製造業(その他)

サービスの高品質化や情報の共有のため20年前からCAD活用 HP改善で受注拡大目指す カナックス(埼玉県)

From: 中小企業応援サイト

2023年01月24日 06:00

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産経ニュース エディトリアルチーム

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つくばエクスプレスの三郷中央駅から、車で10分ほどの工場が建ち並ぶ一角に、株式会社カナックスの本社がある。工場の入り口には数十センチはある長さのボルトが置かれ、同社が土木工事の現場などで使われるアンカーボルトをはじめとした金属加工製品を手掛ける会社であることをうかがわせる(TOP写真:カナックスの工場と紺野功代表取締役)。

ナット製造からプレス加工を経てボルト製造へ

棒状の金属に溝が彫られたものがボルトだが、紺野功代表取締役によれば、1953年の創業時からしばらくは、ボルトに通して締め上げるナットの製造を手掛けていたという。「東京の葛飾に工場があってナットを作っていたので、葛飾ナットという会社名だったと聞いています」(紺野社長)。その葛飾ナットが、周辺に住宅が増えてきたこともあって埼玉県三郷市へと移転。手掛ける仕事も金属のプレス加工へと転換したことから、社名を現在のカナックスへと改めた。

並ぶ機械の多さがカナックスの多彩な加工力を示す

並ぶ機械の多さがカナックスの多彩な加工力を示す

「決まった形をしているナットは大量生産ができるので、どうしても薄利多売になってしまいます。競争になったら大きな工場には勝てないということで、金属プレスに業態を転換したそうです」(紺野社長)。情勢を見て敏感に機会をとらえる経営陣の経営マインドは、その後にナットとは正反対のボルトを製造する事業へと、さらに業態を広げさせた。「金属の板から丸や四角といった部品を切り抜いたり、板をL字型に曲げたりする加工の仕事をより高度化するために、NC旋盤を導入して精密な切削加工を行える体制を整えたことで、ネジを作ることもできました」(紺野社長)。

溶接も自社で行う

溶接も自社で行う

現在工場には、複数のNC旋盤が並ぶほか、旋盤やフライス盤といった工作機械に溶接機、切断機、プレス機などを備え、多彩な金属製品の製造に対応している。「手掛けている製品でわかりやすいものは、高速道路に設置される遮音壁を固定するアンカーボルトですね」(紺野社長)。ほかにも様々な製品を扱っており、「1回の受注は200〜300本といったところで、ほとんど受注生産ですが、種類が多いため年間で何万本という数になります」(紺野社長)。

図面作成にCAD利用し効率化や共有化目指す

こうした多彩な注文をさばく上で、コンピューターを使って設計するCADの利用が鍵となってくる。「お客様が、作って欲しい製品の簡単な図面や求めるサイズを送ってきた時に、こちらでしっかりとした図面にする必要があります。ここでCADを使うことでデータをデジタル化できますし、お客様にも製品のしっかりとした形を見せることができます」(紺野社長)。

デジタル化したデータをストックしておくことで、その後に同じような注文が入った時に、過去のデータをもとに図面を起こすことができれば、省力化につながる。「経験が豊富な従業員なら、手描きの簡単な図面を添えた指示書でも対応できますが、これから増えて欲しい若い従業員には、そうした無理をお願いすることはできません。何が欲しいか、何をすべきかしっかりと指示を出す上で、CADを使いデジタル化したデータの活用が重要になってくると見ています」(紺野社長)。

製品力や技術力に対する信頼があってこそのCAD利用。その強みを生かすことに重点を置いている

カナックスの事務所ではパソコンや複合機を活用して設計や事務などを行っている

カナックスの事務所ではパソコンや複合機を活用して設計や事務などを行っている

若い従業員を採用し、40代半ばまで上がってしまっている従業員の平均年齢を下げて、持続的な経営を可能にするためにも、製品力のさらなる強化や技術力に磨きをかけ、その上でのデジタルデータの活用が必須となる。確実に変わっている時代に合わせ、CADの利用を進めていきたい考えだ。

