製造業(その他)

品質と明確な価格提示でビジネス拡大。リアル+Web積極活用と品質管理・生産状況の見える化がキー インテリックス(和歌山県)

From: 中小企業応援サイト

2022年12月14日 06:00

この記事に書いてあること

制作協力

産経ニュース エディトリアルチーム

産経新聞公式サイト「産経ニュース」のエディトリアルチームが制作協力。経営者やビジネスパーソンの皆様に、ビジネスの成長に役立つ情報やヒントをお伝えしてまいります。

商社などを通さずに国内外の工場から生地を直接購入し、その後の企画・製造、販売までを一貫して行うことで、高品質なオーダーカーテンを低価格で提供する独自のビジネスモデルで拡大を続ける株式会社インテリックス。作業工程の可視化は以前から行っていたが、ビジネスインテリジェンスツール(BI)の導入により、全員がリアルタイムで共有できるようになり、作業環境が激変した(TOP写真:工場の天井から吊り下げられたモニター画面。各工程の進捗状況がリアルタイムで表示されている)。

1990年に創業、夫婦2人で頑張った。順調に拡大するも、不明瞭な価格に疑問

株式会社インテリックスは、カーテンなどの内装材を扱う住江織物(大阪市)で5年勤めた木村明人社長が、脱サラして1990年に創業した。当初は住江織物を中心にカーテンの縫製を請け負う下請け会社で、木村明人社長は「夫婦2人で一生懸命縫った」と振り返る。

「カーテン業界への疑問が『1窓10,000円』につながった」と話す木村明人社長

「カーテン業界への疑問が『1窓10,000円』につながった」と話す木村明人社長

注文は「断るのが仕事になる」(木村社長)ほど、多く舞い込んだ。背景には、昭和時代に縫製を行っていた街のカーテン屋が縫製をしなくなり、カーテン屋に卸す商品が、縫製前の生地から縫製後のカーテンに代わっていったことにある。カーテン屋に卸す業者は縫製工場にカーテンの縫製を依頼するが、縫製工場そのものが少ない上に縫製技術もバラバラだった。きちんと縫製できたインテリックスにはいくらでも注文が舞い込んだ。

カーテン業界が地殻変動する中、インテリックスには次々と注文が入り、木村社長は和歌山県岩出市に工場を建設。多くの仕事をこなすうちに、住江織物時代に感じた「オーダーカーテンの不明瞭な価格システムを何とかしたい」という思いがふつふつと沸き上がった。
当時は定価の半値で売るのが当たり前。カーテンレールの取り付け費用もはっきりせず、「適正価格で販売されていなかった」(木村社長)。

2002年、工場併設店舗で「1窓10,000円」を打ち出す。明快な価格が評価され爆発的な売れ行き

「1窓10,000円」をアピールするテレビCM

「1窓10,000円」をアピールするテレビCM

その思いを形にしたのが、岩出工場に併設した直営店舗「ジャストカーテン」1号店の岩出店。300~400種ほどの生地を並べ、「1窓10,000円」という思い切った価格を打ち出した。採寸・施工スタッフが購入希望者の自宅まで出向いてカーテンの大きさなどを調査したり、レールを取り付けたりする採寸施工費用も「1窓目10,000円、2窓目以降は2,000円/窓」などと明瞭に打ち出した。他店との価格差が圧倒的なうえ、明快な価格設定も評価されて爆発的に売れた。

1000種類の生地を陳列、様々なテイストを用意し、手触りを確認することもできる

消費者からの圧倒的な支持を受け、展開する生地の種類はすぐに当初から目標にしていた1000種類に増やすことができた。

1000種類ものカーテン生地が整然と陳列されたジャストカーテンの店内

1000種類ものカーテン生地が整然と陳列されたジャストカーテンの店内

シンプルで飽きのこない「無地・プレーン」や、より自然で明るい雰囲気の「ナチュラルモダン」、部屋全体のインテリアと調和する独特なデザインの「北欧」など、テイストは10種類を超え、生地の凹凸や質感が違う「無地」や、「幾何・ライン・小紋」、「ストライプ・ボーダー」など色柄も多彩。生地をトルコから直輸入している華やかなトルコレースも多数取り揃える。

