顧客ニーズに寄り添い 印刷事業の可能性をデジタルで広げる老舗印刷会社 アイプリコム(奈良県)
2023年04月21日 06:00
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株式会社アイプリコムは1907年に奈良県橿原市で創業した印刷会社だ。1999年に現在の同県田原本町に新社屋を建設して移転し、中西文山堂から現在の社名に改めた。116年の歴史の中で県内の官公庁や民間企業、各種団体から様々な紙文書の印刷を請け負ってきた実績と培ってきた印刷技術を土台に、デジタル分野の事業にも積極的に乗り出している。(TOP画像:アイプリコムが活用しているオンデマンド印刷機)
顧客の困りごと解決を第一に考える
「地元奈良に密着して地元企業の困りごとを解決することを第一に考えながら事業を展開しています。印刷業界は縮小傾向にありますが、印刷物がなくなることはありません。顧客ニーズを捉えて提案を行うことでビジネスチャンスを広げていきたいと考えています」。田原本町の本社で取材に応じた松本貴至代表取締役社長は柔和な表情で話した。
松本貴至代表取締役社長
豊富な機械設備で多種多様な印刷に対応
パンフレット、チラシ、小冊子、帳票類といった様々な印刷物の企画からデザイン、印刷までを一気通貫で請け負う体制を整えている。デザイン・制作部門の編集機、製版部門のデジタル製版機、スキャナー、オンデマンド印刷部門のカラーデジタル印刷機、平版印刷部門の両面オフセット8色印刷機、オフセット4色印刷機、封筒専用印刷機、製本・仕上げ部門の油圧自動高速断裁機といった豊富な機械設備が、多種多様な印刷物の制作を可能にしている。
デザイン性が高い様々な印刷に対応している
コロナ禍を受けてニーズが高まっている抗菌機能を備えた印刷物の企画にも力を入れている。今後、布などへの印刷が可能なガーメントプリンターを積極的に活用し、奈良県内のイベントなどで販売するエコバッグ、Tシャツなどの企画・販売にも力を入れていきたいという。また、原材料に石灰石を使用し高強度と防水、抗菌・防カビ機能を備えたストーンシートの販売にも力を入れている。燃焼時に排出される二酸化炭素は一般的なパルプ紙と比べて約半分。マスクケースや名刺、カレンダー、チラシ、パンフレットなど様々な用途に活用できるという。
アイプリコムが手掛ける抗菌加工を施した印刷物
Web活用のコンサルティングにも注力
印刷事業とともに今後の収益の柱として育てているのがWeb事業だ。2009年から企業向けのホームページ制作事業を開始し、インターネットを活用した先進的な販売促進技術や商品の開発に取り組む全国組織「クラウドマネージメント協会」に参加するなど、日々研究を積み重ねてきた。現在はホームページ制作だけでなく、検索エンジンを使ったマーケティング戦略、SEO(Search Engine Optimization)対策、閲覧者の経路分析、競合調査、販売拡大のためのキーワード調査、潜在ターゲット分析、コンテンツ分析といった多彩なサービスを提供している。利用者からは問い合わせ件数の増加やホームページの滞在時間が20%以上アップしたといった声が数多く届いているという。
ホームページ活用アドバイスなどWebに関連した様々な業務を請け負っている
「一昔前まではホームページ作成の受注を重視していましたが、現在はほとんどの企業がホームページを既に作成しています。新しい取り組みが必要と考え、Webを活用した集客や人材確保の具体的なノウハウの提供、基幹業務システムとの連携といったニーズに幅広く対応できる体制づくりに力を注いでいます。請求書の電子保存の義務化に対しても独自商品を開発していきたいと考えています」(松本社長)
Googleのパートナー企業に認定
Web広告の分野では、表示された広告がクリックされるごとに料金が確定するPPC(Pay Per Click)広告が主流になっている。技術は日進月歩で進んでいるので研究を怠ることはできない。大手IT企業、Googleによるデジタルスキルの習得をサポートする取り組み「Grow with Google(グロウ ウィズ グーグル)」のパートナー企業として認定を受けていることも、Web広告のコンサルティングを展開する上で効果を発揮しているという。
デジタルは万能ではない 印刷物とWebのメリットを最大限に活用
アイプリコムは印刷物とWeb両方のメリットを熟知した上で最大限に有効活用し、それぞれの顧客のニーズに合わせて最適な提案を行うことを重視している。
「デジタル全盛の時代の中、販売促進や集客が紙媒体中心だった時代とは大きく変化しています。しかし、デジタルは万能ではありません。ダイレクトメールなどリアルな紙媒体ならではの訴求力も見直されつつあります。それぞれの長所を理解し、印刷物とデジタルを掛け合わせたクロスメディアの視点からお客様に提案することを大切にしています。更に研究を積み重ねて、アイプリコムだからこそできるクロスメディアを実現していきたいと考えています」と松本社長は力強く語った。
アイプリコムのオフィスの様子
奈良県の地場産品を扱うECサイトを運営
アイプリコムはほかにもWeb分野で様々な事業を開拓している。その一つが約10年前から運営する、大手通販Amazonのカートシステムを活用した奈良県の地場産品を取り扱うECサイト「大仏本舗」だ。出店者が手間をかけることなくインターネット販売ができるサービスで現在、大和茶、和菓子、そうめんなどを扱う9店が出店している。
アイプリコムが運営するECサイト「大仏本舗」
「インターネット販売に取り組みたいが具体的にどのように始めたらいいかわからずに困っている中小企業経営者の力になりたいと思って始めました」と松本社長は振り返る。アイプリコムが出店企業に代わってAmazonのショッピングサイトでの商品出品や販売代行を担い、売れた商品のデータ管理や中元・歳暮などの時期に合わせた設定の変更、商品追加、掲載内容の変更、販売促進のアドバイスを行っている。初期費用は無料で月額費用は3,900円から。商品は100点まで掲載することが可能だ。コロナ禍以降、インターネット販売のニーズは高まっており、今後も出店数の拡大と情報発信の強化に取り組んでいくという。
ARを活用したサービスにも関心
また、最近ではLINEを活用した販売促進、集客マーケティングの提案にも力を注ぎ始めている。スマートフォン用のクラウド型AR(Augmented Reality=拡張現実)アプリケーションサービス、COCOR2(ココアル2)を活用した動画配信サービスも手掛けている。スマートフォンにインストールしたアプリを起動して、マーカー登録をしている印刷物にかざすと画面上に動画が表示される仕組みになっており、印刷物の訴求力を高めることができる。Web事業の体制は今後も強化し、売上高を3倍以上に伸ばしていきたいという。
顧客との信頼関係を大事に
アイプリコム本社の外観
「これから先、メタバースをはじめWebの世界がどれだけ発達したとしても、最終的にそれらを活用するのは人間です。お客様とのパートナーシップは誠実さから生まれます。社員一人ひとりが誠実であることをこれからも大切にしていきたい」と話す松本社長。DXは急務の課題だが、何から取り組んでいいか悩んでいる自治体や企業は多い。紙媒体とWebの両面から課題の解決に取り組むアイプリコムの姿勢は、大きなビジネスチャンスを生み出していくはずだ。
事業概要
会社名
株式会社アイプリコム
本社
奈良県磯城郡田原本町千代360-1
電話
0744-34-3030
設立
1999年10月(創業1907年5月)
従業員数
86人
事業内容
印刷物全般(パンフレット、チラシ、ポスター、広報誌、各種伝票など)、ホームページ制作
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