米粉を主原料にした体に優しいお菓子を世界へ 製造管理体制の強化や新規事業開拓をICTで推進する 禾(香川県)
2023年04月17日
Index
制作協力
産経ニュース エディトリアルチーム
産経新聞公式サイト「産経ニュース」のエディトリアルチームが制作協力。経営者やビジネスパーソンの皆様に、ビジネスの成長に役立つ情報やヒントをお伝えしてまいります。
香川県さぬき市に本社を置き、米粉を主原料にした菓子の企画・製造・販売に取り組む株式会社禾(のぎ)は「大地の恵みに感謝し、その美味しさを追求し、人々の健康と幸せに貢献する」ことを理念に事業に取り組んでいる。ICTを活用することで、製造管理体制の強化や新規事業の開拓といった様々な取り組みを進めるための時間を捻出している。(TOP写真:禾の商品のサンプル写真)
体に優しいお菓子を世に送り出す
「体に負担のかかる上白糖や動物性の油脂は使用せず、植物性の原材料だけを使用しています。食物アレルギーへの対応や食事制限が必要な人と、その必要がない人が同じお菓子をシェアできる。そういったボーダーレスなお菓子を世に送り出したいと思って事業に取り組んでいます」。香川県さぬき市の本社で株式会社禾の中條淳子代表取締役は、体に優しいお菓子づくりにかける思いをこのように語った。
中條淳子代表取締役
SWEETS AIDのブランドで都市部を中心に販路を拡大。3大アレルゲンを使用しない、化学調味料、保存料も使用しない
禾は、3大アレルゲンの小麦粉、卵、乳製品を使わず、国産の米粉を主原料としたお菓子を生産している。化学調味料、保存料も一切使用していない。「ヌカビスケット」「おこめボーノ」「おこめケット」「おとなの玄米ポリッポリ」といった12種類のお菓子を生産、販売している。米粉に大豆粉、アーモンドパウダーなどを合わせることで商品のバリエーションを作っている。
米粉を主原料にしたお菓子を生産している禾の生産現場
香川県さぬき市の本社と併設している工場は1日で最大5,700袋を生産できる。販路は東京、大阪、名古屋など全国の都市部が中心。
マクロビオティックカフェの運営から事業をスタート、マクロビオティックと出会い体調が回復したことがきっかけ
2010年、香川県高松市内で禾を設立した中條社長は、別の企業で営業担当として働いていた時に体調を崩し、健康に強い関心を持つようになった。その中で、穀物、野菜、海藻を中心とした食事を通じて健康的な生活を実現するマクロビオティックと出会い、生活スタイルを改めたところ、体調が回復したという。多くの人に自然との調和を考えた食事の大切さを伝えたいとの思いから2007年に、マクロビオティックをコンセプトにしたカフェを高松市内にオープンした。カフェを訪れる人たちとの交流を通じ、食物アレルギーを持つ人たちが安心して食べることができるお菓子を世に出したいと思い、同市内で米粉を主原料にしたお菓子の生産、販売に乗り出した。
禾の企業ロゴマーク
保育所だった建物をリノベーションしてお菓子工場に
事業が順調に拡大したことから2019年秋、生産能力を拡大するために、香川県さぬき市内の保育所として使われていた建物を食品工場にリノベーションして本社を移転した。近くには白砂の浜と松林が美しい景勝地「津田の松原」が広がる。
保育所だった建物をリノベーションした禾のお菓子工場の外観
需要が高い海外での展開を視野に準備を進める
農林水産省によると、アレルギーの原因になる小麦を含まないグルテンフリー食品の市場は順調に拡大しており、2024年には世界で約100億ドル(約1兆3,600億円)に達すると見込まれている。グルテンを含まない米粉の需要創出に向けた官民連携の海外プロモーション活動も活発化しており、米粉の関連事業には大きな追い風が吹いている。
この流れを受けて禾も今後、積極的に海外市場の開拓に乗り出していく方針だ。2022年12月には国際的な食品マネジメントシステムFSSC22000の認証を取得した。米国、欧州のほか、アジアでは台湾、香港などで商品の展開を検討していきたいという。
禾は国際的な食品マネジメントシステムなどの認証を取得している
販売管理システムのクラウド化などICTで時間を捻出
今後、新たな経営戦略の策定などの取り組みを進める上で、時間はこれまで以上に貴重なものになってくる。時間の捻出につながる業務の効率化を図ることを目的に、禾はICTを積極的に活用している。2022年8月には複合機を一新して、パソコンにインストールしていた販売管理システムをクラウド化するとともに、複合機に送られてきたFAX文書のデータに社外からアクセスできるシステムを導入した。
