地質コンサルティングは時間との戦い。ICT活用によって迅速、正確な調査を社員全員が支える ホクコク地水(石川県)
2022年11月25日 06:00
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石川県金沢市の株式会社ホクコク地水がコンサルティング事業とICT、デジタル機器の親和性に着目し、積極的な導入を進めている。ICT、デジタル機器を活用することでチーム力を強化し、充実した調査・分析を行うための貴重な時間を生み出している。(TOP写真:大型モニターを備えたパソコンを使って仕事に取り組むコンサルティング部門の社員)
構造物の建設に欠かせない地質調査。登山訓練や森林整備活動も行う
ホクコク地水は石川県を中心とした北陸地方での地質調査と分析を主力事業にしている。道路、橋、ビルといった構造物を建設する上で欠かせない業務だ。1956年の設立以来、地質調査や土質試験といった地盤工学をベースに調査分析手法を進化させてきた。地質コンサルタントとしての調査、分析には現場でのフィールドワークが欠かせない。社員が取り組む現場とデスクワークの割合はほぼ半々。社内で山間部での調査を想定した登山訓練も行っている。
「人々の命と暮らしを守るため、土と水、インフラサービスを通して社会に貢献し、いつまでも社会に必要とされる企業であり続けることを目指しています。地質、土質、地下水に関連する仕事で北陸トップの企業を目指していきたい」。金沢市内の本社で取材に応じた竹本健一総務部長は、ホクコク地水の理念についてそう説明した。地域貢献にも積極的で、設立55周年の2010年から地元の森林整備活動も行っている。
竹本健一総務部長
柱となっているコンサルティング事業。災害後の地盤調査は迅速さを求められる
地質の優れた調査能力を持つホクコク地水の収益の柱となっているのが営業利益の約6割を占めるコンサルティング事業だ。年間のコンサルティング件数は約400件。現地調査で収集したデータに分析を加え、対応策を盛り込んだ報告書として依頼主に納品する。橋梁(きょうりょう)、トンネル、ダムの基礎工事、管路をはじめとする地下構造物の基礎工事、軟弱地盤の対策工事、地滑り対策工事、水文調査、斜面防災点検、水源調査などコンサルティングの対象にしている領域は幅広い。
地盤上部の構造物の建造、建築は地質の状況を把握した後でないと始めることができない。後の工程が控えているだけにコンサルティングの報告書は迅速かつ正確に作成することが求められる。台風、大雨、地震などの災害で地滑りなどが発生した際は現場に駆け付け、周辺の状況を調査した上で速やかに自治体にその分析結果を報告する業務も担っている。まさに毎日が時間との戦いだ。
クラウドサービスで共同作業が可能になり、作業スピードが上がった
充実した調査と分析に必要な貴重な時間を捻出する上で、大きな役割を果たしているのが2020年5月に導入したクラウドサービスだ。導入前は、現場で調査を行った担当者は写真や数値などのデータを会社に持ち帰った上で分析作業に着手していた。現地に行った担当者が本社に戻るまでの間、本社に残っている社員は写真やデータを見る術がなかった。
「クラウドサービスの導入以降は、担当者が現場からパソコンやタブレット端末などを通じてクラウド上のフォルダにデータや写真をアップロードすれば、本社にいる別の社員が分析のための事前準備に着手できるようになりました。そのおかげで現場から戻ってからの担当者の作業が以前よりはかどるようになり、報告書を完成させるまでの時間を短縮できるようになりました。チームで仕事をする上での効果は絶大です」と竹本総務部長。災害発生直後の現地調査の結果報告など一刻を争う緊急時にはより大きな効果を発揮しているという。
コンサルティング部門のオフィスの様子
クラウドサービスによりオフィス外でも作業可能に。協力会社との情報共有も進化
メールなどのチェックも現場で空いた時間を使って確認することで必要な案件はすぐに処理できるので、会社に帰ってからまとめて対応しなければならないことが少なくなった。結果として残業時間の減少にもつながっているという。
