製造業(その他)

製造現場の機械化とともにICTを積極導入。ねじづくり一筋に日本のものづくりを支える 日滉精螺製作所(奈良県)

From: 中小企業応援サイト

2023年05月25日 06:00

この記事に書いてあること

制作協力

産経ニュース エディトリアルチーム

産経新聞公式サイト「産経ニュース」のエディトリアルチームが制作協力。経営者やビジネスパーソンの皆様に、ビジネスの成長に役立つ情報やヒントをお伝えしてまいります。

ねじは機械を構成する部品同士をつなぐ、ものづくりに欠かせない部品だ。株式会社日滉精螺製作所は1965年の創業以来、ねじの製造一筋に取り組み、その強度と精度を高めることに注力してきた。奈良県北部の天理市で工場を増築、改築、新設して最新鋭の機械を導入するだけでなく、QCサークル(小集団改善)活動や「整理・整頓・清掃・清潔・躾」を徹底する5S活動を通じて機械を扱う人材の育成にも力を入れ、年間10億本の生産が可能な体制を整えている。ICTを活用することで持ち前のねじづくり技術に更に磨きをかけている。(TOP写真:製造機械がずらりと並ぶ株式会社日滉精螺製作所の工場)

実績と技術で安定した受注を確保

株式会社日滉精螺製作所は3ミリから8ミリ幅のねじの製造を得意とし、タッピングや座金組込みねじ、アップセットボルトのほか成形難度が高い特殊な形状のねじも生産している。技術力と実績を備えていることから取引先の業界は自動車をはじめ工作機械、半導体、太陽光発電機器、空圧制御機器など多岐にわたり、年間を通じて安定した受注を確保している。

「ねじは車や家電をはじめとする様々な製品に使われている重要な基幹部品のひとつです。日本のメーカーの高い要求水準にいかに応えるかということを重視してねじづくりに取り組んできました。ねじはたった1本でも破損すると製品全体をだめにしてしまうので、社員一同大きな責任を担っていることを肝に銘じながら日々働いています」。奈良県天理市の本社・工場で取材に応じた田中祥敦代表取締役社長は、このようにねじづくりへの思いを語った。2019年に父親から事業を継承した田中社長は、ねじづくりに真剣に取り組む父親の姿を見ながら育ち、2001年に入社してから20年以上にわたってねじづくりに邁進してきた。

田中祥敦代表取締役社長

田中祥敦代表取締役社長

正社員比率はほぼ100%

日滉精螺製作所では従業員のほぼ100%が正社員として働いている。高い正社員比率には働いている人たちに安定した環境を提供したいという創業当初からの会社の方針が反映されている。「最近放映された連続テレビドラマで、ねじの生産会社が舞台となったこともあって業界への注目が高まっているのはうれしい限りです。若い人たちに関心を持っていただくためにも積極的な情報発信を考えていきたいと思っています」と田中社長は表情をほころばせた。2022年12月に地元の高校生の就業体験を2日間実施したのもその思いの表れだ。

情報発信強化のために2019年に企業向けのホームページ作成システムを導入した。生産設備などの写真を豊富に掲載し、新しい設備の情報や地域のために取り組んだ活動などをきめ細かく発信している。

地域で連携して高品質のねじを世に送り出す

日滉精螺製作所は、地域のパートナー企業と連携して品質の高いねじを世に送り出している。ねじは、頭の部分を成形する圧造、螺旋状の山の部分を成形する転造、熱処理、表面処理を経て完成し、厳格な品質検査を行った上で出荷される。日滉精螺製作所は圧造、転造、品質検査の工程を担っている。「地域で互いに助け合いながらねじを作っています。事業を通じて幅広い人たちに恩恵が行き渡るようにこれからも頑張っていくつもりです」と田中社長は話した。

日滉精螺製作所は機械設備の導入を積極的に行ってきた。製造では約70台の圧造機、約50台の転造機、約30台の組込転造機のほか、画像マイコン、光学式マイコンなど約30台の選別機を導入している。圧造機や転造機が一斉に稼働し、大量のねじができ上がっていく光景は活気にあふれている。

日滉精螺製作所が導入している圧造機

日滉精螺製作所が導入している圧造機

日滉精螺製作所が導入している転造機

日滉精螺製作所が導入している転造機

でき上がった大量のねじ

でき上がった大量のねじ

将来を見据えて2022年12月に第二工場を開設

また、2022年12月、コロナ禍からの景気回復を見据えて生産体制を強化するために本社・工場から数百メートル離れた場所に第二工場を開設した。「将来を見据えて成長のための次の一手を打ちやすいように第二工場を立ち上げました。お客様から提案があった時に迅速に対応できるようにこれからも体制を整えていきます」と田中社長は力強く語った。

