データ化した図面は全員のパソコンで閲覧可能 ホームページは女性目線で構築し土木工事をイメージアップ 神倉(群馬県)
2023年06月19日 06:00
この記事に書いてあること
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群馬県伊勢崎市で土木を中心とした建設工事を行っている株式会社神倉のホームページにアクセスすると、目が大きくて可愛らしい印象のキャラクターが現れる。続いて画面が切り替わり、土木工事用の建設機械や作業着姿の従業員の画像が次々と切り替わっていく演出とともに、「すべてのスタッフが夢と誇りを持って働ける企業へ」というメッセージが表示される。 (TOP画像:オリジナルキャラクター「神倉くん」と神倉勇哉社長)
独自キャラクターとスタイリッシュなホームページで土木業界のイメージアップ
「自社のイメージを良く見せたいということではないんです。土木建設業界全体のイメージを良いものにしたいという思いで作ったキャラクターであり、ホームページなんです」と話すのは、2019年8月に2代目の代表取締役に就任した神倉勇哉氏だ。キャラクターは、知人のデザイナーに頼んで作ってもらったもの。どちらかといえばワイルドな印象のある土木建設業界を、柔らかいイメージに見せる効果がある。
ホームページも専門の会社に作ってもらった。その際に、「業界全体のイメージアップにつながるようなサイトにしたいとか、扱っている事業の内容を伝えたいといった要望はしっかりと伝えましたが、細かいところは総務の女性従業員たちに任せてアイデアを出してもらいました」と神倉社長。「自分が前面に立つと、どうしても硬いものになって若い人に伝わりづらいものになると考えたからです。出来上がったものを見た時は、格好良くて感動しました」(神倉社長)。
Instagramの発信を現場に任せる
目的はしっかりと示しながら、手段においては最適なものにしようと現場に任せる柔軟性は、ワンマンになりがちな中小企業経営の指針となりそうだ。実際に効果もあって、「Instagram(インスタグラム)と連動させて、掲載する情報も現場に任せたことで大勢に見てもらえるものになりました。先日はある案件を決める現場で、まったく取引のなかった会社の経営者から、『Instagramを見ています』と声をかけてもらえました」(神倉社長)。
こうしたコミュニケーションが、明日明後日といった短いスパンで次の仕事につながるわけではない。「土木工事の仕事は、1度仕事をした会社から、10年20年といった長いスパンで次の発注がないことが多いものです。それでも、こうしたきっかけが巡り巡っていつか仕事につながらないとも限りません」(神倉社長)。小さな布石であっても後に大きな意味を持つことがあるなら打っておく。長いスパンで会社と業界のことを考えているからこそできる施策だ。
神倉の創業は1988年で、当初はダンプカーを使って土木現場を行き来する運搬業だった。「建機の運搬や積み込みを手掛けるようになる中で、そのまま土木工事も請け負うようになりました」(神倉社長)。日本が急成長を遂げた1960年代や1970年代から創業する事業者が多い中で遅い設立だが、道路のアスファルト舗装や電線の地中化工事などを手掛けて成長を続けてきた。
経験と知識を活かして発注元に逆提案
「ただ請け負うだけでなく、発注元に自分たちが業務から得た経験やノウハウを元に提案を行うようなこともしてきました」(神倉社長)。「もっと耐久性の高い材料のアスファルトを使った方が後々まで傷みの少ない状態を維持できる」「勾配があまりない道路の場合にはこちらの材料のアスファルトを使った方が良い」といったことを話して、工事の計画に加えてもらう。すぐに結果が出ることではないが、しばらく経って違いが見えてくれば、同社に確かな技術があることはわかってもらえる。こうした積み重ねが評価され、途切れない受注につながっている。
父親が創業した会社で高校生の頃から現場の仕事を手伝い、大学を出て3年ほど同じ業界の会社で経験を積んでから、平成15年に実家に戻った神倉社長。手伝っていた頃とは違って、取引先や金融機関とやりとりしたりして、経営を意識するようになっていった。そうした中で考えたのが、土木建設の仕事がもっと“楽”になることだ。「早く良く安くといったことは会社として常に意識しなくてはなりませんが、それに加えて楽になることが、働く従業員のためになり、結果として仕事の品質向上にもつながると考えました」(神倉社長)。
