製造業(機械)

新社屋移転を機にICTを一新、業務効率化はもちろん様々なネット対応が可能な拠点となった コウエイエレクトリック(埼玉県)

From: 中小企業応援サイト

2022年12月23日 06:00

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2022年2月、埼玉県越谷市の県道115号線沿いにコウエイエレクトリック株式会社の新社屋が完成した。1990年9月に同じ越谷市内に会社を設立して以来、営々と歴史を刻んできた同社にとって、成長の証といえるエポックメイキングな出来事だ。これまで有線でつながっているパソコンしか業務用サーバーに接続ができなかったが、新社屋ではWi-Fiを導入し、どのパソコンからでもインターネットはもちろんサーバーの文書管理などの業務ができるようにした。また、外部からでも社内LANにアクセスできるようにするなど、事業継続の強化に配慮したのが特徴だ。(TOP写真:2022年に完成した新社屋)

コロナ禍の勃発で着工遅れるも、より良い設計に練り直す

2階建ての新社屋のネイビーの壁に、大きく「KOUEI ELECTRIC」という英文ロゴと「コウエイエレクトリック株式会社」という社名が並んで掲げられている。この外観にもそして内装にも、市川尚也代表取締役の思いが込められている。

旧社屋が手狭になったことから、そう遠くない場所に土地を見つけて地主と交渉し、登記を終えたのが2020年2月。ところが着工は1年ほど目途が立たなかった。大型クルーズ船の乗客から大勢の感染者が出るなど、日本でも新型コロナウイルス感染症が流行し始めたからだ。着工を待つ間、市川社長は何度も設計図を練り直すことができた。建築資材はコロナ禍で急騰する前に手当できていた。このため、竣工が2022年3月になったのは、「ある意味、良いタイミングだった」と振り返る。

「良いタイミングで竣工できた」と話す市川社長

「良いタイミングで竣工できた」と話す市川社長

社名変更を提案、34歳の若さで社長就任

市川氏は同社の2代目社長だ。初代は一人で電気制御盤の配線・組立事業を始め、会社組織にまで大きくした。市川社長は2003年に入社すると、事業拡張に取り組み、食品メーカーの工場などで使われる印字機器の電気回路部の組み立てなども請け負うようになった。ラベルに賞味期限などを印字する機器だ。外注していた部分を順次内製化し、付加価値を高めてきた。

もともとは初代の名前の一字をとって「康栄電機」と名乗っていた。市川社長が取締役に昇格した2010年、事業内容の変化に合わせるとともに将来の事業拡張にも備えたいと考え、市川社長の提案で現社名に変更した。ちなみに、2代目社長に就任したのは2014年。34歳の若さだった。

インターネット・社内LANの設定・社内システム保守を支援会社に委託。専門家のいない中小企業にとってはありがたい

新社屋は1階に作業場が2つと食事エリア、更衣室などを配置。2階には作業場1つと事務室、応接室、それに自社サーバーなどを設置した収納がある。居心地の良い会社作りを目指し、廊下や階段もゆったりと広くとり、作業場や事務室も将来の事業拡張、人員増強を見据えて余裕のあるスペース作りをした。1階の作業場の1つは創業時からの事業である制御盤の配線・組立を行い、もう1つは量産機器の部品作成を行っている。その部品を2階の作業場に運び、基盤などと一緒に筐体の中に組み込む。

量産機器の部品作成を行う作業場(1階)

量産機器の部品作成を行う作業場(1階)

2階の作業場では印字機器組み立てている

2階の作業場では印字機器組み立てている

各フロアの事務室の天井近くにはWi-Fiルーターが据え付けられている。「新社屋移転を機に、ICT関係を一気に新しくしました」(市川社長)。ルーターやパソコンなど各種機器の設定からプロバイダ契約、保守までを一括して支援会社に委託。社内のシステム環境を管理する専門家がいない企業にとって全て一括支援してくれる存在はありがたい。

新社屋を機に紙の文書のほとんどをデジタル化し、事務室から書類の山が消えた

複合機を中核に据えた文書管理システムを導入するとともに、自社サーバーも最新機に入れ替えた。サーバーは10年ほど前、クラウドサービスが現在のように本格化する前に導入し、使い慣れているので、今回もクラウドではなく自社サーバーを選択したのだそうだ。さらに、会計ソフトも一新。文書のデジタル化とサーバーでの共有化を進め、制御盤や印字機器などの設計図面や手順書、見積書、請求書、給与明細、決算書類などの文書を効率よく管理し、スムーズに共有できるようにした。

