流通業(卸)

クラウドサービスを活用して500キロ離れた本社と拠点の情報を共有。ICTで業務効率アップ ナノテック(奈良県)

From: 中小企業応援サイト

2023年06月01日 06:00

この記事に書いてあること

制作協力

産経ニュース エディトリアルチーム

産経新聞公式サイト「産経ニュース」のエディトリアルチームが制作協力。経営者やビジネスパーソンの皆様に、ビジネスの成長に役立つ情報やヒントをお伝えしてまいります。

奈良県奈良市の閑静な住宅街の一角に本社を構える株式会社ナノテックは、社員6人と規模は小さいが精密加工分野で大きな存在感を放つ企業だ。旋盤で加工作業を行う際に被加工物を固定する器具であるチャックの設計、加工、販売を主力事業にしている。日本のものづくりを支える高度な製品づくりに必要な時間を捻出するために、ICTを積極的に活用している。(TOP写真:これまでナノテックが設計、生産してきた様々なチャックのサンプル)

日本のものづくりを支える器具を設計、生産 納入先には大手企業が並ぶ

株式会社ナノテックは自動車、OA機器、コンピューター関連機器などに使う高精度な部品を加工する上で欠かせないダイヤフラムチャック、エアーチャック、コレットチャックといった様々な器具を世に送り出してきた。加工が難しい特殊な製品を手掛けることが多く、納入先には自動車や電子部品などの分野で日本を代表する大手企業が並ぶ。本社で見ることができるナノテックのチャックによって生み出された様々な部品は、ナノテックが日本の産業を支えてきた証でもある。

ナノテックが開発した製品『コンビネーション マノクランプ』

写真:ナノテックが開発した製品『コンビネーション マノクランプ』 ワーク芯出し用治具としてマノクランプ(ダイヤフラム式チャック)を使用し、ワークの芯出し把握後、端面を押さえ芯ズレ及びビビリ防止を目的としたクランプ冶具。本冶具は、着座確認システム及びクーラント放出ノズルを保有している。

難しい事ことを易しく、易しいことを深く、深いことをおもしろく

1989年にナノテックを設立した現在78歳の森井健補代表取締役は、半世紀以上にわたって産業機械に携わってきた。「『難しい事を易しく、易しい事を深く、深い事をおもしろく』を社是に事業に取り組んでいます。ものづくりは1社だけではできません。協力しあえる企業との強い結びつきがあってこそ実現できます。会社を支えてくれた多くの人との出会いがあったからこそ事業を継続、発展することができました。これまで培ってきた強みを生かすことで、日本の国際競争力の復活に不可欠な高レベルのものづくりにこれからも貢献していきたいと思っています」。本社で取材に応じた森井社長はナノテックの歴史を振り返りながらそう話した。

森井健補代表取締役

森井健補代表取締役

新規事業として高濃度バブル発生器の販売に注力

ナノテックは、技術開発力を生かして新たな事業開拓にも力を入れている。現在、注力しているのが2012年に協力先企業とともに完成させた高濃度バブル発生器「Nano  Espuma(ナノエスプーマ)」の販売だ。

ナノエスプーマは洗浄、菌繁殖の抑制、生体活性化、美容に効果を発揮する直径30ナノメートル以下の泡を効率よく発生させることが可能な装置。サイズは52ミリから67ミリとコンパクトで、配管経路に簡単な工事で取り付けることができる。衣類などの洗浄、果物、野菜の生育や魚介類の成長、工具の長寿命化などに高い効果が確認されており、農業、水産業、製造業のほか食品、医療、環境といった分野で活用されている。温泉設備などに利用できる大口径配管向けタイプも開発、販売している。

ナノエスプーマの専用ホームページ

ナノエスプーマの専用ホームページ

ナノエスプーマはこれまで主に企業・団体向けに販売していたが、消費者に直接アプローチできる製品として住宅用水道配管に設置可能な新タイプの開発を進めているほか、高濃度バブルが肌に潤いを与え、保湿効果を維持する効果があることから美容水としての活用も検討している。

ナノエスプーマは水と深くかかわっていることから森井社長は「一雫一雫落ちる水玉 弾けて輪(和)になり永遠に受け継ぐ」というコーポレートメッセージを考案した。

「様々な用途で活用できるナノエスプーマの事業を通じて、社会を豊かにすることに貢献したいと思っています。チャックと並ぶ主力事業として育てていきたい」と森井社長。高濃度バブル水の効果を広く情報発信しようと、2022年12月末にナノエスプーマ専用のホームページを開設した。今後、台湾に設けている貿易拠点を通じて米国、欧州、アジアに販売を展開する構想も温めている。

設計部門で約四半世紀にわたってCADを活用

ナノテックは2005年にCADを導入、2008年に3D-CADを導入するなど設計部門でICTを積極的に活用してきた。その一方、事務作業は長い間、紙文書中心で行っていたが、近年デジタル化に力を入れている。「社員数が少ないこともあり、事務作業の面で滞りがあると以前は思っていなかったのですが、これから事業の拡大を検討する中でより一層業務を効率化し、時間を有効活用するにはICTの活用を避けて通ることはできないと思ったんです」と森井社長は話す。

