医療

健康をテーマにした新時代のまちを運営。ICTを活用した新しい医療・介護サービスの創造を目指す ウェルグループ(奈良県)

From: 中小企業応援サイト

2023年06月26日 06:00

この記事に書いてあること

制作協力

産経ニュース エディトリアルチーム

産経新聞公式サイト「産経ニュース」のエディトリアルチームが制作協力。経営者やビジネスパーソンの皆様に、ビジネスの成長に役立つ情報やヒントをお伝えしてまいります。

奈良県大和郡山市を拠点に、医療・介護事業に取り組むウェルコンサル株式会社を中心に社会福祉法人、NPO法人などの17法人、45事業所を運営するウェルグループ。ICTを活用した質の高いヘルスケアサービスを実現している。グループ間のシステムを連携した独自の基幹システムを運用するだけでなく、現場で使いやすい様々なシステムを独自開発。海外への展開も視野に入れた新しい医療・介護サービスの創造を目指している。(TOP写真:システムを活用して介護施設の利用者の情報を確認する様子)

これからの医療・介護でICTは必要不可欠。介護に関連した様々なシステムを独自開発した

タブレット端末で情報を確認する様子

タブレット端末で情報を確認する様子

ウェルグループはICTを積極的に活用することで、人手不足をはじめとする医療・介護業界の課題解決や利用者に寄り添ったサービスの実現につなげている。

グループ内にシステム設計部門を設け、グループ間のICT連携を図るための基幹システム、クラウド型の自動シフト作成システム、介護人材教育システム、スケジュールと業務管理を行うシステム、介護スキルを見える化するシステムといった様々なシステムを外部の専門業者と連携して開発している。

「これから先の医療・介護を考えていく上でICTやデジタル機器の積極的な活用は必要不可欠な要素です。ICTやデジタル機器を活用することで、利用者の皆様の様々な情報をプライバシーに配慮した上で効果的に収集し、リアルタイムで共有化することが可能になります。また、日々必要なバイタルチェックや見守りといった様々な業務の負担を軽減することで、スタッフはより一層ケアに集中できるようになります。DXを推進することで未来の医療・介護を先取りしていきたいと思っています」。ウェルコンサル株式会社の代表取締役CEOをはじめグループ内の様々な法人の舵取り役を担うウェルグループの井村征路代表は思いを熱く語った。

ウェルグループの井村征路代表

ウェルグループの井村征路代表

介護業務に詳しい5人の専属システムエンジニアが科学的介護を可能にしている

ウェルグループのシステム設計部門には5人のシステムエンジニアが在籍している。介護業務の細かい内容や専門用語に詳しいシステムエンジニアがシステム開発会社との橋渡し役を務めることで、現場で働くスタッフの意見を反映したシステムを具現化しているという。

タブレット端末を使って情報を入力する様子

タブレット端末を使って情報を入力する様子

独自開発した基幹システムは様々な職種のスタッフが円滑に情報共有できるチャット機能のほか、利用者の体温や脈拍などの生体情報、室温などの環境情報を確認できる機能を備えている。利用者のデータはスタッフがタブレット端末やスマートフォンから簡単に入力できるようにしており、リアルタイムでケアカルテに反映、共有される。データは介護現場のスタッフだけでなく必要に応じて看護師、PT(理学療法士)、栄養士も共有できるようになっている。情報の共有を徹底するため大和郡山市内にある在宅医療センター悠に3つの大型モニターを設置し、刻一刻と変化する各施設の情報をリアルタイムで表示するようにしている。

3つの大型モニターを設置した在宅医療センター悠

3つの大型モニターを設置した在宅医療センター悠

「様々なデータを一元管理して分析をすることで科学的介護に発展させることが可能になります。また、過去のデータを比較検討することでケアの質を向上させていくことができます。利用者の皆様の視点に立った設備投資をこれからも積極的に進めていくつもりです」とウェルグループの杉田珠希副社長は説明した。

介護現場だけでなくバックオフィスの業務もシステム化

ウェルグループがICTを積極活用しているのは介護現場だけではない。介護施設特有の複雑なシフト作成から就業管理、給与計算、請求業務、会計処理といったバックオフィスの業務もシステム化している。

