リモートコミュニケーション強化、コロナ禍で強み発揮し6年で売上倍増の建設機械部品専門商社 トモエシステム(兵庫県)
2023年02月01日 06:00
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2022年に創業75年を迎えた株式会社トモエシステムは、2018年度に乗せた年間売上100億円台を、コロナ禍にあっても維持し、2021年には過去最高の150億円を記録した。その背景のひとつが、コロナ禍前に取り入れていたコミュニケーションツール。「電話とメールとweb会議」を当たり前にしていたこともあり、取引先や得意先との関係強化につながり、結果的に6年間で売上高が倍増した。(TOP写真:モニターを活用し説明を行う柳瀬秀人代表取締役社長)
1947年の創業時は自動車補修部品卸会社
株式会社トモエシステムの母体は、1947年5月創業の巴商会。今もトモエシステムの本社近くにある巴商会は、柳瀬秀人代表取締役社長の祖父、柳瀬朝永(ともえ)氏が、自動車の補修部品や用品を取り扱う自動車補修市場の2次卸問屋として、モータリゼーションの流れに先んじて創業した。
巴商会時代に撮影された記念写真
1950年、その事業に建設機械部品の販売が加わる。神戸には当時から、重工業メーカーの工場がいくつもあり、国産の建設機械の生産が始まるや、その機械部品の一部代替品として、巴商会で販売していた商用車用部品が建設機械へと用途展開された。爾後、取引関係を発展させ、建設機械部品の専門商社として経験とノウハウを蓄積させることとなる。
上海進出直後に柳瀬社長が入社、グローバリゼーションの波に乗せる
2010年の入社後、グローバリゼーションとICT標準化への対応を心掛けてきた柳瀬秀人代表取締役社長
信用を旨とした商売により、着実に力をつけた巴商会は2002年、トモエシステムを分社化。機械部品を扱うトモエシステムは2009年、上海に100%子会社を進出させた。その後もタイ、米国に100%子会社を設置し、2022年には台湾にオフィスを構えた。その推進役を担ったのが、2010年に入社したばかりの柳瀬社長だった。
柳瀬社長は大学卒業後、神戸の食品メーカーに10年勤務。2007年に退社し、友人の勧めもあって、友人が立ち上げた会計系コンサル会社で3年勤めた。トモエシステムへの入社は2010年、世界を襲ったリーマンショックの翌年にあたる。
直後から海外子会社を設立するとともに、英語のできる人材を社内に充実させたことで、建機メーカーのグローバリゼーションの波に乗って海外での売上は増加していった。
トモエシステムの本社ビル(改修工事後予定図)
コロナ禍乗り越え、21年度は過去最高。2015年度比でほぼ倍増
2010年代の同社の売り上げは70億円前後で横ばいだったが、2015年度に79億円だった売上高を3年後に125億円に乗せた。2019年度は新型コロナウイルスの影響で110億円に落ち込んだが、2020年度には増加に転じ、2021年度は150億円と過去最高を記録した。
部品商社は部品を仕入れて販売する。当然、部品は世界中から買い付ける。コロナ禍やウクライナ侵攻などで物流が乱れるなか、各地で一時閉鎖を余儀なくされる工場が相次いだ。また、半導体をはじめとする多くの部品不足、原材料の高騰からくる値上げラッシュや為替の激変などが目まぐるしく起こったが、「とにかく顧客の生産ラインを止めないよう全社一丸となり、部品供給に死力を尽くした」(柳瀬社長)という。
「情報共有が協力の源泉」。共有の基盤はICT
こうした危機的状況下において安定供給を維持し、顧客への安心を提供できた背景には、「いい情報も悪い情報も、仕入れ先や得意先と情報共有し、各社から協力を得られた」(柳瀬社長)ことだ。もともと、トモエシステムは信頼をベースにした取引をしてきたが、窮状もそのままオープンにする姿勢に得意先などが共感し協力してくれた。
こうした信頼関係を構築し、維持する要としての情報共有の基盤には、4年前に導入したMicrosoft365があった。特に有効だったのがTeams。国内外を問わず得意先や仕入れ先と随時web会議を行い、それが協力を得られる関係構築につながった。
