業務改善プラットフォームと電子請求書発行システムの導入で請求書発行・発送業務を大幅に簡素化 ジェーピーエヌ債権回収(東京都)
2023年02月28日 06:00
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債権管理回収業者(サービサー)のジェーピーエヌ債権回収株式会社は、毎月約80~100社の取引先に請求書を送っている。従来はExcelを使って手入力で請求書を作成し、社内の稟議・決裁を経てから郵便局まで運んで発送していた。それが、新たに業務改善プラットフォームと電子請求書発行システムを導入したところ、作成から発送までの一連の業務プロセスをすべてパソコンの画面上で済ませられるようになり、請求書の発行・発送に関わる手間を大幅に簡素化し、時間の短縮やペーパーレスも実現できた。
個人向け小口・無担保債権専門で業界ナンバー2
宮武信夫代表取締役社長
ジェーピーエヌ債権回収は、流通系クレジットカード会社で業界トップのクレディセゾンの債権管理子会社として1994年4月に設立され、債権管理回収業に関する特別措置法(サービサー法)施行に伴い、2000年にサービサー事業に乗り出した。クレジットカードやショッピングローンなどの個人向け小口・無担保債権を専門に取り扱うサービサーとしては業界ナンバー2の地位を誇る。
2022年8月にはクレディセゾンの100%子会社として新設されたセゾンパートナーズの100%子会社となった。セゾンパートナーズを持ち株会社とし、傘下にジェーピーエヌ債権回収と、新たに設立された弁護士法人を置くことで、サービサー事業を一段と強化するのが狙いだ。
債権管理回収、債権買取、現地調査の3業務すべてを1社で行う唯一の存在
カード会社や信販会社、リース会社などいわゆるノンバンクを主なクライアント(顧客)とし、クライアントが抱える末入債権を管理・回収する業務代行事業だけでなく、金融機関やノンバンクからの債権買取業務や、債務者の生活状況などを調べる現地調査代行業務も行っている。この3つの業務を1社ですべて行っているのは同社だけであり、それぞれの事業のノウハウを生かしたトータルなサービスを提供できるのが同社の強みとなっている。
「3業務を1社で行っているのが強み」と話す経営統括部人事総務課主任の藤埜聡子さん
クライアントと債務者の両方がお客様
「新入社員にはまず入社の際に、うちには二つのお客様が存在すると教えます」。経営統括部人事総務課主任の藤埜聡子さんはこう語る。一つ目のお客様は、同社に債権回収を委託する金融機関やノンバンクであり、二つ目のお客様はそれらクライアントの顧客、つまり債務者のことだ。「この二つのお客様の両方を大切にして仕事をするようにと徹底的に教え込むようにしています」。
新潟センター(新潟市)、東京センター(埼玉県朝霞市)、関西センター(大阪市)の3ヶ所にある年中無休のコールセンターに「コレクター」と呼ぶ約200人の回収担当者を配置。電話によるカウンセリング重視の回収方針で業務にあたっている。「コレクターには、債務者が個人なら家計のやりくりをこうしましょうとか、個人経営の会社ならここを改善しましょうとか、きめ細かくコンサルティングをして相談に乗るようにと教育しています」と藤埜さん。
ちなみにコレクターは入社時から専門的に育成される職種だが、藤埜さんは事務部門に配属されて人事総務関係の仕事に携わってきたにもかかわらず、自ら志願して東京センターでコレクターのマネジメントを担当していたことがある。「人事総務の仕事をするにも、現場を知らないと限界があると感じた」からだそうだ。
一方、現地調査代行業務を遂行するための調査員は全国に約120人を配置。債務者の自宅への訪問をはじめ、生活状況などの実態調査を行っている。
コールセンターは早くからICT化推進
フロントオフィスとなるコールセンターは早くからICT化を進めてきた。「TCS延滞債権管理システム」というサービサー業界に広く普及しているシステムを使って、蓄積された延滞データをもとに最適な回収手段を選ぶなど回収業務の効率化に役立てている。音声自動応答システムはもちろん、数年前からは架電する債務者のリストを抽出し、時間を決めて自動で電話を発信するシステムも導入しつつある。
バックオフィスではまずペーパーレス化を推進