和歌山工場にストックされた1000種類以上のカーテン生地

和歌山工場にストックされた1000種類以上のカーテン生地

ジャストカーテンでは、これらテイストなどで分類された膨大なカーテン生地が整然と陳列され、購入希望者は生地の手触りを確認しながら注文できる。また、生地のハンガーサンプル貸出サービスも行っている。気になった生地を自宅に持ち帰り、実際に窓にかけてみることで仕上がりイメージを確認することも可能だ。

実店舗はすでに14店、2019年にオープンした自社ECサイトでは、生地サンプルの無料配送も行う

明快でリーズナブルな価格設定に加えて圧倒的な種類を揃えたことで、ジャストカーテンはパワーアップし、岩出店から2年後の2004年に大阪府箕面市にも出店。翌年には神戸、2008年には関西以外で初となる神奈川、2009年には名古屋、2015年には福岡にも進出し、2022年には東京・日本橋に店舗をオープンさせ、今後も関東地方を中心に積極的に出店する考えだ。

ジャストカーテンの認知度が全国的に高まる中、2019年には自社ECサイトを立ち上げた。その際に取り入れたのが、生地サンプルの無料配送。購入希望者は同サイトで実物を見たい生地を選べば、10種類まで無償で送られてくる。

生地サンプル配送サービスをPRするECサイトのページ

生地サンプル配送サービスをPRするECサイトのページ

「1窓10,000円(税別)」は多くの窓に対応する幅200センチ、縦240センチまでのカーテンの価格。採寸・取り付け施工の基本価格(税込)は1窓目11,000円、2窓目以降が2,200円のため、3窓だと、カーテン代33,000円+採寸・取付施工15,400円=48,400円(税込)になる。
ECサイトで気になる生地サンプルを送ってもらい、手触りや透け感などを確認して注文すれば、一般的な窓なら3つ分のオーダーカーテンが税込5万円以下で取り付けてもらえることになる。

品質を認められ、ホテルのロビーや客室のカーテンにも採用

ジャストカーテンが軌道に乗るなか、2010年頃からインテリックスはホテルや劇場などのコントラクト物件の需要も取り込み始めた。2011年の六本木の高級ホテル・グランドハイアット東京への納入を皮切りに、JWマリオット・ホテル奈良、ザ・ペニンシュラ東京、ヒルトン沖縄瀬底リゾートなどに納入し、攻勢をかけている。

同社の売り上げは2022年5月期で36.5億円。小売事業(ジャストカーテン)の20.8億円に対し、コントラクト物件やライフスタイルショップ、家具屋などに卸売り事業を行う営業部の売上は15.4億円。木村社長は「関東での地盤を整える中、半々にしたい」と意気込む。

高品質を保持するため、透かし検品機、加湿ミスト、センサーによる異物混入防止等の管理

岩出工場が手狭になり、2006年に新設した本社併設の和歌山工場は3回の増設を経て、2678坪の敷地面積、月に55万平米のカーテン生産能力を持つに至った。
その過程ではさまざまな工夫や技術を施した。品質管理面では、生地の裏から光を照射する透かし検品機を導入。静電気による製品への糸くずやホコリの付着を防ぐために、作業場全体に加湿ミストを散布している。製品出荷時には専用のセンサーゲートを通し、箱の中への異物混入を防止している。

初期の作業工程可視化は不十分だった

作業工程の管理は2012年から始めた。作業開始と同時にカーテン作業伝票のバーコードを読み取ることで、「いつ、だれが、どの機械でカーテンを縫製したのか」というトレーサビリティを実現した。しかし、それはあくまでも作業履歴の取得であり、生産効率などは作業終了後に集計してはじめて判明するものであり、「データが有効に活用できていなかった」(吉川祐輔システム課課長代理)。

