普通の主婦から地域の高齢者介護の担い手に 「お年寄りが自分らしく暮らせる居場所づくり」の結果、多様な施設を運営 すこやか(群馬県)
2024年05月24日 06:00
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株式会社すこやかは、群馬県西北部に位置する吾妻郡東吾妻町でデイサービス事業からスタートし、現在、小規模多機能型居宅介護、有料老人ホーム、訪問介護と多様な高齢者福祉サービス事業を運営している。高齢者が自分らしく生活できる居場所作りをモットーに、地元では先駆的に高齢者福祉サービスに取り組む事業者として評価されている。2023年4月には高齢者に限らず、子どもやだれもが安心できる居場所作りを目指し、特定非営利活動法人(NPO)を立ち上げ、2024年1月に子ども食堂を開設した。(TOP写真:「住宅型有料老人ホームシェアハウスぬくもり」の吹き抜けのホール)
地域の高齢者増加の問題は見て見ぬふりができないとの思いでデイサービス事業を立ち上げ 吾妻郡で初の小規模多機能型居宅介護事業を展開
すこやかは2011年9月の設立で、入江貴代子代表取締役いわく、「普通の主婦だった私が、自分で何か手に職をつけて働こうと思ったのがきっかけだった」。高齢者介護の経験は訪問介護の仕事を2年続けた程度で、施設で働いた経験もない。ただ、高齢者介護にはもともと興味があり、地域の高齢者増加の問題は見て見ぬふりができないとの思いで、有志らとデイサービス事業「デイサービスセンターぽっかぽか」を運営するすこやかを立ち上げた。
当時は定員10人の小規模施設ながら「わが家のように安心できるあったかい環境」を提供し、新鮮な野菜を使った手作りの食事を楽しめ、季節の行事や誕生日会など、年間を通して様々なイベントを企画してきた。ただ、デイサービスは日中だけのサービスにとどまり、「どうしても日中だけで介護しきれない高齢者が現れてきて、これは宿泊の介護サービスも手掛けないといけないと思った」と入江代表は振り返る。
そこで、すこやかは2013年に「小規模多機能ホームぽっかぽかの家」を開設し、小規模多機能型居宅介護事業を始めた。この制度は2006年度に創設された地域密着型介護サービスで、利用者は一つの事業所が提供する通所・訪問・宿泊の3つのサービスを選べ、月額定額制で利用できる。定員は29人で現在28人が登録している。吾妻郡内では初めての小規模多機能型居宅介護事業だったため、「県内の高崎や前橋、沼田、渋川で既に運営している小規模多機能型居宅介護施設と接点を持ちながら色々教えてもらい、うちの施設に合ったサービスを採り入れてきた」(入江代表)。
在宅でのサポートが難しくなった利用者のために有料老人ホームを運営 併せて訪問介護も開始
すこやかとしてはデイサービス事業、小規模多機能型居宅介護事業にしても、当初は「在宅」での介護にこだわってきた。この点を入江代表は「最初、お年寄りは自分の家で暮らしているのが一番幸せと思っていた」と話す。高齢になっても住み慣れた場所で誰にも気兼ねなく暮らせるのが最良であることは言うまでもない。しかし、小規模多機能型居宅介護事業は在宅を支えるサービスであり利用者が長く宿泊はできず、10年近く介護サービスを手掛けてきた中で在宅での介護が難しくなった高齢者にどう対応していくかが課題となってきた。
このため、すこやかは2021年に有料老人ホーム「住宅型有料老人ホームシェアハウスぬくもり」を開設する。併せて、訪問介護事業「訪問介護ステーションぽっかぽか」の運営も始めた。有料老人ホームの開設には前段があり、介護サービスとは別に、介護は少し必要だけど自分らしく自立した生活を送りたい高齢者や、ひとり暮らしが不安という高齢者が入居できる「古民家シェアハウス」を運営してきた。これを発展させる形で介護事業制度に則った定員12人の有料老人ホームに切り替えた。
すこやかがデイサービスを起点に小規模多機能型居宅介護、有料老人ホーム、訪問介護と多様な高齢者福祉サービス事業を運営するまでに至った経緯について、入江代表は「自分で作りたくて作ってきたというよりは、必要に応じて施設が増えていったというのが本音。小規模多機能型居宅介護事業にしても制度を知っていて始めたというより、事業を立ち上げてから制度に合わせて運営してきたところがある。お年寄りが自分らしく暮らせる居場所をどう提供していけるかを考えていった結果が、今のすこやかの事業形態につながっている」と語る。
子どもや高齢者、障がい者が安心できる居場所作りを目指すNPO法人を立ち上げ 子供食堂を開催 「買い物難民」に移動販売も検討
すこやかが12年間の介護事業を通じて取り組んできた「安心できる居場所作り」を目指す思いは高齢者福祉の領域にとどまらない。2023年4月には「NPO法人リリーフ・プラント」を設立し、子どもから大人、さらに高齢者や障がい者らの生活の自立を支え、だれもが安心できる居場所作りを目指す活動を始めた。現状は2024年1月に子ども食堂「だれでも食堂」を開設し、4月までに東吾妻町の施設で4回実施し、60~80人近くが利用した。今後は月1回の頻度で実施することを計画している。
