玉島信用金庫の後押しで船舶の運行管理システムを導入 請求業務を劇的改善 岡田石材(広島県)
2023年06月16日 06:00
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50年近くにわたり福山の地で石材をはじめとした海運業を営んできた岡田石材株式会社は、今ではこの地を拠点に土木工事、建築工事へと事業の裾野を広げ、地元になくてはならない企業となった。得意先からの信頼により多くの実績を重ねてきた企業が、本格的なデジタル化を開始した。(TOP写真:岡田石材様が保有する砂利運搬船「第五十七住力丸」)
石材運搬から始まった事業
福山の地に移る前、現代表取締役会長の岡田聖氏が岡山県の北木島で始めた石船による運搬がそもそもの創業であった。平らなデッキを持つ転倒船という、船の上に石を積み目的の場所に運んでは船を傾けて下ろすという仕事であったが、操船の難しい船で、時には180度以上傾いてしまうこともあったらしい。本来ならば安全な角度まで傾けて石材を下ろす船が180度も傾くのは乗組員の命にも船の転覆にも関わる重大な危険を伴う場面だが、岡田成弘社長は笑い話のように話す。
そんな苦労を重ねながらも多くの仕事を引き受け1976年には北木島にほど近い福山に拠点を移し、翌々年には岡田石材株式会社として法人を設立。そこから本格的に海運事業を展開し業績を伸ばしていった。創業者である岡田聖会長は、「いろんなこともあったが、得意先からよーけ感謝状ももろうたんじゃ」と壁面に飾られた感謝状の数々を見せてくれた。今では手持ちの船も4隻を数え、石材や砂利の運搬船から押船、ガットパージ、フェリーパージと呼ばれる作業船に至るまで幅広い業務に応えられる規模を誇る企業になった。
壁面に飾られた感謝状の数々
土木、建築から太陽光、産廃事業までを展開する企業に
海運事業で大きな礎を築いてきた岡田石材はその後、護岸工事や浚渫(しゅんせつ)工事にも携わるようになり徐々に事業の幅を拡大。さらには有資格者を積極的に採用して一般土木工事や建築工事にも裾野を広げ、今では海運業を上回る売上をあげるまでになっている。
また、福山港エリアに所有する約1万坪のプライベートバースは主に船舶が停泊したり荷役の積み下ろしに利用する場所だが、海に面した広大な土地を有効活用するため既に太陽光事業を開始。続いて産廃処理事業も現在許可申請を行っているところだという。6年前に就任した岡田成弘社長が目指すのは、地の利と自社所有の海に面した土地を最大限に活かす事業拡大。大量に物を運べる機動力と広大な土地が持つポテンシャルを有効に引き出す事業展開はSDGsの視点から見ても見事だ。
北木島という小さな島から始まった事業が京阪神や九州・四国を軸に海外までも視野に入れた方向へ広がっている。これも莫大な投資を必要とする海運事業で得意先の要望に投資と信頼で応え、確固とした地位を築いてきたからこそだ。
創業者の岡田聖会長(左)と岡田成弘社長(右)
トラック用の運行管理システムを海運用にリメイクして業務が劇的に改善
人材育成を重視してきた岡田社長は早い段階からパソコンの導入や事務の効率化に力を入れてきた。現在の売上やコストの把握、積み荷の状況や先行きの見通しまで、担当する従業員や事務職員が把握しておくべき事柄をおろそかにするのを最も嫌う社長は、従業員が無駄な作業に時間を取られることも嫌う。そこには天候にも左右され、積み荷である石材や砂利などの重量や積み方にも迅速な判断を求められてきた海運業ならではの特徴がある。
船舶部の横川啓子さんは、受注、配船を記入した帳面をもとにエクセルに転記、請求書の作成には別のエクセルシートを作成していた。
業務を効率化させるために、シートはかなり入念に作り込まれていたが、請求書を出力するまでには何回もシートへの転記があり、その手間と入力ミスは悩みの種だった。海運業のシステムを探したが海運業に特化したシステムはなく、エクセルでの限界を感じながらも横川さんたちの業務は続いていた。