ICTを活用して様々なバックオフィス業務をシステム化している

ICTを活用して様々なバックオフィス業務をシステム化している

システム化は2021年から順次進めている。勤務シフトの作成や就業管理は独自開発したシステムで行った上で、市販の人事管理システム、給与計算システム、会計システム、スケジュール管理システムを連動させて1つのシステムとして運用している。

「ICTの活用による業務負担の低減は、スタッフのストレス軽減につながり、モチベーションの向上が利用者の皆様へのより一層充実したサービスにつながる好循環を生み出しています」と杉田副社長は話した。

ウェルグループの杉田珠希副社長

ウェルグループの杉田珠希副社長

給与明細の電子化で42時間の作業時間が数分に

グループ全体のスタッフの人数は1,000人近くにのぼる。人数が多いこともあり、ICTの活用は事務管理業務の効率化に大きな効果をもたらしている。

給与に関する業務ひとつ取っても次のような効果が生まれている。以前は紙で配布していた給与明細をデータで各スタッフに送信するWeb方式に切り替えたことによって、印刷・封入・配布に要していた月あたり約42時間もの作業を、わずか数分で終えることができるようになった。コスト面でも印刷に必要な用紙やトナー、給与明細を入れる封筒や配送の費用を節約できるようになったことで、月あたり10万円程度の削減効果が生まれているという。

高齢者が住み慣れた地域で生活できるために、介護と健康をテーマにしたメディケア健康シティを運営

ウェルグループは大和郡山市で、本部を中心に医療(内科・消化器科・眼科・皮膚科・小児科・歯科)薬局、介護(介護老人保健施設・介護付き有料老人ホーム・特別養護老人ホーム・ショートステイ・グループホーム・小規模多機能施設・障害者施設)、福祉農園、健康食品レストラン、郵便局などで構成するメディケア健康シティを運営している。

「高齢者が住み慣れてきた地域で住み続けてもらえるように、医療・介護を総合的に提供する拠点を作っていきたいという思いで、メディケア健康シティを運営しています。未来に向かう健康をコンセプトにした新しいまちのモデルとなるよう、さらに機能を充実させていきたい」と井村代表は話す。

幹線道路に面したメディケア健康シティの入り口

幹線道路に面したメディケア健康シティの入り口

今後、メディケア健康シティを軸に、ICTで地域の医療・介護事業者、行政機関をネットワーク化することで、「人材や業務のシェアリング」、「地域交流」、「メディカルフィットネスやパーソナルリハビリテーション」、「移動型レジャー介護」といった様々な新事業を創出していきたいという。

ベッドセンサーで利用者の健康を常に見守り、インカムを利用してスピード対応を実現

見守りセンサーを備えている個室のベッド

見守りセンサーを備えている個室のベッド

メディケア健康シティ内にある介護老人保健施設「ウェルケア悠」では、独自開発した基幹システムを活用した介護記録の自動入力をはじめ、利用者のベッドに睡眠の状態や心拍・呼吸数のデータを収集できるシートタイプの見守りセンサーを設置した。利用者の体調の急変といった万が一の時に迅速に対応できるだけでなく、1日の過ごし方を正確に把握できるので、トイレ誘導などの声がけを行う際のタイミングもつかみやすく、利用者、スタッフとも互いに安心を感じながら毎日を過ごすことができているという。

介護老人保健施設「ウェルケア悠」の外観

介護老人保健施設「ウェルケア悠」の外観

また、介護スタッフは施設内でインカム(特定小電力トランシーバー)を使って迅速で確実な情報の伝達と共有を行っている。インカム導入前と比べて情報共有や指示出しに手間や時間がかからなくなったことでスタッフの負担が軽減し、より一層利用者に心配りができるようになったという。以前は、管理者がスタッフに指示を出したり、スタッフ間で情報を共有する際に内線放送を使ったり、大きな声を出して呼びかける必要があったが、インカムを使うようになってからはその必要もなくなり、利用者により快適な環境を提供できるようになった。