法人名は「安心できる居場所」「安心を植える」という意味で、入江代表は「12年間、介護事業に携わってきた経験から『今必要なことは何か』と考え、NPO法人を立ち上げた」と話す。子ども食堂のほか今後の活動については地元の東吾妻町の現状を眺めながらNPO法人の設立趣旨に沿った活動を検討することにしている。
NPO法人が目下、目標に据えている活動は高齢者向けの移動販売と総菜販売で、入江代表は「訪問介護を通じて買い物支援を頼まれるケースが多い。それだけ『買い物難民』が多いという現実を目の当たりにしている。自分で買い物さえできればまだまだ自宅で暮らせる高齢者はたくさんいると実感しており、移動販売はぜひ実現したい」と言う。
ホームページもリニューアルし、施設のサービスの充実ぶりを伝える スマートフォンからの閲覧も可能にした
NPO法人の設立も含め有料老人ホーム、訪問介護と新たな事業活動が加わったことで、すこやかは2024年3月に自社ホームページをほぼ5年ぶりにリニューアルした。ホームページ自体はすこやかを立ち上げた直後から設けており、ホームページ作成ソフトの変更を含め今回が2度目の更新となる。新事業の立ち上げもあり、サービス内容の紹介も充実し、企業イメージの向上を図ると同時に、スマートフォンでの閲覧も可能とした。リニューアルした一番の狙いはセキュリティ対策で、更新後5年も経過していたことから一新した。
施設ごとに別の介護ソフトを一本化し、職員の使い勝手向上を支援
すこやかは施設によって異なった2つの介護福祉施設向けのソフトを併用してきた。この状態を改善するため、2024年4月に介護ソフトを完全に一本化した。介護ソフトについては最初に立ち上げたデイサービス事業から導入してきた。ただ、対応する機能が少ないことなどもあり、他の介護ソフトに切り替えた。他方、2021年2月にスタートした訪問介護事業では立ち上げ時からデイサービス事業と異なる居宅支援介護ソフトを導入した。
この介護ソフトが使い勝手が良かったことから、デイサービス事業にもこれに切り替え、さらに小規模多機能型居宅介護事業に導入し、これで介護ソフトの一本化が完結した。入江代表は「とにかく介護ソフトがないと利用者のケアプランも請求関係の業務も対応できない。当初は半年ほど手書きで処理してきたけれど、手書きで介護記録をつける作業は大変で、業務効率化を進める上でタブレット端末での入力に切り替えた。手書きで対応していた時の書類を最初から見直すといった無駄もなくなり、タブレット端末での入力に切り替えたことで安心感を持てるようになった」と言う。
訪問介護事業で効果を上げるタブレット端末入力
タブレット端末は現在、訪問介護事業が6台、デイサービス事業で2台、小規模多機能型居宅介護事業に2台導入している。特に訪問介護事業はタブレット端末での入力が効果的で、利用者宅から入力するようになっている。「訪問介護は時間を調整するのが大変で、1件しかないところに片道30分かけて訪問するようなケースもある。その帰りに数件訪問することもあり、そうした場合は訪問先からタブレット端末で入力できるので、作業時間の短縮につながっている。訪問介護の利用者は着実に増えていることからタブレット端末での入力は効果を上げている」と入江代表は語る。
「一人ひとりの心を大切に」 寄り添う介護のために、これからも新しいことに取り組む
すこやかの従業員数は現在40人。正規職員は5人で、残りはパート職員だ。常勤のパート職員もおり、女性がほとんどで男性職員は2人にとどまる。「職員に対しては家庭との両立に配慮することを心がけており、小さな子どもを持つ職員には短時間勤務、子どもが大きくなった職員には勤務時間を増やしてもらうなど、働きやすい環境にするようにしている」と言う。
施設の運営に当たっては「一人ひとりの心を大切に」をテーマに職員全体で取り組んでおり、入江代表は「介護施設はどうしても施設の形に合わせて利用者を当てはめることが多い中で、すこやかは利用者を中心に職員が寄り添うような介護を目指している」と強調する。
デイサービス事業から始まって多様な形で高齢者介護に取り組んできたすこやかは、福祉の担い手として今度は高齢者にとどまらず、子どもや障がい者へも手を広げ、「地域に寄り添い、その人らしい暮らし、安心できる居場所」を目指した先駆的な取り組みをこの先も続けていく。
企業概要
会社名
株式会社すこやか
住所
群馬県吾妻郡東吾妻町大字植栗344-3
電話
0279-68-5735
設立
2011年9月
従業員数
40人
事業内容
高齢者介護サービス
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