製造業(機械)

成長に合わせてVPNや原価管理システムを導入。電子黒板は、ブレーンストーミング活性化に必須 ジャパンモールド(香川県)

From: 中小企業応援サイト

2022年12月21日 06:00

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四国の最北端に位置する香川県高松市庵治町内で、2000年の創業から22年で5つの工場を持つまでに成長した企業がある。コンクリート建材を成型する型枠の製造を主力事業とする株式会社ジャパンモールドだ。映画『世界の中心で愛を叫ぶ』のロケ地にもなった風光明媚な町内を回ると、様々な場所でジャパンモールドの工場が目に入る。従業員数は45人。設計や製造現場でベトナム人従業員の活用を積極的に行っている。

斬新なデザインを造型する技術に高い評価

「即断即決と職人気質を重視して、何事にも積極的にトライすることを信条にしています。新しい取り組みを続けることによる事業の拡大を見据え、これまで以上にICTやデジタル機器を活用して会社の仕組みを変えていきたいと考えています」。取材に応じた中村貴代表取締役社長は快活な口調で話した。

ジャパンモールドの中村貴社長

ジャパンモールドの中村貴社長

製品はほとんどがオーダーメイド。発注先から寄せられたコンクリート製品などの図面を基に、完成した姿を想定しながら図面を作成し、型枠の製造までを一気通貫で手掛ける。デザイナーの斬新な発想やデザインを造型する技術は高い評価を受け、依頼は建材メーカーを中心に全国から寄せられる。施工した建物や造型物には東京都・銀座の歌舞伎座や、新宿東宝ビルのゴジラヘッドなどがある。

2010年頃からCAD(コンピューター支援設計)、CAM(コンピューター支援製造)を導入して設計能力を強化してきた。生産現場では高い技術を備えた溶接工をそろえるだけでなく、レーザー加工機、開先加工機、ブレーキプレスなどの工作機械も積極的に活用している。

CADを活用して型枠の設計を行う様子

CADを活用して型枠の設計を行う様子

ジャパンモールド四国支店で活用している工作機械

ジャパンモールド四国支店で活用している工作機械

勤めていた会社の倒産後、若手社員を束ねて新会社を設立した

ジャパンモールドの歴史は、1999年9月、当時20代後半だった中村社長が勤めていた型枠製造会社が倒産したことにさかのぼる。あまりにも突然の出来事で社内が混乱する中、若き日の中村社長は4人の若手社員を指揮して会社が残していた仕事を完遂した。迷惑をかけないように製品の納入まで筋を通したその仕事ぶりを取引先が評価してくれたことが、若手社員による新しい型枠製造会社の誕生につながったという。

「今のジャパンモールドがあるのは取引先に辛抱強く育てていただいたおかげです。専門分野でほかの企業には真似のできない技術を磨くことに力を注いできました」と中村社長は振り返った。

2010年の自社工場建設から事業が軌道に乗り始めた

設立後10年間は工場を借りて生産に取り組んでいたが、2010年に庵治町で約1万平方メートルの用地を取得して自社工場を所有した頃から事業が拡大し始めた。「敷地が広いのでお客様も自社製品などを持ち込むようになり、一時的な保管業務も手掛けるようにしたんです。するとお客様が工場に足を運んでくれる機会も増え、仕事の幅がどんどん広がっていきました」(中村社長)

ジャパンモールド四国支店の工場の様子

ジャパンモールド四国支店の工場の様子

庵治町内で2016年に第2工場、2018年に第3工場と第4工場、2021年に第5工場と生産拠点を広げていった。良質な庵治石を産出する庵治町は石材業が盛んな地域だが、石材需要の減少に伴って廃業する会社が増えている。その中で、町内で工場を拡大しているジャパンモールドの存在感は大きく、地域の活力を維持する上でも大きな役割を果たしている。中村社長も庵治町を盛り上げたいとの思いから、テレビCMを制作した時のキャッチコピーは「庵治から世界へ」にしたという。「地域のためにも会社を元気にしていきたい」と中村社長はにこやかに語った。

