スポーツを愛する人のために人工土の開発 新たな設備開発にICTでの効率化急ぐ 東和スポーツ施設(京都府)
2025年10月01日 06:00
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夏季と冬季合わせて計4回のオリンピックをはじめ様々なスポーツの国際大会の開催実績を持つ日本は、世界有数のスポーツ大国だ。京都市左京区に本社を構える東和スポーツ施設株式会社は、1984年の設立以来、全国で運動場などの設計・施工に取り組み、日本のスポーツ振興を下支えしてきた。水はけと保水性を両立した資源循環型の土を考案するなど研究開発にも力を入れている。ICTやデジタル機器を活用することで基幹業務や施工管理業務を効率化し、生み出した時間を施設の設計、研究開発、新規事業の企画といった先を見据えた業務に振り向けている。(TOP写真:東和スポーツ施設のホームページ。エコクレイと既存の土を混ぜ合わせてグラウンドの土壌改良を行う)
地域の環境に合わせて利用者の視点に立ったスポーツ施設を設計、施工している
東和スポーツ施設株式会社の川谷真輝代表取締役
東和スポーツ施設は、学校の運動場、野球場、サッカー場、競技場などのグラウンドや遊戯施設の設計・施工・メンテナンスを中心に、舗装工事、造園工事、体育施設備品の製作・販売といった幅広い事業に取り組んでいる。ホームグラウンドの関西圏に加え、首都圏での事業拡大にも力を入れ、設計・施工に携わる工事の件数は年間50件を超える。
「地域の環境に合わせて利用者の視点に立ったスポーツ施設を設計、施工することを大事にしています。グラウンドの建設に必要不可欠な『土』という一番身近な資源に対する感謝の気持ちを忘れず、環境保護にもしっかり取り組んでいます」。京都市左京区内の本社で川谷真輝代表取締役は笑顔で語った。顧客の要望に寄り添いながらニーズが高い製品やサービスを提供する「マーケットイン」の姿勢を大事にしているという。
土木からスポーツ施設に事業を特化 経営理念は「Field of Smiles子どもたちのあふれる笑顔が未来を変える」
東和スポーツ施設の本社に掲示されている経営理念
東和スポーツ施設は設立以来、「スポーツを通じて日本を元気にしたい」という思いを大事にしてきた。「Field of Smiles子どもたちのあふれる笑顔が未来を変える」を経営理念にしている。
「スポーツ関連の施設や設備は、経済成長と健康意識の高まりに伴って着実な需要の伸びが期待できました。私自身、スポーツ好きということもありましたが、会社を成長させていくには、他社が真似できないしっかりとした強みを持たなければならないと思ったんです。数年間、東京でスポーツ施設の建設会社に勤務していた経験が役に立ちました」と川谷社長は振り返った。地元の京都府で1988年の「京都国体」に向けてスポーツ振興の機運が盛り上がっていたことも事業転換を軌道に乗せる追い風になったという。
リサイクル材料で開発された環境配慮型の土「エコクレイ」を開発2010年から販売され、土壌改良事業で着実に成長
東和スポーツ施設が開発したエコクレイのサンプル
東和スポーツ施設は、設立以来、産地による土の違いに合わせた施工方法を考案するなど土に関する研究に力を入れてきた。その取り組みの成果がいかんなく発揮されたのが、2010年から販売しているリサイクル材料で作る環境配慮型の人工土、「エコクレイ」だ。
川谷社長は、森林保護の観点から天然土の採取が難しくなることを予測し、土木資材として活用されていた一般廃棄物溶融スラグや瓦の破片をはじめとするリサイクル材料に着目。四半世紀にわたって土と関わってきた同社の経験と技術を注ぎ込むことで、天然土よりも水はけ、保水性、耐久性が優れた人工土を約3年かけて完成させた。エコクレイは高い評価を受け、京都市ベンチャー企業目利き委員会Aランク、京都市ベンチャー購買新商品、京都商工会議所の知恵ビジネスプランコンテスト、京都府経営革新事業、京都府中小企業新技術開発応援制度などの様々な認定を受けている。
東和スポーツ施設は、既存の土とエコクレイをオーダーメイドで配合する施工方式を「エコクレイシステム」と名付け、リサイクル材料の粒子の大きさ、形、構造などを調整する独自の特許技術を活用して運動場、野球場、ゴルフ場、芝生など様々な場所で土壌改良を行っている。砂ぼこりの抑制、降雨後の水はけ改善、土壌劣化の遅延、霜柱の抑制、雑草の抑制、メンテナンスコストの低減といった様々な効果が反響を呼び、エコクレイを使う土壌改良事業は着実に成長している。「リサイクルの推進は、廃棄物の削減につながります。リサイクル材料の更なる研究を進めて、世の中の役に立つ新しい土をこれからも開発していきたい」と川谷社長は意欲を示した。
土木事業の積算、施工管理、顧客管理にシステムを導入して業務を効率化 生み出した時間は施設の設計、研究開発、新規事業の企画に振り向けている
施工管理システムと連動したCADを活用する様子