新しく導入した複合機
どこからでも本社に届いたFAX文書を確認できる
「販売管理システムに蓄積している帳票類などのデータは以前、本社でしか確認することができなかったのですが、新しいシステムのおかげで社外にいてもリアルタイムで確認することができるようになりました。自分あてのFAX文書もいつでも確認できるようになったので、安心してテレワークに取り組めるようになりました」とバックオフィスマネージャーの久保敏彦さんは導入したICTの効果を説明した。
バックオフィスマネージャーの久保敏彦さん
テレワークを推進する体制を構築できた
久保さんは高松市内の自宅で仕事をすることが多く、システムを導入する前は、販売管理システムに記録しているデータや自分あてに送られてきたFAX文書の内容を機動的に確認できなかったという。
「確認したい時は、本社オフィスに電話して、必要なデータやFAX文書をPDF化してメールで送信するようお願いしなければなりませんでした。電話をすると本社スタッフの仕事の手を止めてしまうので、いつも申し訳ないと思いながらお願いをしていました」と久保さんは振り返る。
導入したシステムのおかげで、本社の業務効率は大きく改善。久保さん自身も心理的な負担から解放されたという。今後は、新商品の味やパッケージの確認、契約書などの重要文書の押印といった本社でなければこなせない仕事を除き、オフィスワークを担当する社員全員がテレワークで仕事ができる体制を整えていきたいという。今後、事業の拡大に伴い、東京などに支社を置いた時にも効果を発揮しそうだ。
スマートフォンからFAX文書を確認する様子
システムをクラウド化したメリットはほかにもある。「以前は誰かが販売管理システムを使っていると他の人はその間、使うことができなかったのですが、クラウド化のおかげで複数人数が同時に使えるようになりました。システムが空くまで待たなければならなかった時間を有効活用できるようになったので、ほかにもシステムを使うことで生み出せる時間がないか考えていきたいと思っています」と久保さんは話した。
販売管理システムを操作する様子
ICTで生み出した時間を商品開発や販売戦略の策定に振り向ける
パソコンに不具合があった時もデータはクラウドに保存されているので、有事の際のBCP(Business Continuity Plan=事業継続計画)の面でも体制を強化することができたという。
「文書作成にかかる時間を減らし、その分、新しい商品開発や販売戦略を考える時間を増やした方が次につながります。海外展開の準備、生産現場の機械のメンテナンスや食品マネジメントシステムの強化など取り組まなければならないことが多く、時間はいくらあっても足りない状況なので、業務が効率化できたのは本当にありがたい」と久保さんは話す。
ほかにも、2011年から開設しているオンラインショップの強化、ホームページの海外版の作成に加え、異物の混入リスクを一切排除できるように生産工程の更なる自動化を進めていきたいという。
禾のオフィスの様子
生産工程の記録をデジタルで効率化
禾では、商品を生産する際、原材料の内容、数量、賞味期限、工場内の温度、湿度、焼成温度、検査、包装までの全ての工程を記録している。現在は、紙ベースで作成した資料のデータをシステムに手入力しているが、生産現場でタブレット端末に入力するだけで、データの記録が完了するようにしたいという。
「毎日8枚の帳票をデジタル化するのに、手入力する作業や確認も含めて20〜30分程度取られています。タブレット端末に入力したデータをそのまま使うことができるようになれば、時間を節約できるだけでなく手入力の際にミスをする心配もなくなります。作業を誰でもできるように簡単にしていきたい」と久保さんは話す。
禾の本社の外観
ICTを活用することで業務をスムーズにしている禾。ICTによって都会と同じような利便性を確保していくことで、本社の周辺の風光明媚な環境は、新しい働き方を提案する上で大きな強みになるはずだ。これからの国際展開を図る上でのICTの活用にも注目したい。
事業概要
会社名
株式会社禾
本社
香川県さぬき市津田町津田1467-3
電話
0879-49-3431
設立
2010年1月
従業員数
17人
事業内容
菓子製造、商品開発企画、卸販売