国交省の公共工事で高評価の建設会社がさらなる企業価値向上を目指して「デジタル化」と「健康経営」にチャレンジ 大坂建鋼(茨城県)
2023年09月29日 06:00
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大坂建鋼株式会社は茨城県常総市に拠点を置く建設会社だ。公共土木工事を主力事業としており、地元自治体のみならず入札参加基準の厳しい国交省からも着実に受注実績を積み重ねるなど顧客から高い評価を得ている。環境経営システム認証の取得やダイバーシティ宣言を行うなど企業価値向上に向けたCSR(企業の社会的責任)活動にも積極的。現在はICTを活用して「健康経営」の確立に取り組んでおり、2024年度の「健康経営優良法人」認定取得を目指している。(TOP写真:健康経営支援システムで社員の健康状況をチェック)
国交省関東地方整備局から2年連続で「工事成績優秀企業」認定を取得
大坂建鋼は2023年7月、国土交通省関東地方整備局から「工事成績優秀企業」として認定された。工事成績優秀企業とは、過去2ヶ年に同局から受注・施工した3件以上の土木工事の成績評定(工事の出来栄えや技術提案などに対する総合評価)が平均80点以上の企業のことだ。大坂建鋼にとっては2年連続の認定となる。
大坂建鋼は1977年、現在も代表取締役を務める大坂勇氏が24歳の若さで創業。主に民間の外構工事を手掛けていたが、1985年のつくば万博関連需要を見込んで1984年9月にそれまでの有限会社から株式会社に改組し、公共工事も本格的に手掛けるようになった。公共工事は区画整理や下水道工事など土木工事が中心で、公共工事が閑散期となる夏場には倉庫や牛舎の建築など民間の建築工事も請け負っている。
2013年に初めて国交省の仕事を受注
国交省の仕事を受注するようになったのは2013年。圏央道(首都圏中央連絡自動車道)境古河IC〜坂東IC間の環境整備工事が最初だった。「当時は、何十回も入札に参加して、本当にようやく落札できたという感じだったんです」。こう振り返るのは大坂寛暁(ひろあき)さん。勇社長の長男で、社内外から次期社長と目されているが、今は役職に就くことを辞退している。「社長のほかに、専務や工事部長ら創業当初からいる人たちが多いのに、年下の私がその人たちの上に立つのはちょっと違うかなと思うのです。若手社員の一人として、若い力で会社を底上げしていきたいという気持ちもあります」と語る。
初めての国交省の現場は、書類作成と管理に柔軟に対応出来そうな寛暁さんが担当することになった。しかし当時、寛暁さんはまだ入社3年目。高等専門学校で二級建築士の資格を取得し、建築会社で実務経験を積むつもりだったのが、社員の高齢化を危惧し若手社員のリーダーとなる人材を欲しがった勇社長に請われ、卒業後すぐに入社。土木工事の現場の仕事にようやく慣れてきた頃だった。
「今思えば、この仕事を経験して、改めて工事書類作成のしくみづくりの大切さを実感しました。先輩たちにも支えられ、社員一丸となって現場をやり遂げられたんです」(寛暁さん)。初めての受注案件で失敗したら、もう後がないというプレッシャーを背に最後までやり遂げた。そうした作業を2回、3回と繰り返すうちに、大坂建鋼の持つ貴重なノウハウとして蓄積され、茨城県や国交省からの表彰状や感謝状を多数受賞。今日の国交省による2年連続工事成績優秀企業認定につながることになる。
寛暁さんの経営信条は「思いやる心と感謝の心」。デジタル化の急速な進展を背景に今後の目標は「現状維持」
そんな寛暁さんが大切にしているのは「思いやる心と感謝の心」。「民間工事のお客さまでも、公共工事の発注者でも同じ目線に立って、寄り添えるようにしたい。お客さまにはいろんな人がいますが、やはり人間対人間なので、ちゃんと思いを伝えてあげれば、より良いものづくりができる」
若手経営者同士で将来を語り合う機会が多い寛暁さんは、今後の会社の目標を聞かれると、「現状維持が精一杯ですね」と答えることにしている。公共工事の需要が停滞する中、工事現場のICT化、DX(デジタルトランスフォーメーション)化が急速に進んでおり、「新しいものを取り入れ、現状を最適化していく『現状維持』」との思いもあるからだ。
最近は土木工事現場のイメージ図を3次元データで描画するソフトを導入。社内で使いこなせるようになったら、次は測量も3次元データでできるシステムを導入したいと考えている。そうしたシステムの一つひとつを「自分自身でよく把握してから、より良いものを選別して導入したい」(寛暁さん)と考えるだけに、これからも現状の最適化は進みそうだ。
