製造業(印刷),製造業(その他)

のぼりや看板の製造販売、インターネット草創期からDtoCで成功。クラウド活用で次の展開へ ハクロマーク製作所(兵庫県)

From: 中小企業応援サイト

2023年05月01日 06:00

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産経ニュース エディトリアルチーム

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金属プレス加工業から始まった株式会社ハクロマーク製作所を若くして引き継いだ岸岡秀代表取締役は、右肩下がりのプレス加工業に見切りをつけて、新事業として不動産看板の製造販売事業を展開。のぼりなどの製造も始めるとともに、2002年には業界に先駆けてネットショップを始めた。2007年に受注用メールアドレスの共有化システムで合理化を図り、2021年には容量無制限のクラウドストレージで膨大なデータを保管して業務効率化につなげた。今後は電話のCTIシステムの導入や電帳法・インボイス制度対応に伴う伝票類や作業指示等のペーパーレス化に取り組む予定だ。(TOP写真:力を合わせて会社を大きくしてきた岸岡秀代表取締役と妻の嶋田真子取締役)

プレス加工業として出発

岸岡社長の父、敏美氏が1961年に立ち上げたハクロマーク製作所は家電製品の銘板のプレス加工業者として創業。創業地が「白鷺城」の愛称で親しまれる世界遺産・姫路城の南側にある姫路市の白鷺(はくろ)地区だったことから、社名が生まれた。
日本の家電メーカーが日の出の勢いにある中、会社は順調だったが、敏美氏が病を患い1990年、メーカー勤務だった24歳の岸岡秀社長が入社。会社を引っ張っていくことになった。

プレス下火で、シルク印刷から看板メーカーに

だが、その頃には銘板をつける家電製品はどんどん減っていた。新規事業を立ち上げなければ会社はつぶれる。その時に目を付けたのが、銘板に印刷していたシルク印刷技術だった。
岸岡社長は取引先に頼み込んでシルク印刷技術を学び、自ら姫路市内の不動産業者に飛び込み営業をかけていった。

当時は不動産業者が物件の場所を案内するための捨て看板がたくさん利用されており、飛び込み営業は成果を上げた。そのうち、のぼりの注文も入った。当初は外注していたが、自ら作るようになると、印刷技術を活用した商品がいくつもあることに気づいた。後に横断幕やのれんなどにも手を広げていった。

2003年頃の工場風景

2003年頃の工場風景

2002年にネットショップ、姫路だけからだった注文が全国から

岸岡社長が入社した頃、社員は社長以下6、7人。取扱い商品が増えるにしたがって社員も増えていたが、本格的な成長のきっかけは2002年、初のホームページ「オーダーのぼりドットコム」の開設だ。当時はまだホームページ自体を持っている会社も少ない中、オーダー品をインターネットで販売する試みは、ある意味挑戦だった。

開設前までは、岸岡社長のみが営業をして回っていた。当然、受注先は姫路市内で、1ヶ月に10件ほどの注文を取るのでやっとだったが、ネットショップ開設と同時に東京などからも次々に注文が入るようになった。ほぼ同数の注文が営業に動き回らなくてもネット経由で入ってきた。

夫婦で話し合って立ち上げたネットショップ

嶋田取締役は岸岡社長と結婚と同時に転職して入社。デザイナーとして働いていた。2人で話し合う中、「姫路だけで営業して対面で注文をもらうやり方は時代遅れになるのでは」との結論に至り、嶋田取締役がシステムエンジニアとして働いていた前職の経験を活かしてホームページを開設した。ホームページ制作ソフトを使って、「1週間でできた」ショップ。決済機能もない時代のHPだが、「しばらくは一人勝ち状態で、東京を中心に、ほうっておいても注文が来た」(嶋田取締役)。

「特急便」など模倣されても泰然自若、日々改善

先行者利益は5年ほど通用したという。だが、その間もまねをされ、売り文句などを「一言一句違わずコピペされたホームページも見かけた」(嶋田取締役)。さらには、納期の差によって「特急便」「通常便」という言葉を作ってアピールしたところ、「すぐにまねをされ、今は一般用語のように普通に使われている」。嶋田取締役にとっては気に障る話だったが、岸岡社長は「まねされるということはリーダーになれているということ」と話し、泰然自若としていたという。

注文には必ず電話

ネット販売を始めて以来、岸岡社長が大事にしているのが、「お客様に安心をお届けする気持ち」。そのために、注文してくれた人に対して必ず電話をかけることなど、「お客様に安心をお届けする7つの約束」を実践している。

お客様に安心をお届けする7つの約束
1.ご注文を頂くと、必ずお電話を差し上げます
2.原稿の修正は、お客様が納得いくまで何度でも行います
3.原稿の修正やお問合わせの回答は1営業日中にします
4.納期は原稿決定後、通常便は6日後出荷、特急便は3日後出荷いたします
5.思ったお色でなければ、お作り直しいたします
6.迅速・親切・丁寧な対応をします
7.ここに頼んで良かった、イメージ以上の出来栄えでした、そう言って貰えるよう、全力を尽くします

ネットで販売している看板やのぼりなどはすべて顧客の要望を聞いてつくるオリジナルの商品。注文する客は思い通りのものができるか不安に思うし、受注する側も「注文者が十分な知識をもって発注しているか」が気になるところ。実際、「電話をしてお聞きしてみると、もう少し大きくとか、違う生地の方が適しているとかいう話になることがある」。それが注文者の安心につながり、毎月100件ほど寄せられるアンケートの回答結果は6割が「大満足」になっている。

