ホームページを刷新しSDGs宣言、セキュリティ強化のためUTMを導入 ニッカン(茨城県)
2023年04月04日 06:00
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あまり見たこともないような大きなタンクを背負った車両は「25t超強力泥土吸引車」というらしい。普段からよく目にする、街を回って家庭から出た廃棄物を回収してくれる車両は「4tパッカー車」という名前なのか。そんな特殊車両の数々が並んでいるホームページを見て、「“働く車”が好きな子どもたちが見たら喜ぶかもしれませんね」と話すのは、茨城県日立市を中心に一般廃棄物や産業廃棄物の収集運搬・処理を行っている株式会社ニッカンの稲葉淳代表取締役だ。(TOP写真:“働く車”が並ぶ株式会社ニッカンのホームページ)
ホームページを見やすくわかりやすいものに
「実際に、ショッピングモールで開かれた『働く車大集合』というイベントに車を出したことがありますよ」(稲葉社長)。パトカーや消防車、クレーン、宅急便の配送車と共に並べられたパッカー車を見て、乗用車とは違った格好良さを感じた子どもたちも多かっただろう。
稲葉氏が社長となってホームページを刷新し、自社で使っている特殊車両をずらりと並べて見せたり、どのような事業を行っているかを詳しく紹介したりしたのは、「やはり会社のイメージを向上させたかったからですね」。
家庭や会社から出る廃棄物を回収してくれる人がいなければ、街は廃棄物であふれかえってしまう。社会にとって絶対に欠かせない事業と言えるが、そうした重要性に気づいてくれない人もいる。ホームページの刷新によって、“環境と安心を守っている会社”だということを打ち出して世の中の認識を改善し、同時に働いている従業員の意識向上も狙った。
株式会社ニッカンの稲葉淳社長
イメージ刷新と意識改革のために社名と組織を変更
「会社名も『ニッカン』に変えました」(稲葉社長)。もともとは、協業組合日立環境開発センターという組織として活動してきたが、2017年に株式会社化した際に社名変更した。「名刺交換をした際に、協業組合?という反応が非常に多かったです。それに変化を恐れてほしくないというメッセージも伝えたかったので社名と組織を変えました」(稲葉社長)。
1972年に発足した同社は、日立市の家々から出る一般廃棄物の収集・処理を請け負ってきた。産業廃棄物の収集にも乗り出して、茨城県だけでなく福島県や栃木県、埼玉県、千葉県、東京都と広い範囲で許認可を得て事業を展開している。一般向けは半ば公益事業ともいえ、企業向けも安定した関係を築いている。多くの企業が収益を落としたコロナ禍でも、人が生活し社会が動いていれば廃棄物は必ず出るため、大きく落ち込むことはなかった。「従業員にはコロナ渦でも安心して働ける会社だということが示せたと思います」(稲葉社長)
それでもイメージの刷新に取り組み、新規事業へも意欲を見せるのは、稲葉社長が同社に入る前に経験してきたプロモーションやマーケティングの仕事から、会社をさらに良くするヒントを得てきたからだろう。「売りたいというお客様の要望に添って戦略を立てて実行する仕事をしてきました」(稲葉社長)。期間限定で店舗を出して新商品をアピールするような仕事も経験したという。そうした仕事を通じて、どうすればクライアントもユーザーも満足させられるのかといった勘所をつかんだ。
マーケティング&プロモーション会社で人を使うことを学ぶ
「前職で多くの人を使ってきた経験は非常に活きました」(稲葉社長)。ブースや店舗を出してプロモーションを行う場合、現場で動いてくれる人が必要となる。そうした人員を集めて教育をする。そしてマネジメントすることを、20代の若い時から実践していた。「百貨店に店舗を出すような場合、開店時にスタッフが到着していないということは、絶対にあってはならないんです」(稲葉社長)。人繰りも含めたリスクマネジメントもしっかりと行い、一つのプロジェクトを成功へと導いていく体験が、まったく異業種ともいえるニッカンの経営にも生きている。
株式会社ニッカンが持つ様々な特殊車両
同社は、稲葉社長の実家が行っている事業というわけではなかった。「協業組合として設立された当時の8人のメンバーのうちの1人が母方の祖父だというつながりです」(稲葉社長)。出身地は同じ茨城県ながら少し離れた常総市で、両親も教職にあって同社の事業には一切関わっていなかったため、「大学卒業後も跡を継ぐという発想はまるでなかったが、それがいまこうしてここにいます」(稲葉社長)
