「共有できない日報、売上集計の手間」が一変。システム導入で本来の仕事に専念 岸本建設(岡山県)
2023年01月12日 06:00
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1965年創業の岸本建設株式会社は建設会社として着実な歩みを続ける一方で、創業者が特別養護老人ホームを運営し始めたことをきっかけに、2代目の岸本浩二代表取締役が介護事業への進出を決断し、2016年から二本柱で走り始めた。一方でICTに本格的に着手したのは2019年から。「手書きの日報、手間のかかる売上集計」は営業支援ソフトなどで一変し、2023年秋オープンを目指す複合介護施設でもICTによる効率化を目指す。
1965年創業、2年後には一級建築士事務所も
岸本建設株式会社は1965年4月、現会長の岸本三七𠮷氏が岸本建設工業所として創業した。岸本会長は1967年2月に岸本一級建築士事務所を開設、1972年9月に岸本建設株式会社となった。
次男の岸本社長は大学卒業後の1994年から、地元のゼネコンで3年経験を積んだ後に入社。企画室長などを経て2013年に代表取締役に就任した。
特徴ある建設会社として順調に拡大
岸本社長が目指したのが、特徴ある建設会社。2000年に床下収納のあるルネスマンションを扱い始めたのを手始めに、2014年には1階がガレージ、2階が住居になっている「G-styleclub」のガレージ付アパートの取り扱いを始め、順調に売り上げを伸ばしてきた。
2021年12月からは店舗付き住宅「and shop」の取り扱いを開始。一から設計するのに比べて1割ほど低廉な住宅で、理美容業界などに営業。床下収納のあるルネスマンションは投資用物件として今後岡山県下に5棟建設する計画で、着実に実を結んでいる。
瀬戸内国際芸術祭の建物も縁あって建設
縁あって携わったのが、瀬戸内海の島々を舞台に開催される瀬戸内国際芸術祭(略称・瀬戸芸)の建物。展示スペースにするため、古民家を斜めにカットして補強する工事を請け負ったほか、香川県・豊島の築約50年の民家を改修した一棟貸しの宿泊施設「ウミトタ」も請け負った。
会長の両親の世話の大変さをきっかけに、社会福祉法人設立
そんな岸本建設が、建設業とは無関係の介護事業に乗り出すきっかけは、三七𠮷会長が老親の世話をしたことに始まる。ともに寝たきりになった両親は施設に入ることができず、病院に入院するしかなかった。病院では治療をしても介護はしない。このため、三七𠮷さんと兄弟が順番に泊りがけで世話をすることになった。
岸本社長が中学生の頃、三七𠮷会長は2週間に1回の割合で夜の10時から翌朝7時まで病院にいる暮らしを続けていた。三七𠮷会長は自らの経験から「施設がもっと必要」と感じ、社会福祉法人を立ち上げて、特別養護老人ホームの運営を始めたのだ。
「在宅支援を」と始めた介護事業は2023年秋、複合介護施設に結実
特養の運営を始めたのは、2005年のこと。岸本社長も法人の常務理事となり、入所者の生の声に耳を傾ける中、「在宅支援があれば入所しなくて済む人がたくさんいる」と気づき、2016年の介護事業進出につながった。同年2月の「ともにヘルパーステーション」開設を皮切りに、「ともに居宅介護支援事業所」、「ともに訪問看護ステーション」を開設。2023年秋には、岡山県赤磐市に複合介護施設をオープンさせる。
施設には障害者が過ごすグループホームや高齢者が通うデイサービスに加え、子どもたちが放課後を過ごす学童保育、地域住民が憩うカフェスペースも設ける。その狙いは、「障害者と高齢者、子どもと地域の人たちという地域の誰もが集える場所にすることで、それぞれの間の見えない壁を取り払う」(岸本社長)こと。デイサービスの開設時間は午前7時半から午後7時半として、高齢の親のいる人でも正社員として働けるよう配慮する。
手書きのため、共有できない日報、手間のかかる売上集計の状況に蓄積した疑問
建設事業と介護事業に忙しい日々を送る岸本社長だったが、日々の業務の中で「これ、ダメなんじゃないか?」と感じたのが、手書きのために翌日午後にならないと上がってこない日報や売上集計。従業員間でも、すぐに共有されない日報は業務の引き継ぎに支障をきたす場合もあった。建設業界にも押し寄せ始めた働き改革への取り組みもICT化を後押しした。
岸本建設のICT化を託された安留常務取締役は勤怠管理システムを導入して、働き方改革に取り組む基盤を作るとともに、システム支援会社と連携して営業支援ソフトとホームページ作成支援ソフトを導入した。
ホームページ作成支援ソフトを導入したらアクセスが一気に4倍
安留常務取締役が驚いたのが、ホームページ作成支援ソフトの効果。それまでも自社ホームページへのアクセスを増やすため試行錯誤して改善していたが、一向にアクセスが増えなかった。それがホームページ作成支援ソフトを導入、システム支援会社の手も借りながらSEO対策を講じるとアクセスは一気に4倍に増えた。
「答えは単純なところにあった」という。
情報を暗号化するSSL対応ができていなかった上に、スマートフォン対応になっておらず、スマートフォンでホームページを訪れた人は小さな画面を拡大して見る必要があったからだ。つまり、スマートフォンで訪れた人はほぼすぐに離脱し、アクセスにつながらなかったというわけだ。
その後もアクセスは着実に伸びており、求人ページからの応募で採用につながるケースも出てきた。
営業支援ソフト導入で日報やスケジュール管理、会議室予約と営業も事務も手間が大きく減った
営業支援ソフトも効果を発揮。日報はパソコンやスマートフォンで書き込めるようになったため、すぐに誰もがチェック可能となり、「手書きだと少なかった分量も増えた」(岸本社長)。社員のスケジュール管理や会議室の予約も営業支援ソフトでできるようになって効率は上がり、売上管理の手間も大幅に減った。
社会貢献活動として、子ども食堂も始め、将来はイベントも
業務拡大とICT化を着実に進める岸本社長が進めているのが、社会貢献活動。コロナ禍で相対的貧困などが注目を集める中、ロータリークラブの縁で、NPO「子ども食堂おむすびころりん」を設立。今は毎週日曜日に50食分の弁当を配布しているだけだが、アフターコロナになれば、ドッジボール大会やカレー作りのイベントなどを行いたいと考えている。
地元に根付いた岸本建設は、地元により愛される会社としてますます根を広げていきそうだ。
事業概要
会社名
岸本建設株式会社
所在地
岡山県岡山市北区今5丁目5番16号
HP
https://www.kishimoto-kk.com/
電話
086-241-2295(代)
創業
1965年4月1日
社員数
49名
営業種目
土木・建築工事の設計・施工/不動産の売買・仲介及び賃貸/居宅介護支援事業/訪問介護事業/訪問看護事業
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