建設業(土木)

3年連続で国交省のICT活用工事成績優秀企業を受賞、土木工事のICT施工を推進 高田組(富山県)

From: 中小企業応援サイト

2023年03月22日 06:00

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大正初年から富山県内の河川工事や発電所建設工事を担ってきた株式会社高田組は土木工事業を専業としてきたプロ集団である。その高田組が今、大きく変わろうとしている。押し寄せるICT化の波にも真摯に向き合う姿は、会社の信念でもある「堅実・正確・創意」の姿勢そのままに、経験豊富な社員の熟達した技能を受け継ぎつつ先進のICT技術にも積極的に挑戦し、データに裏付けられた効率化・省力化への道を邁(まい)進している。(写真:点群データ作成の実習)

富山平野の安心・安全な暮らしを守り続けてきた技能集団

株式会社高田組が担ってきた富山県内の土木工事は砂防工事から河川、道路、鉄道に関わる土木工事、水道工事やしゅんせつ工事、造園、解体と多岐にわたる。おもに国や県、市町村などの公共工事と鉄道事業者からの発注が主だが、このように幅広い土木工事を手がけるようになったのは、第二次大戦からの復興と大きな災害がこの会社に様々な対応を求めてきた結果だった。

1945年の終戦から始まった戦後復興の慌ただしい喧騒の中、焦土化した富山駅の復旧工事に携わっていた時期に本社を神通町(現:宝町)に移し、株式会社高田組を設立。本腰を入れて仕事に取り組む体制を整えた。しかしそれもつかの間、1948年に発生した福井地震で大きなダメージを受けた北陸の鉄道を復旧させるため当時の国鉄の傘下に結集し、災害復興に携わることになる。

そんな会社の歴史を淡々と話す黒川洋行常務取締役にとっては、まだ生まれる前の話に違いないが、高田組を愛する様子が伝わってくる。創業当時からこの富山平野のあらゆる地で山河を守り、鉄道を復旧し、様々なインフラ整備を担ってきた先々代からの実績と自負が、この地の安心・安全な暮らしを支えている。その誇りが社員一人ひとりの働き甲斐を支えているのではないか。

黒川洋行常務取締役

黒川洋行常務取締役

社屋から臨む立山連峰

社屋から臨む立山連峰

土木工事の効率化はドローンによる測量の内製化から始まった

土木工事といえば現場測量をはじめ多岐にわたる管理を行いながら進めていく仕事であるが、外から見てもわかるように3Kの代表ともいえる労働環境が常識であった。うっそうとした茂みや危険な傾斜地などは当たり前で、現場作業は測量の段階から過酷なものであったに違いない。

そんな世界にじわじわと入ってきたのがパソコンでありデジタルカメラであった。少しずつ業務のデジタル化は進んだが、高田組の事務所では相変わらず大量の現場写真の整理に追われ、設計資料や書類もあふれ、多くの人手を使い、大きな仕事が舞い込むと大勢の社員が残業に明け暮れていたという。だが次第にパソコンの性能も進化し、土木工事に特化した様々なソフトが登場し使いやすさも向上した。

そこにいち早く着目したのが高田組DX推進のキーマンとも言える工務部の橋場洋平さんだ。

工務部の橋場洋平さん

工務部の橋場洋平さん

入社後様々な現場を経験し諸先輩の経験と技能に圧倒されてきた橋場さんは、若手社員が彼らに負けない力を身につけるには、土木用のソフトやデジタル技術を使いこなすしかないと決心。自分としても難しそうで抵抗のあったICTの世界だったが、やると決めてからは会社の後押しもありすぐに実行に移った。4年前から手始めに取り組んだのがドローンによる3次元測量だ。それまでにもドローン測量は行っていたが、全て外部の資格を持つ会社に発注していた。それをほぼ内製化しようというのだ。

ドローンによる現状測量にも土木工事の知識が必要なため使いこなせる社員はまだ3〜4名だそうだが、内製化によるコスト削減は着実に進み、既に機器購入などの初期投資費用は取り戻したという。