事務室に並ぶ机は、旧社屋の時に比べて横幅の長いものにし、パソコンはモニターを2つ並べたデュアルモニターを採用。壁際に資料類を保管する棚を設置し、机の上にパソコン以外のモノを置かないで済むようにした。経理関係の事務を担当している女性社員は、「右の画面で資料を見ながら、左の画面で見積書を入力できるので、机の上に何枚も資料を置いて作業していた時に比べ、とても楽だし、作業がはかどります」と語る。

事務室は紙の書類がなく広々としたスペース

事務室は紙の書類がなく広々としたスペース

外出中も社内のサーバーにアクセスして各種文書の作成やバックアップ等が可能になった

市川社長と工場長の2人は新たに、それぞれノートパソコンを持ち歩くことにした。社外からもノートパソコンからサーバーに接続できるようにしたのだ。これにより、自然災害や感染症のような厄災の発生時でも外部からの各種文書の作成、確認やバックアップが可能になった。「テレワークといっても作業場を閉鎖するわけにはいきませんが、コロナウイルスの濃厚接触者になっても、仕事ができる環境作りをし事業継続をしていきます。」(市川社長)。

電子黒板を食事エリアに設置することで、ある時は会議室として、ある時は取引先との打合せに利用できる多目的ルームになった

1階の食事エリアの壁には65インチの大型モニターが取り付けられている。これはインタラクティブホワイトボード(電子黒板)だ。普段は川の字形に並んでいるテーブルを、電子黒板を中心にコの字形に並べ替えると、たちまちミーティングルームに変わる仕組みだ。「お客さんと数人、Web会議で打ち合わせをする際に、個々のパソコンでやるよりも電子黒板を使ったほうが一体感が出るように考え導入しました」と市川社長。最近も、ある商社の技術者が市川社長と取引先の担当者の2人に説明するリアルの会議を予定していたところ、商社の技術者が新型コロナウイルスに感染。Web会議なら在宅で対応できるということになり、急遽電子黒板をZoomに連携して、図面を電子黒板のモニターに大きく映し出してもらい、食事エリアにいる2人に説明してもらったという。「その時は、これを入れて本当に良かったと思いましたね」(市川社長)。

食事エリアの壁には電子黒板。テーブルをコの字形に並べ変えるとミーティングルームに早変わりする

食事エリアの壁には電子黒板。テーブルをコの字形に並べ変えるとミーティングルームに早変わりする

社長就任以来8年間黒字経営、将来は「工場を建てたい」

肝心の商売のほうは、すべての製造業に共通する課題を抱えている。コロナ禍によるサプライチェーンの混乱と輸送コストの急騰がもたらした、半導体をはじめとする部品・資材の入手難だ。制御盤にしろ、印字機器にしろ、多種多様な部品・資材を使って組み立てるので、その一つでも入手できないと完成させられない。「コネクタ1個でも納期遅延があれば、お客様に納品を待ってもらう期間は半年や1年じゃきかないぐらいです。昨年初めには仕入先から配線資材に使うナイロン材が入らないという通告がきて、焦りました」(市川社長)。しかし、作業現場できめ細かく打ち合わせをし、先手先手で仕入れ先を確保していくように心掛けることで乗り切ってきた。

こうした努力もあって、近年のコロナ禍にもかかわらず、社長就任以来8年間黒字経営を続けてきた。市川社長は「当社の強みは、部品不足のような緊急事態における対応力、踏ん張りです」と胸を張る。当面の目標は「ものづくり企業らしく、社内に設計部隊を置き、自社で設計・提案できる製品を開発したい」と明確。事務室には、すでに設計部隊のための机を並べたコーナーも用意してある。まだ40歳代前半と若いだけに、「いつか工場を建てたいですね」と、大きな夢に向かって地道な歩みを続けていく考えだ。

事業概要

会社名

コウエイエレクトリック株式会社

本社

埼玉県越谷市南町1-22-10

電話

048-987-6441

設立

1990年9月

従業員数

パート含め約20人

事業内容

電気制御盤の配線・組立、ラベルプリンターなど電子機器の組み立て

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