デジタコ他の社内システムで業務の見える化、複合機で業務効率化 ドリームホールディングス(三重県)
2023年03月30日 06:00
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三重県南部の宅配業務を中心に事業を始めて今年でちょうど20年。ドリームホールディングスグループは創業会長の次男、渡邉孝雄代表取締役社長が入社して以降、県内全域に事業範囲を広げ、ICT化も推進。コロナ禍ではWeb会議を導入して定着させた。大手メーカー勤めだった長男もグループ入りして製造業にも乗り出し、さらなる飛躍とICT化を目指している。(TOP写真:今後のICTについて話すドリームホールディングス株式会社 渡邉孝雄代表取締役社長)
次男へのバトンタッチが飛躍のきっかけ
ドリームホールディングスグループの母体は、運送業界で働いてきた現ドリームホールディングス株式会社 渡邉家辰代表取締役会長が2003年に設立したドリームサポート株式会社。三重県南部を中心に宅配業務から始めたところ、業界の知見に加えてライバル会社が少なかったことから事業は着実に広がった。
三重県松阪市にあるドリームホールディングス株式会社の本社
ただ、事業エリアは松阪市以南が中心。松阪市以北はライバル会社が多く、なかなか広がらなかった。それが、渡邉会長が渡邉孝雄代表取締役社長に事業承継を打診したことがきっかけとなってさらなる飛躍の時を迎えた。
デジタコ取り付け、勤務実態に合わせた給与システムに
渡邉社長は当時、総合エレクトロニクスメーカーで半導体検査のSEをしていた。勤続約15年、脂がのっている時期だったが、日本の半導体は台湾勢に押されて先行きは明るくなかった。運送業界のことは知らなかったが、会長の年齢も考えて飛び込んだ。
社長室のディスプレイに映し出された地図。配送中の車両の位置やドライバー名が記されている
以来、心がけてきたのは、ドライバーらの労働環境改善。入社当時、ドライバーの給与は日当的な計算で、「みなし労働時間のような形で計算していたため、実働時間の方が多くなる懸念があった」(渡邉社長)。このため、運転時の速度や距離などのデータを収集するデジタコ(デジタルタコグラフ)を全車両に取り付けることで、始業・終業時間や休憩時間などを把握。そのデータを本社のパソコンに取り込むシステムも同時に導入し、勤務時間を正確に給与に反映でき、休憩時間の少ないドライバーへの配慮も可能になった。
デジタコのデータから自動作成された運転日報
IT点呼でアルコールチェック
ドライバーのマネジメントに役立っているもう一つのシステムが、IT点呼。運転開始時の点呼をリモートでも行えるため、運行管理者の負担が減る上、アルコールチェックもできる。また、リモートでの点呼の際にも、スマートフォンの画面越しに顔を見られるので「フェイス・トゥ・フェイスに近い感覚」という。
IT点呼を使用しているところ
SE経験生かし、自ら宅配事業のシステムなどをプログラム
渡邉社長が初期に取り組んだシステムが、SE経験を生かした宅配事業のシステム作り。入社前までは、市販のシステムを使っていた。市販システムでは、配達先の住所などが示された伝票のバーコードを特別なバーコードリーダーで読み取り、そのデータをもとに配達担当者や配達内容、配達報酬などを取り込んで、配達担当者への支払伝票の作成などを行っていた。
バーコードリーダーで商品を読み取る配達員
バーコードリーダーは細かい設定も可能だったが、委託している高齢の配達員にそこまで使いこなすよう求めるのは困難。結果、細かいエリア設定や料金設定ができず、ライバル業者との差別化が難しかった。システム利用料も高かったため、渡邉社長はシステム更新時期に合わせて内製化する方針を決めた。
といっても、作るのは渡邉社長自身。市販のバーコードリーダーでも、蓄積した配達データを本社のパソコンに読み取らせることができる。そのデータがあれば、システム次第でエリアごとの細かい料金設定も可能だった。渡邉社長は自らプログラミング言語を駆使して、プログラムを作り上げた。ドライバーは伝票のバーコードを読み取って業務終了後、本社に戻ってバーコードリーダーを渡すだけ。それだけで社長お手製のDIYシステムが細かい料金設定に基づいた支払伝票などを作成してくれる。
渡邉社長はそのシステムに、在庫管理システム、従業員や車両の台帳管理システムなども追加。事務担当の社員らは不自由なく使いこなしている。
自ら作ったプログラムを示す渡邉社長
事務員の希望で作業効率の高いデュアルディスプレイを導入