そのために取り組んだのが機械化だ。「できる限り自社の機械で施工できるように改めていきました」(神倉社長)。自社で機械を持とうとしていった結果、災害が発生した時に即座に対応できる体制の構築につながり、伊勢崎土木事務所や伊勢崎市との間で防災協定を締結するに至った。消防団活動にも取り組み、地域に欠かせない会社としての地位を確固たるものにしていった。これもまた、企業イメージの向上につながる取り組みだ。
従業員の仕事を“楽”にしたいと機械化や電子化を推進
“楽”にしたいという意識から、図面などの電子化、データ保管のクラウド化も推進した。「工事の最前線で働いている若手でも、現場の図面や写真、関係する書類をいつでも見られるようにしました」(神倉社長)。紙の図面をいちいち引っ張り出して見るような手間を減らし、現場には必要な図面だけを複合機でプリントして持って行けるようにした。「私の場合は、図面をスマートフォンのカメラで撮影して画像データで保管しておき、現場で見るようなこともしています」(神倉社長)。雨が降って泥だらけになった現場では、紙を広げることすら難しい。そのような時に、スマートフォンなら汚れた手でも閲覧できる。画面が汚れても後で拭けばきれいになる。
「若い従業員でも、図面や書類に触れやすくすることで仕事に向き合う意識が高まります」(神倉社長)。そのために、現場で働く従業員の一人に1台ずつ、ノート型のパソコンを導入して、自分のデスクで見られるようにした。仕事以外に使ってしまう可能性も捨てきれないが、「それでも自分で扱えるパソコンがある方が絶対に良いです」(神倉社長)と割り切る。無駄なことや危険なことはしないという従業員への信頼の現れとも言えるだろう。
データのバックアップ体制も整え事業継続を可能にする
電子化と同時にバックアップ用のシステムを導入して、データのクラウド化にも取り組んだ。「会社の近くを流れている利根川に、いつ氾濫(はんらん)が起こらないとも限りません。パソコンが水に浸かってデータが破損してしまっては仕事になりません」(神倉社長)。そうならないために、電子化して記録したデータはクラウド上に保管して、どこからでも取り出せるような体制を整えた。自治体との防災協定を締結できた背景にも、こうしたBCP(事業継続計画)に取り組んだことがある。
一連の成果から、積極的にICT化を探求していくかというと、「いくら会社が楽になっても、働いている従業員が振り回されるICT化では意味がありません」(神倉社長)と一線を引く。「アルコールチェックや体温測定、出退勤の記録や勤怠管理などをすべてアプリで行えば便利になるだろうとは思いますが、そのために4つも5つもアプリを立ち上げなくてはならないようでは、かえって従業員に負担を強いてしまいます」(神倉社長)。今はアルコールチェックも体温も、計測したものを紙に記録して管理している。
「完成予想図が見えるMRゴーグルが欲しい」と夢を語る
そうした人事面の管理や業務面の管理が一本化されるようなシステムが開発されれば、導入することに抵抗はないとのこと。もう一つ、業務面で望むICT化があるとしたら、「工事現場で複合現実(MR)のヘッドセットを装着すれば、ゴーグル越しに工事現場の完成予想図が見えるようなシステムですね」(神倉社長)。詳細なCGによる描画でなくても、ワイヤーフレームで工事結果が見えるようになれば、働く人にとって相当に楽になるのではと考えている。「見たままに工事をすればいいだけですからね。いっしょに使う材料や工事上の注意点も表示されればさらに楽になります」(神倉社長)。
今はまだ、システムがその段階には達してないが、「YouTubeに作業の様子を撮影した映像マニュアルを作って残しておけるようにしたいですね」とアイデアを膨らませる神倉社長。さまざまな建機が動く様子が映像で見られれば、働く車が大好きな子供たちにもアピールできる。業界のイメージ向上につながること、そして従業員が楽になることにつながる施策なら、どんどんと取り組んでいく前向きさが、神倉を伊勢崎市でも存在感を持った土木建設会社にしていく。
企業概要
会社名
株式会社神倉
所在地
群馬県伊勢崎市八斗島町1295-3
電話
0270-32-5856
設立
1988年5月6日
従業員数
16人
事業内容
舗装工事/電線地中化工事/土木工事/民間工事 その他
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