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「カーセンサー」情報発信企業を支えるキーマンとペーパーレス先進環境 シイ・アイ・エス(富山県)

From: 中小企業応援サイト

2023年05月12日 06:00

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2018年に完成した新社屋ではペーパーレス化が進み、静かなオフィスには空港のVIPラウンジを彷彿とさせるくつろぎのエリアも。顧客本位の情報提供を追求してきた企業には、ビジネスのICT化を強力に推進する気鋭のキーマンがいる。(TOP写真:株式会社シイ・アイ・エス本社)

3人の独立から始まった顧客目線の情報提供ビジネス

株式会社シイ・アイ・エスは、地元有数のシステム企業から独立した3人が始めた顧客目線の情報管理会社だったが、当初は思うような売上が確保できず資金繰りに行き詰まることもあった。そこに助け舟を出してくれた地元の自動車メーカーに勤務しながら3人は様々な打開策を模索。そこで目にしたのが中古車販売業界の旧態然とした姿だった。

1980年代当時、中古車の販売価格には客観的な裏付けもなく、販売店ごとの勘や経験値で決められていた。そこで、現社長の橋本淳一氏を含めた創業メンバーは富山県内の中古車店頭価格をくまなく調べてまわり、その情報をデータベース化して売るという発想を実行に移すことにした。

中古車取引を支えてきた業界のオートオークションは1970年代から既に始まってはいたが、それはあくまでも業界内での取引であり顧客目線でのデータベース化などなされてはいなかった。落札価格にはある程度の業界基準が反映されていたとしても、消費者への販売価格は全て販売店の目利きで決められていた。そこで3人は業者間での値決めの裏付け資料として使える帳票形式の情報誌を、契約してくれた企業に提供する業務を開始する。

「カーセンサー」に合流するまでのめまぐるしい変遷の歴史

その後、インターネットによる情報サービスの提供も始め、北陸での中古車情報誌『Wincar』を発刊。さらには北海道の『マイカー情報』、九州の『カッチャオ』の3誌を合体させた『マイカー情報カッチャオ』を1999年に誕生させた。

この時点で全国の中古車情報誌は『グー』『カーセンサー』『マイカー情報カッチャオ』の3ブランドとなり、地方に強い『マイカー情報カッチャオ』、都市部に強い『グー』『カーセンサー』という図式ができあがっていった。しかし、中古車情報データの統一化は時代の要請もあり、顧客寄りの情報を発信していた『マイカー情報カッチャオ』と『カーセンサー』はやがて提携関係となり、2004年にはブランドを『カーセンサー』に統一する。

専門店や修理工場寄りであった『グー』とは異なる路線を目指してきた『カーセンサー』は2006年、車を探す消費者により公平な情報を提供する総額表示を開始した。これによって業界の常識にもなっていた店頭価格と実際の購入価格が異なるという悪弊が解消されることになった。今では当たり前となった中古車の総額表示だが、顧客の安心につながる販売価格の表示がこの時に始まったのだ。

ICT化のキーマンは、高校1年生で業界注目のプログラマーに

中古車情報事業で大きな礎を築いてきたシイ・アイ・エスは、その後ゴルフダイジェスト社とも提携を結び、プレー情報だけでなく、ゴルフ場の予約コールセンターの機能も担い、北陸全域のゴルフ場空き枠管理も行っている。

そんな情報提供企業に23年前に入社してきたのが松下仁志COO兼CIOだ。当時まだ18歳だった松下氏がシイ・アイ・エスと縁を持ったのは、松下氏が開発したフリーソフトをたまたま使っていたシイ・アイ・エスの取締役とチャット友達になったのがきっかけだという。

松下氏は高校1年生の頃から日経新聞でも取り上げられる注目の若手プログラマーで、有名な私立大学からも能力を買われ一時的にはSEの世界への参画も果たすが、結果的には肌に合わずフリーのプログラマーとして離脱。その後発表したフリーソフトが劇的な評判となり、その能力を高く評価してくれたシイ・アイ・エスとのご縁が生まれたのだ。

松下仁志COO兼CIO

松下仁志COO兼CIO

脱ペーパー&後工程撲滅でほとんどの社員の残業がなくなる

松下氏がシイ・アイ・エスの脱ペーパー宣言をしたのは2016年のこと。情報データや様々なカラー原稿出力などが長年行われてきたこの業界で、脱ペーパー宣言は相当の決断だったに違いない。最終校正の確認なども含め紙出力なくしては成り立たない世界でどのようなことが実行されたのか。

まず松下氏が取り組んだのは、それまで紙を出力するための機械だったデジタル複合機を「業務をつなぐための機械」として使っていこうと決めたこと。そのためのステップとして、それまで当たり前に行われていた紙出力情報をどう電子化していくかに焦点を当てた。