2022年1月には電子黒板も導入。英語が苦手な社員は、電子黒板の画面に手書きして説明することで、充分に意思疎通できるようになっているという。
会議室に設置された電子黒板を使い、取扱商品について説明する海士部豪マネージャー
「ICTは標準」で積極導入。「変化嫌い」は使ってみることで解消へ
柳瀬社長は2010年の入社当時から、「デジタル化、ICTは標準」として推進してきたが、すんなりと進んだわけではない」という。「今できているのに、なんで新しいことをしないといけないの?」そんな疑問が常に出されてきたからだ。
「人間は変化を嫌う」。そう話す柳瀬社長が実行しているのが、「まずはみんなに使ってもらう」こと。このため、Microsoft365導入時、すべての会議室にマイクスピーカーを設置して社員が使いやすい環境を用意した。「効果を実感すれば、使うようになる」からだ。
本社会議室の様子。機器の効果を実感してもらうため、すべての会議室にモニターやプロジェクター、スピーカーマイク、Webカメラを設置している
柳瀬社長の入社当時、トモエシステムのICTは脆弱だった。セキュリティ面に不安があったほか、社内のサーバーは容量不足で、特定の社員のパソコンだけに保管されていたデータも多かった。パソコンが故障すればデータがなくなり、右往左往するような状況だったのだ。このため、システム支援会社に相談して、ネットワークを充実させてセキュリティを強化。Microsoft365も入れた。その時に実感したのが、昔なら何千万円もかけないと導入できなかったシステムが、圧倒的に安く導入できるという時代になったということだった。
DX投資のおかげでリモートコミュニケーションができ、業容拡大
導入コストが大幅に減った理由には、サブスクリプションによる月額払いという理由もある。積み上げていけばそれなりの費用になるが、柳瀬社長は「DX投資の目的は、すべて社内や社外とのコミュニケーション力の強化。コロナ禍にあっても、社内外を問わずコミュニケーション面で何の問題もなかったのはDX投資の結果だし、取引先とのweb会議を円滑に行えたからこそ成長につながった」と話し、DX投資の効果に自信をもっている。
建設機械部品の市場は、ショベルカーの世界市場推移に連動するが、このところのトモエシステムの成長率は建設機械市場の推移よりも2割程度高い。様々な戦略や方策、そのための投資の結果がステークホルダーとの信頼関係を強化し、業容拡大につながった。DX投資もまた、トモエシステムの力の源泉となっていることは間違いないようだ。
「Teamsの活用で不要なメールをなくしたい」
「web会議は、電話やメールのように“あって当たり前”の時代」(柳瀬社長)。だから、電話やメールと同じように、必要な時にいつでもweb会議を行うようになっている。そんなトモエシステムにあって、次に狙っているのが、手間のかかるメールをなくすこと。機密文書などはメールを使い続けるとみられているが、社内でやり取りする大半の文書やデータはTeamsのチャット機能で共有できるというわけだ。
チャット機能の活用など、ICTの効果を発揮するには社員教育が必須
新たなソフトやハードは不要だが、すべきことはある。それは社員教育。どのようなソフトであれ、便利さを実感できて初めて人は使うようになる。全社員に便利さを実感してもらうためには、やはり一定程度の教育が必要になる。
社員教育にはもちろんコストがかかる。しかし、社内外のコミュニケーション強化や会社の体質強化につながれば、そのコストは十分にペイできる。少なくとも、せっかく導入したDXが宝の持ち腐れになるよりは、確実に費用対効果を高めることになるだろう。トモエシステムは今後もICTを血肉として事業を拡大させていきそうだ。
事業概要
会社名
株式会社トモエシステム
本社
兵庫県神戸市兵庫区大開通7丁目1番17号
電話
078-576-1088
創業
1947年5月
従業員数
150人(グループ)
事業内容
建設機械、農業機械、鉄道車輌、工場設備の各種関連部品
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