販売管理をクラウド化し複数拠点の移動時間と費用を削減 テクニカルアーツ(埼玉県)
2023年02月09日 06:00
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株式会社テクニカルアーツは産業用・医療用の刃物メーカーだ。需要拡大で手狭になった本社・工場を移転し、事務所と合わせて2拠点となったが、販売管理ソフトをクラウド化して時間や費用の無駄を省いている(TOP画像:新工場での山形龍司社長)。
産業用刃物メーカーとしてスタート、数百種類を製造
同社は1990年、産業用刃物の製造会社として埼玉県川口市でスタートした。携帯電話の保護フィルムや化粧品のふたなどに付いているシートを打ち抜くための「丸刃」をメインに、専属の代理店を通して刃材メーカーに納入している。
製品の丸刃は国産の材料を細かく切断し、先端を刃付けして研磨する。種類は数百種にのぼり、同じような丸形に見えても、コンマ1ミリ単位で多種多様なサイズを製造できる。材料に適した工具の選定や加工の段取りなどに工夫を重ねて1個あたりの加工時間を短縮し、生産量を上げてきた。2022年8月期で同社の売上は約1億6000万円、丸刃メーカーとして業界トップの実績を誇る。2010年からは患者の体内にたまった浸出液やうみなどを排出するドレナージ用の「穿刺針」という医療用刃物の製造にも乗り出している。
同社の産業用丸刃製品群
需要増でやむなく本社・工場を移転、販売管理ソフトをクラウド型に変更
1993年に埼玉県蕨市に本社・工場を設営し、同所で製造を続けてきたが、次第に産業用刃物の需要が増大し、工場が手狭になってきた。当初は刃を磨く前の下作業を外注するなどしてしのいでいたが、どうしても生産量が受注量に追いつかない。やはり広い工場に移転するしかないと2020年くらいから移転先を探し始め、欲しかった広さがある埼玉県熊谷市内の工場を居抜きで購入した。
必要な製造設備がぴたりと収まった新工場は明るく清潔だ
2022年2月から2回の引っ越し作業を経て、同年3月中旬から新工場が稼働。だが、近くに同社と長年取引している信用金庫の拠点がなかった。「そこで川口市内に新たに事務所を開き、2つの拠点を行き来することになったのです」と説明するのは山形政貴氏(33歳)だ。山形龍司社長の長男で、他社での勤務経験を経て5年ほど前から同社で営業や経理事務を担当している。4歳下の弟も技術営業担当として入社しており、兄弟で製造現場をメインに業務にあたる父を補佐している。「小さな頃から家業を見ていたので父の会社に入ることに抵抗はなかった」と言う。
拠点が2つになったのを機に2022年2月から販売管理ソフトをインターネット上で利用する「クラウド型」に変更した。従来は自社内でサーバーの所有や運用を行う「オンプレミス型」で、パソコンなどの機器が設置してある場所に行かないと作業ができなかったが、拠点が複数になったのでインターネット環境さえあればパソコンやスマートフォンでどこでも仕事ができるようにしたいと考えたからだ。
コロナ禍によるテレワークでクラウドの必要性を痛感
オンプレからクラウドに替えたのは、コロナ禍でテレワークを余儀なくされ、クラウドの必要性を痛感していたこともある。コロナ感染の急拡大で外出制限が出ていた時は出社を控え、販売管理を担当する従業員と1週間交代でテレワークに取り組んでいたが、オンプレだと仕事に支障が出た。「見積書作成など、その都度事務所に電話して必要なデータをメールで送ってもらっていた」と政貴氏。クラウドなら、いつでもどこでも支障なく仕事ができると考えた。
販売管理クラウド化のメリットを語る山形政貴氏
クラウドで時間や費用の無駄を削減、バージョンアップへの意欲も
新たにクラウド型のライセンスを2つ購入し、売上や仕入関係の資金の出し入れや顧客管理に活用している。
導入効果は予想以上だった。熊谷と川口の2拠点を移動するには、車で片道2時間、往復4時間かかる。高速道路の東京外かく環状道路と関越自動車道を利用すると時間は短縮できるが、高速料金が1回あたり2,500円かかる。「時間や交通費が余分にかかってしまう。もしクラウドを導入していなかったらと考えると恐怖です。入れて良かったと心底思う」と政貴氏。それでも1週間のうち2~3回は2拠点を往復する必要があるが「毎日往復しなくてもいいだけでも全然違う」と話す。
販売管理のクラウド化の効果を実感した政貴氏は「あれができたらいいな、これもできたらと、バージョンアップ欲がどんどん出てくる」と笑顔を見せる。
例えば、取引先と交換した名刺の管理だ。「今はいただいた名刺をマスターデータに入力しているが、モバイル端末と紐付いていないので、名刺交換後にすぐ入力しておかないと必要な時に見つからないことがある。名刺を直接登録してクラウドで管理できたら楽ではないか」と話す。営業担当として交換する名刺数は年に数百枚に及ぶ。「販売管理ソフトに紐付けて、時系列や50音順などで管理できたら便利」と思っている。
販売管理のほかにも、「いまはエクセルでまとめている生産管理をいずれはクラウド化して、紙ベースではなくパソコンで入力できるようにして熊谷にいる現場の従業員に使わせたい」と考えている。
同社が開発した医療用刃物・ドレナージ用穿刺針を手にする山形政貴氏
医療用刃物製造の技術に自信、売上増が目標
同社は今後、1社独占の産業用刃物に加え、医療用刃物の製造に重点を置いていく方針だ。大手医療機器メーカーの依頼で穿刺針の開発に乗り出した当初は、産業用と違う技術が必要なため苦戦したが、埼玉県の「モノづくり製品開発支援」の認定を受け、埼玉県産業技術総合センターの技術支援で、切れ味が良く切り口が小さい刃物を開発することに成功している。政貴氏は「従来流通している製品より、患者様の身体に負担が少ない製品です」とアピールに余念がない。
材料不足などで一時は値上がりが続いていた医療用刃物の材料になる国産ステンレス材の価格も、2023年に入ってようやく落ち着いてきた。材料不足で守るのが厳しかった納期も次第にもとに戻りつつある。医療用刃物の売上向上にも、ICTが心強い味方になってくれるはずだ。
事業概要
会社名
株式会社テクニカルアーツ
住所
埼玉県熊谷市三ヶ尻4272-1
電話
048-579-5351
創業
1990年
従業員数
16人
事業内容
紙器抜型丸刃製造、レーザーカッティング、医療用穿刺針等刃物製造
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