香川と高知、100キロ離れた2拠点運営をネットワークで解決。若い人材との相乗効果で成長を図る 小西興発(香川県)
2023年03月14日 06:00
この記事に書いてあること
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香川県西部の三豊市に本社を置く株式会社小西興発は、研磨材やガラスの原料として使用される珪砂(けいしゃ)を中心に水道の最終工程で使用する濾過(ろか)材、ゴルフ場のグリーンやバンカー向けの砂、コンクリートやモルタルに混合される建材用素材の調達、販売を手掛けている。(TOP写真:港で積み上げられている珪砂)
ネットワーク導入前は、活動拠点を高知に置きながら、香川本社にある書類を見たり、決済するために100キロの距離を頻繁に移動していた。
スピード感を大事に新しい事業に挑戦
坂本佑武社長
「スピード感を大事に常に新しいことに挑戦していきたいと考えています。近年、デジタル機器やICTの進化は加速しており、この流れに乗らない手はありません。私だけでなく従業員全員の仕事を効率的にし、お客様に素早くきめ細かい対応をするためにデジタル機器やICTを積極的に活用していきたいと考えています」と取材に応じた坂本佑武代表取締役社長は話した。
主力商品の珪砂で新しい取り組み
株式会社小西興発は約70年前の創業以来、研削機能に優れ安定した需要が見込める珪砂の販売や、濾過関連の建設工事を中心に事業を開拓してきた。現在、電源多様化の中で注目を集めるバイオマス発電所の発電効率を高める熱媒体として珪砂のニーズが高まっていることを受け、海外への調達先の拡大や、これまで外部委託していた珪砂を乾燥させる工程の内製化に取り組んでいる。「一連の新しい取り組みを通じて、主力の珪砂に関する事業を更に成長させていきたい」と坂本社長は力を込める。

珪砂の船出し作業
坂本社長は、100キロ離れた2つの拠点を毎日のように移動していた
主力商品となっている珪砂は愛知県や山口県などから船舶で調達していることもあり、瀬戸内海側の香川県だけでなく太平洋側の高知県にも工場や関連会社を置いている。小西興発にとって2拠点体制は事業を推進していく上で欠かせないものだ。
坂本社長は主に高知にいるため、香川本社に来たFAXはスキャンしてメールで送られてきたりFAXで転送されたりとまちまちだったので、忘れてしまうこともあった。また決済のため毎日のように距離にして約100キロ、高速道路を使った車での移動で片道2時間近くかかる2つの拠点を移動していた。
VPNのおかげで高知にいても香川本社にあるデジタルデータの閲覧がスピーディにできるようになった
この課題を解決するため、坂本社長は、3年前からインターネット回線を活用するVPN(Virtual Private Network=仮想専用回線)を導入。専用線にすることで大事な情報を安全に、しかも大容量のデータでも問題なく閲覧することができた。
「以前はそれぞれの拠点ごとの会議出席や書類作成のためにどうしても足を運ばなければならなかったので、香川県と高知県を頻繁に行ったり来たりしていました。忙しい時は、1日の間に複数回往復しなければならないこともありました。ですが今は、ICTのおかげでパソコンやスマートフォンを使えばいつでもどこでも必要な書類や資料にアクセスできるようになったので非常に助かっています。今は直接足を運んだ方がはかどる仕事とそうでない仕事を仕分けできるようになったので、移動に使う時間は以前の半分程度に減りました。その分の時間は、新規事業の計画や商談など付加価値の高い仕事に振り向けています」(坂本社長)
小西興発様の本社の外観
社外でもFAX文書のデジタル化機能でリアルタイムの確認が可能に
複合機で文書をスキャンしている様子
年間販売量が2万トンにのぼる珪砂などの建設会社からの注文は、長年の慣例からFAXで入ってくることが多い。多い時は1日あたり数十件に上ることもある。以前は、不在時に入ってきたFAX文書に目を通すのにタイムラグが生じるのは避けられなかったが、今はFAXで届いた情報は、クラウドにデジタル保存される。スマートフォンやパソコンでインターネットを通じてアクセスすれば、リアルタイムで確認できるようになった。「情報を素早く正確に把握できるので、指示を的確に下すことができます。以前は、まとめて行っていた決裁などの作業も空いた時間にその都度こなせるようになったので、仕事を溜めることなく効率的に片付けることができるようになりました」と坂本社長はその効果について説明した。
OCRを活用して申請文書を簡単に作成
小西興発は濾過材の提供だけでなく、官公庁や自治体が管理・運営する濾過池や濾過槽の関連工事も請け負っている。工事の種類は、調査から濾過タンクのメンテナンス、濾過能力を回復するための砂の入れ替えなど幅広い。官公庁や自治体に提出する文書の作成を効率化する上で活用しているのが、紙文書に書かれた文字を認識してデジタル化する技術、OCR(Optical Character Recognition=光学的文字認識)だ。
官公庁や全国の自治体が実施する入札への参加資格を得るために作成する申請書は、年間200枚近くに上る。基本的に申請書は、発注先が用意している書式テンプレートをダウンロードして作成しているが、すべての発注先が提供しているわけではなく、紙文書を参考に自前で作成しなければならないことも多い。「段落や文字位置の細かい調整が必要ということもあり、手間と時間がかかる作業です。提出の締め切りが短期間に集中することもあり、申請書を作成する社員の大きな負担になっていました」と坂本社長は振り返る。
OCRを導入した後は、紙文書をスキャナーで読み込んでデジタル化したテンプレートを活用して申請書を作成することができるようになったので、作業効率が大幅にアップした。OCRは手書きの文字や数字を読み取る機能も備えているので、取引先から送られてきた手書きの請求書や見積依頼書といった文書も簡単にデジタル化することが可能だ。文書管理を行う上で様々な使い方ができる。
ペーパーレス化でオフィスの空間を有効活用
小西興発は図面や工事終了後の報告書、発注書、受注書、請求書、領収書といった紙資料も複合機のスキャン機能を利用してデジタル化を進めている。「デジタル化した文書は共有が容易になるだけでなく保存場所にも困りません。結果としてオフィスの空間の有効活用にもつながります。これからもペーパーレス化を推進していきたい」と坂本社長。
社員の主力は30代、デジタル化やロボットの導入を牽引
小西興発は近年、若手の採用に力を入れてきたこともあり、30代の社員が主力になっている。デジタル機器やICTに関心を持つ社員も多く、成長を促すため新しい仕事に積極的に挑戦させているという。小西興発は近く、ホームセンターや建材店向けに卸売りしている左官砂や砕石を袋に詰める作業を自動化するためのロボットを導入する。これまで袋詰めは手作業で行っていたが、体に負担がかかる作業であることに加え、効率化にも限界があることからオーダーメイドの機械を導入することにしたという。このプロジェクトを発案し、実現にこぎつけたのも若手社員たちだ。
船出し作業中
「これから先、環境にこれまで以上に配慮しながら新しい商品を開発していく上で、デジタル機器やICT、ロボットといった技術は必要不可欠です。どのような技術が会社にとって高い効果を生み出せるのかについてしっかり研究していきたい」と坂本社長は先を見据える。若い人材、新しい技術が小西興発に大きな可能性をもたらしている。
事業概要
会社名
株式会社小西興発
本社
香川県三豊市豊中町上高野729
HP
http://www.co-co-co.jp/
電話
0875-63-9525
設立
1999年4月
従業員数
10人
事業内容
各種珪砂、水処理用濾過材、土木建築用各種資材の販売と土砂の採取、これらに付帯する事業
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