CADデータや複合機でデジタル化した書類データ、画像、映像を共有し顧客提案や対応に積極活用 高岡冷機(香川県)
2023年01月31日 06:00
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四方を海に囲まれて、昔から漁業が盛んだった日本では、魚を新鮮なままに保つ冷凍機が大正時代に作られて、全国に導入されていった。遠洋漁業の漁船にも冷凍機が積まれるようになり、遠くの海で捕れた魚を日本へと持ち帰って、食卓に送り届けていた。日本人と冷凍機の密接な関係。香川県観音寺市に本社を置く株式会社高岡冷機も、そうした歴史の中で、主に四国を中心とした食品関連事業向けの冷凍設備を製造・施工して、食品の安全性と品質の確保に貢献してきた。
アイスキャンディー販売がスタート。その後冷凍機の販売から設計・製造・施工へと展開
「もともとは、アイスキャンディーを作って売っていたと聞いています」と振り返る三谷秀憲代表取締役。当然、製造や保存のために冷凍機を導入していたが、やがて設置の工事も行うようになる。戦後間もない1947年に高岡冷機工業所という社名で会社を立ち上げ、冷凍設備を必要としている会社や店が冷凍機を導入する手助けを行ってきた。
時代はやがて高度成長期に入り日本は大いに発展。食品スーパーが全国各地に作られて、新鮮な食材を提供するようになった。「先代は、そうしたスーパーに冷凍設備を設置する工事をたくさん手掛けて、顧客を増やしていったそうです」(三谷社長)。食料品売り場にずらりと並ぶ冷凍食品も、高岡冷機が納めた冷凍機があってこそ販売できる。日本の食卓を支える柱の1本を、同社が作ってきたと言っても言い過ぎではないだろう。
その後、スーパーマーケットチェーンの統合が進み、コンビニエンスストアの登場もあって廃業するチェーンも出てきた。以前に比べて顧客としての割合は下がっているが、長い時代を共にしてきた関係は今も続いている。その一方で、同社自体の事業の柱は、「より大型の施設、例えば食品工場向けの冷凍機を設計して施工する方へと変わってきています」(三谷社長)。
事務所でパソコンを見ている三谷社長
きめ細かな対応で最適な提案と施工で顧客の信頼を得る。その裏には、20年来のCAD活用も一助に
顧客から冷凍設備の導入依頼があると、それぞれの顧客に合わせて使用条件や要望を細かく聞き取り、何度も打ち合わせを行った上で最適な形で施工を行う。「自分の会社で設計を行い、顧客先に納入しているからこそ可能なサービスです」(三谷社長)。その設備も、駆動装置は庫外に置いて部品の簡素化をはかりメンテナンス性を向上。床をステンレス一体構造にして衛生的で洗浄性に優れた構造を実現した。
こうした製品力の高さも、高岡冷機が四国に拠点を置きながら、西日本の各地域や中部圏へと顧客の範囲を広げていける背景になっている。ここで、きめ細かな設計力や施工力、そして製品開発力を支えているのがCADを使った設計だ。「もう20年以上は前のことだと思います。ドラフターを使って手書きで図面を引いていたものを、コンピューター上で設計するCADに切り替えました。他ではまだあまり使っていなかった時期だったのではないでしょうか」(三谷社長)。
図面データや書類、画像、動画もクラウドストレージに保存して共有して活用。顧客の動画データも共有してアドバイス
事務所のノートパソコンでCADを操作
いったん図面を引いた後、変更があると手書きのものは消したり書き直したりする必要がある。これがコンピューター上なら何度でもやり直せる。「顧客にとって最適な設計を行えるようになりました」(三谷社長)。いったん完成した図面をストックしておけば、改装の際に参考にしたり、似たような設備の設計に転用したりといった使い回しも楽になり、業務の効率化に大いに役立つ。
共有化によってアドバンテージを確保した経験が、「今は、社内でやりとりする書類の多くを電子化して、クラウドストレージに入れておくようにしています」(三谷社長)とつがり、書類だけでなく、画像や映像などもクラウドストレージで共有化して、取引先とのやりとりに使っている。「設置した冷凍機の具合を見てほしいという時に、画像や映像で撮ってもらったデータを送ってもらうようにしています」(三谷社長)。そのデータを同社の専門家が見て、適切なアドバイスを行う一種のリモートメンテナンスを実現している。