カナックスの事務所でパソコンを見る紺野功代表取締役

カナックスの事務所でパソコンを見る紺野功代表取締役

ホームページ開設を喫緊の課題に

そしてもう一つ、現在実現に向けた動きを始めているのが、企業ホームページの開設だ。カナックスという会社名で検索しても、業種が似た同名の会社のサイトが表示されるだけで、同社のホームページはヒットしない。三郷市という所在地といっしょに検索すると、三郷市商工会のFacebookに投稿された会員企業の紹介文が出てくる程度。これを読むと、どのような事業を手掛けていて、どのような加工用の設備を備えているかはわかるが、「文字だけではやはりイメージしづらいと思っています」(紺野社長)。

カナックスの紺野功代表取締役

カナックスの紺野功代表取締役

高速道路の遮音壁を止めるアンカーボルトといっても、高速道路を利用しない人にはどのような形をして、どのように使われているかはまったく思い浮かばない。「どのような製品を作っているのか、どのような加工技術を持っているのかは、画像や映像で見せてこそ伝わるのではと考えています」(紺野社長)。そうした画像や映像を発信し、多くに見てもらうプラットフォームとして、企業ホームページの開設が喫緊の課題だと訴える。

「作っているものや作れそうなものがわかれば、こうしたものを作って欲しいという注文も出しやすいのではと思っています」(紺野社長)。同社では以前、金属加工の技術を活用して傘立てを作ってみようと考えたことがあった。その時は、販売するチャネルを持たず断念したが、「ホームページで技術を見せることで、ボルト製造やプレス加工といった作業とは違った分野からの依頼も来るようになるかもしれません」(紺野社長)と期待する。

技術力と用途対応力を見せて新規の取引先や取扱品目を増やす

現状の仕事でも、新しい取引先が得られる可能性がある。「経済的な問題や、従業員の高齢化から金属加工の仕事をやめてしまう工場が出ています。そこに頼んでいたお客様が、新たな発注先を探した時、ホームページがあれば当社を見つけてもらえます」。現状でも口コミによって、新しい取引先からの依頼があるという。どこにでも情報を届けられるインターネットを活用することで、より広い範囲から、新しいアイデアも込みで注文を得られるようになる。「だからこそ、ホームページを早急に開設したいと思っています」(紺野社長)。

カナックスの工場にあるプレス機

カナックスの工場にあるプレス機

ホームページができれば、会社の存在を知って若い人材も応募してくれるようになる。そうした人たちが工場に増えてくれば、CADの活用をさらに広げられる。工場にもパソコンやモニターを置いて作業の指示書を図面データとともに写し出し、紙の使用を減らせるようになる。「作業の状況を端末から打ち込めるようにすれば、進捗状況を一元的に把握できて、新しい注文を入れてもよいかを即座に判断できるようになります」(紺野社長)。プレス機や加工機など振動が激しく大きな音も出る機械を稼働させているためパソコンの設置が難しいという課題もあるが、こちらも時代が変化するなら対応していく考えだ。

株式会社カナックス本社

株式会社カナックス本社

ベースの技術力があるからこそホームページの強化が重要

葛飾区から移転してきた三郷市も、周辺に住宅が増えてきて「残業も早朝からの操業もできません」(紺野社長)。そうした制約の中で収益確保を目指すには、限られた時間での生産性向上が必要となる。そのためには、ICTが大きく貢献する。また、カナックスのような技術力と様々な用途への対応力が高い会社をもっと世に知らしめるためにWebがあり、ホームページがある。ホームページの改善による情報発信で恐らく次の飛躍の足掛かりを出来ると確信した。

事業概要

会社名

株式会社カナックス

本社

埼玉県三郷市新和5-231

電話

048-952-7516

設立

1958年

従業員数

15人

事業内容

金属製品製造・加工

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