ICTとデジタル機器、リノベーションで働く環境を充実 業務効率化で生み出した時間を子どもたちの教育に ひかり学園(長崎県)
2023年11月24日 06:00
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ICTとデジタル機器を積極的に活用している学校法人が長崎県長崎市にある。幼保連携型認定こども園を運営する学校法人ひかり学園だ。2010年から始めているブログによる情報発信やシステムを活用した文書作成業務の効率化、働く環境を充実するための職員室のリノベーションなど、様々な取り組みを通じて子どもたちを育む施設を運営している。(TOP写真:リノベーションで生まれ変わったひかり幼稚園の職員室)
長崎市内で二つの幼保連携型認定こども園を運営
ひかり学園は、長崎県長崎市内で幼保連携型認定こども園、ひかり幼稚園と第二ひかり幼稚園を運営している。幼保連携型認定こども園は、保育所と幼稚園の機能を併せ持つ施設。保育を提供する0歳児から2歳児向けをファーストクラス、幼稚園教育を行う3歳児から5歳児向けをキンダークラスと名付け、午後2時半に教育時間が終了した後は、午後7時まで預かり保育を行っている。両幼稚園には計約330人が通園。保育士と幼稚園教諭の資格を併せ持つ保育教諭をはじめとする計70人の職員が子どもたちの成長を日々見守っている。
「社会で生活していく上で必要な考える力と優しい心を育むことを大事にしています」と教育に仏教の精神を反映
ひかり学園は、浄土真宗本願寺派の福田寺と深いつながりを持ち、仏教の精神を反映した教育保育を行っている。「社会で生活していく上で必要な考える力と優しい心を育むことを大事にしています。子どもたちには毎日の生活を通じて、相手を思いやる気持ちの大切さや新しいことを知るために素直な姿勢で話を聞く大切さを学んでほしいと思っています」。子どもたちの明るい声が響くひかり幼稚園の園庭で、大谷英也園長は教育保育方針をこのように説明した。
1955年に設立されたひかり幼稚園は約70年の歴史の中で、地域の幼児教育と心の拠り所として大きな役割を果たしてきた。敷地内では寺院と幼稚園の建物が並び、幼稚園の職員室は寺院の建物の中にある。
園内に残る被爆したクスノキ 平和の大切さを子どもたちに伝える
ひかり幼稚園は1945年8月9日、米軍によって原爆が投下された地点から約1キロ の場所にあり、園内には被爆したクスノキが残っている。「終戦から78年が経過し、戦争の記憶が年々薄れていく中、原爆の被害を受けながら今も立派に繁るクスノキを通じて子どもたちに平和の大切さを伝えています」と大谷園長は話した。
チームワークを重視して誰もが働きやすい職場づくりを推進
ひかり幼稚園と第二ひかり幼稚園は2015年、共働き世帯の増加に伴う保育ニーズの高まりを受け、従来の幼稚園から幼保連携型認定こども園に移行した。「職員間のチームワークを重視し、子どもたちのためにやりがいを持ちながら、全力で仕事に取り組むことができる環境を整えることを大事に考えています」と大谷園長。ひかり学園は、学級運営を複数の職員が担い、1人に負担が集中しないようにするなど様々な取り組みを進め、長崎県の『誰もが働きやすい職場づくり実践企業』として認定されている。
休みを除いて13年にわたってブログを連日更新。保護者に明るい話題を届け、卒園者には大切な思い出を届ける貴重な役割を果たしている
ひかり学園はデジタル技術を積極的に活用している。その一つがホームページ作成システムを使ったブログによる情報発信だ。大谷園長の肝煎りで2010年4月からスタートし、幼稚園教育の春休み、夏休み、冬休みを除いてほぼ毎日更新。入園式、運動会、遠足、卒園式といった年中行事、音楽、運動などのクラス活動の様子を数百文字の文章と複数の写真で読みやすくまとめている。ブログの執筆は日替わりで保育教諭の職員が担当。ブログ運営を重要な業務の一つとして位置付け、大谷園長自ら執筆することもある。
13年分にのぼる膨大なブログはすべてひかり学園のホームページに掲載しているので、閲覧者はいつでもどこでも、卒園者なら自らの思い出と共に幼稚園の歴史を振り返ることができる。記録は積み重ねていくことで時間が経つほど大きな価値を備える。蓄積されたブログは、幼稚園に関わるすべての人にとって何物にも代えがたい宝物となっている。
保護者との情報共有 職員の採用活動などブログを運営するメリットは多い
こども園、幼稚園、保育園がブログを運営するメリットは多い。まず一つが保護者との情報共有だ。ブログの文章や写真を通じて、子どもたちの施設での過ごし方を詳しく知ってもらうことができる。「保護者の皆さんに日々の取り組みを詳しく知っていただくことは、ひかり学園との一体感の醸成につながります。保護者の皆さんと子どもたちが、自宅で会話を弾ませるきっかけになることも期待して日々更新しています」(大谷園長)
ブログは、子どもを既に通わせている保護者だけでなく、施設を探している保護者への情報提供手段にもなる。理念や教育保育内容をしっかりと理解した上で入園を決めてもらうことで、入園後の意思疎通を円滑にできる。また、職員募集の面でもブログは効果を発揮する。あらかじめ施設の方針や仕事の具体的な内容を知ってもらえるので、採用後すぐに職場に馴染んでもらうことができる。
子どもたちのための時間を生み出すためにICT、デジタル機器を活用する