あきらめずに良い解決策がないかと模索していたところ、IT導入補助金の紹介があった玉島信用金庫に相談を持ち掛けると、船舶用はないがトラック用の運行管理システムならあるとの話があった。船舶用に部分的にリメイクすれば海運業にも使えるのではないかと考え、システム支援会社を交えて検討に入った。海運業独特の「積み地」や「揚げ地」などの表記の変更や、その他細かな修正を加え導入を決めた(パッケージソフト部分について補助金の助成を受ける)。システムの導入後は、複数のシートの管理、転記、タックシール貼りなどの手間がなくなり、請求書作成に関する一連の業務は劇的に改善された。
船舶用にリメイクされた運行管理システムと船舶部の横川さん
請求業務の効率化の次は経費とコストとの連動へ
船舶部の請求業務は大幅に改善されたものの、燃料や修繕費、繋船料などの原価や経費の管理は今でもエクセルで行っており、これを請求と連動させて収支状況の管理をもっと効率化させることや、横川さん以外の従業員でも入力や参照ができるようにすることで、次のステップの業務改善を目指している。
他部門においても、ある程度の ICT化を行っていることもあるが、岡田社長はそれぞれの部門の責任者や事務担当者が自らの部署の現況や課題、合理化すべき無駄な作業がどこにあるのか等を十分に把握していない限り、闇雲(やみくも)に次のステップへのシステム導入を図ることは得策ではないという考えだ。今後は各部門を統括できるシステムが求められるが、一気に導入するのでなく、まずは現状のリソースを工夫しながらできる範囲でやってみる。そうすることで、改善すべき点が具体的に見えてくる。そこをシステム化すれば業務の生産性は間違いなく上がるとの考えだ。
岡田石材の良き理解者としての玉島信用金庫
福山の地に移る前、現会長の岡田聖氏が岡山県の北木島で事業を始めてすぐの1978年からお付き合いをされてきたのが玉島信用金庫だ。培われた信頼をもとにして玉島信用金庫の難波智之支店長代理と経営企画部の原田雅大主任が、今回のICT導入をバックアップした。信用金庫は、地域の中小企業の実情をどこよりも知っている。玉島信用金庫が、デジタル化やネットワークの支援を行うことは、今後の岡田石材にとっては非常にありがたい。特に費用対効果のアドバイスや資金面でのサポート、各種補助金の活用といった面を考えると、地域の中小企業にとって信用金庫はなくてはならない存在といえる。
玉島信用金庫 経営企画部の原田雅大主任(左)と難波智之支店長代理(右)
人を生かす会社であること、安売りをしない会社であること
安売りに走る企業が少なくない業界において、岡田石材は一度もそんな風潮に流されることなく仕事をやってきたという。それを裏付けるのが「実直に仕事をこなし得意先の期待に応える成果を残せば、信頼はおのずと生まれ安売りに走る必要はなくなるんです」という岡田社長の言葉だ。
従業員の能力を最大限に発揮できる場を提供し、一人ひとりを信頼し、その結果として得意先からの信頼を勝ち取るという企業姿勢。ある意味理想にも近い業務を推進する岡田石材にとって、ICT化のステップアップはあくまでも仕事の質を上げ、経営判断を容易にし、従業員一人ひとりの自律性を促すものでなくてはならないという明快な意志だと受け取った。
本社社屋
企業概要
会社名
岡田石材株式会社
本社
広島県福山市新涯町4丁目10番11号
電話
084-954-2535
設立
1978年12月
HP
http://okada-g.co.jp/os/
従業員数
37名
事業内容
内航海運業、土木・建築一式工事業、浚渫工事業、石工事業、石材・砂利・山土の採取及び販売業、宅地建物取引業、一級建築士事務所、その他上記に附帯する一切の業務
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