自社店舗の壁面に4面のデジタルサイネージを設置 広告収入だけでなく発信効果で様々な波及効果が生まれた 三彩商事(香川県)
2022年12月28日 06:00
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全国有数の商店街にある自社店舗の壁面にデジタルサイネージを設置し収益源にしただけでなく、地域の情報発信メディアとして活用してもらうことで様々な波及効果を生み出している企業がある。香川県高松市に本社を置く株式会社三彩商事だ。ICTやデジタル機器を活用することで、販売する商品をアパレルを中心とした「モノ」から「コト」、「トキ」へと拡大し、自社のビジネスモデルを大きく変えようとしている(TOP写真:人通りの多い高松丸亀商店街でビジュアルでの情報提供の役割を果たす高松イングリッシュローズビジョン)。
商店街のブランドショップの壁面に大画面のデジタルサイネージ
香川県の県庁所在都市、高松市中心部には複数の商店街が集積し、そのアーケードは総延長2.7キロメートルと全国一の規模を誇る。その中の一つ、高松丸亀商店街。美しいガラスドームで覆われた広場から南に200メートルほど歩いていくと、ブランドショップの壁面に掲げられた大画面のデジタルサイネージが目に入る。ファッションの広告をはじめ様々な動画が途切れることなく流れるデジタルサイネージの存在感は大きく、商店街の雰囲気を近未来的で華やかなものにしている。
4面のデジタルサイネージを組み合わせて大画面として活用
店舗の名前から「高松イングリッシュローズビジョン」と名付けられたこのデジタルサイネージは、LEDパネルを備えた通常サイズのデジタルサイネージを4面組み合わせて大画面にしている。サイズは高さ約1.5メートル、幅2.7メートル。通りの客層は家族連れ、主婦、会社員、学生、観光客とバラエティに富んでおり、1日あたりの通行人数は平日で約1万2,000人、休日には約2万4,000人と2倍に膨れ上がる。
アパレルから事業を多角化 店舗の壁面を収益源に
7年前からこのデジタルサイネージを運営しているのが、高松市内の商店街や百貨店など8ヶ所でファッションのブランドショップを営む三彩商事だ。創業は1950年。毛糸の販売から婦人服を中心としたアパレルに事業分野を拡大し、現在は、充実したライフスタイルの提案をテーマにアパレル以外の分野に事業を拡大している。その取り組みの一つがデジタルサイネージを使った広告事業だ。
「経済のデジタル化、グローバル化の影響でアパレル業界は凄まじいスピードで変化しています。アパレル中心の事業構造でこれからの時代を乗り切っていくのは簡単ではありません。アパレル分野での新しい企画はもちろん、先を見据え、これまで蓄積してきた会社の資産を活用した新しい取り組みを加速していかなければなりません。人通りが多い商店街で店舗の壁面を広告媒体として使っているのもその一環です。これまで以上に、会社の事業や地域の活性化に相乗効果を発揮する使い方をしていくつもりです」と津村昌宏代表取締役社長はデジタルサイネージの運用方針について話した。
本社店舗の前に立つ津村昌宏社長
地域の食文化を発信するジェラート事業にも注力
「瀬戸内ジェラートMARE(マーレ)」店舗と人気のジェラート
デジタルサイネージを使った広告以外の事業の多角化では、ジェラートの企画・販売も進めている。2019年3月に高松イングリッシュローズビジョンから近い南新町商店街で、ジェラートショップ「瀬戸内ジェラートMARE(マーレ)」をオープン。香川県特産のイチゴや瀬戸内レモンなど、瀬戸内海地域の食材を豊富に使った様々なジェラートを企画・販売している。国内外のコンテストで複数の賞を獲得したジェラートを味わえるなど、知名度が高まっていることもあって、MAREのジェラートを目的に商店街に足を運んでくる観光客も増えているという。
津村社長はジェラート事業に手応えを感じ、ホームページによる情報発信のほか、通信販売や動画を使ったPRにも力を入れている。「ジェラートを通じて四国や瀬戸内の豊かな食文化の発信に貢献したいと思っています。お客様のニーズを高い精度で把握することにもICTを活用していきたい」と力強く語った。
デジタルサイネージで流す映像の編成は簡単
デジタルサイネージは通信機能を備えネットワークに接続しているので、専用のアプリケーションを入れた本社のパソコンから流す映像の順番の設定を簡単に行うことができる。わざわざデジタルサイネージが設置されている現場まで行って作業をする必要がないので、非常に使いやすいという。
