建設業(設備)

顧客データの取り扱いは最重要課題。脅威から情報を守るUTMでセキュリティを強固に 栃木防災(栃木県)

From: 中小企業応援サイト

2023年04月11日 06:00

この記事に書いてあること

制作協力

産経ニュース エディトリアルチーム

産経新聞公式サイト「産経ニュース」のエディトリアルチームが制作協力。経営者やビジネスパーソンの皆様に、ビジネスの成長に役立つ情報やヒントをお伝えしてまいります。

官公庁、学校、病院、店舗、共同住宅、寺社仏閣といった、不特定多数の人が集まる施設には欠かせない自動火災報知器や誘導灯、消火器などの消防用設備。栃木県宇都宮市に本社を置く栃木防災株式会社は、これらの施工や保守点検などの維持管理業務を手掛けている会社だ。 戦後まもなく設立した電気工事業 船見組の2代目社長を務めていた現社長の父が、栃木防災を設立したのは1968年。時は高度成長期、建設ラッシュで増え続ける防災設備工事や電話工事を専門に請け負う会社として独立した。(TOP写真:2014年に完成した栃木防災の社屋外観、建物内には文化活動を支援するためのホールもある)

それから半世紀あまり。栃木県内を中心に顧客は増え続け、現在その数はおよそ1,000件にのぼる。「顧客管理が一番重要ですね。この情報をなくしたら一大事です」と話すのは阿波保雄代表取締役。顧客が増えるにつれ、情報管理は重要課題となった。新規顧客が増えるだけではなく、防災・消火設備の点検は毎年継続的に実施するため、メンテナンスの時期や点検内容などの情報も蓄積していく。しかも、顧客情報には施設図面など重要な情報も含まれており、流出や滅失は許されない。そこで、同社では2021年からデータをサーバーで管理するとともに、強固なセキュリティ対策を講じている。

変化してきたのは情報管理だけではない。昭和から平成、令和へと移行する中で、業務面では図面作成が手描きからCADへ、出力は青焼きから大判プリンターに、連絡はメールで……というように、あらゆる業務がデジタル化され、今やICTの活用が欠かせない状況となった。高度成長期を経て今日まで、栃木防災はどのようにデジタル化を推し進めてきたのだろうか。

建築基準法や消防法の設置基準に応じて施工 寺社仏閣に対応する特殊な施工技術や国家資格も必要

栃木防災株式会社の阿波保雄代表取締役。社長自らも国家資格7種を保有する

栃木防災株式会社の阿波保雄代表取締役。社長自らも国家資格7種を保有する

栃木防災株式会社の強みは、建築基準法と消防法がある限り、必要とされる仕事であることだろう。建築基準法においては、建物の防・耐火性能や避難規定が定められており、火災の予防や拡大を抑え、確実な避難を可能とする建物の仕様が規定されている。一方消防法では火災発生を報知して早期の鎮圧を行い、避難者を救助するための消防設備や法定点検などが定められている。したがって、消防設備の施工・設置においては建築基準法と消防法の双方が関わるため、関係当局との綿密な打ち合わせが必要だという。また、文化財の消防設備には目立ちにくい設置方法や文化財に傷をつけない配慮が求められ、文化財専用の設備を用いた独特の施工方法もあるという。
法律に基づく施工業務であるゆえ、関連する国家資格は最大15種類にものぼり、資格保持者がいないと入札に参加することはできない。しかも資格は5年更新だ。ちなみに、栃木防災では15の国家資格の全保持者が2名も在籍している。

顧客データは顧客施設の防災に関わる重要な情報 会社の重要な資産であるデータをあらゆる脅威から守るには

法律により厳しく規定されている消防設備だからこそ、顧客施設では毎年点検が実施される。さらに新規顧客も加わるため、顧客データは増える一方だ。顧客データには設置工事のための図面や保守点検履歴といった数多くの情報が蓄積されており、そのデータは会社の重要な資産でもある。
したがって、情報の管理やセキュリティは、間接的に顧客施設の安全を守ることにもつながるもう一つの砦(とりで)だ。しかも、近年ネットワーク上ではさまざまな悪意ある攻撃にさらされるため、より強固なセキュリティ対策が求められる。
しかしながら近年、ネットワーク上では不正アクセスによる情報流出や大量のスパムメール送信など、サイバー攻撃が多様化しており、1つのセキュリティソフトでは対応しきれなくなっている。かといって複数のセキュリティ機器を導入すれば、保守管理も煩雑になる。そこで最近導入が進んでいるのが統合脅威管理「UTM」である。

あらゆるサイバー攻撃をオールインワンで守る統合型脅威管理「UTM」の導入で強固なセキュリティを構築

UTMはさまざまなセキュリティ機能を統合した製品だ。第三者からの不正侵入を防ぎ、パスワードやデータなどの抜き取りを防ぐ「ファイアウォール」、コンピューターウイルスの検知・除去を行う「アンチウイルス機能」、不正侵入の検知・除去を行う「ADS・IPS」、不正・有害サイトの閲覧制限により機密情報の流出を防ぐ「Webフィルタリング」、安全でセキュアな通信環境を構築する「VPN」、迷惑メールやスパムメールによるサーバーへの負荷を防ぎ、ウイルス感染から守る「アンチスパム」などをすべて1台で行うことが可能だ。

UTMは管理・運用面でもメリットがある。一つには、1台でセキュリティ対策ができるため、手間もコストも軽減される点。次に、インストールが不要であることだ。UTM機器を導入するのみなので、工事も不要で業務の中断も避けられる。さらに、トラブル発生時の対処がしやすい。UTMは機器の交換のみで済むため、ネットワークごとにセキュリティ機器を導入する場合に比べ、復旧にも時間を要さないという。
栃木防災ではマイナンバー制度の運用を契機に2019年にサーバーとUTMを導入。2022年にはUTMをグレードアップして更なる安全・安心を期している。

