工程管理システムが仕事を変えた。負担なしで受注増加を実現 阪急鉄工丸亀工場(香川県)
2023年02月17日 06:00
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阪急鉄工株式会社が香川県丸亀市で運営する丸亀工場が、オーダーメイドの工程管理システムを導入し、納期管理の作業を便利にすることで受注の拡大につなげている。攻めのICT投資で業務を効率化、従業員に働きやすい環境を創造することでモチベーションが向上し、業績拡大につながる好循環を生み出している。
積極的な設備投資でリードタイムを短縮 受注増につなげる
阪急鉄工株式会社は、1957年、送電鉄塔用ボルトなどの金属製品を関西電力などの大手企業に供給するために大阪市内で誕生した企業だ。丸亀工場は事業拡大に伴い、1976年、丸亀市内の工業地帯に設立された。
丸亀工場は、本社工場と並ぶ主力工場として順次拡張され、現在、配電盤や配電用架線などの銅関連製品を製造している。設備投資に力を入れており、2019年に夏場の就労環境を改善するため、生産現場で空調設備を完備した。2022年10月からは工場の敷地内に新設したメッキ工場を本格稼働している。それまで外部委託していたメッキ工程を内製化したことで受注から出荷までのリードタイムを短縮することに成功し、受注件数の増加により2022年11月の売上高は同月比で過去最高を記録した。
2022年10月から稼働しているメッキ工場
工程管理システムで生産の進捗状況を見える化
事業拡大のための設備投資を行うにあたり、阪急鉄工の井澤靖幸丸亀工場長(取締役)が重視したのが、納期管理を行いやすくするためのICTの活用だった。2021年3月から段階的に管理課と生産現場を結ぶオーダーメイドの工程管理システムを導入し、部品生産の進捗状況をリアルタイムで「見える化」することで作業効率を大幅に向上させた。それぞれの現場にハレーションが起きないように、導入は担当者の意見を聞きながら1年以上の時間をかけて進めたという。
井澤靖幸丸亀工場長
「スピードがこれまで以上に要求される時代に、手をこまねいていては商機を逸してしまいます。メッキ工場を設けて製品を一貫生産できる体制を整えることは丸亀工場の悲願でした。しかし、従来どおりの仕事の進め方で仕事量を増やすと、その負担は従業員にかかってしまいます。この問題を解決するには時間をこれまで以上に効率的に使えるようにするための改革が必要でした。仕事の無駄な部分を浮き彫りにして、本当に必要な作業に集中できる環境を作る上で工程管理システムは想定以上の効果を上げてくれています」と井澤工場長は、システムを導入した背景を説明した。
月あたりの入力件数は600件 複数人で作業できない課題があった
工程管理システムを導入する以前、管理課はExcelでチャート表を作成して工程管理を行っていた。Excelは費用が掛からず誰にでも扱いやすいというメリットがあるが、複数人で同時に使うことができないため、1人の担当者が入力作業をしている間、ほかの担当者は作業が完了するまで待たなければならなかった。
月あたりの入力件数は約600件にのぼり、工程管理表には管理課だけでなく設計部門の担当者も入力を行う。結果的に10人近い担当者が日々、機動的に入力作業ができない状況が続いていた。内容を更新した時の情報共有にも課題があったという。
阪急鉄工丸亀工場のオフィス
システム導入後、複数人での同時入力が可能になり作業効率が大幅アップ
その点、新たに導入した工程管理システムは工程表のデータを工場内のサーバーに保存しているので、すべての担当者がそれぞれのパソコンからアクセスしていつでも情報を入力できるようになった。この機能のおかげで作業効率は大幅にアップした。「1回あたりの待ち時間は短くても、積み重なることで人数分の大きな時間のロスになっていました。入力のための待ち時間を気にする必要がなくなったので、見通しを立てやすくなり効率的に仕事を進めることができるようになりました」と管理課の岡田幸子課長は話した。部品名や番号、発注先名、受注日、納期などの項目は以前のExcelと同じような表示に設定したのですぐに慣れることができたという。
岡田幸子管理課長
図面の紐づけ機能が業務の効率化とペーパーレスを推進
工程管理システムには、部品ごとに図面のデータを紐づけできる機能も備わっている。図面は以前、紙文書で保管していたので必要な図面を探す時には、どうしても一定の時間と手間がかかっていたが、現在は複合機で図面をスキャンしてデータ化しておけば表示をクリックするだけで簡単に見つけることができるようになった。「紙文書のまま保管しておく必要がなくなったのでペーパーレス化が進み、オフィスも以前と比べてすっきりしました。担当者がいない時でもすぐに図面を見つけることができるので、こちらの機能も時間を生み出す上で大きな効果を発揮してくれています」(岡田課長)
複合機で紙文書をスキャンする様子
管理課と生産現場をオンラインで結び、生産状況をリアルタイムで反映
工程管理システムは管理課と生産現場をオンラインで結んでいる。部品の切断、穴開け、曲げ、検査などの各工程を完了するタイミングで、生産現場の担当者がタッチパネル式のディスプレイを使ってパソコンに入力すればその状況を管理課の担当者がパソコンで確認できるようになっている。
生産現場で工程の完了を入力する様子
「以前は社屋2階の管理課から1階の生産現場に行く以外に工程の進捗を確認できる手段がなかったので、刻一刻と変わる状況をリアルタイムで把握するのは困難でした。お客様から部品の生産状況についての問い合わせがあった時は、その度に生産現場に足を運んで担当者に確認しなければなりませんでした。今は自席のパソコンで全ての部品の生産状況を確認できるようになったので、以前とは比較にならないほど便利になりました。お客様から問い合わせがあってもお待たせすることなくすぐに返答できるのが何よりうれしいですね。工程管理システムはお客様へのサービス向上にも大きく貢献してくれています」と岡田課長は明るい表情で話した。
阪急鉄工丸亀工場の生産現場
工程管理システムのおかげで無駄な作業が浮き彫りに
工程管理システムによって進捗状況が把握しやすくなったことで効率的な作業工程を組み立てやすくなり、適正な人員配置にもつながっているという。井澤工場長は「当たり前と思っていた作業の中で無駄だったものを工程管理システムのおかげで浮き彫りにすることができました。仕事量は増えているのに負担を感じることなくこなせているのは工程管理システムのおかげです。ICTは活用すればするほど便利になるものであることを実感しています。これからも従業員全員でICTの活用方法を考えていきたいと思っています」とにこやかに語った。
阪急鉄工丸亀工場の外観
無理をすることなく受注増に対応して業績が上がることで従業員のモチベーションが向上し、更なる成長につながる好循環が生まれている。阪急鉄工丸亀工場は、今後、更なる時間短縮と担当者の利便性向上のため、生産現場での入力をバーコード式にすることも検討している。継続的なICTの導入は先行きが不透明な時代を乗り切る大きな力になるに違いない。
事業概要
事業所名
阪急鉄工株式会社 丸亀工場
所在地
香川県丸亀市蓬莱町53番地2
(本社:大阪府大阪市住之江区御崎2丁目10番10号)
HP
http://hankyu-iw.jp/
電話
0877-24-0671
設立
1976年7月(創業:1957年8月)
従業員数
60人(丸亀工場)、47人(本社工場)
事業内容
送電鉄塔、無線鉄塔、鉄柱、橋梁、鉄道用のボルト、ナット、アンカーボルト類、その他ねじ類、二次製品の製作、配電用の架線ボルトおよび金物類一式、導体、電磁コイル、消弧室などの製作加工
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