公益事業ともいえる一般廃棄物の回収はルーティンワークに近いため、ドラスティックな改善を行う必要はあまりなかった。企業が相手の産業廃棄物回収も、長い付き合いの中で育まれた関係性が強いこともあって「積極的にセールスに出ても大きく成果を得られるとは限りません」(稲葉社長)。策を講じれば成果を得られるプロモーションの仕事とは正反対ともいえる事業構造に、大きく手を付けることは控えた。かわりにイメージの向上に取り組んだ。
複合機でペーパーレス化に取り組む
「環境を守ることを目的にしている会社が、紙をたくさん使っていてはおかしいですから」(稲葉社長)。複合機の仕様を変えたことで、宣伝などのチラシがFAXからどんどんと出てくるようなことをなくした。送られてくる書類もまずパソコンで確認して、必要ならプリントするようにした。同社の複合機の上には「印刷・コピーの前に確認しましょう」という言葉とともに、1枚あたりのプリント代やコピー代が書かれたボードが下がっており、普段から節約する意識を持ってもらおうとしている。
設立50周年の2022年3月24日にSDGsへの取り組みも宣言した。「もともと環境には強い意識を持って取り組んでいたので、そうした活動を見直すとSDGsの趣旨に当てはまるものが多くありました」(稲葉社長)。同社の環境への意識は、所有している特殊車両に以前から、「SAVE THE EARTH(地球を守りましょう)」というスローガンが書かれていることからも伺える。SDGsを宣言することで、そうした意識を外に向かって訴えつつ、内に向けてもより強く持ってもらおうとした。
株式会社ニッカンの稲葉淳社長と複合機
UTMでセキュリティ強化も推進
「当社は情報セキュリティの強化にも取り組んでいます」(稲葉社長)。会社が持っている顧客情報をはじめとした様々なデータが漏れ出さないようにするため、統合型脅威管理ツールのUTM(Unified Threat Management)を導入して、外からの攻撃的なアクセスを弾くようにした。「実際にネットワーク攻撃や不正アクセスがあったから導入したというわけではありません。そうしたことが起こってしまった時点で、会社として問題だという意識から、あらかじめセキュリティを強化しておこうと考えました」(稲葉社長)。トラブルが起こってしまってから善処しても信用は損なわれる。周囲に迷惑もかける。それなら事前に対策を立てておく。プロモーションという華やかに見える仕事の裏側で、緻密なリスクマネジメントを行ってきた経験が生かされたものと言えそうだ。
人材確保にはイメージアップも大切な要素
「従業員や従業員の家族が誇れる会社にしたいんです。どこで働いているのかを他人に言いづらいような会社では、その会社はたちまち人手不足に陥ります。」(稲葉社長)激しくなる人材獲得競争の中で就職希望者から選んでもらうためには、やはり会社のイメージが大切だ。ホームページの刷新もSDGsの宣言も、そうした状況を見越しての布石と言える。セキュリティの強化も、会社の信頼性を高めることにつながる。
「SAVE THE EARTH」は先代からのスローガンだ
地域に根ざして安定した業績を上げていても、変化する社会の中で必ず課題は生まれてくる。そうした課題を敏感に察知して対策を打ちつつ、本業自体もバージョンアップしていく。下水道の完備されていない地域で活躍しているバキュームカーも、従来のものとは違ったクリーンな外観のものを導入し始めた。打てる手を打っていった先に、ニッカンの次の半世紀も安泰なものとなるはずだ。
事業概要
会社名
株式会社ニッカン
住所
茨城県日立市滑川本町5丁目14番4号
電話
0294-22-6348
設立
1972年3月24日
従業員数
30人(2020年3月31日現在)
事業内容
一般廃棄物収集運搬/産業廃棄物収集運搬/側溝清掃/ピット清掃/雑排水槽清掃/管清掃/油脂分離槽清掃/貯水槽清掃/浄化槽清掃/池清掃/外壁清掃/水替え作業/排水の詰まり修理/遺品整理/家財処分/家電リサイクル
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