SE出身者だからこその仕事のやり方で、事務員にも広まったものがある。パソコンの画面と連動させたディスプレイを使う2画面の利用(デュアルディスプレイ)だ。渡邉社長が当然のように2画面で仕事をしていたところ、事務員らが「私たちにも2画面で仕事をさせてください」と言ってきたのだ。
事務員は全員が2つの画面を使って作業効率を高めている
パソコンの画面でも2画面に分割できるが、画面が小さくなって読みづらい。パソコンとは別にディスプレイがあると、参照したい資料を大きく映しながら、パソコン作業ができる。事務作業に有用と判断した渡邉社長は即座に導入を決断。「ディスプレイ追加の希望は、『パソコンのスペックを少し落としてでもいいから追加して』というほどのものだった」といい、みんなの事務効率を高めている。
コロナ禍で導入のWeb会議は今も有効活用
コロナ禍で導入したICTは、Microsoft 365。Teamsを利用するのが第一目的だったが、ファイルの共有化や複数人で一つのファイルを使い、即座に上書きできるのも「非常に有効」(渡邉社長)という。
コロナ禍で必要に迫られたWeb会議システム、Teamsも活用し続けている。コロナ禍では、営業所長らが顔を会わせて行う月1回の定例会議が開けなくなったことによる会議のWeb化がきっかけだったが、営業所間や営業所内での打ち合わせなどにも使われた。
コロナの収束後、月1回の定例会議は「月1回程度は顔合わせをした方がいい」として、本社に集合しての対面会議に戻しているが、迅速に行うことが求められる営業所間での打ち合わせなどは「Web会議システムによってずいぶん助けられている」という。
複合機13台を、2色プリントや文書のデジタル化等、コスト削減とデジタル化にフル活用
ドリームホールディングスグループは、2012年にドリームホールディングス株式会社を立ち上げてホールディングス化させ、渡邉社長がホールディングス会社の社長として傘下の5社を束ねている。全社にはすべて最新の複合機を導入済で、計13台が稼働。渡邉社長は、印刷やスキャンスピードの速さ、2色刷りプリントのコストの低廉さや見やすさ、スキャンデータを担当者のパソコンに自動的に取り込めることなどに大きなメリットを感じている。
自社開発の宅配事業システムのバージョンアップが課題に
着実にICT化が進んでいるドリームホールディングスグループだが、渡邉社長が課題に思っていることがある。それは、自ら作ったDIYシステムの今後。パソコンのOSのバージョンアップのたびに必要となる、自社開発システムの変更・更新は渡邉社長にしかできない。それでは、本業に支障が出かねない。さらにデータ量の増加がシステムの負担になっている問題もある。
多くの人が働いている本社の倉庫
このため、自社開発システム内の従業員や車両の台帳管理などは市販システムを使うことを検討している。ただ、宅配事業の管理や在庫管理には大幅なカスタマイズが必要なため、対応可能な市販システムを探しているところだ。
兄がグループ入り!地域の雇用・発展のため、顧客や生活者の声に耳を傾けながら、2人で運送業と製造業の二本柱を推進
渡邉社長が父親の渡邉家辰会長から引き継ぎ地域密着型企業を強固にした。その時、大手電子部品メーカーに勤務していた兄の渡邉伸太郎氏には事業承継の気はなかったが、成長するドリームホールディングスを支援するために2018年にグループ入り。同年、新たに製造会社を立ち上げた。渡邉伸太郎氏は製造会社ドリームテクノ株式会社の代表取締役社長としてスタートし、三重県内3ヶ所に工場を設置。顧客の困りごとをモノづくりの面でサポート。地域の雇用と発展に寄与している。
ドリームホールディングスグループのホームページには渡邉孝雄社長のメッセージとして「何年、何十年経っても、最後は人がモノを作り、人がモノを運ぶからこそ、人の力が大事で、技術を身に付けていかなければならないと切に思います」との考えが盛り込まれている。渡邉社長の話からも顧客や生活者の困りごとに常に耳を傾けながら、新たなサービスを提供し続ける真摯な姿勢を感じた。グループの本拠地・三重県松阪市は、三井グループを育てた三井家発祥の地。渡邉家の二代目兄弟がそれぞれの大手メーカーでの勤務経験を生かし、人を大事にしながらどこまでグループを大きくできるか。今後が楽しみだ。
事業概要
会社名
ドリームホールディングスグループ
本社
三重県松阪市大口町字子ノ新田532-1
電話
0598-31-3701
設立
2003年5月8日
従業員数
322人
事業内容
運送事業を中心とした加工事業、倉庫管理、ピッキング、車両整備
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