2018年の新社屋の完成前後からは、社内全ての複合機の仕様を統一しさらに電子化を推進。どうしても得意先への紙資料提出が必要な場合でも複合機に折り機能を付け、最低でもホチキス留めなどの手間をかけずに冊子状の書類が出力できるよう業務の合理化を図った。単に紙媒体をなくす電子化にこだわったというより、大量の資料のホチキス留めや仕分け、送付作業などの人がやるべきでない仕事を会社の中から一掃することの方が重要だった。加えてペーパーレス化の対象に入っていた契約書を含めた帳票データも、複合機から仕分けソフトを通してクラウドシステムへ自動的に処理フローが流れるようにした。

その成果は目に見える形で現われ、ほとんどの社員の残業がなくなり、情報の共有化も格段に進んだ。今年度からは得意先ごとの事情で遅れていた請求書の電子化も実施していくことになっている。やはり、企業が強力なICT化を進めていくためにはトップの理解と松下COOのような推進役が不可欠だ。イニシャルコストもかかり、往々にして意見も分かれがちなICT化の推進には、理解ある経営者の後押しと明確な将来ビジョンを持ったキーマンの的確な誘導が、企業の未来をつくる重要な決め手になると言っても過言ではない。

オフィスに置かれたデジタル複合機

オフィスに置かれたデジタル複合機

新社屋の中はゆるいフリーアドレスでペーパーレスな環境

松下COOが案内してくれたのは、事務スペースの入り口に設置された個人用ロッカー。中で仕事をする際には社員のプライベートな持ち物などはここに収納し、“ゆるく”フリーアドレス化された事務スペースではパソコンや複合機を使った仕事が各々のお気に入りのデスクで行われていた。そのゆるいフリーアドレスというのは、大きく分けられたエリアごとに毎朝くじ引きで居場所を選択できるというルールのことらしい。

この業種の性格上、どうしても避けられないラベル印刷やA3サイズの冊子印刷は、新しく大型のオンデマンド機を導入して行っているが、その他はほぼ全て電子化。社員がどの事業所にいても同じ仕様の複合機から情報を取り出したり各々のパソコンで共有情報の閲覧や加工ができる環境になっている。また、社内には数名で打ち合わせができる部屋も用意されているが、普段の会議はそれぞれが座っているデスクで行われることが多く、会議室と事務所を移動する社員などは見当たらない。

社員の私物はこのロッカーに保管

社員の私物はこのロッカーに保管

ゆるいフリーアドレスのデスクでは仕事も会議も可能

ゆるいフリーアドレスのデスクでは仕事も会議も可能

また事務スペースに隣接する2ヶ所の空間にはゆったりとしたソファが置かれ、近くには飲食物のサービスも可能なキッチンもあり、社員が自由に使える環境づくりがなされている。まるで空港のVIPラウンジのような空間で仕事の緊張をほぐし、気分転換を図るには理想的とも言える設えは、ここを訪れる人にとってもオアシスのような空間だ。

空港のVIPラウンジを思わせる広々とした寛ぎ空間

空港のVIPラウンジを思わせる広々とした寛ぎ空間

中古車市場拡大の鍵となるディティーリング事業でSDGsの一翼も担う

ここまで業務をスリム化し、社員一人あたりの売上を向上させてきた社内のペーパーレス化が軌道に乗ると、もともと車好きの橋本社長から車のコーティングツールや薬剤の販売を主業務とするディティーリング事業を任された松下COO。

情報に付加価値をつけて売る仕事を主業務としてきた企業の中で唯一の物販とも言えるディティーリング事業は、取りも直さず未来の中古車市場を裏から支える重要なSDGsビジネスでもある。さまざまな修理工場や車のリニューアル工程で使われているコーティングツールや薬剤などの商材は、既に我々が気づかない所で活躍を始めている。そんな事業を任された松下COOが見ているのはどんな姿の未来なのか興味津々である。

中古車市場だけでなくその他の分野でも、情報の価値がより高付加価値化していく時代。中小企業がそれぞれの分野でなくてはならないキーストーンであるためには、未来を見据えた的確なICT化の推進と、周辺のこまごまとした手作業のシステム化、そして誇りを持って取り組むことのできる快適な環境づくりが欠かせないということを実感させてもらった取材であった。

事業概要

会社名

株式会社シイ・アイ・エス

本社

富山県富山市才覚寺840番地

電話

076-461-5920

設立

1988年12月12日

従業員数

56名(パート2名、役員含む)

事業内容

<情報提供サービス>中古車情報サービス「カーセンサー」北陸甲信越・三重滋賀総代理店、中古車情報マガジン「AUTOZONE福井」、ゴルフダイジェスト・オンライン代理店<販売支援サービス>たのも〜る <定型型ディティーリング事業>Amadas|octa(アマダス・オクタ)

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