工場の増設とともにVPNを構築

工場の増設に合わせて活用を開始したのが、会社の外からでもインターネットで本社のネットワークに接続できるVPN(仮想専用ネットワーク)だ。庵治町内で点在する各工場間で情報の共有化ができるだけでなく、中村社長自ら営業活動のため出張に出る機会が多いこともあって、いつでもどこからでも本社のサーバーにアクセスして仕事ができる環境を早くから整えていた。大半のデータはサーバーに収容し、パソコンなどの端末にはデータを残さないようにしている。「VPNのおかげで事務関係の仕事に関しては拠点が点在していても不都合さを感じることはありません」と中村社長。

ジャパンモールド四国支店の工場の様子

ジャパンモールド四国支店の工場の様子

電子黒板で取引先とのブレーンストーミングを活発に

ジャパンモールドは、取引先や自社内での会議や打ち合わせは、集団で互いに意見を出し合って新しいアイデアを創出するブレーンストーミング方式で行うことを重視している。新型コロナウイルスが蔓延したことで、取引先や顧客との打ち合わせや会議をオンラインで行うケースが増えたが、図面を囲んで直接顔を合わせながら意見を交わし合うリアルな会議と比較すると物足りなさを感じているという。Web会議を経験したことで、ブレーンストーミングをする時は直接会って意見交換する方がはるかにいいアイデアが生まれることを再認識できました」と中村社長は話す。

ブレーンストーミングでアイデアを生み出す触媒として活用しているのが、2019年3月から第1工場で導入した電子黒板だ。画面に映した設計図にタッチペンで様々な書き込みができるので重宝している。

「型枠のデザインなどについて建設会社、設計事務所、専門家らに会社に来ていただいて意見交換する際、電子黒板は大活躍しています。タッチペンで様々な書き込みを行った設計図をデータ化して参加者全員で共有したり、複合機にデータを転送してすぐに印刷して図面を見ながら意見交換するといった様々な使い方ができます。電子黒板を使うとアイデアがどんどん出てくるので取引先の評判も上々です」と中村社長は満足そうに話した。デザイン性が高い建物は、全体のバランスを考えながら細かい修正が行われることが多く、奥の深い議論をする上で電子黒板は欠かせないものになっているという。今後は、ほかの工場にも電子黒板を設置することで従業員間のコミュニケーションをさらに活発にしたいと考えている。

ブレーンストーミングに活用している電子黒板

ブレーンストーミングに活用している電子黒板

売上データと連携した原価管理システムで収益構造を見える化

昨秋には原価管理システムを導入した。それまではExcelを活用して原価管理を行っていたが、年々事業が拡大していく中で限界を感じ始め、先のことも見据えて収益構造をリアルタイムで「見える化」するためにICTの力を借りることにしたという。システムは売上と原価のデータが連動しているので、ワンクリックで最新の収益を自動集計することができる。工場や案件ごとの原価を管理しやすくなったことで、コストや負荷がかかっていた部署やその要因を浮き彫りにすることができたという。「データをそろえることで利益率を上げていくための対策を、根拠を持って行うことができるようになりました」と中村社長は話す。

福島県で原子力発電所の廃炉に伴う事業に携わる

ジャパンモールドは持ち前の技術力を生かして 東日本大震災で大きな打撃を受けた福島第一原子力発電所の廃炉に向けた取り組みにも協力している。原子力発電関係のものづくりは高精度な品質が要求される。ジャパンモールドの技術に着目した廃炉事業に取り組んでいる商社から打診があり、中村社長は自社の技術を通じて被災地の復興に役立ちたいとの思いから参画を決めたという。

「原子力発電の関連事業は今後、数十年以上の期間に渡って取り組まなければならない事業です。じっくりと腰を据えて取り組んでいきたい」と中村社長。取り組みへの本気度を示すため2021年9月には登記上の本社を福島県いわき市に移転し、それまでの本社は四国支店とする組織改革を行った。

スピード感を重視して独自の技術を武器に取引先を全国に拡大することで事業を順調に拡大しているジャパンモールド。ICTとデジタル機器がこれからの挑戦を後押ししてくれるに違いない。

事業概要

会社名

株式会社ジャパンモールド 四国支店

所在地

香川県高松市庵治町2260番地

HP

http://japan-mold.com/

電話

087-871-1877

設立

2000年2月

従業員数

45人

事業内容

鋼製・木製・合成樹脂製型枠の設計・製作、GRC、GRG製品の製作、各種製缶の製作、レーザー加工・金属加工

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