クラウド型見積システム導入で作業効率化。お客様との接点を増やし住宅設備事業を強化 本間燃器設備工業(群馬県)
2023年04月26日 06:00
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「何か困ったことがあったら、本間燃器」。お客様にそう思ってもらい、連絡をもらってさまざまなサービスを提供し続けたいと話すのは、本間燃器設備工業(前橋市)の本間成一代表取締役社長だ。LP(液化石油)ガスなどの燃料販売に加え、水回りのリフォーム、空調工事などを手掛ける同社は、クラウド型見積システムの導入でテレワークも可能にしたほか、入力作業も効率化。その分、お客様との接点を増やし地元密着型を強化する。燃料価格の上昇など経営環境は厳しい面もあるが、他社にないきめ細かなサービスで競争を勝ち抜いていく決意を固めている。(TOP写真:会社前に立つ本間成一社長)
36歳の本間社長は、先代から引き継いだ思いやり精神で社内を固める
本間社長の祖父が1963(昭和38)年に石炭や練炭などの販売で創業した同社はその後、群馬県内でもいち早くLPガスに目を付け、一般家庭だけでなく、工場など産業用、業務用にも販売して事業を軌道に乗せた。現在ではLPガスに加え、灯油、重油や産業ガスなどの配送も扱う。燃料販売だけでなく、空調工事やリフォームなどの事業も始め、現在は燃料販売と設備部門が2本柱で、電力販売自由化に伴い、新電力小売の取次店ともなっている。
36歳の成一社長は本間燃器に入社前、LPガス大手2社で計6年間経験を積んだといい、当初から祖父が興した事業を継ぐ決意だった。2015年に本間燃器に入社したが、2代目社長の父親の早逝により、2022年8月1日に社長に就任したばかり。それでも、これまで同社の経営手法を学んできたこともあり、方針に迷いはない。
「社員へのあいさつや声掛けは欠かさない。社員の顔を見て、体調が悪そうだったら、何かあったのかと聞くように心掛けている」。新社長の思いやり精神が表れた言葉だ。
「迅速に、正確に」がモットー。協力企業とも信頼関係築く
そんな同社の経営方針を表すのが、ロゴマークだ。ウサギがカメの甲羅を背負っているデザインで、これは「ウサギのように早く、カメのように正確に」(成一社長の母親である本間裕美専務)という意を込めた。このマークはTシャツの背中に印刷しているだけでなく、社屋のシャッターにも描かれ、社外へ向けてアピールしている。
Tシャツの背中と会社前のシャッターにはロゴマークが印されている
この精神を体現した出来事が今年1月に起きた。群馬県を寒波が襲い、ボイラーやトイレなどの配管凍結が続出し、前橋市水道局の工事指定業者となっている同社に修繕依頼が相次いだ。寒波襲来の初日は約30件の修理依頼があり、「危急を要する工事は深夜2時までかけて対応した」(本間社長)。その後10日間で約50件を修理するなど、ここでも「頼まれたら断らない」方針を貫いた。
社員は、設備工事、ガス検針、灯油配達、事務担当が各1人ずつと小粒だが、「60年間の付き合いがある」(裕美専務)という卸会社や設備会社など大手企業を含めた協力企業約10社と必要に応じて協力体制を組んでいるため、困っているお客様を待たせない「迅速な対応」でお客様の安心感を得て、信頼関係を築いている。
見積システム導入でリモート作業も可能に。利益率も即時に計算
お客様の要望に迅速に応えるために、2022年7月にはICTシステムも導入した。見積書や請求書などの作成は月に100件以上あるが、従来はデスクトップパソコン1台で入力作業を行っていたため、「社員の間で順番待ちができていた」など、非効率的だった。そこで、パソコン1台を増設するとともに、クラウド型見積システムを導入。これに伴い、自宅からでもクラウド上で書類作成が可能となった。加えて、仕入価格も同時に表示されるため、利益率を即時に計算できる点も大きなメリットという。システム導入後は時間の節約ができ、「お客様との接点を持つ時間を増やすこともできるようになった」と喜ぶ。
クラウド型見積システムを使う本間成一社長
クラウド型見積システムは、導入1ヶ月後の8月に早くも大きな効果をもたらした。本間社長が新型コロナウイルスに感染、2週間出社が不可能となった。しかし、発熱などもなかったため、自宅で見積書などを作成して対応した。実は、仕事の依頼は本間社長個人の携帯電話にかかってくるケースが多いという。これは、先代の社長から携帯番号を引き継いだため、古くから取引のあるお客様が直接連絡してくるためだ。ここにも、同社のお客様重視の姿勢が表れている。
新システムは、パソコンデータの自動バックアップ機能のほか、共有のクラウドストレージ機能もあり、他の社員ともデータ共有が可能。UTM(統合脅威管理)によるセキュリティ対策も万全だ。
自動検針システムも600軒導入。水回り工事の営業要員を強化
LPガスなどの使用量をリモートで検針する自動検針機も、アパートを中心に約600軒に導入。会社や自宅からでもガスの遮断や復帰作業も可能にするなど、ICT化を進めている。
一方で、自動検針機の導入は、同社が「ふれあい訪問」「孫の手お助け隊」と呼ぶ検針や容器交換、定期点検などでお客様を訪問する回数が減り、訪問時に頼まれるちょっとした依頼や、器具交換などの提案機会を逃す恐れもある。そこで、同社は今年4月から水回り工事などの営業要員を1人増やすと同時に、その営業社員がティッシュペーパーや家庭用洗剤などの日用品の販売やチラシを配布するという新しい手法も取り入れる予定だ。
若い経営者らしく、FacebookやInstagramなどSNSを活用した情報発信にも力を入れていくという。
お客様密着を最重要視する本間燃器設備工業のオフィス
LPガスの仕入価格5割上昇も、サービス強化で競争勝ち抜く
群馬県内の約6割の世帯は、LPガスを利用している。ただ、昨年来の燃料価格の上昇により、LPガスの仕入価格は「1.5倍に上昇している」(本間社長)。個人向けLPガス使用量は在宅率の高まりなどにより今のところ落ち込みはないが、大手企業との競争も激化している中で、「値上げはできない」と環境は厳しい。
LPガス事業では、検針、配達、定期点検と、月に1回はお客様を訪問して接点を築いてきた。個人ユーザーは約1,000軒にも及ぶ。この財産を生かし、「住宅設備事業に力を入れる」という。高齢化社会の進展により、個人世帯の困り事は水回りや空調だけではない。これまでのお客様とのつながりを生かし、「蛇口の修理から、電球の取り換え、ごみ出しなど、困っていることがあれば何でも引き受ける」と、他のガス会社ではできないサービスでお客様と密着し、競争を勝ち抜いてく覚悟だ。
事業概要
会社名
株式会社本間燃器設備工業
本社
群馬県前橋市城東町1-31-6
電話
027-231-8860
創業
1963年
従業員数
5人
事業内容
ガス・空調工事、リフォーム
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