製造業(その他)

パソコン操作を自動化するRPA導入で業務効率を上げた サーモテック(群馬県)

From: 中小企業応援サイト

2023年04月28日 06:00

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いま注目のRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を導入して業務を効率化させたプラスチック製品の総合メーカーがある。導入のいきさつや成果を聞いた。(業務用トレイを生産中の株式会社サーモテックの従業員)

年々業容を拡大、従業員の平均年齢は40歳手前

本社工場の外観(イメージカラーは青色だ)

本社工場の外観(イメージカラーは青色だ)

群馬県太田市内の工業団地の一角に株式会社サーモテックの本社と工場がある。到着後、玄関先で挨拶したら、ガラス窓で仕切られた事務室内の従業員全員から「いらっしゃいませ」と声がかかった。社屋内は明るく清潔に整えられ、チリひとつない。

プラスチックの業務用ケースやパッケージを製造する同社は1981年11月の創業。当初は贈答品のお菓子の容器など食品容器を作っていたが、年々業容を拡大し、現在は自動車部品や電子部品、医療機器、文具に至るまで幅広くカバーしている。太田市の本社工場のほか香港に事務所があり、中国広東省とフィリピンに製造拠点もある。従業員は38人。男性が約7割で、平均年齢は40歳手前と比較的若いのが特徴だ。

需要旺盛で土曜日は交代勤務、経常利益も過去最高

トップは渋谷直樹代表取締役(57歳)、創業者の長男で、1985年20歳で入社、常務を務める実弟ともに父が興した会社の経営にあたっている。金属より軽くて丈夫で安価、多目的に活用できるプラスチック製品の需要は旺盛で、2022年7月期の売上は約13億円と対前年比で10%以上伸びた。需要は新型コロナウイルスが広がった2019年春に一時的に前年比4割くらいまで落ち込んだが、その後急激に回復し、土曜日も交代勤務で稼働しないと生産が追いつかないという。

2022年以来の為替変動や原油高で原材料費は高騰しているなか、2022年7月期の経常利益は加工最高益を更新した。従業員には「ボーナスを多めに出しました」と渋谷社長。主力のモノづくりだけでなく、営業外でも利益を確保しているようだ。

渋谷社長を中心にポーズを取る内田主任(左)と大木さん

渋谷社長を中心にポーズを取る内田主任(左)と大木さん

IT導入補助金を活用、1年半かけ管理部門へ導入準備

同社がICTの本格導入を考え始めたのは2019年春、デジタル技術で業務の改善や改革をめざすDX(デジタルトランスフォーメーション)の必要性が叫ばれ始めた頃だった。渋谷社長あてに1本の電話がかかってきた。「ちょうど業務やパソコン操作を自動化して業務効率を上げるRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の記事が掲載された雑誌を読んでいた時、偶然にも支援会社からRPAの電話があったのです」と言う。

支援会社の説明を聞いてみると、国のIT導入補助金が使えることがわかった。さっそく申請し、採択されて、導入費約500万円のうち380万円の補助が出た。大学で情報処理を学び知識とスキルを持つ製造部の内田駿平主任(33歳)ら3人をRPA導入準備チームに抜擢し、2022年12月まで指導を受けながら、売上、仕入、発注などの数値が手作業ではなく基幹システムに自動的に入力されるようにしていった。内田主任は「新しい技術が好きなので、バックオフィス業務の自動化作業は大変というより興味の方が勝った」と振り返る。

RPAで自動入力された出荷情報を確認する

RPAで自動入力された出荷情報を確認する

RPA導入により残業時間減って定時退社に、月末の支払処理もストレスフリー

2020年秋からRPAを本格導入したら、管理部門の生産性が格段に上がった。管理部の大木加奈さん(31歳)は「手入力より処理が早いので残業が本当に少なくなりました」と話す。同社の就業時間は午前8時から午後5時だが、RPA導入前の帰宅時間は常に午後6時以降だった、導入後は、ほぼ定時で退社できるようになったそうだ。

手入力だと、どうしても人為的ミスが発生する、入力は単純作業でストレスも感じてしまう。渋谷社長は「売上・仕入・発注処理は毎日のことだし、月末には入金・支払い処理がある。以前は全て手入力だったため月末になると「間に合うかな?」とプレッシャーを感じていた」と回想する。「今は『ここにいくら払って』といちいち入力する手間がない。買掛金残高を銀行のネットバンキングでデータを取り込み、処理するので間違いがないまた確認いらずの為、承認するだけ。ずいぶん気持ちが楽になりました」と話す。

生産現場でもペーパーレスを、第1弾は金型保管情報

スマートフォン上の金型情報はパソコン画面からも確認できる

スマートフォン上の金型情報はパソコン画面からも確認できる

ICTによる効率化が目に見えてくると他にも展開したくなる。内田主任は「生産現場でも紙を減らしたい」と思った。自分でシステムを考えて2022年秋から、金型がどこにしまってあるか、保管情報を従業員それぞれのスマートフォンで見られるようにした。「生産に必要な金型の保管場所を探さなくても素早く確認できるうえ、金型情報の変更など内容更新もスマートフォン画面からできるので便利になりました」とにっこりする。

渋谷社長は「金型だけではなく生産情報などもペーパーレス化して生産現場の紙問題を解決すれば、現場で時間をかけず過去のデータを引っ張り出すことができる」とみる。実現すれば生産性向上につながるだろう。

もちろんペーパーレス化に向けた課題は少なくない。昔からの取引先に気を使うこともその一つだ。約30社の主要取引先の中には、同社がメールに添付して送付している請求書を受け付けない会社も1割ほどある。その場合はプリントアウトしたものを郵送することになる。こうした手間がなくなるにはなお時間がかかりそうだ。

情報共有化で社内業務の垣根撤廃を、将来目標は売上50億円

生産情報など社内データを共有化して売り上げ増をめざす

生産情報など社内データを共有化して売り上げ増をめざす

渋谷社長はさらに「今は営業や仕入など今はそれぞれ担当がいるが、将来は業務の垣根を取り払いたい。各作業を標準化して管理や生産データを共有し、社内業務の垣根をなくして売上増につなげたい」と展望する。なぜなら、「将来は売上を50億円規模に伸ばしたい」という志を抱いているからだ。

今はプラスチック業界で中堅クラスの同社だが、50億円の売上を確保できれば業界トップクラスに入る。現在43期目で、節目の第50期に向け、M&A戦略も視野に入れているというのだ。旺盛な需要に応えるためには、太田市の本社工場は場所も人にも限界がある。「製造ラインを1レーン増やすとなると、うちの場合5,000万円から6,000万円かかるのです。それなら建屋があって人もお客もいて売上もある会社ごと買ったほうが、効率がいい」と話す。「資産を遊ばせておくより前向きに投資をしたほうが利益につながる」と前を向く同社の動向に今後も目が離せない。

事業概要

会社名

株式会社サーモテック

所在地

群馬県太田市東金井町1238

電話

0276-57-8588

HP

http://www.thermotech.co.jp/index/

設立

1981年11月

従業員数

38人

事業内容

自動車部品・電子部品のトレイ、ディスプレイ関連製品、食品用軽量容器、化粧品ケースなどの設計・試作・量産、金型設計・製作、ソフトウェア開発、看板製作、新素材開発、売電事業

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