職員がブログの更新や子どもたちと触れ合うための十分な時間を確保するために、ひかり学園が力を入れているのが、働きやすい職場環境の整備、充実だ。職員室のリノベーションを行うとともに、文書作成業務を効率化するためのICTやデジタル機器を積極的に導入している。
「我々が何より重視しなければならないのは、子どもたちと接することです。文書を作成する仕事に時間をかけるわけにはいきません。教育、保育という最も大事な職務に職員が集中できる環境を作るための設備投資に力を入れています」と大谷園長は話す。
働く環境を整えるため職員室をリノベーション 職務スペースが1.5倍に
2015年に幼保連携型認定こども園に移行してから、ひかり学園は段階的に無線LANを敷設するなど両幼稚園の改修を進めてきた。2023年8月に完了したのがひかり幼稚園の職員室のリノベーションだ。
リノベーションでは、職員室と隣接するロッカールームを数十平方メートルの一つの部屋としてまとめ、使われないままデッドスペースになっていた倉庫をロッカールームに転用することで職務スペースを約1.5倍に拡大した。ロッカールームがあった場所に収容能力が高いスライド式の3列棚を設置することでスペースを生み出している。また、隣接する別の部屋との壁を撤去して職員室と一体的に活用できるようにした。
職員の意見を反映させたリノベーションで作業効率アップ
リノベーションを手掛けるにあたり、事前に職員からレイアウトだけでなく机や備品の機能、デザインについて細かい要望を聞き、反映するようにした。「施工を依頼した企業の提案力が非常に高く、素晴らしい職員室にしていただきました」と大谷園長は目を細める。
リノベーションした職員室は床を木目調にするなど落ち着いた雰囲気。以前は複数のスチール製デスクを並べていたが、フリーアドレスで勤務しやすいように木目調の大型デスクを設置するなど備品を一新した。
「職務スペースが広くなったことで、以前は互いに気を遣わなければならなかった職員室内の移動がスムーズになりました。見通しがよく開放的な空間になったことで居心地も格段に良くなりました。積み上がっていた備品などを整理して全体がすっきりしたので、感覚的には2倍以上に広がったように思えます。これまで以上に能率が上がるようになったと職員にも好評です」と大谷園長は満足そうに話した。
業務効率化にICTやデジタル機器を使わない手はない
大谷園長は、ICTやデジタル機器の導入を判断する際、現場がしっかりと使いこなせるかどうかを最重要視している。「現場が受け入れてくれるのなら業務効率化にICTやデジタル機器を使わない手はありません。もたらしてくれる費用対効果は計り知れないものがあると実感しています」と大谷園長は話す。
こども園向けの運営支援システムで業務を効率化
2018年には、文書作成業務を効率化するためにこども園・幼稚園・保育園向けの運営支援システムを導入した。システムには、出席簿と連動した保護者からの欠席・遅刻の連絡受付、開封確認可能なグループメール配信、保護者名簿・園児名簿・職員名簿の管理、行事などへの出欠を確認するためのアンケート、テンプレートを使った指導要録の簡単作成といった様々な機能が備わっている。
「システムの導入前、保護者との連絡は紙や電話で行っていたので時間と手間がかかっていましたが、今は連絡事項を保護者のスマートフォンに一斉に送り、返信を確認するだけで済むようになりました。ほとんどの保護者は、職員以上にスマートフォンなどのデジタル機器の扱いに慣れているのでシステムは問題なく浸透しました」と大谷園長は振り返った。
複数のシステムを連動して事務作業の負担を大幅に低減
2020年には勤怠管理システム、会計システム、給与計算システムをまとめて導入した。3つのシステムを連動することで紙による作業を無くし、職員の負担を大幅に減らしている。職員はICカードで出退勤の記録を一瞬で済ませることができるほか、有給休暇などの申請もスマートフォンから簡単に行うことができる。
こども園に移行してから勤務がシフト制になり労務管理は複雑化したが、システムのおかげで大きな負担を感じずに仕事をこなすことができているという。「職員たちもシフトが見える化したことでメリハリをつけて仕事がしやすくなり、時間を効率的に使うことができるようになりました」と大谷園長はその効果を説明した。
デジタル技術に頼りすぎることなく人と人のコミュニケーションも重視する
デジタル技術を有効活用することによって生み出した時間を子どもたちとの触れ合いに向けているひかり学園。子どもたちのための設備投資に積極的で、2023年8月には車内センサー機能(送迎用バスの置き去り防止を支援する安全装置)を備えた新しい園児の送迎用バスを導入した。
「デジタル技術は確かに便利ですが、頼り過ぎてはならないと肝に銘じています。人と人が直接コミュニケーションを取ることが何より大事なのは言うまでもありません。デジタルとアナログをバランスよく組み合わせることを大事にしていきたい。これからも地域に根差して先を見据えながら子どもたちを育んでいきたいと考えています」と大谷園長は穏やかな表情で話した。
ひかり学園の取り組みを通じて幼児教育・保育の充実につながるICTの新たな可能性を実感した。
企業概要
法人名
学校法人ひかり学園
本社
長崎県長崎市岩見町14番6号
電話
095-861-1832
設立
1955年4月
従業員数
70人
事業内容
幼保連携型認定こども園の運営
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