東和スポーツ施設が、研究開発と共に力を入れているのがデジタル技術の活用だ。土木事業の入札に必要な見積や積算を数値入力するだけで自動計算してくれるシステム、工事の工程表やスケジュール表を自動作成し、CADや写真管理などの専用ソフトと連動する機能を備えた施工管理システム、発注者ごとの工事担当者、協力会社、金額などの情報や入金状況などを一元管理できる顧客管理システムを2012年から2015年にかけて導入。バージョン更新で新しい機能を加えながら活用している。
「デジタル技術を活用している理由は業務の効率化に尽きます。短時間で正確な見積を行い、適切な施工管理を行う上で、それぞれのシステムは必要不可欠な存在になっています。導入前と比較して社内の情報共有や、情報を活用した分析も格段にしやすくなりました。従業員には、システムに任せられる仕事はどんどん任せて、施設の設計、研究開発、新規事業の企画といった会社の将来につながる業務に時間を使うよう呼び掛けています」と川谷社長は話した。
川谷社長は業務に活用できる新しいデジタル技術の情報収集に力を入れ、自らの目で見て確認するため、デジタルソリューションの展示会に積極的に足を運ぶようにしているという。「これから先、少子化の進行で、あらゆる業界が若い働き手の確保に苦労することは避けられません。新しい技術を使って人手不足に対応し、仕事の属人化を解消していかなければならないと考えています」と川谷社長は表情を引き締めた。
東京営業所を交えた全体会議にWeb会議システムを活用 議事録作成にAIの活用も検討中
東和スポーツ施設では東京営業所の従業員を交えた全体会議を2週間ごとにWeb会議システムを活用し実施している。会議では、新規の提案や自由闊達(かったつ)な意見交換を大事にしている。現在会議の議事録は従業員が持ち回りで、録音データを基に毎回数時間かけて作成しているが、今後は時間短縮のためにAIが高い精度で音声を読み取って自動で要約する機能を備えた議事録作成システムの導入を検討している。
ホームページとリンクしたオンラインショップにはカタログとしての機能も持たせている
約280点の商品を掲載しているオンラインショップ
ホームページでは、会社概要、施工実績、グラウンドの維持管理マニュアルといった情報を掲載すると共に、顧客の利便性向上と販路拡大を目的に開設したオンラインショップ「とわスポショップ」をリンクさせている。グラウンド整備用の維持管理用品、人工芝、スポーツ用品など約280点を掲載し、カタログとしての機能も持たせている。
2022年3月にSDGs宣言 会社の取り組みの意義や大切さを従業員が実感する上で大きな効果があった
東和スポーツ施設の本社に掲示しているSDGs宣言書
東和スポーツ施設は2022年3月、国連のSDGs(持続可能な開発目標)が掲げる目標の達成に向けてSDGs宣言を行った。子どもの健全な育成につながる運動場の施工、環境に優しいエコクレイの生産、コンプライアンス(法令順守)の徹底、LED照明への切り替え、働きやすい職場環境づくりといった従来の取り組みをSDGs宣言に盛り込んだ。環境保護の取り組みを発信するために「エコ太郎」という名前のキャラクターも作成している。「SDGs宣言は、会社が取り組んでいることの意義や大切さを従業員に改めて実感してもらう上で、大きな効果がありました」と川谷社長。
スポーツ関連ビジネスに携わる中で低酸素ルームの施工事業に取り組む
高地トレーニングを実践できる低酸素ルーム
東和スポーツ施設は、グラウンドなどの設計、施工だけでなく、スポーツ関連ビジネスに幅広くアプローチしている。その中の一つが高地トレーニングを実践できる低酸素ルームの施工事業だ。「低酸素ルームでの運動は、スタミナや持久力の向上、疲れにくい体づくりに大きな効果を発揮します。血流が良くなるという利点があるので、肩こりの改善や睡眠の質の向上、冷え性改善、アンチエイジングにも効果が期待されています」と川谷社長は、低酸素ルームを活用するメリットを説明した。
東和スポーツ施設が施工する低酸素ルームは、ケアルームとトレーニングルームで構成。高度2,500キロメートル級の山と同程度の環境を作り出す機能を備え、遠征費などのコストをかけずに身近な場所で、運動効果が高い高地トレーニングを実践できる。定期的な心拍数や血中酸素濃度のモニタリングを徹底することで、安心してトレーニングに臨めるのも大きな利点だ。導入した大学が箱根駅伝で好成績を収めたこともあって問い合わせは順調に増えているという。
既存事業を拡大しながら新規事業に取り組む時間を捻出する上でデジタル技術の活用は大きな鍵を握る
東和スポーツ施設の本社の外観
東和スポーツ施設は、近年活発になっている障害者や高齢者向けスポーツの施設づくりにも力を入れていこうとしている。既存事業を拡大しながら新規事業に取り組む時間を捻出する上で、デジタル技術の活用は大きな鍵を握っている。「事業を通じて、未来を担う子どもたちを中心に幅広い世代の健康な体づくりのお役に立てるよう、これからも取り組んでいきたい」と川谷社長は先を見据えている。
企業概要
会社名
東和スポーツ施設株式会社
本社
京都府左京区北白川下池田町79-1
電話
075-702-1177
設立
1984年2月
従業員数
20人
事業内容
各種運動場・競技場の設計・施工(新設・改修・修繕・維持管理)
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