合員は4,330人。助け合い、居場所づくり、介護事業に取り組む
和歌山高齢者生活協同組合は約4,330人の組合員が所属し、「人生の完成期、輝いて生きる!」をスローガンに、組合員による助け合い活動、居場所づくり活動のほか、高齢者介護・障害者福祉といった様々な事業に取り組んでいる。
助け合い活動の中で代表的な取り組みとなっているのが、元気な男性高齢者を中心に結成している「お助け隊」による地域貢献だ。主に和歌山市、橋本市、御坊市で庭木の剪定や草刈り、引っ越しのサポート、不用品処理などの仕事を請け負っている。「良心的な価格で暮らしの困りごとを支援しています。親切な人ばかりなのでリピーターも多く、地域の役に立っていることが実感できるので組合員の皆さんもいつも大喜びです」と山本さんはにこやかに語った。
笑顔で活動する「お助け隊」のメンバー
居場所づくり活動では和歌山市と紀の川市内の4ヶ所の施設で、体操、音楽、季節ごとのレクリエーション、パソコン教室など多彩な活動を展開。「終活」についての講座や相談電話など人生の完成期を安心して迎えるためのサポート活動も行っている。
本部と施設と11ヶ所の事業所の情報共有にICTが大きな効果
高齢者向けの介護事業は組合の経営基盤になっている。訪問介護、通所介護、居宅介護などの事業を、和歌山県内11ヶ所の事業所を通じて展開している。本部と施設、事業所の情報共有にICTは大きな効果を発揮しているという。
「ICTを活用することで業務効率が格段に上がり、生産性が大きく向上しました。残業時間の圧縮によって生まれた余裕を家族や大切な人と過ごす時間に充ててもらうことで、ワークライフバランスの充実にも繋がると思っています。組合員や働く人にとって居心地よく、人に優しい法人を目指したいと考えています」と山本さんはICTを活用する目的について話した。
給与関係の書類が毎月200枚以上にのぼっていた
和歌山高齢者生活協同組合は今年4月から勤怠管理システムを新たに導入した。導入するまでは、毎月それぞれの事業所から本部に出勤簿をFAXで送ってもらい、本部の担当者が集計した上で給与計算システムに入力していた。組合全体の職員数は160人にのぼり、出勤簿がそろってから給与支払日までは3~4日程度しか時間の余裕がなかった。記入方法が統一されていなかったことや手書きが大半ということもあって、毎月の集計と入力の作業は担当者の大きな負担になっていたという。給与関係の書類は毎月200枚にのぼり、厚さ5センチほどの束になっていた。
勤怠管理システムを導入する前、給与関係の書類は月あたり200枚にのぼった
勤怠管理システムの導入で手書き出勤簿からの集計が不要に
勤怠管理システム導入後は、非常勤など一部の職員を除いてICカードをカードリーダーに読み取らせたり、スマートフォンから出勤時間と退勤時間を打刻すれば自動的に出退勤のデータがシステムに記録されるようになったので、出勤簿の集計や入力の作業は必要なくなった。
「毎日自動的にデータが蓄積されるので、給与の締め日の時点で給与計算に必要なデータがそろうようになりました。おかげで給与支払日までに使える時間はシステム導入前に比べて倍増。作業のクオリティが格段に上がっただけでなく、給与計算の仕事と並行して他の仕事もこなせるようになりました」と山本さん。また、デジタル化することで手書きの出勤簿ではわからなかった様々な実態が見える化できたという。残業時間が多い職員にはデータに基づいて早めの注意喚起ができるようになり、各事業所の勤怠の平準化が図れるようになった。
勤怠管理システムを活用する様子
介護業務の支援システムをクラウド化する事で、事業所以外の場所で活用が可能になった
介護業務の支援システムに関しても改善し、今年1月からシステムをクラウド化した。以前はそれぞれの事業所に据え付けているパソコンでなければシステムを使えかったため、職員は1日に一度は事業所に戻らなければならなかった。クラウド化によって通信環境が整っていれば自宅など外部からでもシステムを使うことができるようになった。ノートパソコンの台数も増やし、以前と比べて職員がいつでもどこでも仕事ができる環境を整えている。
「事務作業は重要な仕事ですが、組合員の皆さんの満足度向上といった付加価値を生むわけではありません。書類作成や給与の計算といった事務に充てる時間をICTを活用することで短縮して、本来取り組むべき人と人とのコミュニケーションに集中できるようにしたいと考えています」(山本さん)
2ヶ月に1回のリアル会議をWeb会議にして毎月開催
2019年から導入したWeb会議システムも働き方を大きく変えた。以前は2ヶ月に1回、本部と各事業所の責任者が和歌山市内に集まって会議をしていたが、遠方の事業所の責任者にとっては往復だけで丸一日かかる業務になっていた。会議を原則Webにしたことで、移動の負担がなくなってスケジュール調整をしやすくなり、開催頻度を1ヶ月ごとにすることができたという。2020年からのコロナ禍でもWeb会議システムは接触を避けて意思疎通を図る上で非常に役立ったという。
「会議の開催回数を増やすことができたので、法人全体の意思疎通が図りやすくなりました。もちろん直接会ってコミュニケーションを取ることも大事なので、交流会を企画するなど別の形でカバーしていきたいと考えています」と山本さんは話す。Web会議用に360度カメラも導入。Web会議システムを活用して、スタッフのオンライン研修や通常総代会のオンライン配信も行っている。
Web会議の様子
ICTの活用で若い世代が働きがいと魅力を感じる職場を
今後はスマートフォンを40台導入し、訪問介護を担当する職員やケアマネージャーに配布する予定だ。現在、介護事業では、訪問介護などに対応した職員が所定の用紙に手書きで記録し、それぞれの管理者や事務担当者が、介護業務支援システムに入力している。今後は担当者がスマートフォンやタブレットから直接システムに入力できるようにしていきたいという。和歌山高齢者生活協同組合の活動を多くの人に知ってもらうためホームページをリニューアルし、情報発信を強化することも考えている。
和歌山高齢者生活協同組合の本部の外観
「ICTのおかげで働く人の満足度は大きく向上しましたが、まだまだ改善の余地があると思っています。更なるICTとデジタル機器の活用で、若い世代が働きがいと魅力を感じる職場にしていきたい」とこれからの抱負を語る山本さん。前向きにICT活用に取り組む和歌山高齢者生活協同組合の姿勢から、DXが組織を変え、利用者のためのよりよいサービスの創出に繋がっていくことを実感できた。
事業概要
法人名
和歌山高齢者生活協同組合
HP
http://www.s-co-op.or.jp/
本部
和歌山県和歌山市直川565-7
電話
073-488-1180
設立
1999年6月
従業員数
160人
事業内容
組合員による助け合い活動、居場所づくり活動、介護・福祉事業(訪問介護、デイサービス、居宅介護、サービス付き高齢者向け住宅、就労継続支援B型)
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