もっとも、同規模の同業者に比べればICT化にはかなり積極的だ。2019年にはWeb会議とクラウドによるファイル共有サービスを導入。社長以下の経営陣と各工事現場の監督らによる週1回の工程会議をWeb会議で行うようにした。資料などのやり取りは、それまでのメールからファイル共有サービスに切り替えた。これにより、会議のために社員が工事現場から会社に戻る必要がなくなっただけでなく、翌2020年2月に始まったコロナ禍の中で、〝3密〟を避ける意味でもずいぶん役立ったという。
道路の清掃美化、エコアクション21、ダイバーシティ宣言とCSR活動に積極的
大坂建鋼はCSR活動にも積極的。早くから茨城県が推進する道路ボランティアサポート事業に参加し、本社近くを走る県道の清掃美化活動に社を挙げて取り組んでいるのをはじめ、2010年には環境省の環境マネジメントシステム(EMS)「エコアクション21」の認証を取得した。また、2023年5月には茨城県内の経済団体、業界団体とともに「いばらきダイバーシティ宣言」を発表している。
健康経営支援システムを導入し、健康経営に着手。2024年度の認定取得を目指す
そして、現在、目指しているのは経済産業省の「健康経営優良法人」認定の取得だ。寛暁さんが2022年12月に健康経営に関するセミナーを受講したのがきっかけという。「(公共工事の入札参加資格基準の)加点にもなり、なおかつ社員の健康状態を管理できるようになれば、一石二鳥と思いました」。寛暁さんは当初、自分で社員にアンケートをして全員の健康状態を把握し、エクセルで表を作って管理しようと考えた。「でも、日常の仕事をやりながら、みんなの健康管理もするというのは困難でした」
そこで、2023年4月に健康経営支援システムを導入。全社員が毎朝の出勤時に体温や睡眠時間、体調、アルコールチェックの結果などを会社や工事現場のパソコン、またはスマートフォンから入力して記録するようにした。7月には同システムでストレスチェックや健康管理に関するアンケートを作成し、全社員に回答してもらった。過去の健康診断の結果でおおよそのことは把握していたが、このアンケートによってより鮮明になったことがある。それは「腰痛持ちの人と高血圧の人がものすごく多い」(寛暁さん)ということだ。また、ここ5年くらいで喫煙者が半分ほどに減ったことも明らかになった。
同システムはWeb画面でそれぞれの症状についてアドバイスを受けられるので、気軽に自分でチェックして、食事療法や運動療法にチャレンジできる。まだ大坂建鋼では試したことはないが、同システムを通じて産業医に相談することもできるのだそうだ。経産省への認定申請のための書類作成もサポートしてくれる。
※追記:2024年3月、「健康経営優良法人2024(中小規模法人部門)」に認定された。
本社敷地内にぶら下がり棒を設置。今後はトレーニング機材の設営へ
寛暁さんはこれから、健康管理のための設備を充実させたいと考えている。すでに腰痛対策として本社の敷地内にぶら下がり棒を設置したが、新たに、現在は会議室として利用しているプレハブの建物をスポーツジムとしても活用する予定だ。寛暁さんの姉がヨガインストラクターと保育士の資格を持っており、健康管理に明るいので、いろいろと指導してもらう考えだ。
社員の健康診断は毎年、提携先の病院で実施しているが、「判定結果がEだった人が翌年にDやCに改善したら金一封などの褒賞を出すというのも面白いと思います」。従来、知り合いの農家などから新鮮な野菜が届くと社員に分けていたが、中には野菜嫌いの社員もいるので、毎朝「よもぎ茶」を飲んでもらおうかとも考えている。
「社員に健康状態が悪い中で仕事をしてもらうのは酷だと思います。健康に万全な状態で働いてもらいたい。それに例えば、長年働いてボロボロの状態で退職するのではなく、ここである程度体調を整えて退職してもらい、老後の人生を楽しんでもらいたいと思います」。寛暁さんは最後に、健康管理支援システムの管理人としての抱負をこう語った。
企業概要
会社名
大坂建鋼株式会社
本社
茨城県常総市国生1448
電話
0297-42-4281
設立
1984年9月
従業員数
25人
事業内容
土木、建築
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