デジタル技術の導入は今から34年前。保守点検報告書作成用の自社専用ソフトを独自に開発したことからスタート

デジタル技術の活用には早期から積極的だったと振り返る猪瀬進保守管理部長。右奥に見えるドラフターは、かつて手描きで図面を作成していた頃のもので、1台だけ残しているという。

デジタル技術の活用には早期から積極的だったと振り返る猪瀬進保守管理部長。右奥に見えるドラフターは、かつて手描きで図面を作成していた頃のもので、1台だけ残しているという。

栃木防災におけるデジタル技術活用の契機となったのは、膨大な時間を要していた保守点検報告書作成専用ソフトの開発だった。今から34年前のことで、同業者では先駆けだったという。保守管理部長の猪瀬進氏は当時を振り返る。
「当時、点検報告書類の作成は複写シートに手書きでしたが、とにかく項目が多くて大変でした。1社につきほぼ1日かかっていましたよ。しかも、提出をする書類なので書き間違えるとまた1から書き直しです。相当な労力を要していましたね」。
そこで、栃木防災ではこの作業負担を軽減すべく、自社向けの専用ソフトをメーカーに委託して開発。1989年の消費税創始を機に利用を開始した。メールが普及するのはそれからおよそ10年後のことだから、かなり早期の導入だ。現在は別会社のものを採用しているが、このソフトは積算機能も備えており、作成した情報はソフトウエアメーカーのクラウド上で管理されている。

やがて2000年代に入ると、それまで手描きだった図面の作成がCADへと置き換わった。顧客から預かった施設図面データがあれば施工図面の作成が容易となり、作業効率は格段に向上した。同時に、図面出力の方法も青焼きからデジタルプリンターで出力するようになった。電子メールも普及し始め、2013年からは電子入札が始まっている。こうして社会のデジタル化の進行とともに扱うデータ量も増え、栃木防災ではデータの保管方法やセキュリティに強い関心を寄せてきたという経緯がある。

「現場の従業員の声に応えたい」。ICTの導入で作業効率が上がり、顧客からのメールや見積依頼にも迅速に対応できるようになった

図面や顧客情報はサーバーにて一元的に管理されているため、情報共有が容易だ。

図面や顧客情報はサーバーにて一元的に管理されているため、情報共有が容易だ。

手書きの情報をファイルで保管していた時代から、サーバーで全従業員が情報を共有できるようになると、作業手段やデータの管理方法は格段に変わった。作業効率は向上し、さらにセキュリティ対策も万全に構築したことで安心して仕事ができる。
「とにかく、仕事がスムーズにできることが一番です。今の時代に沿った環境を整えれば従業員の満足度も上がります。一人ひとりにストレスがかからず、気持ちよく仕事をしてもらえる環境づくりが必要なのです」と話す阿波社長。多忙だった高度成長期には毎日夜8時、9時まで仕事をしていたそうだが、今は当時よりも作業項目が増えているにもかかわらず残業はないという。「それも、ICTの恩恵ですね」と阿波社長は続ける。
猪瀬保守管理部長も、数多くある顧客からのメールへの対応や見積依頼に、迅速に対応できるようになった点を評価する。
阿波社長に今後の課題を訊ねると、「人材の育成ですね。この仕事は人が動かないことには始まらないですから」という答えが返ってきた。病気や介護、子育て中でも業務をカバーできる人材のバックアップ体制作りも目指しており、そこにもICTの活用ができそうだ。

地域密着企業だからこそ、防災以外にも地域への貢献を。貸ホールの運営で市民の文化活動を後押し

2014年に完成した新社屋にある貸ホール「Natural Hall」は地域住民の文化活動の拠点となっている

2014年に完成した新社屋にある貸ホール「Natural Hall」は地域住民の文化活動の拠点となっている

公共施設や商業施設の防災を通じて地域に寄与している栃木防災には、もう一つの顔がある。それは、文化活動の場を提供する事業によって文化活動を支援し、地域貢献に力を入れていることだ。
宇都宮市大曽で創業した栃木防災は、2014年に市内の上戸祭町に新社屋を完成・移転した。その際、社屋内に貸ホールと貸会議室も作り、市民に貸し出すとともに定期的にコンサートも企画・実施してきた。社屋に入るとすぐ眼前に広がるホールは、藤城清治氏の作品が展示され、サロンともいうべき温かみのある空気感を醸し出している。音響効果も最大に考慮したというその空間では、数多くの市民たちが心を癒したであろうことがうかがえる。人々の利用する施設の安全を守り、安心できるひとときを提供する栃木防災の仕事ぶりは、ここでも遺憾なく発揮されているようだ。

事業概要

法人名

栃木防災株式会社

所在地

栃木県宇都宮市上戸祭町60番地1

電話

028-622-5481

HP

https://www.tochibo.co.jp/

設立

1968年8月

従業員数

13名

事業内容

消防用設備工事・維持管理業

記事タイトルとURLをコピーしました!

業種別で探す

テーマ別で探す

お問い合わせ

中小企業応援サイトに関連するご質問・お問い合わせは
こちらから受け付けています。お気軽にご相談ください。

お問い合わせ

中小企業応援サイト

https://www.ricoh.co.jp/magazines/smb/

「中小企業応援サイト」は、全国の経営者の方々に向け、事例やコラムなどのお役立ち情報を発信するメディアサイトです。"

新着情報をお届けします

メールマガジンを登録する

リコージャパン株式会社

東京都港区芝3-8-2 芝公園ファーストビル

お問い合わせ先:中小企業応援サイト 編集部 zjc_smb@jp.ricoh.com