見える化モニターで各自が進捗状況を把握 作業効率が11.2%向上

有効活用をもたらしたのが、2021年12月に導入したBIのモニター画面。オフィス1ヶ所と工場25ヶ所の天井から作業の進捗状況や、直近の作業効率、不良の発生状況等を示すモニター(見える化モニター)が吊るされ、裁断の工程であれば、翌日と翌々日の必要作業量のうちどれだけ進んでいるかが円グラフで表示される。

工場の天井から吊るされた見える化モニター。作業の進捗状況が一目瞭然だ

工場の天井から吊るされた見える化モニター。作業の進捗状況が一目瞭然だ

QRコードで入力する従業員

QRコードで入力する従業員

入力した情報は、すぐ小型モニターで確認できる

入力した情報は、すぐ小型モニターで確認できる

担当者だけでなく、誰もがその進捗状況を確認できるため、担当者自身が「頑張らないと」となる。また、不良の発生や、注意点も見える化モニターを通じて迅速に共有できるので、一人ひとりがムリ・ムダ・ムラを意識した対応をするようになり、高品質化が達成できた。

管理職は、進捗率の高い工程の作業員を遅れている工程に振り向けることもできる。
「それまでは午後4時にならないと気づかなかった進捗の遅れが午前中にわかる」(吉川課長代理)ようになり、暇を持て余す作業員はいなくなった。
結果、1時間あたりの作業効率は、BI導入後、11.2%も向上した。

赤チームの作業員が働くスペース

赤チームの作業員が働くスペース

裁断や縫製など、細かく分かれた工程の担当者を2チームに分ける取り組みも。エプロンの色を赤と青に色分けすることでチーム意識を高め、赤チームと青チームの進捗状況の違いがわかるようになったことで、「負けているから、がんばろう」と、チーム内の奮起が自然に生まれた。

円安が進み輸入価格高騰も効率アップで対応

ロシアのウクライナ侵攻以降、輸送コストや円安が進み、輸入価格は高騰を続けている。インテリックスでは1回の輸入量を増やすことで輸送コストの上昇はなんとかしのいでいるが、円安は対処不能。ドル建てで購入する輸入生地の価格は1年前に比べて2割近くも上昇した。
「1窓10,000円」はインテリックスのアイデンティティであるため、簡単には変更できない。そのために生産効率の向上や事務作業の効率化は今後も進める考えだが、単なる効率化ではない攻めのDXも始めている。

有人店舗から無人店舗(DX)を展開することで、「3年後には売り上げ50億円」

スタートしたのが、無人店舗を可能にしたオンライン接客システム「スマートオーダーシステム」だ。購入希望者はカーテン生地が陳列されたコーナーにあるテレビ通話システムを通じ、インテリックスのスタッフと直接話ができ、基本的な内容から専門的な内容まで問い合わせることができる。気に入った生地があれば、陳列されたサンプルのQRコードからECサイトへ移動し、いつでも注文・購入できる。ビジネス特許を取得したこのシステムは、すでにヤマダデンキの60店舗に設置され、さらなる展開を図る方針だ。

 インテリックスの担当者と直接話せることで、安心して買い物ができるヤマダ電機の無人店舗

インテリックスの担当者と直接話せることで、安心して買い物ができるヤマダ電機の無人店舗

木村社長は「関東で基盤を整えるとともに、スマートオーダーシステムを増やし、3年後の売り上げ50億円目標を達成したい」と話している。

こうして見ていくとインテリックスは柔軟にリアルとWebを活用していることに気づく。リアル店舗に固執することもなく、Webビジネスに特化するわけでもない。リアルでしっかり確認していただくことを基本にしながら、顧客の利便性のために、積極的にWebを活用していく。コロナ後の一つのモデルとして非常に興味深い事例だ。

事業概要

会社名

株式会社インテリックス

HP

https://www.interix.co.jp/

本社

和歌山県和歌山市里174-1

電話

073-462-7724

設立

1990年8月

従業員数

332名(2022年2月時点/パート含む)

事業内容

オーダーカーテンを主軸とした窓装飾インテリア商品の製造・販売

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