「社員がそれぞれ自宅から本社や支社に寄らずに現場に駆け付けることも多いので、いつでもどこからでも簡単に情報共有できるようになったのは本当にありがたいですね。アクセス権限の設定ができるので協力会社との情報共有も楽になりました」と竹本総務部長はうれしそうに話した。
多種多様なICT、デジタル機器の導入と人材育成の両輪で社員の能力発揮の環境を整えた
コンサルティングがICTと高い親和性を持っていることに着目しているホクコク地水は、ICTやデジタル機器の導入を積極的に行っている。
近年の導入事例をみても、大型4Kディスプレイ、埋設物の様子を探査できる地中レーダー、3D地質解析ソフト、集水井設計用の計算ソフト、3Dプリンター、モバイル3Dスキャナー、ドローン、ドローン用赤外線カメラ、点群作成ソフト、電子黒板、360°カメラ、現地で調査結果をグラフ表示できる測定器など多種多様だ。「最終的に調査・分析を行うのは人間なので人材育成にしっかりと取り組むその一方で、社員が能力を最大限発揮できる環境を整えるためにICTを活用していきたいと考えています」と竹本総務部長は話した。
コンサルティング部門の社員は、40インチの大型モニターを備えた処理能力の高いパソコンを使っている。画面を複数に分割して、図面や写真を見ながら文書作成などの作業を進めることができるようにしている。3D-CADと3Dプリンターを連携し、顧客向けに立体模型を制作するサービスも実施している。
3D-CADを活用する様子
蓄積された膨大な地質データを社会に役立てるため、情報のデジタル化と活用を進める
作成した報告書や分析に使った資料は1998年以降、紙文書とともにデジタルで保管している。近年、動画や写真のデータ量が増加していることもあって、ファイルサーバーを増設するペースが速まっているという。1998年以前の6万件にのぼる紙文書は、手書きのものが多く、サイズや書式がデジタル化を想定して作成されていないこともあって紙のまま保存している。「調査・分析を通じて蓄積してきた北陸地方の膨大な地質データを今後、どのようにデジタルで管理し、社会のために活用していくかをしっかりと検討していきたい」と竹本総務部長は今後の取り組みについて話した。
建設部門でもデジタル技術を活用、業務のスピード化と見える化実現
ホクコク地水はコンサルティング部門とともに地滑り対策、法面、さく井、消融雪配管、温泉に関連した様々な工事に取り組む建設部門も持っている。建設部門でも工事に必要な測量計算、出来形管理、写真管理、品質管理、電子納品に対応できるソフトウェアを導入・活用することによって業務のスピード化と見える化を実現している。
建設部門の作業の様子
申請や決裁はクラウド上で処理、ペーパーレス化を推進。ICT活用で業務量増加をカバー
総務部では2年前にクラウド型の業務アプリ開発プラットフォームと予定管理、社内連絡、申請機能を備えたグループウェアを導入し、すべての申請や決裁をクラウド上で処理できるように体制を整え、紙文書を使わないペーパーレス化を進めている。
「グループウェアは決裁をスピード化する上で大いに役に立っています。紙文書とハンコで決裁していた時は、現場に出ている社員が多いこともあり、ハンコをもらうのも一苦労でした。決裁が完了するまで数日は見込んでおく必要がありましたが、今は1日でできるようになりました。近年、社員数が増えて業務量は増えているのですが、ICTを活用することで、以前の体制で無理なく仕事をこなせています」(竹本総務部長)。
ペーパーレス化を進めている総務部のオフィス
ホクコク地水の本社の外観
「ICTは導入してからが大切です。お客様に満足してもらえる仕事をするためにいかに活用するかを社員に心掛けてもらっています。これからも常に新しい技術の導入にチャレンジしていきたい」と竹本総務部長は力強く語った。付加価値の高い仕事をするためにICTを活用しているホクコク地水。その視線は常に前を向いている。
事業概要
会社名
株式会社ホクコク地水
本社
石川県金沢市御影町25番1号
電話
076-241-7158
設立
1956年12月
従業員数
131人
事業内容
地質調査業、土木設計コンサルタント、測量業、建設業(地滑り対策工事、さく井工事、消融雪配管工事、ポンプ設備工事)
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