デジタルサイネージでは広告代理店を通じて入稿される広告のほか、三彩商事が扱うブランドの情報やジェラートの動画も流している。動画が新規の顧客に店舗を訪れてもらうきっかけになることも多いという。「デジタルサイネージのおかげで、単なる店舗の壁面が貴重な収益源に生まれ変わりました。それだけではありません。広告事業を通じて、これまで関わりがなかった企業との結びつきが生まれるなど、事業の多角化に取り組んでいく上で様々なプラス効果をもたらしてくれています」と津村社長。
パソコンを使って動画を編成している様子
地域情報の発信メディアとしても大きな役割
デジタルサイネージは有料広告以外に、地域情報の発信メディアとして香川県内の行政機関や学校に広く活用してもらっている。特殊詐欺への注意を呼び掛ける警察の広報や、瀬戸内海の環境保護を呼び掛ける広報、地域のスポーツチームの紹介、地元の小学校が制作した動画といった多彩なコンテンツも流している。「デジタルサイネージの動画がきっかけになって活動の輪が広がったケースもありました。地域の情報発信にデジタルサイネージを気兼ねなく活用していただきたいと思っています。デジタルサイネージの活用を通じて商店街への関心と愛着を深めていただければうれしいですね。地域の活性化に貢献することを踏まえた広い視点で、デジタルサイネージをこれからも運営していきます」(津村社長)。
従業員の9割は女性 ワークライフバランスの充実に様々な制度を導入
店舗での接客担当者をはじめ約60人が在籍する三彩商事の従業員は、女性が9割を占めている。従業員のワークライフバランスを充実させるため、子育て支援のための行動計画を2009年から策定しており、女性の育児休業取得率80%以上を目指している。仕事と介護の両立支援制度も、老親のサポートが必要な従業員のために設けている。
ダイレクトメールの印刷にオンデマンド印刷機を活用
オンデマンド印刷機を活用して印刷をしている様子
三彩商事は顧客とのきめ細やかなコミュニケーションをモットーにしている。SNSを通じた情報発信に力を入れる一方で、店舗でのリアルなコミュニケーションも大事にしていきたいという。「お客様の生活に彩りを与えること、楽しみながらお買い物をしていただくことを心掛けています」と津村社長は話す。顧客に店舗に足を運んでもらう上で、キャンペーンなどをお知らせするダイレクトメールの発送も欠かせない取り組みだ。デジタルとアナログの両面で顧客にアプローチしている。
ダイレクトメールなどの印刷に活用しているのが、多様な用途に柔軟に対応できる機能を持ったオンデマンド印刷機だ。2013年から導入し、2018年4月に新しい機種に入れ替えた。ダイレクトメールは短期間で数千単位の部数を印刷しなければならないことから、機種を選定する際は印刷の速さと正確さを重視している。新しい機種に入れ替えるたびに印刷速度のアップ、印刷バリエーションの拡大、印刷コストのダウンが実現できているという。
デジタル機器の操作に長けた20代、30代の従業員は、店頭でタブレット端末を使って商品の説明や提案を行っている。店頭での顧客とのコミュニケーションを円滑にする上で、デジタル機器の活用をこれからも進めていきたいという。また、販売管理システムを活用して顧客の販売履歴や嗜好などの分析も行っている。「お客様のニーズは多様化しています。その中でそれぞれのお客様の好みに合った提案をできるように、これまで以上にデータをしっかりと分析していきたい。ICTを積極的に活用して従業員一人ひとりに経営者の視点を持ってもらうことで提案の精度を高めていきたいと思っています」と津村社長は話す。
ファッションを軸にした「モノ」だけでなく、体験を中心にした「コト」や、楽しく時間を過ごす「トキ」を商品として提供するライフデザイン企業として成長を図ろうとしている三彩商事。ICTとデジタル機器がその挑戦を後押ししている。
三彩商事の本社の外観
事業概要
会社名
三彩商事株式会社
本社
香川県高松市南新町11-1
電話
087-861-5430
創業
1950年12月
従業員数
60人
事業内容
婦人服、紳士服、毛糸小売、ジェラート企画・販売、広告業
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