メール共有システムで注文対応を効率化

アナログな電話を駆使する一方で、注文対応の効率化を2007年に図った。それまでは1台のパソコンでしか受注メールを確認することができず、チェックするのは1人だけ。内容を確認してデザイナーにメールを転送したり、お客様にお見積りを作って送ったりしていたが、注文が増えるにつれお客様への連絡やデザインを作る作業が遅れるようになってきた。

メール共有システムで関係社員全員が受注メールを確認できる

メール共有システムで関係社員全員が受注メールを確認できる

そこでメール共有システムを導入し、受注メールを関係社員全員がチェックできるようにした。メールを確認した人が「担当した」旨を記すことができるため、担当者が決まらないまま「放置」されることはなくなり、対応の「遅れ」や「忘れ」がなくなった。

2021年にクラウドストレージを導入

他にも業務の改善に取り組んできた。デザインデータを保管するデータサーバもその一つだ。お客様の原稿を社内で大切に保管するサービスを1995年から始めていた。リピートでご注文頂いた時に「あののぼりを10枚ね」と言われたらすぐに作成できるメリットがあったためだ。当初はMOディスクという電子記録媒体に保存をしていったがillustratorのデータは年々大きくなり1か月のご注文が1枚のMOに保存できなくなってきた。
そこで2003年自社サーバーを導入。サーバーを1台設置しただけでなく、サーバーの故障でデータが無くなることを防ぐためにもう1台のバックアップ用サーバーと停電時でもクラッシュしないように無停電電源装置をそれぞれに付随させるという大掛かりなものだった。費用は2台で200万程。費用はかかったがリピート注文を獲得する上で必要な経費だと考えていた。
その後18年ほど3世代に渡り社内サーバーでデータを保管していたが、費用もさることながら場所を取ることと、社内にサーバーを建てるのでメンテナンスも大ごとだった。そこで、サーバーをオンプレミス(on-premisesサーバーを自社内に設置し運用すること)からクラウドに変更することを検討した。

クラウドにする際に不安だったのは情報が漏洩しないかということ。また社内のLANですぐにアクセス出来ていたものが通信になりスピードも遅くなるのではないかという心配もあった。
その不安は1カ月のお試し期間で問題無いことが確認でき、2021年11月からクラウドストレージへ移行した。

かつて使っていたMOディスクを手にする嶋田真子取締役

かつて使っていたMOディスクを手にする嶋田真子取締役

容量無制限のメリット大のうえ、経費も節減

嶋田取締役は「容量無制限が一番のメリット。今まではサーバーの容量が限られていたので5年分しかデータを保存できなかった。6年経ってから『あの時ののぼりを注文したい』と言われた時はまた一からデザインを作らなければならなかったが、今は2016年以降のものならどのお客様のデータも保管している」と話す。
その他にも「アカウント数に応じた分かり易いコスト計算」「バックアップの安心感」「デザイナーが使うMacのパソコンとの相性のよさ」「パワーポイントなどのソフトを入れていてないパソコンでもこのクラウドストレージ内だと中身を見られること」などのメリットを挙げた。

すぐに検索結果が出るクラウドストレージの画面

すぐに検索結果が出るクラウドストレージの画面

クラウドストレージ内を検索すれば、ファイル名だけでなく、ワードに書かれた文書内からも拾ってくれるので「文書を探す手間が大いに省ける」という。それでいて、費用はオンプレミス時代の半分以下で済み、サーバーのスペースもメンテナンスの煩わしさも不要になった。また、複合機のFAXやスキャンデータの管理にも活用。データを各自のパソコンに飛ばせるようにしている。

複合機もデータ管理に役立っている

複合機もデータ管理に役立っている

コロナ禍の2年間は前年比減も、2022年は過去最高

日本全体の動きが止まってしまったコロナ禍の2020年、2021年と、ハクロマーク製作所の売上は前年比減となった。しかし、2022年は過去最高の8,589社から注文が入り、売上も過去最高を記録した。

社員には若者も多く、オフィスは活気にあふれている

社員には若者も多く、オフィスは活気にあふれている

社員数もネットショップ開設前の約5倍の34人にまで増えている。若い人も多く、会社は活気に満ちている。

ハクロマーク製作所は現在6つのネットショップを運営している。

ハクロマーク製作所は現在6つのネットショップを運営している。
旗・幕ドットコム https://www.hata-maku.com/
オーダーのぼりドットコム https://www.order-nobori.com/
オーダーのれんドットコム https://www.order-noren.com/
不動産応援.COM https://www.fudousan-ouen.com/
駐車場看板.com https://www.parking-kanban.com/
選挙のぼり.com https://www.senkyo-nobori.com/

電話コンシェルジュシステム導入で対応力向上を検討

現在、ハクロマーク製作所で導入を検討しているのが、電話の相手や時間、内容を記録するシステム。今は顧客からの電話対応者が以前の対応者と違うと、別のことを伝えてしまうリスクがあるが、過去の電話記録をすぐにチェックできるようにしてスムーズな対応を目指す狙いだ。
また今年10月から始まる電子帳簿保存法やインボイス制度の対応と伝票類が電子化されるにあたり、指示書等のペーパーレス化も行っていく予定だ。

ハクロマーク製作所のリクルートサイトにアップされている姫路城

ハクロマーク製作所のリクルートサイトにアップされている姫路城

ネットショップのブラッシュアップやSEO対策などを続ける中、業務効率化だけでなく、顧客にとっての安心快適につながるサービスも向上させるハクロマーク製作所。ハクロの名前の由来である白鷺のように、今後も優雅に飛び続けそうだ。

事業概要

会社名

株式会社ハクロマーク製作所

本社

兵庫県姫路市西中島284-8

HP

https://www.hakuromarkss.jp/

電話

079-281-8898

創業

1961年9月

従業員数

34人(2023年3月現在)

事業内容

オリジナルののぼりや旗、幕、のれん、看板のネットショップを通じた製造販売

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