土木用ソフトで点群化された現状地形に3次元の設計データを重ね、工事箇所を特定。その工程全てが帳票化され、写真データも保存されていく

ドローンにより3次元化された写真は別のソフトで点群化処理される。そこに3次元で作られた設計データを重ねることで現状と完成時の姿が一目で確認でき、工事の内容やスケールがイメージされるのだ。

現状点群データと3次元設計データ

現状点群データと3次元設計データ

完成時点群データ

完成時点群データ

次に設計データを入れたタブレットと光波測距儀を使用して現場測量を行っていく。以前は2人以上で行っていた作業も1人でできる作業になり、測量ミスも減少したという。

現場測量、新入社員一人でも可能

現場測量、新入社員一人でも可能

設計データの入ったタブレット

設計データの入ったタブレット

位置情報と3次元設計データを活用されるICT建機による施工では従来と比べ生産性が向上され、定着化しつある。今後5Gが普及しこれら技術を駆使した工事が普及すると、土木工事はより効率化され、現場でもデスクでも3Kと言われた景色は消えていくに違いない。

ICT建機による施工

ICT建機による施工

位置情報や設計データの可視化

位置情報や設計データの可視化

オフィスは静かで紙書類もほとんどない

オフィスは静かで紙書類もほとんどない

これからは若手と女性が土木業のイメージを革新していく

実際にドローンで撮影され3次元処理された工事前の測量データを点群化する作業は、社内の容量の大きなコンピューターを使って処理されている。そしてその作業を実際に行っているのは女性社員だ。今のところその社員一人が操作できる状況だというが、今後は若手を中心に操作できる人員を増やしていく予定だ。

社内のICT化はまず抵抗の少ない若手や女性社員から習得していくようにしているという。デジタル技術やパソコン操作に不慣れで抵抗感の強いベテラン世代には、若手が吸収したものを少しずつ実際に見せながら、慣れていってもらうのが一番いいと橋場さんも実感している。

これからは若手と女性が土木業のイメージを革新していく
若手社員へのドローン測量の講習

若手社員へのドローン測量の講習

若手からベテランへ広げるICT化。キーワードは「助け合い」

「ICT化はどんどん進んでいくし、おもちゃ感覚で楽しく取り組むことで、より効率化された未来を手にできるんじゃないですかね」。社内で若手を中心にICT化を広げていこうとしている橋場さんは、より仕事を面白く感じさせるのも大事なことだと考えている。ここ3年連続で国土交通省からICT化推進事業やICT人材育成で表彰されている実績を見ても、納得できる意見だ。

3年連続で国土交通省のICT活用工事成績優秀企業を受賞

3年連続で国土交通省のICT活用工事成績優秀企業を受賞

土木工事におけるICT化の社内講習

土木工事におけるICT化の社内講習

そんな橋場さんのリーダーシップに若手社員も奮起しているようだ。3Kイメージも払拭され、作業効率も上がり、仕事環境も洗練されていく姿を若手社員たちがつくり上げていく時代がやってきている。

黒川常務も「何と言っても助け合いが大事です」と言う。熟練の社員や職人たちが培ってきた技術やノウハウも決しておろそかにしてはいけないものであり、若手社員たちにとって学ぶべき事柄も多い。一方でICTの進歩で様々な作業が軽微化・効率化され、手作業で行っていた資料の整理や帳票作成も格段に効率化されているのも事実。黒川常務も橋場さんもその両方がよくわかっているからこそ「助け合いが大事」と言うのだ。

「ほう、そんなことができるんか。俺にもちょっとやらせてくれ」と顔をほころばせるベテラン職人の姿が目に浮かぶ。高田組はそんな良い雰囲気の会社だ。

高田組本社

高田組本社

事業概要

会社名

株式会社高田組

本社

富山県富山市宝町1丁目1番7号

電話

076-432-3416

HP

https://takatagumi.co.jp/

設立

1947年9月22日

従業員数

39名

事業内容

土木工事業・とび・土工工事業・石工事業・舗装工事業・しゅんせつ工事業・造園工事業・水道施設工事業・解体工事業

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