建設業(土木)

県最大手の造園会社がホームページをリニューアル。豊富なデータでプロ集団の社風を伝える 文吾林造園(長野県)

From: 中小企業応援サイト

2023年06月05日 06:00

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長野県最大手の造園会社で、国道の街路樹の整備から個人宅の庭の植栽まで幅広く手掛ける文吾林造園株式会社は、造園業のプロ集団だ。原孝昭代表取締役をはじめ樹木医が6人もいるほか、造園施工管理技士、森林セラピストなど造園に関連する各種の資格を持つ社員が多い。社員同士が切磋琢磨しながら専門技術を磨き、人にはもちろん、鳥や虫や草花にも優しい快適な環境を創造していこうとする社風がある。最近はホームページをリニューアルし、そんな社風が伝わるデータをふんだんに盛り込んだ。今後は順次、内容を充実させていき、採用活動にも生かしていく方針だ。(TOP写真:リニューアルしたホームページのトップページ)

古い体質の会社をすべて改革。社員の意識改革進む

文吾林造園の本社社屋

文吾林造園の本社社屋

「うちの社員は働き者なんです」。長野県飯田市にある文吾林造園の原社長はこう胸を張る。

原社長は、1915年に創業された文吾林造園の3代目。京都の大学で経営学を学び、地元の大手建設会社勤務を経て、1985年に28歳で家業を継いだ。その当時は毎月第1、第3日曜日のみが休みで、給料は日当制という昔ながらの土建屋的な組織だったために入社した当初は苦労したそうだ。だが、年配社員と入れ替わるように若い社員が入ってくるのに従い、次第に風通しが良くなっていったという。そこで、「私は3代目だけど、初代と同じようなものだと居直って、会社のすべてを改革してきました」(原社長)。

週休2日制や月給制の導入はもちろん、年配の税理士を若い人に切り替えたのを機に、経理事務作業を原価管理ソフトを用いたパソコン管理に変えるなど、経営の近代化を進めた。何よりも社員の意識改革をもたらしたのは、原社長の仕事に取り組む姿勢そのものだろう。

「うちの社員は働き者」と話す原孝昭社長

「うちの社員は働き者」と話す原孝昭社長

樹木医はじめ多数の資格を取得。20年以上にわたり地元紙にエッセイ寄稿

原社長邸の庭

原社長邸の庭

原社長の名刺を見ると、樹木医をはじめ、一級造園施工管理技士、一級造園技能士、ビオトープ管理士、ツリークライマー・ISAプロフェッショナルメンバーと5つもの資格が並んでいる。よほど研究熱心な性格なのだろう。仕事を通じて植物や生物への興味を持ち、探求心を深めていったものと思われる。その成果は「いきいき花木」というエッセイでも伺い知ることができる。地元紙「南信州新聞」に年間10本程度のペースで、もう20年以上にわたり書き続けているエッセイだ。

同エッセイの原稿と写真を新聞社にメールで送る際、社員全員にもBCCで一斉送信する。すると、「社長、ここはちょっと違っていますよ」と社員が指摘してくれたり、参考となる話題を教えてくれたりするのだそうだ。社員同士にしても、樹木に強い社員もいれば植物に強い社員もいるので一緒に現場で仕事をしている他の社員も樹木や草花の名前を覚え、自然と探求心を深めていくのだそうだ。

文吾林造園には、樹木医が6人もいる。その他ベーシックツリークライマー20人、1級造園施工管理技士17人

紀州公が使用したと伝えられる茶室を移設

紀州公が使用したと伝えられる茶室を移設

樹木の診断、治療を行う樹木医は全国に約3,000人いるが、造園会社の社員としては、多くて2人程度で、1人もいない造園会社のほうが多いという。それが同社には原社長以下6人もいる。そのほかに社員が取得している資格としては、延べ人数が多い順にベーシックツリークライマー20人、1級造園施工管理技士17人、街路樹剪定(せんてい)士11人、環境再生医10人などがある。原社長は、「結局、普段社員同士で会話する内容のレベルが他社とは違うんだと思います」と語る。

あたかも、働く父親の背中を見て子どもが育つように、原社長の仕事に取り組む姿勢を社員が見習い、今の社風が固まってきたのだろう。「入社してある程度の年数が経つと、みんな資格取得に挑戦するようになりますね」(原社長)。資格を取得した社員には、樹木医や1級造園施工管理技士なら月1万円など、資格手当を支給して督励している。「資格を持っていれば、死ぬまで世の中に役立つ仕事ができるからいいぞと、みんなに言っています」と原社長。

社員の安全を考え、ツリークライミング技術に着目、導入

各種資格のうち、ツリークライミングに関する資格を持つ社員が特に目立つ。これも原社長の探求心が発端だ。若かりし頃、幹の中央部が空洞になっている老木に登って剪定をしていた時に、枝がしなって恐怖感を覚えた。当時は木登り用の「安全帯」といった概念はなく、木の幹と自分の身体をロープで巻き付けるしかなかったからだ。高所作業車やクレーン車では届かない、高い木に登る社員たちにも「気をつけろ」と言うほかない現状を何とかしたいと考えていた時に、レクリエーションとしてのツリークライミング技術を普及させることを目的に、ジョン・ギャスライトという外国人が2000年に名古屋でツリークライミングジャパンを設立したことを知る。