CADで設計を行う様子

CADで設計を行う様子

東京営業所との情報共有にクラウドリレーサービスを活用

事務処理の効率化を進める中で、奈良市内の本社と約500キロ離れた東京営業所の情報共有で効果を発揮しているのが、2019年春に導入したクラウドリレーサービスだ。

東京営業所は首都圏を中心とする東日本の取引先企業との接点として、ナノテックにとって重要な拠点となっている。1,000枚を超えるチャックなどの図面、製品の機能・販売管理・納期に関するデータ、日報などは奈良本社にあるストレージに保存している。取引先との打ち合わせなどで多忙な日々を送る森井茂久東京営業所長は、ストレージに保存されている本社の資料に、通信環境さえ整っていればクラウドを介してどこからでもアクセスできるようになったことで業務効率が倍以上になったと実感している。

「業務効率が倍以上になった」と語る森井茂久東京営業所長

「業務効率が倍以上になった」と語る森井茂久東京営業所長

「クラウドリレーサービスを導入する前、手元に必要な資料や図面がない時は本社に電話をして、事務所にいる社員に頼んでメールで送信してもらわなければなりませんでした。電話をするたびに社員の作業の手を止めてしまいますし、必要な資料を探してもらわなければなりませんので時間もかかります。それだけではありません。メールで一度に送ることができる容量には限界があるので複数回に分けて送ってもらわなければならないこともありました。本当に時間を無駄にしていたと思います」と森井茂久東京営業所長は振り返った。

本社と東京営業所の業務効率化に大きな手応え

クラウドリレーサービス導入後は、必要な資料が保存されているフォルダにパソコンから直接アクセスして閲覧、ダウンロードできるようになったのでわざわざ本社に電話をする必要もなくなった。電話でのやりとりに使う時間が減ったことで会社全体が時間を有効活用できるようになった。何よりうれしいのは取引先から問い合わせがあった時に、相手を待たせることなく迅速に対応できるようになったことだという。

書類の共有化で申請作業も簡単に

クラウドリレーサービスは社内の書類の共有化にも効果を発揮している。有給休暇の取得も、以前は上司から直接、紙の申請書類をもらった上で申請しなければならなかったため手間と時間がかかっていた。現在、社員はストレージ内のフォルダにパソコンからアクセスして書類を入手できるようになり、申請が簡単になったことで有給休暇の取得率も向上したという。「どうすれば使いやすいか、社員全員で話し合いながら使用方法を考えています」。

パソコンからクラウドを介しストレージにアクセスする様子

パソコンからクラウドを介しストレージにアクセスする様子

ストレージには事前に登録したパソコン、スマートフォンなどの端末だけがアクセスできるので、セキュリティの面でも安心感があるという。

文書管理システムの活用でセキュリティ強化と無駄な印刷を3割削減

その一方で、紙文書の情報セキュリティ対策を強化するため2022年夏、複合機に対応した文書管理システムを導入した。以前は社員がパソコンから印刷指示を行う際の細かな設定がしにくかったので、モノクロ印刷で充十分な資料をカラーで印刷してしまったり、必要のないページまで印刷してしまうことがあった。複数の社員が印刷指示した文書が複合機のトレイで混在してしまうこともあったという。

ナノテックのオフィスの様子

ナノテックのオフィスの様子

文書管理システムを導入してからは、複合機の操作ディスプレイに表示された印刷内容を確認してから印刷指示ができるようになったので、ミスプリントや無駄な印刷がなくなり、紙の使用枚数を3割程度削減することができたという。「印刷するまでに一呼吸おけるようになったので無駄な印刷が減りました。印刷したまま文書トレイに置きっぱなしということがなくなり、複数の社員が印刷した文書が混じることもなくなりました。コスト削減に大きく貢献してくれているだけでなく、ペーパーレス化の推進にも役立っています」と森井社長はうれしそうに話した。

内容を確認した上で複合機を使って印刷する様子

内容を確認した上で複合機を使って印刷する様子

より一層業務のデジタル化を推進していきたい

「導入した一連のICTはデジタルが苦手な私でも扱いこなせることができるので非常に重宝しています。改正電子帳票保存法への対応をしっかり行った上で、業務のデジタル化をより一層推進していきたい。ものづくりは日本にとって非常に重要な産業です。ICTを活用して先端的な製品を開発することで、これからも日本のものづくりに貢献していきたい」と森井社長は毅然とした口調で話した。

ナノテックの本社の入口

ナノテックの本社の入口

産業機械分野できらりと光る存在感を発揮し、ICTを活用することで新しい可能性を広げているナノテック。今後、進めていく海外展開でもICTは大きな役割を果たすはずだ。

企業概要

会社名

株式会社ナノテック

HP

http://nano-tech.co.jp

ナノエスプーマHP

https://nano-espuma.jp/

本社

奈良県奈良市西大寺宝ケ丘6番6号

電話

0742-46-4961

東京営業所

東京都府中市美好町3-39-13シンリープラグレス21 107号室

電話

042-315-2710

輸出・入統括部

Yimono International Co.,Ltd.

電話

+886-3-5504040

設立

1989年6月

従業員数

9人(輸出・入統括部 3人を含む)

事業内容

工作機械装置、計測装置、ロボット搬送装置などの各種クランプ冶具及び回転流体継手スピンドルの開発、設計、製作、販売/環境設備品の開発、設計、製作、販売/エネルギー設備品の開発、設計、製作、施工、販売

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