不動産業

クラウド型ICTソリューションで業務管理を洗い直して強靭な経営体力を身につけ、「町の不動産屋」からの脱却目指す 太田不動産(神奈川県)

From: 中小企業応援サイト

2023年12月22日 06:00

この記事に書いてあること

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産経ニュース エディトリアルチーム

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神奈川県横浜市に本社を置く太田不動産は、地域密着で不動産の売買や仲介、賃貸、総合管理、新築戸建など「なんでもできる不動産会社」を目指して事業を展開してきた。
ICT活用が遅れているといわれる不動産業界だが、太田不動産もまた旧態依然の紙を主体とした業務管理、情報管理を続けていた。
しかし2022年に他業界から先代社長の子息を迎え入れ、業務内容の抜本見直しに着手。2023年からICTソリューションの本格導入を開始した。2024年問題、2025年問題と業界が直面する課題を視野に、若手の力で「町の不動産屋」から「強い不動産会社」への脱皮を急ぐ。(TOP写真:本社を改装し、顧客の相談を受けるロビーは気持ちが和らぐ木質の空間に衣替えした)

地域密着型で不動産業の総合サービス目指して成長

不動産会社に勤めていた仲間3人が独立して1999年に立ち上げたのが有限会社太田不動産だ。小規模でも不動産に関わるすべてのサービスを提供する不動産会社として成長してきた。しかし、2021年に太田哲朗代表取締役社長が逝去。一緒に起業した伊藤健専務が2代目代表取締役社長に就いた。
伊藤社長は先代と同様、「なんでもできる不動産屋」を経営理念としつつ、「人との縁を大切にし、人から仕事を紹介されることに喜びを感じるべき。それぞれがプロフェッショナルでいられるよう専門性を高めてほしい」と従業員を鼓舞する。

地域の人たちの不動産や賃貸などに関するどんな相談にも応じてきた

地域の人たちの不動産や賃貸などに関するどんな相談にも応じてきた

不動産業界は、建設業界が対応を迫られている2024年問題による時間外労働規制や慢性的な人材不足の影響で、不動産流通状況の悪化が見込まれている。就労環境の改善は進みにくく、長年の地域密着型営業活動やアナログ的な業務手続から脱却できない事業者が多い。新たな人材が確保しにくい状況に加え、団塊世代が後期高齢者となり中古物件の増加や需要減が予想される2025年問題も迫る。業務効率化の遅れや人材不足の解決策として、デジタル化による生産性向上が生き残りに不可欠とされている。

先代社長の子息の入社を機に、若い力で業務改革を推進して古い体質から脱却し、強い会社へ

「地域密着」を旗印に成長してきた太田不動産も同じ課題を抱えていた。2001年には株式会社化し、従業員も徐々に増えてきたが、業務形態は昭和時代の不動産業とほとんど変わらず、ICT活用など業務効率化の取り組みは先送りされていた。危機感を抱いた伊藤社長は、先代社長の子息で地方創生やアパレルなどの仕事を手掛けデジタル技術にも強い太田啓斗氏をスカウトし、若い発想力による事業改革に舵を切った。

太田啓斗執行役員はICTにより古い体質から脱却し「強い不動産会社」への変身を担う

太田啓斗執行役員はICTにより古い体質から脱却し「強い不動産会社」への変身を担う

太田啓斗執行役員は不動産賃貸・管理・保有ユニットのマネージャーとして業務全体の棚卸しと業務改革による生産性向上の方向付けを担当している。「会社をよくしていきたいという伊藤社長に誘われて、父親が創業者の1人だったこともあって入社したけれど、不動産業は全く経験がなかった」(太田執行役員)

初体験の業界で戸惑うことも少なくなかったが、不動産業務を知らないからこそ、客観的な視点で業務改革に大なたを振るうことができた。

ICT導入に向け、入力ルールや用語の標準化図る

太田執行役員が入社時の業務状況は、エクセルが一部の個別業務で使われているほかは、顧客情報や契約書などは紙のファイルで保管されており探すのに毎回時間を要していた。ソフトウェアで買取式の賃貸業務管理システムも導入していたが、入力ルールや用語統一もされていなかったため、中身がブラックボックス状態で使い勝手は良くなかった。

