シニアの住宅設備の困りごとに真摯に対応 顧客へは紙やFAX、社内はデジタル化 奈良日化サービス(奈良県)
2023年02月07日 06:00
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奈良県北部で住宅設備機器の設置、メンテナンスを手掛ける奈良日化サービス株式会社が、身近な業務から徐々にデジタル機器とICT活用を進めるというスタイルでDXに取り組んでいる。
奈良県北部で住宅設備機器の設置、補修サービスを提供
奈良日化サービス株式会社は1986年に、奈良県大和郡山市で住宅設備機器の設置、補修サービスを提供する会社として創業した。その後、関西電力や様々な住宅設備メーカーからの指定店登録を受け、事業を拡大してきた。同県内の香芝市、河合町にも拠点を設けている。従来の住宅設備機器に加え、脱炭素社会の実現に向けた動きの中で拡大が見込めるスマート電化設備や太陽光発電設備といった事業や住宅リフォームにも力を入れている。総合メンテナンスサービス企業としての実績が高い評価を受け、2010年、2015年に「製品安全対策優良企業経済産業大臣賞」を受賞した。大和郡山市内では鉄道の駅やバス停など様々な場所で奈良日化サービスの広告看板が設置されている。
創業以来大事にしている地元密着
「創業以来、地域密着と素早い対応を大事にしています。お客様の住まいに関する心配事の解消を第一の目的に事業に取り組んでいます。デジタル機器、ICTは導入ありきではなく、お客様へのサービスを充実させるための時間を生み出すという視点で使っていきたいと考えています」。大和郡山市内の本社で取材に応じた井戸和之代表取締役社長は、会社の方針と業務のデジタル化についての考え方についてこのように説明した。
住宅の困りごとに対応する会員制サービス「安心くらぶ」を展開 年6,000円で6回の点検と電球交換や換気扇の清掃等シニア向けサービスを実施
継続的な顧客へのサービスを大事にしたいという視点で約10年前から、住宅の様々な困りごとに対応する会員制のサービス「安心くらぶ」を展開。年会費6,000円で、2ヶ月ごとに従業員が会員の自宅を訪問し点検を行っている。住宅設備のメンテナンスはもちろん、蛇口パッキン交換、電球交換、排水溝清掃、包丁研ぎ、換気扇の掃除、家具の移動、網戸の張り替えといった様々なサービスを年会費の範囲で提供(材料代等は別)。高齢者を中心に450人が会員として登録している。単にサービスを提供するだけでなく、相談を通じて顧客のニーズを把握できるというメリットもある。「お年寄りでは電球一つ変えるのも大変だったり、掃除するのも大変だったりします。少しでもお役に立てたらということで取り組んでいます。幅広いサービスを提供し、お客様にとって頼れる存在でありたいと思っています」と井戸社長は話す。
地元自治体などへの寄付を継続 創業者が2022年に旭日単光章を受章
事業とともに重視しているのが、地域や業界への貢献活動だ。まちづくりに活用してもらおうと地元の大和郡山市への寄付を13年にわたって継続的に行っているほか、京都大学iPS細胞研究所(CiRA)への寄付も行い、ノーベル生理学・医学賞を受賞した山中伸弥所長(当時)からの感謝状も受け取っている。そのほかにもコロナ禍前は毎年末、本社を置く地域の住民を招いて餅つき大会を開催するなど様々な取り組みを行ってきた。「安心くらぶ」をはじめとする事業の取り組みや社会貢献を通じた地域密着というビジネスモデルは高い評価を受け、2011年6月には奈良県ビジネス大賞の優秀賞を受賞。2022年11月には創業者の井戸正悟顧問が秋の叙勲で、民間分野で業界の発展に貢献した人に贈られる「旭日単光章」を受章した。
情報発信にホームページを積極活用
奈良日化サービスは自社の情報発信にホームページを積極活用している。「安心くらぶ」の詳しい紹介やオール電化、リフォーム、空調や設備の点検・修理、浄化槽管理、ビルメンテナンス、太陽光発電といったサービスの内容を豊富な実績に写真とともにわかりやすく掲載している。「営業活動する上でホームページでの情報発信は必要不可欠な取り組みと思っています。お客様に安心して依頼していただけるように、わかりやすく詳細に情報を掲載することを心掛けています。人材募集を行う上での効果も大きいと考えています」と井戸社長。今後、検索エンジンを通じてホームページへの訪問を増やすためにSEO(Search Engine Optimization=検索エンジン最適化)対策も強化していきたいという。