原社長は同法人に通ってツリークライマーの資格を取得。続いて、周囲の造園関係者らから「レクリエーション仕様ではなく、プロ仕様のツリークライミング技術と道具を海外から導入したい」との声が高まったことから、ギャスライト氏らとともに、日本アーボリスト協会を設立して、プロ仕様の技術の導入・普及にも努めた。アーボリストというのは樹木管理のスペシャリストのことだ。社員にもツリークライマーの資格を取らせるとともに、社会貢献の一環として、地元の観光公社を窓口にして、一般の観光客を対象にレクリエーションとしてのツリークライミングの指導も行っている。

天然記念物の樹木管理にドローンを活用。文化庁の補助金で動画を撮影

原社長の新しい技術を積極的に取り入れようとする姿勢は、ドローンの活用にもうかがわれる。樹木医として管理している長野県根羽村の「月瀬の大スギ」や阿智村の「小黒川のミズナラ」という国の天然記念物をはじめ、長野県内の天然記念物の樹木や銘桜の動画撮影などにドローンを活用しているのだ。きっかけは7、8年前に孫にドローンを買い与えたことだ。おもちゃ同然の代物なのに、安定して飛行することに驚き、本格的なドローンを購入するとともに国の飛行許可証も取得。2017年度と2018年度には文化庁の文化芸術振興補助金を使って各地の名木を撮影している。

社長自ら作成したホームページが突然ダウン。セキュリティー対策とサポート体制を重視した新しいソフトを導入

ホームページをリニューアルしたのは2022年7月。それまでは原社長が市販のパッケージソフトを使って作成したホームページを公開していたが、同年5月に突然、壊れてしまったのだそうだ。それで今度は、スマートフォンでも閲覧できて、セキュリティー対策とサポート体制がしっかりした企業ホームページ作成ソフトのサービスを契約した。

ホームページの作成にあたっては、業種別ごとに多数のテンプレートが用意されているので、ヘルプデスクと相談しながら比較的簡単にできたそうだ。現在、産休中のホームページ管理担当者に代わり、原社長が「たたき台はシステム会社が作ってくれたので、それにデータを載せたという感じですね」と話す。

ホームページに「いきいき花木」の記事をアップ

ホームページに「いきいき花木」の記事をアップ

新しいホームページには、道路の緑化工事や庭園の改修工事など数多くの施工事例のほかに、南信州新聞に連載中の「いきいき花木」の記事もアップ。YouTubeにアップされているドローンの動画にもリンクしている。

ホームページの採用情報サイト

ホームページの採用情報サイト

以前のホームページは、「学生がよく問い合わせてきた」(原社長)というだけあって、新しいホームページでも採用面での効果に期待が大きい。採用情報ページには休日・休暇や勤務時間に関する記述を新たに追加した。

新しいホームページにはまだまだ掲載していないデータがあり、「これから本格的に作っていくという感じ」と話す原社長。管理担当者の職場復帰を待って、思い通りのホームページにしていきたい考えだ。

社員間のデータ共有と万一のバックアップのためNASを導入

ホームページのリニューアルと相前後して、NAS(ネットワーク接続型ストレージ)も導入した。「個人個人のパソコンの中にいろんなデータがバラバラに入っていて、データのやり取りが難しかったのと、パソコンが壊れた時にデータの復旧ができなかった事例がいくつかありました。そのため、もっと密にデータのやり取りをできるようにするとともに、万が一の場合のバックアップもしたいと考えました」。導入した理由についてこう語るのは農学博士の肩書を持つ平栗章弘主任。同社のICT担当で、ドローン動画の編集も手掛けている。

平栗主任によると、NAS導入以降に作成したデータはすべてNASに入れて共有しているという。具体的には、見積書や設計図、施工現場の写真、作業日報などのデータだ。「USBメモリでデータをやり取りしていた時に比べ、ずいぶん便利になりました」(平栗氏)と微笑んだ。

社員一人ひとりが頑張ってくれたから今の文吾林造園がある

原社長は今、「うちの社員は正直、すごいなと思う」と、自らが作り上げてきた会社の足跡を振り返り、満足気な表情をみせる。社員たちが資格取得に熱心なためだけではない。「よその造園屋さんが利益を出せないような仕事でも、うちの社員は何とか利益を出してくれる」というように、社員一人ひとりが会社のことを考えてくれているからだ。原社長は、その社員たちに報いていきたいと思っている。

すでに65歳定年制を導入しており、定年退職後も再雇用する制度があり、現在80歳の社員もいる。原社長はその他にも考えているようだが、造園という伝統ある事業に取り組みながら社員ファーストの姿勢はまさに21世紀型の経営と言える。

クレーン付きトラックをはじめとする工事車両は65台保有

クレーン付きトラックをはじめとする工事車両は65台保有

企業概要

会社名

文吾林造園株式会社

本社

長野県飯田市北方3883-3

HP

https://bungobayashi.co.jp

電話

0265-25-3928

設立

1915年3月

従業員数

正社員35人

事業内容

造園工事、公園・緑地・街路樹・庭園等の維持管理

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