太田執行役員はまず、「いかに無駄な手間を減らすか」を前提に、担当部門のヒアリングを行い、賃貸業務管理システムの入力や活用のルールを作成。業務用語も統一した。2023年3月に賃貸業務管理システムをクラウド版に変更し、試験運用しながらデータの一元管理と見える化に取り組み、10月から本稼動した。

賃貸業務管理システムのクラウド化によってデータの一元管理と見える化を目指した

賃貸業務管理システムのクラウド化によってデータの一元管理と見える化を目指した

多機能型の業務管理システムの勤怠管理ツールの試験運用で早くも成果。1ヶ月の集計作業が1週間に短縮

自己申告とみなしで行っていた勤怠管理の正確な集計や分析も、業務効率化のための状況把握には欠かせない作業だ。2023年9月に導入したバックオフィス業務全般の効率化を視野に、多機能型の業務管理システムを導入した。経理、財務、人事など各種機能を付加できるが、まずは勤怠管理システムで勤務状態の見える化を目指しテスト運用を始めたところ、早くも目に見える成果が出始めた。

従来、紙に書き込んでいた勤務時間を共有スプレッドシートに各自が入力する仕組みに変更したことで全体の勤怠状況の一元管理を実現し、「これまで1ヶ月かかっていた各種の集計作業が1週間に短縮された」(太田執行役員)。

太田不動産では、ICTシステムの活用と並行して「勤務時間の30分短縮」を目標に掲げた。不動産会社は土日が書き入れ時で、会社の定休日は水曜日に定めている。土日出勤の多寡など各自の業務にむらがあったが、全従業員の週休2日の取得を徹底した。30分短縮の目標を達成する一方で、業務に集中しクレームの件数が減少するなど、生産性向上により顧客満足度も改善するという思わぬ成果もあった。

「実は具体的にどれだけ減ったのか正確な数字はない。以前はクレーム件数を正確にもれなく記録しているもなかった」(同)のだが、賃貸業務管理システムにより空室率の変化も正確に把握できるようになり、各自が状況を把握できるため、部門間のコミュニケーションも円滑に図れるようになったという。

生成AIの活用も検討。ソリューション浸透へ操作環境をカスタマイズ

今後、属人的な業務を順次取り込んで管理業務全体の生産性向上を目指すが、生成AIなど先端技術の業務への応用も生産性向上に役立つと期待している。人材募集など定型的な文章作成や「顧客情報の収集」と「顧客への最適情報の提供」などさまざまな活用を検討していく方針だ。

ICTソリューションの導入で早くも一定の効果が出始めているが、太田執行役員が懸念しているのは、業務のデジタル化による端末などの操作を全従業員がスムーズに行えるか、である。「ソフトウェアなどもう少し直感的に使いやすい操作環境が望ましい。本格活用までまだ半年はかかりそうだが、現場目線のカスタマイズも必要になりそうだ」

若い力を得て、何でもできて強い不動産会社を目指す 太田不動産本社

若い力を得て、何でもできて強い不動産会社を目指す 太田不動産本社

デジタル化でチーム連携強化し、業界での競争力向上

父親でもある先代社長の経営方針は、小規模でも不動産の総合サービスを提供するために、個人に裁量を与えて現場の判断で動ける会社にすることだった。太田執行役員はICTソリューションの浸透によるチーム連携の強化によって、先代と伊藤社長の経営方針に沿って不動産事業のさらなる生産性向上の可能性を追求する考えだ。

企業概要

会社名

株式会社太田不動産

住所

神奈川県横浜市神奈川区片倉2-67-5

HP

https://www.ohta-fudosan.com/

電話

045-481-8500

設立

1999年7月

従業員数

27人

事業内容

不動産の売買、仲介、賃貸、総合管理、新築戸建分譲、リノベーションなど

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