「本来なら出かけて行って状況を確認するのが顧客のためにもよいのですが、コロナ禍でなかなか出向けない状況が続きました。そうした時でもデータを共有化することで、実際に出向くよりも迅速に対応できました」(三谷社長)。また同社では、複合機を使うことでパソコンを使わなくても書類のデータ化を行えるような仕組みを導入。複合機でスキャンすると電子化されてストレージに記録され、オフィスに置いたパソコンや、手元のタブレットやスマートフォンと いった端末から見られるようになっている。
複合機を活用してデジタル化やペーパーレス化を実現。クラウドストレージに残すことで問題が発生しても何が原因か確認できる
複合機の導入によってペーパーレスを推進できた
帰り際などもいちいちパソコンを立ち上げて操作しなくても、複合機のボタンを使用して紙をスキャンしてクラウドストレージに保存できるため、時短にもつながる便利さがある。複合機については、FAX受信した文書などをプリントアウトせずデータとして記録しておき、モニターで内容を確かめた上で必要ならプリントアウトするような使い方もしている。「ペーパーレス化につながりますし、従業員がどのような書類をやりとりしているのかを確認することもできるので、仕事の進捗状況も把握できます」(三谷社長)。ストレージ上に記録として残しておくことで、後になって問題が発生しても、何が原因だったかを確認できる。複合機を核にしたデジタルソリューションの利点を、大いに活用していると言えそうだ。
コロナ禍では、外食産業が一時期休業を強いられるなどして大きく売上を落とした。このため、同社が冷凍装置を納めている外食産業向けの冷凍食品製造工場が設備投資を見送り、業績にも影響が出た。今は回復基調にあって取引先からの引き合いが急激に増えている。地球温暖化への対応から、業務用でもフロンを使わない冷凍装置を導入しようとする動きが今後強まると見られている。「大型フリーザーだけでも自然冷媒にしようとするところが出ています。そうした需要に対応していくことで、仕事は今後も拡大すると見ています」(三谷社長)。
ホームページに導入実績や利用例を載せて、高岡冷機のよさを理解してもらい問い合わせ件数を増やしたい
高岡冷機の現在のホームページ
そこに加えて、新しい取引先を獲得するためにも、「ホームページを充実させて業務内容を広くアピールできればと考えています」(三谷社長)。現在のホームページ自体もしっかりとデザインされたもので、どのような製品を手掛けているかが画像と文章で分かりやすく紹介されているが、「取引先の許可を得て、より具体的な導入事例を紹介していけたらと思っています」(三谷社長)。
優れた人材を確保する上でも、ホームページの充実は必要だ。「12月に入社してくれた従業員は、最初は人材紹介会社のサイトで当社のことを知ったようですが、そこからホームページを見てどのような仕事をしているかを知って、面接してほしいと言ってきてくれました」(三谷社長)。ブログのコーナーもあるが、「忙しくて更新できていないのが残念です。観音寺市の紹介も含め積極的に情報を載せて、会社のよい雰囲気を知ってもらえればと思います」(三谷社長)。
顧客サービスや提案で蓄積された知恵のデータ活用を20年以上前から実施
ビッグデータという言葉が、流行った時があるが、いつの間にかあまり使わなくなった。それは単にデータ量が数百万、数千万あるという事ではなく、意味のあるデータがあり、しかも大量にあるデータから目的のデータにたどり着けることが重要だからである。
高岡冷蔵は、20年以上前から顧客からの注文を単純に受けるだけではなく自社で工夫することで知恵のデーターベースが出来上がっている。まさに質と量の蓄積がある会社といえよう。役員も含めて13人とそれほど大きくない規模だからこそのアットホームさに加えて、デジタルを駆使した働きやすさがあることで、これからも過去の知恵に現在の知恵を載せて発展していくと予想される。
事業概要
会社名
株式会社高岡冷機
本社
香川県観音寺市坂本町3-8-30
電話
0875-25-2664
設立
1947年4月
従業員数
13人
事業内容
スパイラル急速凍結設備及びトンネル式急速凍結設備/食品搬送設備プラント/大型製氷機及び自動搬出装置設備/イータマックス冷凍システム/冷凍・冷蔵プラント/太陽光発電システム/食品店舗設備(オープンショーケース・プレハブ冷蔵庫・厨房)/回収冷媒処理業務(フロン破壊処理)/その他冷凍機応用機器設備
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