一方、バックオフィスでは、2018年に複合機を使った大規模ドキュメント配信システムを導入。帳票類をはじめとする紙文書の電子化を進めた。資料を複合機で印刷するたびに、クラウドにバックアップできる仕組みだ。債権管理業務に関する帳簿書類は一定期間保存することが義務づけられていることもあり、膨大な資料を電子保存できるようにしたのだ。
複合機を使ってペーパーレス化を推進
続いて請求書発行・発送業務のICT化に取り組む
そして翌2019年に、請求書発行・発送業務を効率化するために導入したのがクラウド型業務作成ソフトと電子請求書発行システムだ。
請求書の発送先はクライアントの金融機関やノンバンクで、毎月約80~100件発生する。クラウド型業務作成ソフトを導入するまで同社では、Excelで手入力して請求書を作成、プリントアウトし、社内で稟議・決裁したあと、一枚一枚手で押印してから証跡として保管するためのPDFを別に出力したうえで、原本を封筒に入れて郵便局まで運んで発送していた。請求書は一つのクライアント向けでも多い時には10枚程度にもなる。しかも、「疎明資料」といって、請求する数字の根拠となる資料を同封する必要がある。このため、請求書を入れた封筒の中身は100枚程度の書類となることもある。
「それはそれは分厚い請求書を毎月お客様にお送りするという業務が発生しておりました」(藤埜さん)。請求書発行・発送作業は総務部門が担当しているが、1ヶ月に20日前後ある営業日のうち15営業日は請求書発送業務に費やされる上に残業も頻繁に発生していたという。
業務フローが明確になり、担当者の負担は大幅に軽減
ところがクラウド型業務作成ソフトを導入したことで作業の流れが大きく変わった。まず、あらかじめフォーマットを作成しておいた請求書アプリに情報を入力するだけで請求書を作成・発行できるし、発行した請求書をPDFとして書き出こともできる。プロセス管理機能を使うことで、上長の承認フローも紙の書類を回すことなく、パソコンの画面上で完結できる。請求書を「作成中」「送付済み」「データ集計済み」などといったステータスの管理も一目瞭然だ。
発行した請求書はクラウドに保管。電子請求書発行システムを使って、保管先のアドレスをメールでクライアントに自動送信する仕組みだ。クライアントはアドレスをクリックするだけで、請求書や疎明資料一式をダウンロードできる。クラウドに保管された請求書等は削除しない限りなくならないので、紛失や再発行といった騒ぎに発展することもない。一部のクライアントがFAXや郵送を求めた際も、同システムで対応可能だ。
「(請求書発行・発送作業に費やすのは)日数的には同じ15営業日なのですが、今どこで止まっているのか、次に何をしなければならないかという業務フローがものすごく明確になったので、担当者の負担はぐっと減り、残業もほぼなくなりました」(藤埜さん)。
「残業はほぼなくなった」と話す藤埜さん
社印使用申請や物品管理へと活用広げる
クラウド型業務作成ソフトには、データを蓄積・一覧・検索できるデータベース機能と、業務を円滑に進めるためのコミュニケーション機能が備わっている。このため、タスクごとに「アプリ」を作成し、社員同士で共有することができる。ジェーピーエヌ債権回収では、請求書発行・発送用のアプリに続いて、社印や代表者印の押印申請アプリや社員に配布している社有の物品を管理するアプリを作成・活用しているという。
ただ、クラウド型業務作成ソフトを使う社員が個人用に好き勝手にアプリを作ってしまうと混乱を招く。同社では、アプリを作成・管理するのは経営統括部の社員に限定。他の部門から、「こういう仕事のためのアプリが欲しい」といった要望が寄せられた場合には、経営統括部で精査した上で、必要に応じて作成することにしているという。
請求書発行・発送作業を大幅に簡素化し、ペーパーレスをもたらしたこのシステム。まだまだ活用の場が広がっていきそうだ。
クラウド型業務作成ソフトの画面。必要に応じてアプリを作成できる
事業概要
会社名
ジェーピーエヌ債権回収株式会社
本社
東京都豊島区東池袋三丁目1-1 サンシャイン60 53階
HP
http://www.jpn-servicer.co.jp/
電話
03-6830-5180
設立
1994年4月
従業員数
599人(2022年3月末現在)
事業内容
債権管理回収業務、非特定金銭債権の集金等代行業務、現地調査代行業務など
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