多彩な検査設備を導入して生産したすべてのねじをチェック

品質管理には特に力を入れ、製造したねじの徹底した全数検査を実施している。検査設備として金属組織レベルでの厳格な品質チェックを可能にするマイクロスコープをはじめ、引張試験機、軸力試験機、トルクアナライザーといった多彩な検査設備を導入している。2023年4月には本社・工場に最新の画像寸法測定器を設置した製造検査室を設けた。

新しく設置した製造検査室

新しく設置した製造検査室

2000年に品質マネジメントに関する国際規格ISO9001、2003年に環境マネジメントに関する国際規格ISO14001をそれぞれ取得している。「品質は日本の企業が海外の企業と競争していく上で絶対に妥協してはならない領域であり、厳しい品質管理は日本のものづくりの生命線と思っています。世界で信頼が厚い日本のものづくりの足を引っ張るわけにはいきません。そういった思いから検査機器に関しては常に新しい機器を導入して進化することを心がけています」と田中社長は力を込めて語った。

第二工場との情報共有化にVPNを導入

製造現場の機械化とともにICTの導入にも積極的に取り組んでいる。「いつまでも手書きの紙資料中心の仕事の進め方では、デジタルが中心になるこれからの時代に対応できないと考えています。生産性を上げるために改革していかなければならない点は数多くあり、課題解決の鍵となるのがICTです。これから先、人材を確保する上でもICTへの積極的な取り組みは、就職先として選んでいただく上で重要な要素になっていくでしょう。様々な技術やノウハウについての情報収集を積極的に行っていきたいと思っています」。総務部門を統括して兄の田中社長を支える田中宏育専務取締役はこのように話した。

田中宏育専務取締役

田中宏育専務取締役

第二工場の立ち上げに合わせて本社との情報共有を実現するために2022年11月にインターネットを活用した専用回線、VPN(Virtual Private Network)を導入した。本社に設置しサーバーに保存している図面などの資料に第二工場からアクセスする上で必要不可欠な基盤となっている。「第二工場を開設するにあたり、電話やFAXだけでは情報を共有する上で限界があり、仕事が非効率になってしまうことを恐れていたのですが、VPNのおかげでその課題を解決することができました。費用対効果が高く、一定のセキュリティ機能が確保されていることもありがたく思っています。これから拠点が増えても、問題なくしっかりとした情報の共有ができそうです」と田中専務。

電子帳票作成システムで業務時間の短縮とペーパーレス化を進める

2023年1月には電子帳票作成システムを導入し、今後活用を進めていく方針だ。現在、取引先への納品書やねじの検査書といった書類の作成は紙文書で行っているが、今後デジタル化を進めることで、一度作ったデータを別の書類を作成する際に転用したり、検索機能を利用して必要な書類を見つけやすくすることで業務を効率化していきたいと考えている。

日滉精螺製作所の事務所の様子

日滉精螺製作所の事務所の様子

現在、1日あたりに作成する書類は100枚程度に上っており、電子帳票作成システムを使いこなすことで大きな業務時間の短縮とペーパーレス化が実現できると見込んでいる。現在は、製造現場のホワイトボードに書き込んでいる製造工程の進捗状況も、デジタル管理できるようにしていきたいという。

デジタル化の流れに乗ることで会社の可能性を広げる

日滉精螺製作所の本社・工場の外観

日滉精螺製作所の本社・工場の外観

「これまで取り組んできた仕事の進め方を常に見直し、変えるべきところは変えていきたいと考えています。次の世代に技術を伝えていく上でもICTは有効です。デジタル技術の進歩に積極的に対応することで会社の可能性を広げていきたい」と田中社長は力強く語った。長年育んできた日滉精螺製作所のねじづくりの技術は、ICTをこれまで以上に積極的に活用することで更に大きく飛躍するはずだ。

事業概要

会社名

株式会社日滉精螺製作所

本社

奈良県天理市西長柄町492-1

HP

https://www.nikkoseira.com

電話

0743-66-3338

設立

1965年3月

従業員数

72人

事業内容

タッピング、座金組込みねじ、アブセットボルト、小ねじ、特殊ねじなどの製造、販売

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