インカムを活用することで情報伝達を迅速かつ正確に行っている

インカムを活用することで情報伝達を迅速かつ正確に行っている

外国人材の活用に力を入れ、独自で開発した介護人材育成システムを実施、介護福祉士の国家試験に13人合格

ICTとともにウェルグループが力を入れているのが外国人材の活用だ。外国人材はグループのスタッフ全体の約1割を占めている。国籍は中国、インド、インドネシア、ベトナム、マレーシア、フィリピン、ネパールなど幅広い。

優秀な外国人材を育成するためにウェルグループは中国、インド、ベトナムの看護学校や大学と提携して現地でトレーニングセンターを運営し、来日前に日本で働く上で必要な技術、マナー、知識を生徒に伝授している。また、2017年、大阪市内に外国人を対象にした日本語学校、ウェル日本語学院を開設し、日本での医療・介護分野での就職や大学、専門学校への進学を目指す海外の若者を受け入れている。

外国人材に介護分野での技術を身につけてもらうためにウェルグループは独自で考案した介護人材の育成システムを活用している。ウェルグループで受け入れている海外の若者は、意欲的に仕事に取り組む人が多く、日本人のスタッフにも好影響を与えているという。2023年1月にはグループの施設で働く13人の介護技能実習生らが介護福祉士の国家試験に合格するといった成果も生まれている。

「ICTを活用することで介護の未経験者や外国人といった幅広い人材が高度な福祉サービスを提供する上で必要な技術をこれまでよりも短い時間で習得することを可能にしていきたい」と井村代表は意欲的に語った。

海外の若者が「日本で長期間働きたい」と思ってもらえる環境を整える

ウェルグループでは介護の現場だけでなく、本部の人事、システム開発、海外事業の分野でも多くの外国人材が活躍している。「これからの日本社会の活力を維持していく上で外国人材の活用は避けて通ることができないテーマです。しかしながら世界規模で人材の獲得競争は激しくなっています。海外の若者に日本で長期間働きたいと思ってもらえる環境を整えるとともに、活躍できるフィールドを今後も広げていきたい」と井村代表は今後のビジョンを語った。

日本の介護・リハビリを世界に広めたい

ウェルグループは、医療・介護分野での課題解決に取り組むことを目的に一般社団法人全国メディケア事業協議会を運営し、海外人材の教育、人材マッチング、ICT導入、事業連携に関心を持つ事業者を対象にした支援活動にも力を入れている。大学や医療系ベンチャー企業と連携し、今後、AI(人工知能)を活用した医療・介護の新システムの開発に取り組むことも計画している。

「介護保険の関連事業に頼るのではなく、地域の高齢者が何を求めているのかを考えて事業者が変化していかなければなりません。複数の事業者が連携することで利用者の目線に立ったサービスを効率的に提供できるようにしていきたい。ICTと海外人材の活用を進めることで、日本発の新しい医療・介護の事業モデルを世界に提案できるよう取り組んでいきたい」と井村代表は力強く語った。ウェルグループが取り組む医療・介護・健康分野の新しい事業の創出に期待がかかる。

在宅医療・介護の専門職が集まる在宅医療センター悠の外観

在宅医療・介護の専門職が集まる在宅医療センター悠の外観

企業概要

会社名

ウェルグループ

本部

奈良県大和郡山市田中町728

HP

https://www.wellgroup.jp

電話

0743-51-0011

設立

1972年4月

従業員数

974人

事業内容

医療・介護・健康福祉事業、海外・教育・人材事業、ITソリューション・コンサルティング事業

記事タイトルとURLをコピーしました!

業種別で探す

テーマ別で探す

お問い合わせ

中小企業応援サイトに関連するご質問・お問い合わせは
こちらから受け付けています。お気軽にご相談ください。

お問い合わせ

中小企業応援サイト

https://www.ricoh.co.jp/magazines/smb/

「中小企業応援サイト」は、全国の経営者の方々に向け、事例やコラムなどのお役立ち情報を発信するメディアサイトです。"

新着情報をお届けします

メールマガジンを登録する

リコージャパン株式会社

東京都港区芝3-8-2 芝公園ファーストビル

お問い合わせ先:中小企業応援サイト 編集部 zjc_smb@jp.ricoh.com