オール電化生活を体験できるショールームを河合町で運営しており、コロナ禍前はショールームで行う料理教室などのイベントについての情報もホームページで発信していた。今後、コロナ禍が落ち着いてイベントを再開する際に改めて情報発信の新しい取り組みも行っていきたいという。
業務の進め方を見直すためデジタル機器、ICTに着目
奈良日化サービスは、2年ほど前からデジタル機器やICTを活用して業務を効率化する取り組みを進めている。「顧客が要望する時間帯に合わせたり、打ち合わせが長引いたりすることで、従業員は残業を余儀なくされることがあります。今後、時間外労働の上限規制が厳しくなる中で業務を回していくためには、これまでの業務の進め方を見直して改善していかなければなりません。そのための手段としてデジタル機器やICTに着目しました。社会全体のデジタル化の動きに対応していかなければならないという思いもありました」と井戸社長は説明した。
顧客対応は紙の書類やFAXが中心 社内業務ではデジタル化を推進
だが、住宅設備のプランについての打ち合わせ、実際の工事、アフターサービスといった顧客への対応は、基本的に対面でなければ難しく、業務のデジタル化推進は現状では難しい。依頼の大半は電話、FAXで寄せられ、見積書、提案書、請求書、領収書といった書類についても紙文書での提出を希望する顧客が圧倒的に多いため、こちらも簡単に電子化というわけにはいかない。その中で最適解として見出したのが、顧客には従来通りアナログ中心で対応する一方、社内業務で少しずつデジタル機器やICTの活用を進めるという現在のスタイルだった。
従業員にスマートフォンを配布 複合機のスキャン機能も積極活用
約50人いる従業員にスマートフォンを支給し、現場での写真撮影と送信を1台でまかなえるようにした。コミュニケーションアプリのLINEを活用した本社と現場の情報のやり取りが格段にしやすくなったという。
ほかにも複合機のスキャン機能で紙文書をデータ化して現場の従業員に送信し、本社に戻る手間を省いたり、以前は紙文書で作成していた日報をパソコンに直接入力してデジタルで保存するなど徐々にデジタル機器とICTの活用を進めている。2022年10月には処理速度などをアップさせるために複合機をリニューアルした。今後、社内の紙文書の電子化などペーパーレス化も徐々に進めていきたいと考えている。
時間の有効活用、コスト節減でのデジタル効果を実感 今後も柔軟に対応
コロナ禍以降、住宅設備関連サービス会社の全国組織の定例会議や打ち合わせ・商談をWeb会議で行うケースが増え、時間の有効活用、出張費節減などICTの恩恵を実感できることも増えてきた。高齢者でもパソコンやスマートフォンを使いこなす人が増えていることにも注目し、顧客から要望があれば、紙書類の電子化にも柔軟に対応していきたいという。
奈良日化サービスは、顧客のニーズを最優先し、独自のスタイルで身近な業務から先を見据えたデジタル改革を進めている。「 住宅設備関連の技術の蓄積や、ベテランから若手への技術の伝授にもデジタル機器やICTを活用できないか検討していきたいと思っています。今後、デジタル技術の進歩は更に加速すると思うので、遅れないようにしっかりと情報収集して対応していきたい」と井戸社長は話している。
事業概要
会社名
奈良日化サービス株式会社
本社
奈良県大和郡山市千日町25-2
電話
0743-55-0437
設立
1991年4月(創業:1986年4月)
従業員数
50人
事業内容
電気工事業、一般建設業、太陽光発電工事業、消防設備点検、ガス・石油給湯器修理販売施工、浄化槽保守点検業、給排水設備指定工事業、管工事業
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